かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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氷所正親と正式バーサーカーに苦戦する銀子、響也の前に颯爽と駆けつけたエインスと正式ライダー。
しかし、エインスは登場した瞬間に、セイバーによって背後から斬り殺されてしまう。
ライダーもまた、マスターであるエインスが死亡したことで退去することになる。
昨日まで仲間だった者を寝返るような形で斬り殺されたことで、銀子の精神状態も崩壊。
全てを知っていながら自分に全てを黙っていたセイバーに銀子は不信感を募らせてある決意をする。

非正式セイバー、岡崎正宗。
そのサーヴァントは剣士のクラス、セイバーであると同時に。
此度の聖杯戦争で正式聖杯戦争を潰すために喚ばれた粛清者のクラス、エリミネーターを兼ねていた。
此度の聖杯戦争におけるかつてないほどの大きな歪み、その渦の中央が、だんだんと明るみになってゆく…………


第四十八章 決別

 

斬られた。

でも、不思議と斬られた感覚はしなかった。

急に背中の間を熱さが駆けたと思ったら、わたしは床に倒れていた。

──────なんて、暖かい。

 

身体が、突然動かなくなった。

でも、別に怖い思いはなかった。

 

だって、誰に斬られたかなんて簡単なことだったからだ。

そう。やっぱり、彼はそう簡単にわたしを信用してくれないのだ。

でも、わたしは確かに、彼の言う通り、こっそり彼女らを見捨てようとしていたかもしれない。

彼女らが善人だと知っていたから。どこかで自分たちの代わりになってくれると期待していた。

そんな扱い方をしていれば、この結末は必然だったのかもしれない。

もっと、仲間を、大切にしていれば良かったのか。

わたしは、やはり………………妹以外は信用できないのかもしれない。

 

 

 

「──────あぁ、残念」

 

最後の晩餐は、みんなで銀子ちゃんのおうちで食べた、七輪で焼いた焼き肉。

初めて、ジャパンの陶器で焼いたお肉は、というか、その火鉢自体が、わたしを興奮させた。

その暖かさ、目に黒煙が入る痛さ。薪が燃える音と火花の音の軽快さ。

全てが初めてだった。

この国に降りたってから、特別な体験ばかりだった。

だから、最後の数日には、相応しいものだったのかもしれない。

ライダーくんに、なんて言えば良いのかな。

いや、もう……………なにかを言うには、遅すぎた。

 

 

 

「ごめんなさい、ライダーくん」

 

それしか、言えなかった。

彼は、許してくれるだろうか。

 

いや、駄目か。

残念、悔しい…………というか、悲しいというか、寂しい。

再開した妹と、もう少し長く過ごしたかった。

結ばれたかった。

 

 

 

でも、それはもう、叶わない。

 

 

 

「──────でも」

 

 

 

わたしは、血溜まりに横たわりながら、白い天井を見上げる。

 

 

 

「凄く、楽しかったわ──────」

 

 

 

なぜか、最期が迫っていると言うのに。お迎えが来ていると言うのに、わたしは笑っていた。

だって、楽しかったんだもん。刺激的だったんだもん。初めてのことばっかりで、凄く充実していたから。

 

 

 

「面白かったわ、この聖杯戦争は」

 

 

 

それだけで、もう十分。

ひとときでも、今回の聖杯戦争はわたしに歳若い女性らしい、華やかで楽しい日々を見せてくれた。

夢を見る機会があった。

 

 

 

──────あの日から、全ての歯車が狂ったマリオン姉妹。

 

 

 

あの時はこんな闘ったりせずに……………

ただ普通に趣味を楽しんで、毎日学校に通って、家の手伝いをして。

綺麗な子と結婚して子供もたくさん作って……………

 

 

 

そんな、なんでもない。ありふれた女の子としての生き方が、できなくなったあの日から。

わたしたちは、命のやり取りをする生き方をし続けた。

自分たちの家族を奪ったマフィアたちを全員殺し、その後も悪いものを消し続けてきた。

それは、どれだけ長いものだったのか。

それに比べたら、こんな夢など刹那いや…………須臾にもならない程の短い幻だった。

 

でも、それは、現実だった。

今ここで死ぬと言うのなら、この夢のような日々、人生で一番幸せだったこのユメは、ホンモノだったのだ。

夢も(うつつ)も、どちらかわからなくなってたこの楽しかったという心が覚えている。

死の間際なのに笑っている唇が教えてくれている。

 

 

 

 

 

「主よ─────泡沫の夢をありがとう」

 

 

 

