かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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突如襲撃を受けた非正式セイバー陣営と正式ライダー陣営。
攻撃の招待を探るべく、集まっていたエインスの部屋から全員が脱出、エインス、ライダー、セイバーの三名が共に動く中、隠れるよう言われていた銀子は独断で単独行動をすることになる。
果たして、一向を襲撃した者の正体とは?



そんな中、他の陣営にも動きがあった。


第四十章 霊基覚醒

 

《蝦碑市郊外》

 

 

「ふっ!!せやぁっ!!」

 

広い屋敷の庭で、一振の白薙が切り裂く音がした。

その剣によって、ペーパーナイフに当てられた紙のように真っ二つとなって、庭の宙に高く舞い上がる岩のような残骸が見えた。

 

「アーチャー、大丈夫!?」

 

そして、剣を握る【彼女】の後ろには一人の男がいた。

 

「えぇ、問題ありません!セントーはそのまま自身の安全を確保していてください!」

 

それは千藤幹太と非正式アーチャーの二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、アーチャー。付き合わせてしまって」

 

少し前、幹太とアーチャーはこの屋敷を訪れてやってきた。

少しでも汚くなればホラーハウスにぴったりと言わんばかりの大豪邸。大きさこそ及ばないものの、あのヴェルサイユ宮殿を彷彿とさせる構造の屋敷だ。

広い庭と荘厳にして巨大な館。こここそ、幹太の用事のある場所であった。

 

「いいえ。私はマスターとセントーの為に忠義を尽くすサーヴァント。主の命令とあらば、このアーチャー如何なる命でも有り難く引き受けます。ところでセントー、ここは…………」

 

「ここには、聖杯戦争に関わった経験のある魔術師がいるんだ。「遠坂凛」っていう女性なんだけど、数年前の第五次聖杯戦争に深く関わった魔術師なんだそうだよ」

 

「ふむ………生存しているということは、その遠坂という人物は勝者なのでしょうか」

 

「遠坂凛が聖杯戦争に参加していたところまでは調べることができたんだけど、ほら………聖杯戦争って何があっても表には出ないようなものでしょ?裏社会とも違って、そもそも普通の人間の世界には現れない内容だ。だから、前回の聖杯の行方は僕もわからない。だから、一度この屋敷を調べてみようと思うんだ」

 

幹太の情報探知能力は規格外だ。

勝敗の行方はともかく、かつての聖杯戦争に参加していた元マスターの人名とその住みかを調べ上げるというのだ。

アーチャーもこれは驚かざるを得ない。アーチャーはその綺麗な目を丸くしてびっくりしていた。

 

「ではここが、遠坂凛の住まう屋敷だと言うのですね。セントー、気をつけてください、相手は元マスター。万が一今回の聖杯戦争でもサーヴァントと契約したマスターであるのなら、戦闘は避けては通れないでしょう」

 

「そうだね。こんなの不法侵入もいいところだ、見つかったりしたらたいへんだよ」

 

二人はなるべく距離を離さないように、横に並んで歩く。だが、アーチャーにも怪しい気配は察知できていない。

だが────不意に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったいどうして、突然にこれほどの数のゴーレムが………!」

 

そして今に至る。

ゴーレムは岩や金属、土などの素材から造られる量産型の人形戦士。カバラという魔術によって命を吹き込まれた、いわゆる人造人間の一種だ。無論、知性は存在せず、ヒトとは呼べない異形であり、ただ命令通りに目の前に存在する味方以外の存在すべてを破壊する。

一体一体はただ肉体を持つだけの泥人形。しかし、その姿は強靭にして剛性。振り下ろされる豪腕だけで地面を砕き、鉄を貫く。

一度囲まれたら、恐らくは二度とこの群れからは抜け出せまい。

 

「セントー、屋敷の中へ!庭はゴーレムばかりで、とても安全とは言えません!」

 

「わ、わかった…………!!」

 

