かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

70 / 82
非正式ライダー陣営がついに非正式ランサーを打倒。
しかし、決着がついた瞬間、狙ったように現れる非正式バーサーカー、アルクェイド。
そして、時は夜になる。銀子たちは現在、どうしているのか。


第五十五章 仮面の下

 

「───────────」

 

私は黙ったまま、暗くなった帰り道をひとり歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

(───────あ、)

 

(おい、どうした?)

 

(いえ─────なんでも、)

 

私は響也さんの声で気が付いた。

たしか…………冷織ちゃんの話を聞かされて、そのまま途中で耐えられなくなって聞いてなかった。

 

(なにもないか?)

 

(は、はい。何も)

 

(そうか。まぁ、あいつの事だ、素直な女だからお前がまた薙刀やってくれるとあればすぐ笑うさ。別にこんな話、聞いてなくたって良いんだからな)

 

 

 

 

結局、この日に冷織ちゃんは見つからなかった。

あとは響也さんや麗花が探してくれるみたいで、私は家に帰ることにした。

サーヴァントも連れていないのに私は、一人で夜の道を歩く。

でも、私はいくらなんでも敵を増やしすぎた。それによって麗花たちが巻き込まれるぐらいならと思って。

みんなに気づかれたらきっと止められる。だからこっそり出ることにした。

警備が厳しかったけど、抜け出すだけなら余裕でいけた。

 

 

 

 

 

「─────セイバー、」

 

私の左手から令呪が消えていた。

私はもう正真正銘、セイバーのマスターではなくなったのだ。

そして、そのセイバーの位置も、今何をしているのかも、私にはもうわからない。

ずっと、ひとり。またあの古い家の中で一人、暮らしていくことになる。

なんであれ私の聖杯戦争は終わったのだ。

もう戦う理由なんてない、だからこのまま日常に戻れるのだと…………

 

 

 

だが、そんなことはなかった。

事後の問題はたくさん余っており、今もなお私は命の危機にさらされている。

いつ死んでもおかしくないこの状況で、無力な私に何ができるのか。

サーヴァントもいない、力もない、魔術も使えないそんな一般人に、どうやって生き残る力があろうか。

 

 

 

 

「─────よぅ、また()うたなぁクソガキ」

 

「……………ッ!」

 

道の先に、一人の男がいた。

その後ろに、銃や鉄パイプや日本刀を持った人間がたくさんいる。

まさか、待ち伏せしていたのか、

 

 

姫路…………賽……………!!!

 

 

「おおっと、後ろ行っても無駄やでぇ?あんたは完全包囲されとるんや」

 

「──────────」

 

たしかに、後ろからも同じ数のヤクザが来ている。

 

「しかしあんた、意味わからへんのぉ。中国かぶれゆーても………今どき国籍がどうのでいじめなんて起こるんかいな。ハーフやクォーターの女なんて、そこら中におるやないけ、むしろ日本住みの外人なんて山のようにおるわ」

 

もういい、いじめの話は。思い出したくもない。

 

「今この状況は、何が目的?」

 

「俺の歯ぁ持ってったあんたをブッ殺すために決まっとるやろ?やられてオトシマエつけへんのはハナからヤクザの資格ないで」

 

「所詮は犯罪者の集まり。ヤクザの資格もなにも、あんたらは社会の器に収まる資格がないから」

 

「あ?黙れやボケが、タダで済むと思うたら大間違いやで…………おいお前ら!やったれや!!」

 

姫路が大声で私にかかるよう指示を出す。

 

「で、でも…………」

 

しかし、彼らは一人とは言え相手が私と知って怯えている。

 

「アホか!こないな女一人に腰抜かすんじゃ、天下の曹総連合会の名が立たんやろうが。大丈夫や、どんな相手やろうが数ありゃ勝てる」

 

「くっ………くそ………うおぉぉぉぉ!!!」

 

捨て身の猛攻を繰り出すために、前後ろから一斉に走ってくる組員。

武器は鉄パイプやら塩ビパイプやら木刀やら竹刀やら真剣やら色々あるがとりあえず細長いものが多い。

ドスと違って重たいゆえに遅い。制御が聞かないから振り抜かれる方向は一発で看破できる。

素人には意外と武器は長いより短いほうがやりやすかったりする。

 

「おぉらぁぁぁ!」

 