そうしてわたしは疲れてきたので。

もう、はしゃぎすぎて眠たくなってきたので。

瞳を静かに閉じることにした。

 

 

 

 

 

「──────エインス」

 

わたしの名前を、呼ぶ声がする。

 

 

 

「─────────────」

 

眠たい目を擦ってわたしは目覚める。

ぼやけた世界に目が慣れてきた時に、わたしはその姿を確認した。

 

 

 

「─────あぁ…………お父さん、お母さん…………!!」

 

そうか。ようやく、到着したのか。

わたしがまだ手に入れてもいないのに、聖杯に願い続けた悲願……………家族で過ごしたい、ということ。

 

「ようやく、わたしもここへ来れたのね…………」

 

「待っていたわよ、エインス」

 

「あぁ、本当に、逢えて良かった」

 

「うん……………うん……………!!」

 

主は、頑張ったわたしを天国まで送って下さったのだ。なんて感謝したら良いのか。

こんな幸せな日々の後に、願いが叶ってしまって、バチなんて当たらないのか。

 

けれど、なにかが足りていないような。

そこには、彼女がいない………………

 

「───────いいえ、いいえ。きっと、すぐ来るから」

 

彼女が来るのを待つわたし。

 

いや、でも────────

 

「───────やっぱり、貴女はそのまま生きていてほしいわ、アンザス。わたしに、ユメの続きを話してほしいの。わたしたちは、何年でも。ここで待っているから……………」

 

 

 

──────最期に、一番たいせつな人に。

一番伝えたいことだけをわたしは言い残した。

 

 

 

「ありがとう、アンザス。─────愛しているわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、よくやってくれたなぁ。セイバー」

 

エインスが倒れた直後、中年の紳士は拍手しながらセイバーに歩み寄る。

 

「まさかここで大胆に裏切りとは、流石は大英雄だ。さぁ、このまま響也もやってしまえ。私たちならば、絶対に勝てるとも、この戦」

 

勝ち誇って易々とセイバーの肩に手を置く氷所正親。

 

「──────なぁに勘違いしてやがる」

 

「は?」

 

「こいつぁ、裏切りじゃなくて、正式の連中を消すための【仕事】だよ。俺ぁ何を犠牲にしようと、与えられた注文をこなす。だが、仕事が関係しなきゃぁ、絶対に裏切ったりはしねぇ」

 

「あぁ、そうだろう?ならば、私とバーサーカーに手を貸せ。私らと共に他のマスターを根絶やしにし」

 

「───────────」

 

セイバーは黙ったまま、その剣を見えない程の速さで振るって、正親の左手を切り捨てた。

 

「ぎ───────あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

鮮血と共に正親の悲鳴が響き渡る。

 

「───────なぜ、なぜ、なぜぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

「うるっせぇなぁ。死ぬときぐらい静かにしろ。俺ぁな、仕事人つったろ?手前らの味方なんかしねぇよ。むしろ、正式バーサーカーを連れている手前らも、俺の粛清対象だかんな」

 

セイバーは狂乱しながら後退していく正親の右手首を掴んで振り回し、壁に叩きつける。

そのまま鳩尾にヤクザ蹴りを叩き込み、胸に太刀の剣先を叩きつける。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、誰か、だれか居ないのか、だれがだずげでででででぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

峰を手で押さえつけて、胸に刺さった刃を脇腹から切り抜く。

胸から脇腹にかけて真っ二つに斬られた正親はなにかを成す術もなく、即死した。

斜めに斬られた竹のように、上半身と下半身が離れ離れになってドサリ、と床に倒れる。

 

「───────何人殺ろうが同じじゃねぇか……………」

 

吐き捨てるように、セイバーは刃に付いた血潮を払って死体に背を向ける。

 

「正親様──────!!!」

 

主に向かって一目散に走ってくるバーサーカーだが、セイバーは闘おうとしなかった。

バーサーカーも、セイバーに危害を加えようとしなかった。ただ正親の死体の前で立ち尽くして彼の名前を叫び続けているだけだった。

 

 

 

 

 

「──────おい、どこ行くんだギンコ?」

 

そして彼は、病院の正門から千鳥足で出ていくマスターを見た。

 

「────────────」

 

虚ろな眼で、少女は、名前を呼んできた者の方向を見る。

 

「──────セイバー、これはマスターの命令じゃなくて、友達としてのお願いよ」

 

「──────お、おぅ?」

 

暗い、低い、小さい、聞き取りにくい声で彼女は言った。

 

「──────金輪際、私に関わらないで」

 