片っ端からゴーレムを叩き斬るアーチャーの指示を受けて幹太は屋敷の扉を目指す。

 

数の多いゴーレムのうちの一体が隙を突いてアーチャーの腕に絡み付く。

 

「この…………っ!!」

 

アーチャーはそれを振りほどくと、高く飛び上がる。

 

「伏せてください、セントー!!」

 

「は、え────えぇ、えぇぇ!?」

 

言われた通りに扉へと走る脚を止めて付せる幹太。

 

「堕ちろ、ゴーレムども!」

 

上空から放たれた無数の矢が庭に向かって飛んでいく。

矢は一寸の狂いなくゴーレムたちの頭を貫き、庭の土を穿ち、辺り一帯に大爆発を起こした。

 

焼け跡にはゴーレムは残っておらず、庭の中央に生まれた穴を見たゴーレムはおとなしく撤退していった。

 

「ふぅ…………ひとまずは安全を確保できたみたいです。ですが、確信しました。この場所にはサーヴァントがいる」

 

 

 

「─────その通りだ!」

 

「!?」

 

突然聞こえた男性の声に驚いた二人が一斉にそこに視線を移す。

館正面玄関の真上にあるバルコニーから、一人の男が姿を現している。

高級なスーツに身を纏った高貴な人物を思わせる出で立ち。

上着には薔薇の模様が描かれている。

時代錯誤な雰囲気は間違いない、サーヴァントだ。

 

「サーヴァント………!!貴様、先程のゴーレムの先導者か!」

 

「あぁ、その通り。私はサーヴァント、キャスター。先程のゴーレムは私が作ったものだ。そして、私はこの屋敷を陣地としているサーヴァントである。質問は終わりだな、では、次は私からも訊かせてくれたまえ。君たち、どうやってこの場所を発見した?」

 

「────なんだと?どういうことだ?」

 

「僕の作った【家】は、基本誰にも見つけられない筈だ。だというのに、君たちはこの家の庭に入り込んでいる。君の宝具はいったいどれほど強力な探知宝具なんだ?」

 

キャスターは不思議に思って邪気もなく頭をかきむしっている。

 

「せ、セントー?」

 

アーチャーが幹太の方を向く。

戸惑いながら幹太が質問に答える。

 

「僕が調べたんだ。キャスター、君のマスター、遠坂凛の屋敷はここだって………」

 

「…………ほう。キャスターの陣地作成………いや、実質は僕の宝具だというのに。魔術も使わずに場所が見破られたなんて、マスターになんて言えばいいか」

 

「貴様、どういうつもりだ。攻撃の手をやめたのかと思えば………!」

 

「血気盛んだね、アーチャーのサーヴァント。いや、スサノオノミコト」

 

「なっ………!?」

 

キャスターは当たり前のようにアーチャーの真名を口にした。

 

「貴様、どうなっている!?どうして貴様とはこれまでには一度も対峙したことがないのに、私の真名を………!?」

 

「私が調べたんだ。「知識こそが力なり」ってね」

 

キャスターの胸の前には本が開いたままの状態で浮いている。

 

「あの本でアーチャーの真名を調べたのか………?すごいな、アレが彼の宝具なのか」

 

「なんということだ………対峙しただけでサーヴァントの真名を看破するなど…………」

 

アーチャーがバルコニーめがけて飛び上がる。

すばやいその動きは、武器を持たない、鎧を纏わないキャスターを一撃で仕留めるには容易いものであった。

 

…………しかし。

 

「此より───如何なるサーヴァントの侵入を禁ずる!」

 

「な…………ッ!?」

 

バルコニーに到達したはずのアーチャーの動きが急に停止する。そして、そのままアーチャーは庭へと放り出されたのだ。

 

「アーチャー!?」

 

「なん………だと………?」

 

「────ついでに、此処へ如何なるマスターの存在も禁ずる!」

 

