かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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5日目 Fate/DisOrder
第五十九章 友の裏切り


 

「………………………………」

 

目が覚めた。

なにか、凄く悪い夢を見ていたような気がする。

 

「気持ち悪い、」

 

血なまぐさい、そして腐ったように残酷な夢。

しばらく考えてみたが、どんな内容の夢だったかは忘れてしまったようで。

でも、どこかの誰かが死ぬ夢を見たような…………

 

「寒ーっ、」

 

秋の終盤もなにも、冬場入りを果たした11月20日。

早朝の山は辺りが一気に冷え切り、エアコンもない私の部屋の暖房器具は布団かしかない。

リビングに行けば安物のエアコンとこたつ、厨房へ行けば竈の炎があるんだけど。

この時期の寒さは夏の暑さとはまた違う意味で生きる事をやめたくなる。

私はどちらかというと夏の方が嫌いだ。ひっきりなしにかく汗で服が濡れて気持ちが悪い。

だから冬派なのだが、冬の朝は起きれないのでそれはそれで苦手だ。

寒いから起きたくない、し………二度寝したら一気に熟睡してしまう。

仕方なく寒さに耐えながら無理やり身体を起こして、寝巻きにプラスしてそこのハンガーにかけてあった半纏を着る。

 

布団を丁寧に畳んで部屋を出ようとした時に、外で物音がするのを聴いた。

 

「……………?」

 

障子を開いて縁側に出る。

あたりは寒さのせいで霧が出て見にくくなっている。この山で霧が出るのは普通ではあるがなんだか例年に比べて出るのが早い。

 

「────────────」

 

その霧の中に、私は人影を見た。

男が上裸で槍を振り回す姿。

それは、スパイアーが槍を振るう姿だった。

何もない方向に向かって振りかざされる槍。

どうやら朝から鍛錬に励んでいるようだ。サーヴァントになれば強さとしては十分なのに、こんな朝から一人で鍛錬を積んでいる。

必要かどうかというより…………当たり前の習慣なんだろう。

セイバーがずっと刀のことしか考えていないのを思い出した。これはサーヴァントとして、いや。英霊スパイアーとして勝手に身についたルーティンなのか。

 

──────しかし、少しだけおかしな点があった。

 

鍛錬ならばただ槍を素振りしていれば良いものを、彼は前後左右に動き回りながら槍を振るう。

急に背後に飛び退いたり、転がったり。

あんまり今の時代で言うのは良くないような差別用語で呼ばれてもおかしくないような動きをひとりでやっている。

私は見ているうちに、スパイアーが誰かと戦っている事に気付いた。

敵ではないしマスターでもサーヴァントでもない。

彼がイメージしている、目の前の敵と戦っている。

一応武道はかじってきた身だ。いつ彼が防ぐ動きをしているのか、彼がどのような攻撃を避けようとしているのかだいたい見ててわかってくる。

 

 

 

「────────────」

 

 

 

スパイアーの前には、女がいた。

この場には居ない、彼だけのイメージの。

私はスパイアーの動きを見ているうちに、彼の投影した敵の動きや姿を捉えられるようになっていた。

武装の把握まではいいとして、その人物の容姿まで解ったのが何故かはわからないが。

 

彼と同じような浅葱色の羽織を着た白髪の女が、黒髪のスパイアーと戦っている。

あれ?スパイアーって白髪だったような…………

そういえば今朝からずっと黒髪だった。

 

……………まぁ、いいか。

 

白髪の女は刀を持ち、スパイアーの槍と真っ向から打ち合っている。

スパイアーの槍も大したものだが、こちらの剣術も素晴らしい。

しかし私には疑問があった。なぜ、この女とスパイアーが戦っているのか。

なぜスパイアーは、この女を敵にイメージしたのか。

 

───────スパイアーと敵の距離は大きく離れた。

次の瞬間、スパイアーは敵が何もしていないのに横に咄嗟に飛び退いた。

その行動の意味が私にはわからなかった。

 

