「だれか………助けて……!」
私は、バイトの帰り道、偶然にも、通り魔に出会った。だが、相手は通り魔なんて者ではない。身体中から変なオーラのようなものを放ち、その身体は血にまみれている。髪は、その血と同じか、それ以上に紅い色をしていて、手には、紅い刀身の刀を持っている。刀の刀身は血がついた痕跡はなく、本当に、最初から紅かった。
紅髪の女は、私に向かってその刀を振り回し、私を殺そうとしてくる。
「はぁ……はぁ……はぁ、はぁはぁ……!!!っ……!!」
もはや方向感覚すら忘れてしまった。気づけば、ここは、公園だった。
振り替えれば、街灯に照らされる紅い髪の女が、そこにいる。
「フフフ…………」
「ひぃっ……!」
逃げる体力が残されていない。1キロは全力で走った気がする。けど、ここまでだ。ここは公園だ。地形は平ら。身を隠すものなんてありはしない。ここに追い詰められた時点で詰みだった。
「うぅ……う……ぐ……」
地面にへたへたと座り込む。これ以上は、動ける自身がない。次、立ち上がればこの女は、直ぐに私の首をはねるだろう。それは嫌だ。下手に動けば、余計に苦しむことになる。ここで、上手いこと仕留めてもらえれば、辛いのともお別れだ。一撃で頸動脈を絶つことができれば、苦しむことなく意識を切断して死ねる。自殺方法では、飛び降りに次ぐベタなやり方だ。
それだけに期待して、ただ、目の前の死だけを待つ。
女が私を地面に押さえつける。そして、刀を納め、私の首筋に開いた口を近づけてきた。
「フフフ…………フフフフ………!」
嘘だろ。そんなことあるのか?なんて特殊な殺人方法だ!?この女、まさか、私の首を噛みちぎるつもりか?そんな、まるで【吸血鬼】みたいなことするわけがない。
「く………」
いや、絶対とは、言えないか。どこかにいるのかも知れないな。思ってた結果と違う。
いやだ、怪物に襲われて死ぬとか、絶対嫌だ……!!
「う、うぅ………ううぅぅぅぅぁぁぁぁああ!!!!」
女を押し返す。けれども、相手はびくともしないし、押し返されたからって力を籠めることもない。つまりは、力の差が圧倒的過ぎて、私が押しても、まるで意味がないわけだ。
「嫌だ………!死にたくない………!!私は、私は、私はまだ生きる……!!こんなところで、死ねるもんか………!!」
全力で押し返した。まるで、相手は動かない。けれども、違う展開が巻き起こった。私の左手の甲に、タトゥーのような、赤いアザが付いた。
「これは……!?」
「……………ッ!」
女が飛び退いた。突如発現した私のタトゥーに驚いたのではない。横から、凶器が走りよって来たからだ。
突如横薙ぎに振るわれた、謎の一閃の雷のような煌めき。
私の目の前に現れたのは、女の紅い刀に対して、金色の輝きを持つ、美しい刀を持った、若々しい青年だった。
臙脂色の着物の上に、柿色の羽織を、袖を通さずに肩口から掛けていて、菅笠を頭に被っている、藍色の髪の青年だ。
青年は、私に振り向いて、その、私と大して歳の差もない若い口を開いた。
「────一つ訊くぜ。
青年は私に問いかけてきた。
「マス、ター?」
青年は、なんだいそりゃあ、と頭を掻きむしり、一つため息をついた。
「はぁ………
「……………?」
なんだ、それは。マスターとはなんだ?彼は誰だ?なんだってそんな格好で刀なんか持って街をうろついているんだ?職務質問掛けられないのか?という平和的な心配をしている私はいま彼が助けに来てくれたことに安心しているわけだ。
「───た……助けて。お願い。私、彼女に命を狙われているの……!」
「んじゃあ、手前は俺のマスターってことでいいのかい?」
「よくわかんないけどそれでいいよもう!助けるつもりがあるなら、早く助けてよ!」
「人使いが荒ぇな。ホントに手前、開口一番にそれは、嫌われちまうぜ?まぁ、いいよ、手前がマスターだってわかったんだからな。おんじゃ、行くぜぇ!ちぃと下がってな!巻き込まれっぞ!」