真後ろから1人目がやってくる。

 

「─────ふっ、」

 

振り下ろされた木刀を躱し、それを握る右手を押さえつけると右脚で顔面を蹴り上げる。

 

「ぎゃぁぁぁっ!!!」

 

「うらぁ!!」

 

「ふっ!」

 

2人目は裏拳一閃で仕留める。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

その隙をついてやってきたナイフ持ちの敵。

すごい速度で振り回される軽いナイフが振り下ろされた。

 

「つっ、」

 

慌てて体を反らして回避し、そのまま切り上げようとしてきた腕を右手で取る。

 

「くぅっ!」

 

そしてナイフを握る手を左手で叩き、曲がった腕がナイフを離してしまった。

からんからん、と転がった凶器を確認してから最速のジャブで鼻頭を殴ってまた倒す。

 

 

 

「─────えぇあっ!」

 

「────っ!!」

 

唐突に放たれた銃撃を転がって躱す。

前後ろの死角から攻撃が飛んでくるから相手するのは大変だ。

 

「おおぉぉぉぉ!!!」

 

「くっ………!?」

 

後ろから大柄な敵がやってきて羽交い締めにされて止められる。

 

「いい加減にしろガキが…………!」

 

「くっ………」

 

「うぉぉぉぉりやぁぁぁぁぁっ!!!」

 

その絶好のチャンスを逃すまいと疾走してくる敵の一撃を、

 

「はっ、」

 

「ぐっ!!!」

 

上げた右脚で弾き、左足で蹴り飛ばす。

 

「ぐぁぁっ!!」

 

「せぇぇぇっ、」

 

「うぉっ!?」

 

そして腕を上に挙げて細長くなった体勢で高速を抜ける。

 

「どぉぉりゃぁぁぁ!!」

 

「ぐぉぉぉっ!!!」

 

そしてバク宙しながら私は拘束してきた巨人の頭部を蹴り抜いた。

 

「ご…………、」

 

まだやる気か。

 

「ウォぉぉぉぉぉ!!!」

 

振り下ろされる太すぎる腕。

 

「よっ、はぁっ!」

 

真後ろに飛び退いてから発頸を食らわせる。

 

「ごっ………!!」

 

「ふっ、はっ、せっ、てっ、はぁっ!」

 

腹に連続で拳をめり込ませて確実に体力を奪っていく。

 

「せぇぇぇぇぁぁぁぁ!!!」

 

最後に強烈なキックをぶつけてブロック塀まで吹き飛ばす。

ズドォォン、と大きな音を立てて敵が壁に叩きつけられる。

 

 

──────思い出してきた…………感覚を。

 

 

 

「ぐっ………クソガキ…………ブッこ………」

 

ドサリ、と倒れる。

 

「ま、マジかよ………!!」

 

「む、無理だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

どうやらあの男は相当な信頼があったらしい。

 

「ちぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

もう見るに堪えないと思ったのか姫路自らが飛び込んできた。

常人にはできないほどの高い跳躍からその長い右足を叩きつけてきた。

 

「ぐっ──────────」

 

両腕を交差させて防いだがかなりの距離を飛ばされる。

 

「おぉぉらぁぁぁ!!」

 

私との距離が近くなったため、敵が後ろからやってくる。

突き出された拳を巻き取って瞬時に体を捻り切り、上着を脱ぎ捨てるように投げ飛ばす。

 

「ぐぅぉぉぉぉぉァァァァァァァ!!!!」

 

民家の塀にヒビが入る。敵は一撃で失神した。

………大した事ない相手だが、姫路だけは例外級に強い。

 

「ほんまに役に立たんやっちゃのぉ。もう俺が一人でやったるわ」

 

首の骨を鳴らして背中を反らした後、姫路が凄い速度でこちらへ走ってきた。

 

「うわっ!?」

 

慌てて体当たりを受け流すが、

 

「しぇぇぇぁぁぁぁっ!!!」

 

受け流させるのを前提にしていたようで、突発的な現象になんの対応選択も迫られることなく瞬間的に横蹴りを受けた。

 

「ぐっ!!!」

 

壁まで吹っ飛ばされる。

なかなかの強烈な一撃。一気に体勢を崩された。

 

 

「しぇぇあっ!!」

 

「うっ、」

 