刀の絶対に届かぬ間合いから攻撃する手段が女にはないはずなのに。

それを躱したスパイアーの行動はなんだったのか。

 

私には、まだその意味がわからない。

 

女には遠距離からスパイアーを攻撃する何かしらの手段を持っていたのか。

それもわからない。今の私は彼ではないのだから、彼が今何をしているのか、誰と戦っているのかなんて私たち二人のイメージが100%一致することなんてない。

 

そう思っていたらスパイアーが槍を下ろしてこっちへ歩き出した。どうやら終わったみたいだ。

彼は普通な顔をして戻ってきた。イメージトレーニングの結果はどうだったのか…………少なくとも勝ったようには見えなかったが。

 

「朝早いな、お前」

 

細身の彼からは想像もつかない恵まれた体躯を惜しげもなく見せてスパイアーは私の前に出てきた。

 

「おはようスパイアー。朝から鍛錬でもしてるの?」

 

「あぁ、生前からの習慣だ」

 

そうか、そういえば谷三十郎は槍の達人だった。

道場で師範を務めていた時期もあったという事だ、師範たる者として自分磨きは欠かさなかったのだろう。

 

「なんか激しく戦ってたけど………誰なの?あの人」

 

「野良の維新派だ」

 

「………………………………………」

 

いやいやいや。同じ服着てる時点で絶対に違うでしょ。そういえばスパイアーの服って他人にコーディネートされたんだっけ。

 

「あ!もしかして彼女さん?」

 

スパイアーの沈黙と共に周囲の時間は凍結する。

私は決定的にやらかしたな、と思った。

 

「ふ…………」

 

スパイアーは柄にもなく笑う。

 

「あはは………」

 

それにつられて私も笑う。

 

「あはははは!!」

「ははははは!!」

 

二人で大笑い。

 

 

 

「────────」

 

フンッ、って音がした瞬間。

 

「ん?」

 

私の目の前に小さな毛がひらひらと舞っていた。

手に乗せてみたら…………まつ毛?

 

「──────はあうっ!!!???」

 

「──────ぶっ殺されたいんかお前」

 

槍で目を一閃されたみたいです。

まつ毛1本だけ切り落とされました。あと数ミリで眼球アウトだったのか。

 

「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」

 

連続で土下座。

音も予備動作もなくまつ毛を………あと一歩で私の両目失明のラインを槍で切り裂くなんて。

しかも私眼鏡だから、眼鏡のレンズと眼球の間に槍を通してまつ毛切ったってことだよね?

あまりにも正確すぎる槍さばきに恐怖より先に驚愕が出た。

 

「クソガキはさっさと飯食って学校行く準備しろ」

 

「はい────!!!!!」

 

私は大急ぎで部屋の中に突入して学校へ行く準備と朝食の支度を整えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────俺が言う事はねぇがお前テレビ見ながら飯食うって行儀悪いな」

 

「えー、悪い………?」

 

ここの家主は私なんだからマナーやルールは私の基準だ。

基本的に食事マナーには気を遣ってる私だが、テレビは見ます。

だって、慌ただしい朝に座ってじっくりテレビで天気予報確認する時間なんてない。ながらで見ないとやってらんない。

 

 

「あっ……………」

 

 

朝のニュースに映し出されていた建物はこの付近にある総合病院だった。

氷所正親との戦闘で多数の死者が出た。その話で持ち切りのようだ。

 

「──────────────」

 

冷織ちゃん…………どうしてるんだろう。

やっぱり、そんな事があったら嫌だよね。

 

「なんだ、病院で殺人事件か?物騒だな…………お、1日降水確率ゼロだぞ。良かったな」

 

「うん…………」

 

「ところで、今映ってるヤツは誰だよ。病院関係者か?」

 

