かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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街喫茶umberの裏にある森に現れ、その真の姿を現した奈落の蟷螂オベロン。その猛攻の前に、セイバーたちは屈するが、味方の合流、突如現れた謎の足場など、都合の良い展開が相次ぎ、形成逆転となり、一気にオベロンに反撃を仕掛ける。
聖杯戦争をも巻き込んだ吸血殺人事件に、ついに決着が付く!!


第三十ニ章 総力戦

 

《街喫茶umber裏森》

 

 

「ふざけるな!!」

 

オベロンは絶叫する。

 

「そんなものに、意味などないだろう!!俺たちは、そういうのが大嫌いだったんだ………!!仲間とか、友達とか、家族とか、そういう下らない集団が、仲間外れを作るんだろうが!!リアンや、アンリみたいに…………!!」

 

オベロンの怨嗟と共に、虫たちは一斉に、オベロンを狙って駆け抜けるサーヴァントやマスターたちに襲いかかる。

 

 

一方で、オベロンを目指して走り出す者たち。

 

「セイバー、アーチャー、俺の前方を頼んだ、アンザスと青緑と黄金さんは後ろの方、幹太くんは三人の指示を頼んだ!!」

 

この中でオベロンを殺し得る可能性を持つのはアサシンのみ。基本的な作戦は至って簡単で、セイバー、アーチャー、アンザス、幹太、青緑、黄金の六人でアサシンを守りながらオベロンに接近し、アサシンがオベロンに致命的な一撃を与えるというものだ。

 

「おうよ、任しときな!!行くぜ、おいアーチャー!!左半分やってくれ!!」

 

「あぁ、こちらは問題ないぞ!怪我した老人を守ってやらねばならないからな!!」

 

「ったく、孫娘としてちゃんとしてきたじゃねぇか。ここぞというときに気が合うんだな、俺らはよぉ」

 

セイバーとアーチャーは楽しそうに会話をしながら、アサシンの先を走り、虫たちを真っ先に斬り落とす。

 

「─────まぁ、一時とはいえ、同胞だからな!」

 

乱舞する紅と白の刃。色は対であり、混じることのないものだが、それらは対でありながら、共にあるもの。水引と同じように、赤と白の縁は切っても切れない。

その後ろを駆けていくアサシンのその背中を守るのは、アサシンのマスターである黄金と青緑。

 

「行くわよ青緑ちゃん!!」

 

「はい、姉さん」

 

青緑は素手でその拳に力を込め、黄金は仕込み箒に力を込め、互いに二人の絆を信じ合い、その一撃は、姉妹の一撃となる。

 

 

「合体攻撃・姉妹の絆 鏡花編!!」

「合体攻撃・姉妹の絆 水月編!!」

 

 

その攻撃は明らかに一般人のパンチと刃物ぶんまわしであるにも関わらず、その一撃はサーヴァントの攻撃に見える。

前方で戦うセイバーとアーチャーのように、なんならそれを越えるような絆の力。彼女らの力はただの筋力ではない。ただの技術でもない。そんな力はない。ただ、姉妹の絆が堅かっただけのこと。強固な縁は、モノの力を強くする。

 

「姉さん!!」

 

「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

黄金の目の前に、巨大なクワガタが現れる。それは、

 

「かわいい女の子に触るの禁止!!!」

 

アンザスの黒鍵投擲によって串刺しにされる。いつも通りにふざけているが、アンザスもアンザスで、仲間を守るべく闘っている。一方で、

 

「セイバー、上!!」

 

幹太がセイバーの真上からやってくる羽虫に気づいて、セイバーに忠告する。

 

「んだぁ!?」

 

セイバーは反応が遅れていた、というか、気づいていなかった。セイバーに襲いかかる羽虫。それを白い刃が凪払う。

 

「何をやっているんだ、しっかりしろ!いつもの貴様の余裕はどこへ行った、セイバー」

 

「わりぃわりぃ、老いが進んでやがるってな。ありがとよ、アーチャー」

 

「いや、礼ならセントーに言え。実を言うとセントーに言われるまで私も気づかなかった」

 