高らかに流れるオペラ演者のような美声だが、これは、キャスターの詠唱である。

キャスターは早速、宝具を発動するつもりなのだ。

 

「宝具詠唱…………今すぐに止めなくては…………」

 

「だけど…………」

 

 

 

「身体が動かない…………!」

「身体が動かない…………!」

 

 

 

幹太とアーチャーは動きを完全に止められてしまっている。

この状況、一言で絶体絶命。

構わずキャスターは詠唱を続ける。

 

「────部外者(タブー)の住居不法侵入罪に対して、家主として正当なる処分を下す。此よりは我等が隠れ家、此よりは我等が集う場所!

────精霊よ、あらゆる邪(よこしま)を滅ぼし給え、友愛よ、すべての妖(あやかし)を退け給え!

外来人(アウトサイダー)ども、此の場に近寄るでない!

この館、何人たりとも視るに能わず、聴くに能わず、云うに能わず、()るに能わず、尚且つ、通るに能わず!

────畏れひれ伏し、そして巷に語るがいい、汝らの見た、見えない世界とやらを!

お呼びでない役者たちは、早々にお帰り願う!立ち去るが良い、我が陣へ土足で踏み込む愚か者よ!」

 

瞬間、キャスターは浮いているものとは別の本を手に取り、それを開いた。

暴風にあおられて捲られる頁があまりの夥しい魔力を教える。

 

 

 

「う─────わぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「く…………うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

庭から幹太とアーチャーの姿が消滅する。

と同時に、本が閉じられた。

 

 

「─────聖霊の家(マーガレット・マンション)

 

 

聖霊の家、それが正式キャスターの宝具名であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《蝦碑市住宅街》

 

 

「どうかなセイバー、なにか見つけた?」

 

「あぁ、マスターとサーヴァントがいるぜ。この気配、さっきのデカブツじゃねぇか」

 

セイバーとライダー、そしてエインスは家屋の屋根を飛びついで、氷の槍が飛んできた方向へと向かっていた。

 

(デカブツってほどかな…………?)

 

「ふたりとも気をつけて。さっきのサーヴァントの気配がするわ」

 

エインスの正面にあるのは面積の広い建物。科学研究所のような平たく低く広い建物だ。その屋上に、大柄な男が一人。

 

「間違いねぇ、あいつだな」

 

「よし、やろう、セイバー。大丈夫かい、闘えそう?」

 

「問題ねぇよ、手前の保有スキルのお陰で回復したみてぇだ。それに…………俺ぁあの程度の攻撃じゃあくたばったりしねぇよ!」

 

セイバーは周囲に人が居るかの確認もせずに、研究所の屋上目掛けてその美しい太刀を勢いよく投げつけた。

 

「ちょ!?」

 

「確認もせずに!?」

 

エインスたちの制止も遅く、太刀はバリスタから放たれた大矢のように空を切り、その軌道がブレることもなく屋上の男目掛けて突入。

そして、ちゅどーーんと研究所の屋上が大爆発を起こした。

 

「あ────あぁ………………」

 

「刀はSAMURAIの命ってアンザスから聞いたけど、いつの時代も過大広告っていうのはあるもんね」

 

「何言ってやがる。俺ぁ武士じゃねぇ、刀鍛冶だ!」

 

セイバーは次々と小刀を真上に投げると、次々と柄を殴り付けて無数の飛び道具として放つ。

連射される矢は次々と研究所の屋上を破壊していき、土埃を撒き散らす。

 

「ふぅ、ここまでやりゃあ十分だろ。すげぇな、手前と協力しているだけで体の使い勝手が前とはぜんぜんちげぇな」

 

「まぁ、力になれたようで何よりだけど………」

 

「ギンコからの魔力供給じゃあ足りねぇからな………だが、そいつが今、手前のスキルで補われているってんだから、俺ぁこの通り、満身創痍だぜ!」

 

「満身創痍って…………日本語間違っているよ…………」

 