スパイアーはお箸で白飯を口に運び飲み込んだ後に言った。

私は魔力が少ない。気を利かせて魔力供給の少ない代わりに食事で補ってもらおうと今日の朝ごはんにスパイアーを招いたのだが「朝から白飯、味噌汁、コロッケ作るってお前どんだけ暇なんだよ」と悪口を叩かれた。ありゃひどかった。

ただ、食べ始めて開口一番に美味い、と言ってくれたのはけっこう照れた。

いつも憎まれ口ばっかりの彼がナチュラルに褒めてくるとは相当自分は料理の才能があるのだろう。それか彼がコロッケ好きなのか。

昨日から思ってたんだが彼はけっこう食生活が幼い。強いて言えば冷麺は渋いが抹茶のアイス…………プリン…………次はコロッケときたか。

この様子じゃおそらくというか確実にハンバーグも気に入るだろう。今度作ってみるか。

 

「たぶん、そうじゃないかな?」

 

スパイアーが指さしたタイミングでは、画面の中に病院の外装を背に一人のアナウンサーにインタビューを受けていた一人の人物がいた。

黒いセクシーなブラウスの上から白衣を着た一人の女性で、紫色の髪にミラサンをかけていた。白衣ってことは病院関係者なのだろうが………

 

『桜さん、今回の事件の目撃者とのことですが、事件の状況はどんなものだったんでしょうか?』

 

『はい。私はこのエントランスに居た時、突然病院の奥の方から眼鏡をかけた女子高生と笠を被った男性が現れたんです』

 

──────待った、この証言おかしくないか?

眼鏡の女子高生と笠の男…………昨日の私とセイバー?

 

「あ?こい…………いや、そんなわけねぇか」

 

昨日の私の細かい事情を知らぬ、まさか私がその女子高生とは思わぬスパイアーがテレビ画面を睨みながら首をかしげる。

 

「え?どうかしたの?」

 

「いや…………この女医に似てるやつを知ってただけだ」

 

「え?それって…………」

 

「お前も見覚えがあるだろ、なんとなくこいつは姫バーサーカーだ」

 

「ストップ!?」

 

いま、彼は何と言った…………?

姫…………バーサーカー…………?

 

「なんだよ………知らないのか、」

 

「姫バーサーカーなんて、そんなサーヴァント初耳なんですけど!」

 

姫ってどういうこと!?

てか、バーサーカー…………!

 

私の脳裏にアンナ・ステパノーヴァナ・デミディヴァの姿が映った。

30回殺されるまで死なないというバーサーカー。

アレがバーサーカーで、もう一騎のバーサーカーは…………この女性がか?

 

「な、なんでサーヴァントがテレビに出演してるの!?」

 

「んな事は俺が訊きたいんだよ」

 

『女子高生たちは先に一人の病人と5人の一般人を病院から追い出した後、二人で病院にいた人たちを虐殺したのでしょう。ほんとうに、なんとも惨たらしい事です………』

 

5人の一般人、間淵くんと淑恵………それから幹太さんと麗花とアーチャーか………

なぜ、私たちが犯人になっている?

そもそも、病院にいた一般人の虐殺ではなく氷所の身内争いによる惨劇だ。

監視カメラの映像と一切照合しないような証言がテレビで使われてる…………なぜだ?

 

「相も変わらず世の中クソだな。どいつもこいつも………」

 

「────────────」

 

学校が終わったら麗花に相談に行かないと。

このままじゃ…………もしこの人の言っていることが本当ならば、私は聖杯戦争どうこうよりまず警察に捕まる。

こんなショボい理由で敗退するわけには行かない。

必ず、この姫バーサーカーを捕まえて真実を明らかにしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【琴女高校】

 

 

(遅っ、刻っ、しろー。遅っ、刻っ、しろー)

 

うーん、最悪こいつ。

 

(大丈夫、20分前だから遅れない)

 

(先生には時間厳守については酸っぱく言われたな)

 

(師範だったのに先生がいるの?)