休む暇なく壁目掛けて飛び蹴り。

慌てて逃げ出して避けれた。

全体的に、脚技が強い。

 

 

「ふふふふ!どないや?これがL・H・S(連合副会長・姫路・賽)のフットワークや!」

 

挑発に脚をタップダンスのように動かして何度も立ち方を変える。

挑発というより、とんでもない技術だ。

私でも流石にそんな速度で脚並びを変えることはできない。まさかこの男がそこまでの腕……いや、脚っぷし?を持っているとは思っておらず、今のにはかなり圧倒された。

 

「ほな行くで………必殺技や!!!」

 

そして、姫路はなんと身体を上下逆にひっくり返すと、その状態で脚を開き、プロペラのように回転しながらこちらへ突撃してきたのだ。

回転する脚は体操選手かと思うぐらいに開き、横からだと平行な一本線に見えた。あの技術に加えてこの関節の柔軟性と身体の身軽さ。人並み外れている。

 

「─────────────っ、」

 

これにどう対応しようか迫っていたその時、

急に姫路が横から縦の回転に切り替わった。

 

「なっ!?」

 

「死ねやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

強烈な踵落としが炸裂する。

間一髪の防御がなんとか止めたがいまので体にかかった重圧は凄まじい量だった。

身体が作れていない素人は、防いでも脚が潰れただろう。

 

「こっちじゃぁぁぁぁ!!!」

 

しかし、その防御も予想済みだった。

向こうのほうが完全に一枚上手だ。

また空中でありえない体勢切り替えを行うと私の腹を槍で突くかのように蹴破った。

 

「がはっ………、っ、…!!!」

 

鳩尾に大ダメージを負ったばかりか壁にまで打ち付けられ、口から血が噴き出る。

 

「これで、終まいや!!!!」

 

「ぐぁっ…………!!!」

 

頭を横薙ぎに蹴り飛ばされて、私は地面に転がった。

 

 

 

「ぐっ……………………うっ………………………」

 

脳が……………揺れた……………せいで…………身体が麻痺している。

耳鳴りが酷い、目眩がする…………

 

「がはっ…………」

 

もう一度口から胃液を吐き出す。

 

「ぐっ………………」

 

予期せぬ一撃に脳が対応しきれていない上に不意打ちを受け、しかも急所に入った上に勢いが強い、たぶん今のが全力のキックだ。

それを頭に受ければ…………脳がダメージを負ってしばらくは動けなくなる。

普通に人間の一人程度容易く殺せる一撃だった。

なんとか耐えたが…………そこから先がない。

───────立ち上がれない。

 

 

 

「はっ…………バカな女やなぁ、」

 

胸ぐらを掴んで姫路が顔を近づけてくる。

 

 

「──────はよせぇや………おもんないやろ」

 

「ぐっ…………うっ……うぅ…………」

 

「ボケがぁぁぁ!!!」

 

頬をぶん殴られて私はまた吹き飛ばされて地面に倒れる。

あまりの一撃で眼鏡が飛んでいった。

 

「今や!好きなだけ嬲り殺しにしたれや!」

 

「おらぉぁぁぁぁぁ!!!」

「でぇぇぁぁぁぁ!!」

「うぉぉらぁ!!」

「オラァ!!オラァ!!」

 

「ぶっ…………!!ごはっ………!!ぐっ…………ぅ゙っ………!!」

 

四方八方から殴られ蹴られ、金属バットやらなんやらを持ち込まれてそれで殴られる。

 

なんか…………意識が…………

 

「どけや、最後は俺が決めたる」

 

そう言って姫路が持ってきたのは、ゴルフドライバーだった。

 

 

 

「俺な、趣味ゴルフやねん。実は結構スコアええんやで?俺の華麗なスイング見せたるわ!」

 

「………………………………」

 

「行くで?ホームランや!明日天気になあれ!!ちゃー、しゅー、めぇぇぇぇぇん!!!」

 

容赦なく本気でゴルフボールをグリーンまで飛ばすぐらいのショットを側頭部に叩き込まれた。

 

 

「ごっ………………ぐっうぉ……………………!!!!」

 

 

いまので…………頭どんだけ食らったんだろう…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに寝とんねん!!!はよ起きろや!!!」

 

「ぐっ!!」

 

腹をゴルフクラブで殴られて私は無理やり目覚めさせられた。

 

だんだんとクリアになっていく視界。

 