そういって、青年は、前に踏み込んでいく。
紅い髪の女が青年に向かって走り出す。構えた紅い刀を全力で振り下ろす。
「おっせぇよぉッ!ノロマ!」
紅い刀が黄金の刀で弾き飛ばされる。バッターに打ち返された野球ボールのように、公園の外へと吹っ飛んでいく。
「───ッ!」
女の爪が振り下ろされる。刀を振りかざした青年には、後の硬直がある。なす術もなく、その爪が直撃して、この世から消え去った。
にしては、だ。いくらなんでも、スッと消えすぎだな。ホントに、彼はそこに居たのだろうか。
「何やってんだい?手前!」
女の背後から、青年が、三人に分裂してやってくる。
女の爪が振り向きざまに放たれる。それは、三人の青年には届くも、また消える。
「残像……?」
こんなに速い速度で彼は動けるのか?人間の域とは思えない技だ。
「さて、問題だぜ!見切れるかい?」
女の上空に、十人の青年が現れた。この中の、どれかが本物なのか。
女は、十人の青年には目もくれず、違う場所を探す。あの十人とはまた別の場所で、本体が待ち構えていると判断したのか。咄嗟にしてはいい判断だ。だが、残像とは、一概にフェイントのことを言うワケではない。
「────おぉらッ!!」
十人の青年が一斉に女を斬りつける。女に十の斬撃がヒットし、女が大量出血を起こした。
そりゃそうだ。一斉に十連撃繰り出しただけのことだ。下手に考えるほどバカだ。
「………ッ!………………フン!!!」
今のが相当深手だったのか、女はすぐさまその場から撤退した。とんでもない速度で動き回り、家屋を飛び越えて、どこかへと消えていった。
「………………」
「はぁん、逃しちまったか。まぁいいや」
青年は何事もなかったかのように、金の刀を鞘に納める。
「さってっと、突然でわりぃな。俺ん名前を言ってなかったぜ。俺はセイバー。手前の召喚に応じてやって来たサーヴァントだ。よろしくな。手前は?」
青年は急に態度を丸くして、握手なんてしてきた。
「私?私は「
「ギンコか。ギンコねぇ……悪くねぇ名前じゃねぇか。気に入ったぜ」
青年……セイバーは、私に近寄ってひょいと身体を持ち上げる。
「んじゃあ、家帰ろーぜ、ギンコ!運んでやっから、道案内は頼んだぜ?」
そのまま勢いよく飛び上がり、公園のそばに建っていた電柱の上に飛び乗り、そのまま電柱の上を乗り継いで進んでいく。高く、速い移動だった。
「これは……一体………」
私には、なにもかもが意味不明で、理解一つできないまま、夜中の我が家へと帰っていった。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【セイバー陣営】
円堂 銀子(えんどう ぎんこ)
セイバーのマスター。
聖杯戦争の存在すら知らなかったが、バイトの帰り道で、紅い髪の女に遭遇して襲われた時、偶然にもセイバーを召喚してしまう。聖杯戦争の知識すらない、正真正銘のヘッポコ少女で、あり得ないくらいに平凡。突然の運命に振り回されながら、逃げられない儀式へと、脚を踏み込む。
セイバー
剣士のサーヴァント。
銀子によって、いきなり偶然召喚されたサーヴァントで、和装が特徴の青年。金の刀身を持つ刀を扱い、銀子を命の危機から救った。サーヴァントとしてか、戦闘能力が高く、特に、雷のような圧倒的速度で動き回ることができる。ただし、それだけの戦闘能力があっても、その正体は名を遺したただの刀鍛冶で、武術には縁がない。なぜそれでいて、そのような戦闘能力が発揮できるかは謎に包まれている。
いつも見ていただいている方、ありがとうございます!
ようやくセイバーを出しました笑笑セイバーのイメージはどこかの刀鍛冶になぞらえています。聖杯戦争ではセイバーはなんでも戦えるんだよ笑笑基本的にこの作品は、セイバー陣営を中心として物語が展開されていきます。此度の聖杯戦争屈指の一般人銀子と、最優クラスの刀鍛冶、セイバーの二人による物語をお楽しみください!