 

(当たり前だろ。師範だから学ぶことがないなんてそういう事じゃねぇ)

 

校門を抜けて教室に向かう。

 

(そういえばスパイアー、この学校には私以外にもう一人マスターがいるの)

 

(ふーん。それがどうした)

 

(もし、マスターと思われる人間がいたらそいつの行動に警戒して)

 

生徒会長、晴燕寺新嵐…………

どこからどう攻めてくるかはわからない。

正式アーチャーの襲撃がいつ来るかもわからないこの状況、昼間の学校だからといって背中の警戒を怠ってはならない。

 

(警戒する必要はねぇだろ、見つけたら即刺殺すりゃ良いだけだ)

 

バカなのか!?

 

(いや、流石に一般人の前で殺しはできないわよ!)

 

(誰も見てない所で殺せば良いだけだ。別にお前が手を下す必要もないんだよ。一般人に分かるような証拠が残らないようにするためにサーヴァントに掃除を任せるのは当たり前だろ?一般人にはサーヴァントの存在なんてわかんねぇだろうし、仮にもしわかるんだったらそいつは聖杯戦争関係者だからまた殺す。連鎖的にマスターを炙り出して一網打尽にするチャンスだろうが。もっと考えて頭使えよ、お前高校生だろ)

 

(私はただ生き残るためにあんたと(イヤイヤ)契約したのよ。人を殺すつもりはないから)

 

(聖杯戦争を生き残りたけりゃ勝ち残るしかない。聖杯を取れるのは勝ち残ったただ一組のみ。勝ち残りたきゃ他の連中を負かすしかねぇだろ)

 

スパイアーの言い分はもっともだ。

だが、私は人を殺すつもりは毛頭ない。

 

(それはサーヴァントの話。サーヴァントを失って令呪が消失した時がマスターとしての敗北なんでしょう?なら、それでいいじゃない。すべてのサーヴァントを倒して、あんたを最後のサーヴァントにしたらこっちの勝ち)

 

(あのな、お前。俺の事をなんにもわかってねぇからそう言えるんだろうが俺はただの武士だぞ?外国の英霊と戦ったりするのは無理だからな?日本のサーヴァントはともかく、外国のサーヴァントは俺でも楽に勝てない。どうあれ聖杯戦争に喚ばれるサーヴァントっていうのは最強の英霊の集まりだからな。それを一体一体潰していくより、マスターという全裸のコアを叩けばどんなに強いサーヴァントも即死する。マスターを殺すほうが効率がいい、効率が良いってことはお前のかねてからの願いである「生き残る」確率が高くなるってことだ。お前は矛盾してるんだよ、生き残りてぇ、って口先では言うくせに、生きるためにやらなくちゃいけねぇ事から目を背けてる。一番お前が先にやらないといけねぇことは近くにいる味方以外のマスターを全員殺すことだろ?)

 

スパイアーは口が悪い。しかし、彼の言っていることは的を射ていた。

私は生き残ることが最大の目的であると言いながら、聖杯戦争で勝ち残るしか方法がないとわかっていながら、勝ち残るためにはサーヴァントを倒さなければならないとわかっていながら、サーヴァントを最も楽に撃沈させる方法をしようとしていないのだ。

私は人殺しをするのが嫌いだ。だから、やりたくない。

サーヴァントを殺すって表現のも嫌なぐらいなのに。

 

(ま、バカは死んでも治らねぇか。それに、学校の誰がマスターかなんて簡単にはわからねぇ。見つけてもいない他のマスターの話をしても仕方ねぇな。ま、警戒態勢整えとくのには賛成だ。怪しい動きをしているようなヤツがいたら教えてやる)

 

……………本当は、私はそのマスター正体をとっくのとうに知っているのだがその存在を明かしてしまえば今すぐ殺しにいきかねないスパイアーを横につれている以上口を開くことはできない。