ふだんのボヤけた視界が、今日は鮮明。

なぜだろう、なぜこんなに見やすいのだろう。

 

 

 

そうか、眼鏡を落としているからか─────

 

 

 

「へへっ、ガキが意気がりよって、結局どぉんな女も最後はこうなるんや」

 

姫路は私の身体の上にまたがってくる。

そして私の着ていた制服に手をかけると強引に破くように前を開く。

 

「ぐっ……………」

 

こいつ、まさか──────

 

「なんやこの小さすぎる胸は!あんた栄養取らなさすぎやろ、ちゃあんと食えや」

 

この…………下衆が……………

 

「まぁええ、確かに女なんて胸だけで決まるもんちゃうよなぁ?しっかり試してみなわからんってことや」

 

今度はスカートを剥ぎ取ってくる。

 

「くっ…………やめなさい………!!」

 

─────そっちは、本当にまずい。

 

 

 

「あはははは!必死やなぁ!でもしゃあないわぁ、俺に逆らったあんたが悪いねんから。ここに居る全員を楽しませるためにも、大人しくしとしや?またゴルフクラブでぶん殴ってこんな上玉の女殺してまうんは悲しいからなぁ」

 

下着に手をかけてくる。

 

 

「ばっ、この………やめ、やめて────!!!」

 

 

「そぉぉぉら!銀子ちゃんのパンツもろたぁ!」

 

 

 

────────あ、駄目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────本当に、駄目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────あ?え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ふぅ…………」

 

「な、な…………な……………何やコレ…………!?」

 

 

 

 

姫路が、慌てて飛び退く。

 

 

 

 

 

 

 

「なんや…………この歪なカタチ…………!!あんた………どないなっとんのや…………!?」

 

 

下着を手放して姫路は一歩一歩下がる。

 

 

 

「眼鏡は?眼鏡どこやった?」

 

俺は下着だけ穿いて、暑苦しいので制服の前だけ全開にして立ち上がる。

あぁ…………胸が窮屈だ。ブラ、邪魔だわ…………

 

 

 

 

「な……………あんた…………」

 

「まぁ良いや【度の入った伊達眼鏡】してても、視界ボヤけるだけだしな」

 

俺は普通に視力1.5あるんだっつーの。

 

 

 

 

 

 

 

「───────おい………何を言うとんのや………!?」

 

「てか俺となんかじゃなくても、そんだけ男いるんだったら一人ぐらいあんたの好み居るだろ?姫路賽」

 

「こいつ………喋り方変わったかと思えばまた生意気言いよって……………」

 

姫路がゴルフクラブ片手に襲いかかってくる。

 

「勘違いしちゃいけねぇよ…………」

 

ゴルフクラブを掴んで止める。

 

 

「────────な………っ!?」

 

そして俺は姫路を睨んで嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺がいつ【本気出してる】つったんだよ?」

 

「ぐぅぅぁぁぁぁっ!!!」

 

ゴルフクラブを奪い取って姫路をブン殴る。

 

 

 

 

「がっ…………女のくせに男みたいな口調してふざけ…………」

 

「男?誰がだよ」

 

「──────────────」

 

 

 

姫路、及びその組員全員が凍りつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────俺、【女だから】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………が……………が……………」

 

 

「だっていま見たろ、生えてねぇし」

 

「で………でも………あれは………」

 

「女って性器それぞれ形違うんだ。男と違ったかなり多様性あるんだよ。それを馬鹿にされるのってさ、俺ら女からしたらご法度なんだよね………あんな気持ち悪そうな顔して下がるってどういう事だよ」

 

「ぁ、だって、あれ…………明らかに手術した跡やろ!!」

 

姫路が必死に俺を指差して何やら言っている。

 

 

 

「あぁ。俺、女なのに、なぜか生まれつきで生えてるから手術したんだよ」

 

 

 

「─────────が…………!?」

 

「他の女は良いよなぁ、あんなでっかい胸あって男にモテモテ、羨ましい。俺の胸、いつまでたっても膨らまねぇからてっきり手術のせいで膨らまなくなったのかと思ったぐらいだよ」

 

「そ、そらそうやろ………?だって、男は胸でかくならへんねんからな」

 

「だからさ………俺は女だって言ってるだろ。俺が女だって言ってるんだから俺の性別は女なんだよ………!」

 