そう言って、銀子は背中に瑠璃色の髪の女の死体を背負って病院の入り口を通って出ていった。

その後ろから、一人の青年がついていく。先ほどまで正親だった者と対抗していた青年、響也。

 

「──────即死。人でなしにしては恵まれた最期だったな、親父」

 

最期に死体に向かって捨て台詞を残して、青年は特に何か言いたそうな事もなく銀子の背中を追って去っていった。

 

 

 

 

 

病院の中はセイバーだけになる(バーサーカーが居るが居ないようなものだ)。

 

「──────────────」

 

独り、彼は自分の手を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は─────岡崎正宗。日本最高の、刀鍛冶……………だ」

 

 

 

 

 

そう言って、彼は拳を握りしめる。

その瞳からは、いつもの快活さが抜けて、それこそ全てを喪った晩年の老人のようだった。

 

 

 

「あぁ、そうだ。たとえ親友に疎まれようぁ、俺は自分(てめぇ)の仕事をやり遂げる」

 

 

 

 

 

一生涯の全てを、刀を造るという使命の為に捧げた、燃やし尽くした鉄の男は言う。

 

 

 

「俺ぁ今度こそ、辿り着く────俺が目指しては届かなかった、あの剣の丘の、最果てにある…………俺だけの【目的地(ゴール)】ってモンにな…………」




いつも読んでくださっている皆さんありがとうございます。マジカル赤褐色です。
読者の皆さんが所々でセイバーなんかおかしくね?っていう所は完全に回収されたということでいいでしょう。
今回の聖杯戦争が狂っている原因の大元はこのセイバー岡崎正宗にあります。正宗の設定資料を用意していたので、読んでくださった方はご存知かとは思いますが「とにかく仕事が至福」という説明をしています。
逆に言うと、それは「使命をこなすこと」が最優先事項であることの現れです。つまり正宗は仕事するためなら平気で人を騙し裏切る、なかなか非道なサーヴァントです()
銀子の前に現れなければならなかった理由等は後々明らかになっていく感じですが、これこそが作者の前から言っていた「予期していた展開」でございます。本作におけるキャラクターNo.1っていうのは基本銀子のことを指します。セイバーはキャラクターNo.2。なので、銀子視点で物語が繰り広げられ、相棒であるセイバーは、別段いつも銀子の味方というわけではありません。
キャラクターNo.2って一番警戒すべきポジションですからね。キャラクターNo.2の良いやつって裏切るキャラにしやすいので。
なので銀子が生きていれば、セイバーの役割はなんでも良いのが本作でございます。
正宗の性格上、仲間であり、非正式聖杯戦争に参加する銀子は引き続き庇護対象でありながら契約を誓った主であり友でもあります。ただ、エインスを殺すのが仕事なら、銀子の友達であろうと容赦はしない。仲間の裏切りや嘘を付くことが大嫌いな岡崎正宗ですが、仕事の為なら残忍冷酷な手段に出ることを厭わない。
一番危険な属性のキャラです。というか、そういう属性を狙ってキャラクターデザインしてます。
性格を問われたら一言で「いいやつだけど目的のためには手段を選ばないキャラ」って言います。
岡崎正宗の性格をそういう風に思えた方なら、なんとなぁくぶつかり合いのような展開はあるとは予想できたんじゃないでしょうかね。
誰も殺したくない、ただ生き延びたいからセイバーと戦う銀子と、正式のマスターを全員殺すためには銀子の力が必要だから銀子と戦うセイバー。
この二人の関係性についに亀裂が生じました。本作のメインとなる二人の登場人物が喧嘩別れ。そしてそこにはそれぞれの正義があるのでもちろん和解は不可。
二人の運命はこれからどうなっていくのでしょうか…………

今後の展開にぜひご期待ください!

完全版 好きなサーヴァントは?

  • 非正式セイバー(三度笠セイバー)
  • 非正式アーチャー(紬アーチャー)
  • 非正式ランサー(ランサーお爺)
  • 非正式ライダー(アンザスライダー)
  • 非正式キャスター・オベロン(妖精王)
  • 非正式キャスター・リアン(妖精妃)
  • 非正式アサシン(遠野志貴)
  • 非正式バーサーカー(アルクェイド)
  • 正式セイバー(姫セイバー)
  • 正式アーチャー(モンゴルアーチャー)
  • 正式ランサー(ケイアスランサー)
  • 正式ライダー(エインスライダー)
  • 正式キャスター(リィンキャスター)
  • 正式アサシン(見えないアサシン)
  • 正式バーサーカー(メイドのバーサーカー)
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