かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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第六十一章 リザレクシオン

 

「貴様…………!!!」

 

「オラよっ!!!」

 

 

そこで繰り広げられていたのはサーヴァントどうしの戦い。

片方は新選組きっての槍の達人、谷三十郎。

片方は蒙古の名を轟かせた豪将、チンギス・カーン。

 

チンギス………アーチャーの矢をスパイアー谷三十郎が次々と弾き返していく。

長い槍を軽々と振り回すその様子は雑兵を蹴散らす無双の武将のごとし。

アーチャーの射撃は正確なものだったがそれ以上に、スパイアーの槍が優れていた。

 

 

「その程度で英雄気取りかよ。やる気あんのか?」

 

 

距離を詰めたスパイアーがアーチャーを蹴り飛ばす。

しかしそれを軽くいなしたアーチャーは腰から吊るした軍刀を振るい、スパイアーへ果敢に斬りかかる。

高速の槍突きを横に潜り抜け、その合間から目にも留まらぬ神速の斬撃を放つ。

 

背中を反らしたスパイアーの顔を掠めようとする横薙ぎの刃。

槍はリーチで刀より優れているが、そのぶん打ちこんだ後に槍を引くぶんの隙が生まれる。そこをアーチャーはのがさない。

 

背中を反らした時に一歩後退したスパイアーの左半身へ向かって2つの突き。

しかし、スパイアーは槍を引きながら柄でその剣撃を防いでしまう。

そして冷静にバックステップで自分の有利な間合いへと離す。

 

 

「ジンギス・カーン、ねぇ…………『男の快楽は敵の女を目の前で寝取ることだ』とかいうアホみたいな迷言があるってやつ?」

 

「…………………………」

 

「矢を主軸にした射撃戦からの至近距離に持ち込まれてからの素早い切り替えの剣戟。首を狙う一刀。そして後退を想定しない可能な限り武器の先端から繰り出される攻撃と、回避の逃げ道を限定させて、鎧の隙間となる脇腹を狙うかのような突き…………おおかた六韜か三略の兵法に平安式の一対一を想定した武術の合わせ技ってところか?」

 

「…………………ふん、」

 

 

スパイアーはこの一瞬の対峙だけでアーチャーの立ち回りを看破した。

その表情に焦りはなく、余裕さえも見られる。

一方のアーチャーにも余裕は十分。まだ両者ともに準備運動の段階か。

 

 

「鬼一法眼三略か…………チンギスハーンに鞍馬天狗ってややこしい組み合わせだな。そういや、チンギスハーンの正体は牛若丸だったとか、俺が生きてた時もよく言われていたよ」

 

「ずいぶんと博識ではないか。そなた、軍学を修めた者か。…………いかにも。妾が真の名は源九郎義経。だが、私は源九郎義経という名を譲り受けた単なる1人の武将に過ぎん────義経殿から鞍馬天狗の教えのその全てを託され、妾はあの方を置いて奥州よりさらに北へと流れた…………あのお方の戦いと、その伝説は海を越え、大陸にまで及んだ。そして妾こそが、その伝説を引き継いで英霊と化した存在…………」

 

「そっか。だからなんだよ、義経の名前を引き継ごうが、お前が弱いなら話は変わらねぇ。別にお前の正体が何であれ、俺は目の前にいるサーヴァントをぶっ殺すだけだ。銀子とかいうバカの末路みたいなクソ女は俺にマスターを殺すなとしつこく言っていたが、サーヴァントに関してはついさっき殺せと命令された。俺は何が何でもお前をぶっ殺すさ」

 

「それはどうだろうか…………そなたは何か勘違いをしておるようだが…………私は牛若丸の御名を襲名しただけの者であり、私はそれ以上でもそれ以下でもない…………」

 

 

アーチャーは羽織を閃かせて爆弾を投擲した。

 

 

「ふん、」

 

 

スパイアーは見向きもせず爆弾を平気で叩き落とす。

その瞬間に廊下で爆発がおこる。

 

 