幹太も戦ってはいないが、それでもこうして精一杯仲間をサポートしている。

その様子が、オベロンにとっては癪でしかない。オベロン・アルカディアはあくまでも蓋折姉妹に霊基を共有させている英霊だ。蓋折に味方をして、蓋折と同じ価値観と倫理観を持つ。昔から周囲の環境に恵まれず、誰にも理解されず、誰一人として味方がいなかった蓋折。その意思と怨念を受け持つオベロンにとって、皆で協力しながら、背中を預けながら強大な敵に立ち向かう健気な様子など、見るに堪えない。

 

「あぁぁぁぁぁうざったらしい!!!全員、今すぐ死ね!!これ以上、俺の逆鱗に触るな!!」

 

ついに怒りを耐えられなくなったオベロン、巨大な蟷螂の鎌が勢いよく振り下ろされる。

 

「やっべぇ、そりゃあねぇってよぉ!?」

 

「退避退避!!全員退避!!潰されちゃいますよー!!」

 

全員が停止。お陰で直撃を回避したが、足場が崩壊した。

 

「まずい、この足場が壊されたら………!!」

 

オベロンに接近する術がなくなる。そればかりか、この高さから落下したら………!!

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「落ちる………!!」

 

サーヴァントはともかく、一般人である幹太と青緑と黄金の命の危険………!!!

 

「ライダー!!!あなたがわたしのおっぱいを揉みたいのなら、今すぐチャリオットを連れてこの場にやってきなさーい!!!」

 

アンザスの令呪が赤黒く輝く。その光は広場一体に放出され、赤い光が、空中に数秘紋の形を形成する。その魔方陣の中から、二頭の馬が引く戦車が飛び出す。

 

「行くぞ!!待ってろよ、アンザス!!」

 

その戦車の上に乗る赤毛の男がけたたましい疾駆音を立てて落下する者たちへと突進する。

もちろん、戦車の上に乗り、チャリオットを操るのはアンザスのサーヴァント、ライダー。

 

疾風(はやて)の如く、迅雷(いなずま)の如く、その身体が駆けるは深紅の戦場、その刃が翔るは紅蓮の戦線。神に縋ることはなく、敗北を期すこともなく、その身に宿すは人の意志。鋼の身体、砕けることを未だ知らず、鋼の翼、倒れる術を未だ向こう見ず。我が盾が守るは人の命。我が盾が破れることは無い!!───我が真名はアイアス!神速の英雄、アキレウスに並ぶ、ギリシャの大英雄なり!!我が手の届く(ところ)、焼けることは無いと知れ!!」

 

ライダーが、鮮やかな、黄金の装飾剣を握る。

それに気付かないオベロンは落下するサーヴァントたちに夢中だ。

 

「終わりだ………これで、ぜんぶ!!!」

 

オベロンが追撃を仕掛けるように鎌を振り下ろす。

 

(バカめ─────)

 

それを見るライダーは哀れに思いながらも、装飾剣を槍投げをするように、逆手に構えて肩口に掲げる。

 

───英霊アイアスは、亡きアキレウスの鎧を賭けてオデュッセウスと競技勝負をした結果、敗北してしまい、それに暴れ狂ってオデュッセウスの将を殺害しようとした。

それを見た神々はオデュッセウスの命を護るため、アイアスを欺き、羊の群れをギリシア軍勢と思わせ、気の向くまで殺させたという。

我を取り戻し、それを知ったアイアスは神々に欺かれたことを嘆き、ネメアの獅子の毛皮によって不死を得た身体の、唯一矢筒を着けていたがために不死を得ていなかった脇腹に剣を刺して果てたそうだ。

その時の剣(槍)は、ヘクトールとの戦いにおける戦利品。一説によれば、その剣は───

ライダーの手に持った剣が光を放つ。装飾剣としての紋様などはその目映い光によって見えなくなる。最早蛍光灯のような外見となる。その刀身が伸びて槍のような長さとなる。

 

「さぁ、こいつを喰らいな、うちの仲間(アサシン)を許しもなく襲ってくれたお礼だ!!トロイアの彼方まで吹っ飛びな!!虚栄の極槍(ドゥリンダナ・ヴォイド)!!」

 

ライダーがその黄金の槍をオベロンの鎌めがけて投げつける。流星のように一直線に空を横切る光の矢。金色のほうき星。

弓が的の図星を貫くように、金色の槍はオベロンの鎌を突き穿ち、大爆発を起こしながらオベロンを飲み込んだ。

 