「間違えやすいジャパニーズの金字塔ね」

 

研究所から人影が飛び上がる。

セイバーの刀を片っ端から投げ込まれておいてもなお生存しているようだ。

 

「ちっ…………案外やるじゃねぇか」

 

 

セイバーの前にその男が降り立った。

500メートルは離れていたにも関わらず一つ飛びだった。

 

 

 

「───貴様の方から出向くとは夢にも思わなかったぞ、刀鍛冶」

 

顔色の悪い狩人のような剣士、再びセイバーの前に参上す。

 

「へぇ………手前の夢にまで見てくれるたぁ老いぼれも驚きってもんよ」

 

先ほど自身に深手を負わせた相手であるにも関わらず、セイバーは意気揚々と男に向き合う。

 

「手前のクラスはもうわかってるぜ、さっきの槍でわかんねぇわけがねぇだろ?だよなぁ、ランサー」

 

「────フン」

 

セイバーと男………ランサーは再度ここで出会うことになった。

 

「おおぅ…………これはまたすごい強敵の貫禄だなぁ」

 

「強そうですね。流石は教会の檻が遣わすサーヴァント………アンザスのライダーくんが言うには、彼の宝具は「我、咆哮の魁偉為り(ヴァイデント)」だそうですね」

 

エインスとライダーも同時にランサーへと向き合う。

 

「ふぅん。俺ぁバカだからなんにもわかんねぇが、透明になる宝具があったぜ。エインス、この手掛かりから分かる英霊がいんのか?」

 

セイバーはこうは言っているが、エインスへと向けた顔は笑顔。もはや、「手前ならもうわかってんだろ?」と言わんばかりの表情だ。

 

「えぇ、「ヴァイデント、隠れ兜、通常は

召喚できないから疑似サーヴァントとなっている」。これだけの条件が揃っている英霊なんてただ一人よ。そう────【ハデス】。ギリシャ神話に登場する冥府神プルートゥその人、ゼウスとポセイドンの兄にあたるれっきとした最高クラスの神霊だわ!」

 

エインスはランサーを指差してその真名を口にした。

 

「───フン、やる気はあるようだ………」

 

ランサーは再び鉈を手に持って背後から炎の腕を伸ばしてきた。

 

塞き止めろ(ポルトス)!!」

 

すかさず、ライダーの氷がその炎を防ぐ。

 

そして、その隙にセイバーが氷の壁を飛び越えて、ランサーに飛びかかる。

 

「ありがとよぉ、ライダー!!さぁ、行くぜランサー!手前ぁ、この一振で終いだァ!!」

 

「おのれ………小癪な真似を!!」

 

ランサーがセイバーに向かって勢いよく鉈を振りかざした。

 

 

 

「バカタレ!!手前のナマクラごときで、俺の剣を止めれると思うなよなァ!!」

 

セイバーが紅に染まった太刀を人薙ぎ。

その瞬間に、ランサーの鉈は真っ二つに折れ曲がった。

 

「─────ッ!?」

 

ランサーの鉈は最強の刀鍛冶、岡崎正宗の至極の一刀の元に両断された。

いや、違う。ランサーの鉈はセイバーの刃にぶつかってしまったのだ。

ランサーの鉈はセイバーの刀に触れただけでスパッと切れてしまったのだ。

 

「貰ったぁ────!!!」

 

セイバーは刀を右手から左手に持ち替えると、そのままランサーを袈裟斬りにしようと斬りかかる。

 

「一撃で仕留めるわよ!!」

 

さらにランサーの背後からエインスが殴りかかる。

 

「一殺せよ───斬り払え(アトス)!!」

 

さらにその合間を挟んだライダーの突撃。

異なる三方向からの同時の挟み撃ち。

あくまで神であって戦士ではない英霊ハデスには、この攻撃に対抗する術はない。

 

「───────フ」

 

 

────だが。

 

 

「甘い──────!!!」

 

 