「六韜兵法も三略兵法もすでに先生の元で学んだ。てつはつの爆発も初めて拝んだがそれももう2回目はいらん。そしてお前の弓も剣も面白くない。だからお前をこれ以上生かしとく意味がない。そろそろ消される覚悟はできたか?」

 

 

スパイアーは立てていた槍を構えて腰を落とす。

無駄話はここまで。これよりスパイアーは本気でアーチャーを殺しに行く。

本気の時間だ。

 

 

「貴様はどうやらどうしようもないほどの飽き性のようだ…………ならば見せてやろうではないか、私の誇る唯一にして最高の宝具を」

 

 

煙の中からアーチャーの声が反響して聞こえてくる。

スパイアーには彼女の姿が見えない。しかし、全く焦りは見えない。

 

 

「主からパクった八艘飛びか?」

 

「いや………【私】にはあのような神業など譲られたところでできはしない。まさか技そのものが宝具になるとは、あのお方は偉大だ………だが、私にも、あのお方には無いものを持っている………!」

 

 

 

「───────────」

 

 

スパイアーは警戒態勢に入る。

一体どのような宝具が飛んでくるのか、楽しみにしながらも注意はする。

その時、スパイアーの正面の煙が切り裂かれ、巨大な炎の槍が飛来してきた。

 

 

「…………………ッ!」

 

 

前に出した槍が炎を防いだ。

 

 

「─────来るか、アーチャー!!!!!

 

 

 

───────ブーレラ………!!!!!」

 

 

スパイアーの槍に炎が灯る。

今のは元素変換魔術の簡易詠唱────炎属性の魔術を詠唱し、発火させた炎の魔力を槍に流し込んだ。

炎で燃え上がる赤い穂先を手に、スパイアーは自ら煙の中へと飛び込む。

 

高速で突き出される槍は白い煙を切り裂き、その中にいるであろうアーチャーの心の臓を噛み砕きに行く。

ズドォォォン、という音とともにスパイアーの槍はその奥に見えた黒い人影の芯を貫く。

スパイアーは明らかな手応えを感じた。この一撃は致命傷、並のサーヴァントならば死は避けられまい。

 

しかし───────

 

 

 

 

 

「それでは甘い、その一撃では、我が心臓は落とせんぞ、スパイアー!!!!!」

 

 

スパイアーは煙の奥から知らぬ人影を見た。

そして周囲に立ち込める煙はたちまち焔の壁ととなり、スパイアーを取り囲んだ。

 

 

「バカな…………こいつはまさか…………!」

 

 

「行くぞ、我が宝具を見よ…………

 

────我が心臓、我が肉体、我が魂。

 

我が主の伝説と共に、永遠にあり。

 

万物の根源、普遍たる真理、

そして開闢を謳う、星の息吹。

 

我が血、暁へ施し、今最果ての海へ翔び立たん!」

 

 

「クソが……………聞いてねぇぞ、お前は………!」

 

 

スパイアーは決定的に嫌な予感を察知して廊下から外へ逃げようとする。

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

「畜生遅かったか…………!!!」

 

 

 

王臨を告げし、絢爛たる五色の瑞翼(リザレクシオン・ラ・インペリスハブル)!!!」

 

 

 

 

 

アーチャーから溢れる焔の柱が天を貫き、床を抉る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────琴女高校三階の廊下は瞬く間に崩壊した。窓からどこへとも飛んでいくオーロラ。太陽の表面より立ち登るのプロミネンスような焔の帯が空を覆う。

空は昼の晴天から緋色に焼き付く黄昏へと切り替わる。

太陽の光すらも覆い隠す焔の空。

世界そのものが切り替わったようだ。

学校の廊下より噴火のごとく噴き上がる炎柱。

 

学校の校門を焼き払い、その周囲すらも炎の壁に閉ざす。

それほどの熱量と勢力と大きさとを併せ持つ魔力が、聖杯戦争に留まらず民間の街へと放たれた。

 