「な…………んだと──────!!!!」

 

予想外の襲撃に気付けなかったオベロンは、突然の爆弾投下に対応する術はなく、流れのままに炸裂する炎に吹きとばされた。

 

「あれ?」

 

幹太が異変に気付く。落下した自分たちは、今、不思議な乗り物に乗っているということに。

 

「っておい、こりゃなんだい、この速ぇ乗りもんは!?」

 

「これは、英霊のチャリオット!?」

 

「いぇーい!!ナイスですライダー!!さすがの執念!!」

 

アンザスは手をたたきながら大喜びする。

 

「執念って、なんのことだおい」

 

「わたしのおっぱいに対する執念です」

 

「オマエ後で覚えとけよクソが」

 

ぶちギレながらもライダーのチャリオットは、落下した全員を乗せてオベロンの周囲を凄まじい速度で巡回する。

 

「で?どうすんだ、こっからよぉ。足場がねぇんじゃ、さっきの話はナシだぜ?」

 

「構うものか、こちらのほうが圧倒的にさっきよりも都合が良い」

 

「ライダーのチャリオットで直接オベロンを狙いましょう!!」

 

「いや、その必要はないな。オレたちはグルグル回ってるだけで十分だ」

 

ライダーが呟く。その一言に全員が首を傾げる。

 

「それは……どういう………」

 

「ほら、見ろアレ」

 

ライダーが真下を指さす。そこには、周囲を回るチャリオットに狙いを定めているオベロンと、その下に向かって落下する瓦礫に飲まれているサーヴァント一騎。

 

「アサシン………!!」

 

アサシンが落下する瓦礫を飛び継ぎながら、オベロンに向かっていく。

それに気付かず、ライダーのチャリオットに夢中のオベロンは、ライダーを集中的に攻撃する。だが、鈍い生きものが放った攻撃は、神速の戦車に命中することはなく、

 

「掛かってるな、バカな野郎だ」

 

「これなら………!!」

 

「アサシンはオベロンに気付かれずに接近できる………!!確実にオベロンを、倒せる!!」

 

「頑張ってくださいね………アサシン!!」

 

「シキさん、頑張れー!!」

 

「シキさま、どうかご武運を……!!」

 

 

そして、アサシンはもうオベロンの目の前だ。

 

「行くぞ………アルクェイド!!一気に【降ろして】くれ!!」

 

シキは場に居ない誰かに向かって言う。それと同時に、崩れた岩盤が再び空に舞い上がる。

 

「な、なんだ………!?」

 

オベロンの驚愕。それすらももう遅い。とっくにアサシンは攻撃を開始していた。

重力に乗って、高速で自由落下していく無数の岩盤。

岩盤めがけて、虫が突入していく。虫の雨は、全てが岩盤に向けられている。さすがに鈍感なオベロンであろうと、コレが自分を確実に殺す一発であることぐらいは理解できていたようだ。

アサシン、シキはその岩盤を盾にしながら落下していく。同時にそれは盾であり、道でもある。

垂直に落下していく瓦礫を飛びついで、オベロンに襲いかかる。その速度は瓦礫の倍以上。圧倒的豪速球のストレートにオベロンは反応しきれない。

 

「ふぅ─────!!!」

 

アサシンが意識を固めて突きだすナイフ。その刃の先にあるのは、オベロンの【点】だ。そこを一突きすれば、オベロンは一撃で死ぬ。

アサシンは勝利を確信していた。この距離。あと一秒でオベロンに接触できる。オベロンはこちらに気づいたものの、もう遅い。

 

だが─────

 

「は……………甘ったるいんだよ!!!」

 

オベロンの鎌が凪払われる。それは飛来するアサシンの身体を直撃した。

 

 

「アサシンー!!」

「アサシン───!!」

「アサシン!!」

「アサシン…………!!」

「アサシン!!」

「シキさん!!」

「シキさま!!」

 

 

アサシンの身体が弾け飛ぶ。幸い、切断された部位はないが、身体を真っ二つに切られた以上、内部のダメージが大きい。即死は避けられない。

事実、オベロンに切られたアサシンは体勢を崩して、オベロンと関係ない方向に落下する。

 