「がっ…………!?」

「そんな!?」

「嘘!?」

 

 

なんという奇跡か、ランサーはその攻撃をすべて防いでしまったのだ。

セイバーの斬撃を折れた鉈の刀身で受け止め、鉈の柄でライダーの突撃を弾き返し、エインスのパンチを右足の後ろ蹴りで無力化してしまうという人智どころかサーヴァントの常識の範疇すらも凌駕した常軌をも逸する大技を成し遂げた。

 

 

「て…………めぇ…………!!」

 

「血袋は三つ。蒸風呂(バーニャ)の暖にもなりはしないが────夜狩の焚き火には丁度良いな」

 

ランサーの身体から青い炎が噴き出した。

 

「ぐっ、うぅ…………!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

セイバーたちは一気に吹っ飛ばされ、仕切り直しとなった。

いったい、今のはなんだ。

 

「冥界に引きこもったニートとは思えない戦闘能力ね………!!」

 

「おそらく、疑似サーヴァントとして顕現するにあたって依代となった肉体が持っていた心眼のような潜在能力が発揮されたんだ。きっと、ランサーの依代となった男の生前は、僕らにも負けない優れた騎士だったのだろうね」

 

「チクショウ、そんなのアリかよ………!」

 

ランサーはこれまでとは顔色一つ変わっていない。まるで先ほどの攻撃では動じていない。

あの程度の素人の連撃など恐るるに足らず、ましてや一度にそれを防ぐなど造作もないとでも言わんばかりの表情だ。騎士たるもの油断するべからず、余裕こそ見られないが…………そのぶん焦りも同じく、微塵も見られない。

 

 

「────ん?」

 

ここでセイバーが違和感に気付いた。

 

「俺の刀は…………!?」

 

セイバーの握っていた刀がなくなっている。

 

「ようやく気付いたか、セイバー」

 

「なっ…………手前…………!!」

 

ランサーの手にはセイバーがついさっきまで持っていた刀が握られていた。

 

「すまねぇ………!!俺のヘマだ…………!」

 

「ハデスの神隠し───隠れ兜の伝承はここから来てるわ。隠れ兜で息を潜めながら、クロノスの武具を奪ってティタンとの闘いでオリュンポス軍勢を勝利に導いたという」

 

戦闘力に優れたランサーがセイバーの造る最強の刀を持てばまさに鬼に金棒、それはもう無敵の一言に尽きる。

セイバー側にとって最悪の状態になってしまった。

 

「要はスリの達人ってわけか…………ご────ぶっ…………!?」

 

さらに最悪の事態は終わらない。

突然、ライダーが口から血を吐いて倒れてしまった。

 

「ライダー、どうした!?」

 

「ライダーくん、大丈…………夫、うっ………!」

 

エインスも悶絶しながらうつ伏せに倒れてしまう。

 

「ランサーァァァ!!手前、何をしやがったァ!!」

 

ただし、セイバーだけは何も起こらない。

 

「そういうこと───熱の略奪…………冥界の神であるハデスの特権ね…………対峙しただけでその魂を疲弊させる…………冥界の入口へと連れ込む大技ね…………」

 

「いい女だ───ただの燃え粕とは些か違うようだ。その貴重な()、暖炉に当たる数分のようだ…………一滴たりとも溢す訳にはいかん、その数少なき灼熱、有り難く貰い受ける」

 

エインスが口から垂らしている血を見て歓喜したランサーの炎の腕がエインスに向けられる。

その凶爪は現れた途端にノータイムで放たれた。

 

「待ちやがれ─────!!!」

 

 

─────その青い炎を金の刀が切り払った。

 

 

「貴様─────」

 

ランサーが鬼の形相でセイバーを睨みつける。

 

「手前、動けねぇ女に手ェ上げるたぁどういう了見だ」

 