スパイアーを裏切る…………とは言わないが、必要な条件を騙し騙し隠しながら立ち回るしかない。

自分に知っていることを黙っているとなると、彼は怒るだろうか。

いや、分かるのか。彼はいつも最悪な事しか考えない。だから、私が陰ながら彼を騙していることも想定内なのかもしれない。

まぁ、実際白昼堂々とマスター殺しに動かないことはなんのデメリットもない。

黙っていることは何も悪くないはずだ。

 

(もうすぐ教室につくから。あんたはここから迂闊に動き回らないように)

 

(霊体化中に余計なことなんてしようがねぇだろ)

 

そうして私は授業始まる前になんとか教室に到着。

 

 

 

「おはよーっ!ギンコー!!!」

 

手をぶんぶん降りながら淑恵が飛び込んできた。

ちゃんと挨拶はしてくるのは偉いが、どうも落ち着きがない。何かあったのだろうか。

 

(なんだ、敵襲か!?)

 

(バカ!友達よ友達)

 

友愛が大嫌いな彼に思いっきり強調してしまった自分に後悔する。

 

「おはよう淑恵。どうしたの、そんな焦って」

 

「たいへんだよーっ!こっしーのテスト返却、今日になるって!」

 

「ま、マジで!?」

 

「うん!だよね、間淵くん!?」

 

淑恵が後ろを振り向くと、カツカツと足音を立てながら間淵くんがやってきた。優等生である彼にテスト返却なんて畏怖するまでもないはずが、今日だけは額に冷や汗が浮かんでいる。

 

「あぁ………御子柴殿の直々の連絡だ。誤りはない………!」

 

こっしー、とはうちの学年で数学二類を担当している御子柴先生のあだ名だ。

聖杯戦争に巻き込まれてセイバーに出会う数日前、中間テストが繰り広げられていたのだが、毎度毎度御子柴先生のテストは超高難易度。

1年生の数学一類の時から連続で担当を持たされたせいで2年全生徒が泣き寝入りしているのだが、それも許さぬ激ムズテストの攻撃。

うちの高校で追試なんて滅多にないのだが、今年度一学期の数学二類追試者はなんと怒涛の19名。

そしてその中にはそこの淑恵とこの私が含まれている。

私の成績は至って普通だが私は社会系教科こそあの常にトップ2を張り続ける間淵くんに対して無敗を轟かせている一方で、とにかく数字にめっぽう弱く、化学と数学と物理は散々な結果を毎度たきつけられる。

1年生の頃は辛うじて赤点ちょくちょく取る程度で済んでいたが2年でついに初の追試を経験した。追試のテストを受けている最中のプレッシャー。「これミスったら単位落ちるぞ」と心のなかで訴えてくるもう一人の自分と、そしてその苦しい現実と向き合うこの辛さ。

 

「間淵くんもヤバイの!?あの間淵くんが焦るとか、あたしとギンコなんて絶対死んだけん!もうオワタわぁー!」

 

「勝手に私を入れないで!?」

 

お宅追試一学期で5個もあったでしょうが!

数学B、数学二類、化学、物理、歴史総合の5つ!

古典と英語はできるんかいお前。

 

学期における中間と期末の両方の試験で赤点を取ると追試になる。

うちの高校での赤点の定義は「平均点の2分の1の小数点以下切り捨てした点数未満の点数」のこと。

つまり平均73点の時は36.5の切り捨て36点未満が赤点になるという事だ。

平均点が低いほど赤点の基準は甘くなるが、当然成績が振るわないものは余計に点数が下がるだけであり、赤点に代わりはない。

常にこの点数以下が赤点というのが普通だと思うのだが平均点の半分という計算の仕方をするというのは今では珍しい。

 

「っと、噂をすれば………だ」

 

間淵くんがそう言うと教室の扉を開けてその例の御子柴先生がやってきた。

 

「よし、生き残ろう」

 

「健闘を祈る」

 