 

 

「ぐぅぅぅぅぉぉぉぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

姫路の懐へ飛び込んでその頬を渾身のパンチで打ち砕く。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

壁にめり込んで姫路はくずおれた。

 

 

 

「女なのに力強すぎてメスゴリラかよ、と思ったことあるけど…………たまには良いことあるんだな」

 

 

 

 

 

「───────く、クソが…………この…………」

 

姫路はポケットの中から銃を取り出した。

 

「死ねやボケぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

「──────うおっと!?」

 

 

俺の顔の横を通り過ぎる弾丸。

 

それは虚空をかすめ────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────は?」

 

向こうから歩いてくる一人の青年に向かって放たれ、

 

 

 

 

「危ない!!!」

 

「………………………………………………」

 

青年が持っていたコンビニのレジ袋の持ち手を切り裂いた。

 

 

 

どすん、と中身が落ちたが青年に怪我はなさそうだ。

ビニール袋の中からオレンジ味の炭酸飲料のペットボトルが転がり出てくる。

それを慌てて掴んで持ち上げる青年。

 

彼は次に、鋭すぎるその眼光で姫路の方を睨んだ。

 

「ひっ………!?」

 

マジか。この人数いて………その中の誰が撃ったのかわかんないのに、姫路が撃ったものだって瞬時に把握した。

しかも、こんなお取り込み中の訳あり団体にその態度を取れる。

 

 

 

 

しかも、和服に雲の模様が書かれた浅葱色の羽織って…………新選組かよ。

 

新選組───────あれ?

こいつ、一般人なんかじゃなくてもしかして…………

 

 

 

 

「な、な、俺ちゃう!俺ちゃうて!ちょ、」

 

 

 

「黙れ、さっき見逃してやったにも関わらず、この俺を挑発しようとでもしたのか?」

 

「な、勘弁してくれや………!!!そんなつもりはな────」

 

 

「もうお前は死ぬしかない」

 

 

青年は虚空の中に一本の十文字鎌槍を出現させ、ジュースを袋の中に優しくしまってから突撃する。

間違いない、あいつサーヴァントだ!

しかも、槍…………ランサークラス!!!

 

 

 

「ちょ、やめ……………っ!?」

 

 

 

姫路の右手が切り落とされる。

 

 

 

「ぎ────ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

「お前、永遠に歩かなくて良いよ」

 

そのまま左右のアキレス腱を完全に切断した。

姫路は一気に立つ機能を失って地面に倒れ伏した。

 

「ふ、副会長─────!!!!」

 

 

 

 

 

 

「───────ふん、雑魚が」

 

槍を担いで青年はビニール袋を拾い、その場を立ち去る。

その隙に俺は落とした眼鏡を回収してかけなおす。

 

「─────────ふぅ、」

 

今ならいけるか。

私は今現れたサーヴァントを追うようにしてその場をこっそりと抜け出した。

 

 

 

ひとつ、角を曲がる。

 

 

「おい、」

 

「ぐっ!?」

 

瞬間、眼の前に槍が現れた。

 

「なに、尾行してるんだよ。お前もアイツみたいにされたいのかよ」

 

「い、いや…………違う」

 

「あとお前ちゃんと服着ろ、女ならもうちょっと胸ガードしろ。俺はどうでもいいが」

 

「ご、ごめん…………」

 

シャツは破かれてどうしようもないのでとりあえずブレザーの前を全部しめてその場しのぎする。

 

「私、さっきアイツらに襲われて。助けてくれてありがとう、」

 

「ふーん。お前アイツらの仲間じゃないのか。地味過ぎて見つけれなかったけどなんか助かって良かったな」

 

「アイツらのこと、知ってるの?「さっき見逃してやった」って言ってたけど」

 

「通行人に語る義理はねぇよ。ちなみにお前、俺を見たやつは口封じに死んでもらわないといけないっていうルールなんだけど」

 

「聖杯戦争の口封じ?」

 

「あぁ。聖杯戦争の基本ルールだ。俺みたいな逸れサーヴァントでもそこはちゃんと守って────は?なんでお前知ってるんだ」

 

「私、すでに負けたけど元マスターだから」

 

「──────────もう負けたの弱っ」

 

それだけは言わないで欲しかった。

あと私は負けてない。裏切られた。

 

「逸れサーヴァント………マスターはいないの?」

 