「おれの渇きを潤すにはまだ熱が足りぬ。この寒い極寒の血より、春を待つこの肉体を、サーヴァントの完全体として自由自在の姿へと解放するためには、盃一杯程度の血では足りん。願わくば樽桶、いや、止まることのない流れる用水路のように血が必要だ…………おれの狩りを邪魔するのならば、容赦はせん」

 

「望むところだぜ。ったく、疑似サーヴァントたぁいえ、また吸血鬼かよ。俺ぁ何度バケモンを斬れぁ良いのかねぇ」

 

セイバーの金の刀は先ほどの赤い刀とは比べ物にならない輝きを誇っている。

いよいよセイバーの本領を発揮するということの表れか。

 

「手前、俺の剣を持っていくのは結構だがよぉ、まだ勘定が済んでねぇだろうが!!」

 

セイバーの顔が見たことのない色へと変貌する。怒りの感情を顕にして、セイバーは腕を震わせながらランサーを睨み付ける。

 

「ありゃあ高く付くんだよ、なんせ俺の作だからな!持ち合わせがねぇなら、この一振で肩代わりにしてやらぁ。ただ、駄賃は一生で払って貰うぜ、俺の魂、俺の人生を手前なんざが軽々しく奪い取りやがって」

 

「人を斬るだけの鋼に何の価値があると言う。貴様も凡霊と変わらぬな。極東の漢は非科学的な思想を強く受けていると聞いたことがあるが、貴様もその端くれということか───!!」

 

ランサーの冷たい表情から放たれる淡白な嘲り嗤う台詞。

そしてこれは、セイバーを激昂させるには十分に事足りるほどの引き金となりうる挑発であった。

 

「ふん、言ってな。やっぱり手前も神サマの癖に凡人と変わりやしねぇじゃねぇか。俺の刀をそこいらのナマクラと一緒にするんじゃねぇ、俺の刀ぁ、運命を斬る一斬。即ち、宿業を断つ因果の刃。如何なる聖剣も、如何なる魔剣も、俺の刃とは種類がちげぇ。勘違いすんじゃねぇぞ、こいつぁ生け好かねぇやつをぶったぎる剣じゃあねぇ。俺の銀子(マブダチ)を護るための剣なんだよ────!!」

 

 

今度はセイバーから紅い焔が噴き出した。

セイバーの羽織と紬が暴風で揺れる。

 

「研鑽を以て(たっと)し、巡礼を以て善と為す────永き暗き収斂に刻まれし幾多もの紅の刃文。雪に埋もれし旧き刃よ───今此の俺の鼓動を御覧じろ!行先は無間地獄、一切の妥協も許しぁしねぇ!」

 

 

焔の中から人影が現れる。何があっても被っている三度笠と墨のように黒い首巻き。

だが、藍色の髪は秋色へと変わり、その服装は大きく変わっていた。

さらに、羽織が金通縞模様をした外套になっており、その下に着ていたのは、臙脂色の紬ではなく、なんとあろうことか、海軍将校の制服のような見た目をした服であった。

 

「良いじゃねぇか、モダンファッションってのも、悪くぁねぇな」

 

───さらに現代語が使えるようになっていた!?

 

 

 

「貴様─────」

 

「ハハ…………いいぜ、雇われた命だ。買収される前に使いきってやらぁ!刮目しやがれ、俺の【剣太刀銘こそ三笠の君が斬ル(シン・めいとうまさむね)】をなぁ!!」

 

 

その手に握られていたのは、ひときわ黄金に輝いていた、正真正銘、彼にとっての【最高傑作】であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

エインス・マリオン

 

身長 162cm

体重 秘密

サーヴァント シャルル・ドゥ・ダルタニアン(正式ライダー)

触媒 ダルタニアン伯爵の羽根飾り

魔術 知識だけ。圧倒的フィジカルキャラ

令呪 巴型の羽が三枚生えた二重丸

所属 現職のニート。旧ネロア聖堂騎士団元局長

イメージCV:吉田聖子さん

 