「生きてたらまた会おうね」

 

3人揃って円をつくり、その真ん中にお互いの手を突き出して左右両手を交互に平手、裏拳、掌底、拳で連続グータッチして共に生存の誓いを交わす。

 

「じゃ!がんばろうね銀子、間淵くん!」

 

「第1目的は生存だ、互いを信じ合え」

 

「うん、じゃあね」

 

私も意を決して席に着く。

 

(なんつーか、お前らからは友とも仲間ともまた違う不思議な絆があるな………)

 

未知の関係を見たスパイアーは呟くように小さく言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「円堂、身体から色が抜けてるぞ」

 

「大丈夫だよ銀子!私も赤点だったもん!仲良し」

 

平均点は58点。

対して、私の点数は26点。

何度も計算したが26を2倍してもなかなか58には届かない。

私は掛け算が苦手だ。26を2倍にすれば60ぐらいは行くはずなのに。

ちなみに「こいつには勝てる」のボーダーラインだった淑恵が28点なので文句なし堂々の私の敗北だった。

そして私より点数の高い淑恵が赤点である以上、どうあがいても私の赤点は決定してしまったようだ。

 

「79点…………危ない所だった、」

 

「ギンコー、こいつころそ?」

 

「うん」

 

人が赤点取って泣きそうになってる所を赤点の人が励ましてくれてるのに平均以上、しかもおそらくトップ5には入ってるその点数の奴が口出しするな。

 

「いやいや、俺も初の敗北を実感したよ。体育の実技以外でトップ5未満の成績を取ったのはこれが初だ………安堵というより自信までついていたんだが、やれやれ………この上を行くとはどこまで熱心に勉強したのか。俺もまだまだだ………」

 

「黙れお前ころすぞ」

 

「帰れ優等生」

 

なぜか成績優秀者なのに次々と飛んでいく罵詈雑言。

 

 

 

(スパイアー、あんたの言う通り仲間って信用できないわね)

 

今になってからようやく彼の言葉が理解できた。

 

(いや、そういうことじゃねぇんだよ………)

 

そしてこの日が、スパイアーの困り声を初めて聞いた貴重な1日となるのだった。

聖杯戦争から生き残れたとて、次は追試の魔の手から逃れるために戦わなければならないのだろう。

 




いつも読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
今回のエピソードではなにやら本編の核心に迫る大事な情報もあり、そしてメインは学校あるあるですね。
今回は日中エピソードなのでネタ要素が強いです。

さて、話は変わりますが………真面目な話なんですが次回を以てしばらく私マジカル赤褐色はしばらくの間活動休止期間に入らせていただきます。理由は色々あるんですがとにかくリアルの忙しさが最大の原因です。
期間については次回決定次第お知らせいたしますのでその間はご協力お願いします。目安としては来年の頭までって事にしているんですが……もしかしたら延長もあるかも。
ま、次回までは投稿するのは決定しているのでそこまでは頑張りたいと思います。というより、今年は忙しいって前々から言ってありますからね。
というわけで、おそらく次回で今年最後になりますが、改めてご協力のほどよろしくお願いします。

完全版 好きなサーヴァントは?

  • 非正式セイバー(三度笠セイバー)
  • 非正式アーチャー(紬アーチャー)
  • 非正式ランサー(ランサーお爺)
  • 非正式ライダー(アンザスライダー)
  • 非正式キャスター・オベロン(妖精王)
  • 非正式キャスター・リアン(妖精妃)
  • 非正式アサシン(遠野志貴)
  • 非正式バーサーカー(アルクェイド)
  • 正式セイバー(姫セイバー)
  • 正式アーチャー(モンゴルアーチャー)
  • 正式ランサー(ケイアスランサー)
  • 正式ライダー(エインスライダー)
  • 正式キャスター(リィンキャスター)
  • 正式アサシン(見えないアサシン)
  • 正式バーサーカー(メイドのバーサーカー)
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