「いない。いや、居たけど捨てた。俺、仲間とか絆とか大嫌いだから」

 

「───────少し、話がしたいからうちに来て」

 

このサーヴァントを手懐けたら、もしかしたら………仲間になってくれるかもなんて………

 

「意図が丸見えなんだよ。1秒前に言ったんだけど、「友情大嫌い」って」

 

「なんでそんなに嫌いなの?」

 

「信頼できないからに決まってるだろ」

 

「ならいいじゃない。信頼できないと思ったら殺して良い」

 

「お前、一本取った気か?なんのトンチにもなってねぇんだよ。それに俺、今から晩飯だ邪魔すんな」

 

背中を向けてサーヴァントは立ち去る。

 

 

 

「─────あん?チッ、あの無能店員が………割り箸ぐらいつけろよ。インド人でも冷麺素手では食わねぇよ」

 

「──────うち来る?お箸ぐらいならあるよ」

 

 

 

 

「……………………………気に入らなかったらすぐ殺す」

 

やった、味方ゲットだ。

 

「私、円堂銀子。あんたは?」

 

「名乗る名前はねぇよ」

 

「…………じゃあ、谷さんで」

 

「は?」

 

「浅葱色の羽織は新選組。十文字鎌槍といえば宝蔵院流槍術。その2つを合わせて考え付く大英霊といえば、新選組七番隊隊長、谷三十郎の一択でしょ」

 

「スパイアーだ、殺すぞ」

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです、いつも読んでくださってありがとうございます。マジカル赤褐色です。

銀子の正体───それは「性自認が女性の男性」です。

完全解説いたしますと、銀子は元々男で産まれましたが、生まれながら女の子の精神で生まれています。
なので身体的特徴が男性のものであることに疑問を抱いた銀子は幼い頃に性転換手術を受けて心も体も女性のまま成長。
銀子のまな板設定────実はこれ完全なる伏線でした。
しかし手術したのは男性器切除だけであり、その他の肉体は男性のものとして成長しています。そのため、女性とは思えない戦闘能力を発揮したりすることができ、肉体に伴い脳構造やホルモン量もわずかに男性寄りなため、女性的な性格と精神でいながらどこか中性的な物言いをしたりするのも全てがここに繋がっています。
いやーなんか、型月でマイノリティの主人公ってめちゃくちゃ面白そうだなぁって思ってやってみたら設定が思いのほかハマっちゃいました。
眼鏡の事や急に現れる男性的な人格についてはまだ不明点が多いんですが、銀子の一番怪しかった部分は片付いたと思います。
ですがこれだけは言わせてください、銀子は女の子です。
あとこれは社会的な風刺とかそういう意味いっさい無いです。ただのキャラクター設定です。

なんか谷さん………スパイアーが今度また活躍しそうな気がしますね。
スパイアーね、作っててめちゃくちゃ楽しいキャラでした。
めっちゃ口悪くて愛想がないんですけど、作者的には愛想なくて嫌味ばっかりのキャラって結構好きです。
実は時雨の半身スパイアーに来てます笑
時雨の元ネタ、見た目は時雨、性格はスパイアー。
誰かみたいに「世の中クソだな」とかいう名言発しそうな感じで。
銀子の真名看破能力はたぶんルーラー級()
これに関しては別になんか特殊能力がとかじゃないですからね。ただ単に銀子が歴オタなだけですから。
一気に動きが出てきましたね、こっからの展開、怒涛のものになっていきますよ〜

次回からもまたお楽しみに!

完全版 好きなサーヴァントは?

  • 非正式セイバー(三度笠セイバー)
  • 非正式アーチャー(紬アーチャー)
  • 非正式ランサー(ランサーお爺)
  • 非正式ライダー(アンザスライダー)
  • 非正式キャスター・オベロン(妖精王)
  • 非正式キャスター・リアン(妖精妃)
  • 非正式アサシン(遠野志貴)
  • 非正式バーサーカー(アルクェイド)
  • 正式セイバー(姫セイバー)
  • 正式アーチャー(モンゴルアーチャー)
  • 正式ランサー(ケイアスランサー)
  • 正式ライダー(エインスライダー)
  • 正式キャスター(リィンキャスター)
  • 正式アサシン(見えないアサシン)
  • 正式バーサーカー(メイドのバーサーカー)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。