正式聖杯戦争におけるライダーのマスター。

作中唯一の「サーヴァントと戦える人間」。

魔術や因果、時間といった「概念」を除いた全ての「物体」に対して、物理的に強い力を出すことができる。肉弾戦においては作中最強の登場人物である。

その能力の対象となる物体は体積、質量、付加価値などに関係なく、そこに原子で構成された、カタチをもつ物理の線の上に存在する物体であれば等しくエインスの筋力の前に敵うことはない。

いかなる材質をも素手で破壊し、あらゆる物体を片手で軽々と持ち上げる。

エインスの筋力というより、ある種の呪術的な効果によるものだとのことだが、如何にしてその能力を得たのか、その詳細の一切は不明となっている。何かまだ秘密があるのかもしれないのだが…………

非正式聖杯戦争におけるライダーのマスター、アンザスの姉であり、担々麺マニアの妹に対して、一気に夕食で何皿もぺろりと平らげてしまうほどエビチリを愛している。銀髪に瑠璃色のメッシュが入ったアンザスとは逆に、こちらは瑠璃色の髪に銀のメッシュが入っている。

お目目ぱっちりのアンザスと常に細目で目を開かないエインスとで、姉妹といいつつ似て非なるような、対照的な部分も多くある。

誰に似たのか、薄い本を読む趣味を持っており、お気に入りの作品がいつも部屋の引き出しに山積みになっている。

銀子のセイバーとアーチャーの二人がかりでも苦戦するほどの強敵だが、妹想いがすぎて、妹への恩を自分への恩のように思ってしまったり、ときどき気紛れに気に入った銀子に手を貸したりと、どこまでも不思議な人物である。

かつてはとある聖堂騎士団の局長であったらしく、美貌と心優しさから男に好かれやすかったらしいが、本人は愛妹以外を恋愛対象としていないようだ。




いつも読んでくださっている方ありがとうございます。マジカル赤褐色です。
えー、セイバーの件ですがね、執筆している最中に思い付いた突然の設定です笑
本来ならいつもの姿で通す予定だったんですが、何か変化のようなものがついつい欲しくなって、新しい要素として霊基再臨じゃないですが、そういうものを投入しました。
そろそろ私が【予定していた展開】的に、正宗の出番はこれから少なくなっていくので、このあたりで好き勝手に大暴れさせてやりたいなと思いました。正宗にデカイ変化を与えるにはやっぱり現代テイストにチェンジするのが一番でした。正直現代に染まるタイプにするか、とんだ時代遅れとでどちらにするのか設定する段階で迷っていた面があったので、なら、もうどっちも使えばええやんと。
これまではお遊び同然。これで正真正銘、全力の正宗が用意できました。結構差別化を図ろうとはしたんですが、セイバーはセイバーでだいたい同じだよってことで一応同一のサーヴァントとしてマテリアルの用意は未だ検討中です。ほら、霊基再臨させると宝具名は変わるけどステータスはあんまり変わらないじゃないですか。そういうことです。まぁ、サボり回にはちょうど良さそうだからいつか用意するかもしれません笑笑
それでは次回もお楽しみに!

完全版 好きなサーヴァントは?

  • 非正式セイバー(三度笠セイバー)
  • 非正式アーチャー(紬アーチャー)
  • 非正式ランサー(ランサーお爺)
  • 非正式ライダー(アンザスライダー)
  • 非正式キャスター・オベロン(妖精王)
  • 非正式キャスター・リアン(妖精妃)
  • 非正式アサシン(遠野志貴)
  • 非正式バーサーカー(アルクェイド)
  • 正式セイバー(姫セイバー)
  • 正式アーチャー(モンゴルアーチャー)
  • 正式ランサー(ケイアスランサー)
  • 正式ライダー(エインスライダー)
  • 正式キャスター(リィンキャスター)
  • 正式アサシン(見えないアサシン)
  • 正式バーサーカー(メイドのバーサーカー)
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