「───────」

 

それでも、死の直前ですら、彼は嗤っていた。いや、死の直前だならこそ、生を実感していた。

 

「あーあ、ここまで来たら、後は玉砕だな」

 

シキの口調が、荒々しくなる。その人格は、英霊佐々木只三郎のものだ。

 

 

「────シキさん!!」

「────シキさま!!」

 

 

二人の姉妹、黄金と青緑が、手を繋ぐ。そして、繋いだ手を高々と掲げ、アサシンに命ずる。

 

 

「令呪を以て命じます!!シキさん!!」

「令呪を以て命じます!!シキさま!!」

 

「必ず、倒してください、オベロンを!」

 

双子の姉妹の令呪が一画ずつ薄れる。

 

「そして、シキさま……!!」

 

「シキさん、必ず、生きて帰ってきてください!!」

 

また一画。二画目の令呪が焼き尽きる。

 

 

「そして、最後のお願いです。シキさん、決めてください!!」

「そして、最後のお願いです。シキさま、決めてください!!」

 

 

最後。三画目の令呪も力を使い果たした。それが、アサシンをかつてないほどに強化する。

 

「はぁ、そろそろ仕留めるか」

 

アサシンは空中で体勢を整える。先ほどの一撃を喰らったとは思えないほどの冷静な動作。それもそう。その身体、【とっくに死んでいる】。この存命も、令呪の命令を果たすまでのものでしかない。生きろと命じられたが、さすがに無茶な話だ。けれど、それはアサシンに一時の生存をもたらした。覚醒するアサシン。二つの命令。オベロンを倒すこと、ここで全てを決めること。

それを果たすまでは、自分は………!!!

この40メートルを走るために、彼は今生まれ、この後死ぬ。わずか一秒の命を、彼はここで勢いよく、太陽の焔のように、燃やし尽くす。

瓦礫を蹴って、オベロンに再度突進する。こちらは、先ほどのものとは比べ物にならない決死の一撃。速度も威力も、全く異なる。その速度は、最高点に達すれば、今空中を走るライダーのチャリオットをも上回るかもしれないとされる最高時速500キロを観測。新幹線よりも速いその疾風迅雷の如くその速さ、リニアモーターカーに匹敵する。東京と大阪間を一時間で繋ぐことも容易い。直線距離ならば、東北地方から大阪京都に突入し得るその速さ、押さえられる者など誰一人としていない。

 

「斬刑の(とき)だ。一秒の遺言を遺せ、奈落の蟷螂。(いかずち)が墜ちるぞ。ここから先は、後戻りのできない一方通行だ、三途の川に航りの舟を掛けながら、荼毘に服され、その身を黄泉路に堕とすが良い。さぁ、僅か一秒の殺し合いを再開しようか…………!!」

 

 

 

───────一秒。

 

 

 

余計な言葉は不要だった。その一秒、何があったわけでもない。ただの一瞬が、空を貫いただけのこと。

この闘いは、簡潔に終わらせなければならない。その一秒に何が起きていたかなんて、誰かに説明する必要もない。誰がそれを見ていようと、書き起こす必要もない。

 

 

 

────矢のように飛び立ったアサシンは、蟷螂の身体を、瞬間的に貫いた。




いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。マジカル赤褐色です。ちょっと他の作品で頑張っていたために、ちょっとこちらの執筆が遅れていました。
それにしても、蟷螂。こういう巨大な敵に大勢で立ち向かう感じがモンハンみたいでカッコいいですねー、やっぱりこういう巨大な敵がいるだけで一気に面白さが誤魔化せる笑笑 展開は毎回無茶があったり、盛り上がらない戦闘だったりなので、今回は過去イチ面白くと思います。
個人的に一番書くのが楽しかった部分は、セイバーとアーチャーの掛け合いです笑
それでは、次回もお楽しみに!!

現在登場している内で好きなサーヴァントはどれですか?

  • 非正式セイバー
  • 非正式アーチャー
  • 非正式ランサー
  • 非正式ライダー
  • 非正式キャスター・オベロン
  • 非正式キャスター・妖精妃
  • オベロン・アルカディア
  • 非正式アサシン
  • 非正式バーサーカー
  • 正式アーチャー
  • 正式ライダー
  • 正式アサシン
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