それは晴燕寺の張った魂喰らいの結界をものともせずに破壊しつくし、それを糧にさらに勢力を広げる。 

町全体の外気温は摂氏48度に到達。

 

全体がサウナとなったこの街に、生命という生命の生存は許されない。

 

 

 

学校を少し離れた空中に浮かぶ姫セイバーとそれに抱かれて空を飛ぶリカルド・アルゴノーツは世界の変貌その一連を眺めていた。

 

 

「凄いですわね、これ…………」

 

「えぇ…………あのアーチャーも舐められたものじゃないわよ。最初はチンギス・ハーンというただの優れた武将だと思っていたら…………もはや義経もチンギスハーンも関係ない存在とはね。これほどの魔力、初めて見たわ…………それに、これを召喚できる晴燕寺も凄い魔術師なのね」

 

「マスター、これは…………まるで…………」

 

「えぇ。世界を滅ぼしかねない………【竜に匹敵する幻想種の魔力】ね」

 

「この力は……………」

 

「ここは一時退却ってところかしら…………残念だけど、校舎の中の生徒はおそらくまもなく全員焼死ってところね」

 

「あとはあのスパイアーと契約した女子高生ですが…………」

 

「さすがに死んだんじゃないかしら…………まさかこの灼熱で生きていられるとは思えない。姫、少し離れた場所で様子見を行うわよ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん…………【この階の生徒は全滅】か」

 

 

校舎を飛び出し、校庭に飛び降りたスパイアーは跡形もなく焼け落ちた校舎の三階を見て冷静に言った。

 

 

「クソが、俺の想定の一方上を行きやがって小癪な」

 

 

焔の中から現れたアーチャーは先ほどと全く別人のような見た目をしていた。

豪奢な兜も鎧も解除され、羽織と装束だけの無防備な姿で現れたが、その姿でも圧力と威厳と魔力だけは先ほどの比にならない。

身体中を焔の渦が取り囲んでいる。

龍宮に住まう姫の羽衣のごとく、焔がまるで服であるかのようだった。

 

そして背中には炎で編まれた虹色に煌めく巨大な翼が左右三対。

 

 

「源義経伝説を語られ、北方へ翼で飛び立ち、新たなる新天地にその伝説を継承した「英霊チンギス・ハーンの誕生を謳った瑞鳥」…………それこそが、この私の正体………!!」

 

 

「【鳳凰(フェニックス)】か…………俺はついに伝説の生き物とやり合うことになるのかよ」

 

「我が肉体は不滅の焔…………貴様の槍の一本二本では…………斃れん…………!」

 

 

スパイアーに貫かれた胸の傷はふさがり、瞬く間に新しい肉と皮膚が形成され、完全に再生してしまった。

 

 

「マジか。これは大したもんだな…………」

 

「アレほど私を愚弄していたその愚かさ、己にあることにようやく気づいたか」

 

 

「いいや、わからんな。お前の正体がなんであれぶっ殺すって言ったはずだ。お前こそ俺のことを舐めすぎだ。不老不死だからやられないって思って油断していたら、いつか取り返しのつかねぇことになるぞ。そもそものステータスじゃお前に分があるようだが、お前の方こそ言動には気をつけたほうが良いぞ」

 

「その減らず口…………まずそこから焼き払ってくれる…………!!!」

 

 

剣の形をした炎の柱を握り、アーチャーはスパイアーへその6枚の翼で飛来する。

 

 

「ふっ、ハァッ!!!!!」

 

 

アーチャーの猛攻撃と周囲の熱気をものともせず、スパイアーは槍を振るう。

連続で響き渡る剣戟。

炎を灯した槍と剣の姿をした炎のぶつかり合い。

アーチャーの筋力と素早さは大幅に上昇している。

立ち回りも大きく変化した。中空を飛びながらスパイアーを真上から攻撃しつつ、死角に回って攻撃を差し込む。

得物を襲う鷹のような真新しい挙動にもスパイアーは全く惑わされない、

 

 

「オラよ!!!」

 

 

槍の振り下ろしでアーチャーを殴りつけ、一回転してからの薙ぎ払いで距離を引き離す。

 

 

「死ねい!!!!!」

 

 

距離が離れた途端にアーチャーは掌から熱線を放つ。

しかし当然スパイアーにおいては距離が離れてからの飛び道具は想定内。

 

槍の穂先を手でなぞると再び勢いよく振るう。

熱戦の軌道は逸れて、スパイアーの真横を焼き払う。

 

 

「バカな…………私の魔力が…………」

 

「宝具級の熱線なら助からなかっただろうが、今回は特別だろう。火除けの魔術でも付与していれば槍に近づいた火は勝手に離れていく」

 

「貴様は何者だ…………槍の達人でありながら、魔術も扱うとは…………!」

 

「さぁな。俺の真名が知りたいなら、聞き出すか、俺みたいに少しは頭使って考えたらどうだ?…………いや、鳥頭には過ぎた要求だったか?」

 

「その小さい口を閉じるがいい!!!!!」

 

 

アーチャーは地面を勢いよく踏みしめる。

校庭は凄まじい勢いで陥没し、たちまち溶岩の海へと変わる。

地盤が崩壊し、瓦礫が舞い、地に亀裂が走る。

そして裂け目の合間から火柱が昇る。

まるで噴火する火山のようだ。

しかしその怒りの業火もスパイアーに恐れを与えるには至らない。

世界の崩壊にも至るほどの大災害を目の当たりにしてこの男は眉の角度一つも変えはしない。

 

 

「俺はさ、そういうので怯えるのはないんだよ。俺が怖いと思えるのは人の底無しの醜悪な心と、銀子っていうホムンクルスみたいな女だけだ。後者は怖いの意味が違うけどな。ともかく、人間やめた時点でお前は俺を威圧する方法がねぇんだよ」

 

「幻想種………実質的にいえば竜ともいえるこの私を前にその蛮勇………一体どこで会得したものか………数ある名将でも、私を前には畏怖の念を抱くはずだがな…………」

 

 

「─────じゃあな、これで綺麗さっぱり終わらせてやる!」

 

 

スパイアーは素早く駆け出す。

 

 

「無駄だ!貴様の槍では届かん!」

 

 

迎え撃つアーチャーも剣を振り上げようと構える。

スパイアーの無駄な抵抗となった一刺しは過去一番に鋭く、力強く、アーチャーの胸を突いた。

 

 

 

 

 

──────唯一点・唯一点也・其レ故ニ………

死然諸共(しなば、もろとも)』、也。

 

 

 

 

 

その時、スパイアーの槍の穂先が白く冷たく光った。

微かな変化だったが、それは一瞬の出来事でもあった。

 

 

「なに…………………馬鹿な!?」

 

 

 

「悪いな。俺に付き添った奴は皆、共倒れになるもんなんだよ」

 

 

 

「貴様……この一撃は……対界……宝具……!!!」

 

 

「褒めんなよ。そんな良いもんじゃない。俺が………与えられた…………『世界を滅ぼす事を許されたチケット』の1枚に過ぎない」

 

 

 

 

アーチャーの胸を穿ったスパイアーの槍から、先の熱線よりもずっと細く弱々しい………されど、ずっともっと眩い、一条の光が突き抜けていった。

 

 

 

 




どうも作者ですめちゃくちゃお久しぶりです。
連載再開ですね、たいへんお待たせ致しました。
半年ぐらい戦ってますねスパイアーw

というわけで今回またスパイアーの力が一つ解放されたわけなんですが。
─────元素魔術を扱える槍の名手。
なにやら只者ではなさそうな正体へと迫って来ました。
もうそろそろスパイアー谷三十郎の秘密に気づいた人も多いのではないでしょうか。
しかしそれはそれとしてアーチャーチンギスハーン、鳳凰。
いいキャラしてると思うんですよねー個人的には。もちろんこの2人の戦いは始まったばかりです。
今回の大激闘の衝撃の展開の連続、今後にご期待ください。
それでは次回もお楽しみに、そして遅ながらあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!

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