かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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聖杯戦争最初の夜を終えて、次の日の朝。それぞれのマスターたちは、それぞれのサーヴァントたちと共に、街の目覚めに抱かれて目覚め出す。


1日目 踊る大戦線
第二章 それぞれの朝


 

 

《アーチャー陣営》

 

「セントー、お目覚めください。そのような体勢でお眠りになられては風邪を引かれます」

 

彼女が、僕を起こしてくれているみたいだ。彼女は机の上で寝落ちしてしまった僕の背中を優しくマッサージしながら僕を起こそうとしてくれる。僕は朝には強いタイプなので、それだけで目覚めることができた。

「おはようございます、セントー」

 

「よしよし、おはよう、アーチャー。起こしてくれてありがとうね」

 

「む…………ぅ………いえ、これはサーヴァントとしては当然の、ご奉仕といいますか、責務といいますか………」

 

しまった、僕としたことが、今朝も笑ってしまった。何故かは知らないが、アーチャーは僕の笑顔を見ると、顔色を悪くする。きっと、怒ってるんだと思う。僕も、もう少し、楽天的なところを直していかないとね。

 

「ごめん、今朝も笑っちゃって……気を悪くしちゃったかな……?今後は気を付けるよ」

 

「……………いえ、私は怒ってなど………寧ろその、貴方にはできるだけ、笑っていただきたい……身勝手な要求かとは思いますが」

 

「え?なんでさ、アーチャーは僕が笑ってるのがあんまりにも楽天的だから、気に入らないんじゃないのかい?」

 

「いえ、私は決してそのようなことはありません!セントーの笑顔は、麗らかで混じり気がなく、美しい」

 

なんか、照れるな。そんなにいろいろ言われちゃうと。女性遊びなんかしたことない僕ですら、アーチャーは美人だ。そんな人に顔を褒められるなんて嬉しい限りだ。

 

「けど、なんで笑っていたほうがいいんだい?いつも笑うって、流石に難しいな」

 

「………へ!?いえ、その……あーー!もう!なんでそんなコトを訊くんですか貴方は!」

 

アーチャーがぽかぽかと僕の胸を叩いてくる。何て言うんだろう、この娘(こ)は、そういう属性なのだろうか。

 

「おはようございます兄さん」

 

ドアを開けて麗花が部屋に入ってきた。

 

「おはようございます、マスター」

 

目を疑う速さでアーチャーが麗花に跪く。さっきまでの年頃の乙女らしさは完全に消え失せ、そこにいるのはただの戦士だった。

 

「おはよう、麗花。ちょうど今起きたところだよ」

 

「あのですね、兄さん、机の上で寝たら風邪を引きますよ?何度言ったら解るんですか?」

 

麗花は僕の心配をしてるからか、うるさくも、気にかけてくれている。

 

「む…………仕方ないだろう。昨日は仕事が忙しかったんだから。この図面を完成させるのに、徹夜しないといけなくて、そのまま寝落ちしちゃったんだよ」

 

僕は現在、大学を中退した社会人で、このお家に住み着きながらちょっとした事務所で仕事している。お給料もなかなかおいしいんだけど、その分、かなりハードなものだ。分量とか力仕事とか、そういうんじゃなくて、所長が厄介者。クセの強い人物で、この仕事も、所長の趣味の延長みたいなものだ。基本的には建設やモニュメント製造を基本としていて、図面を書くのは誰でもできる代わりに、誰でも等しくハードワーク。締め切りはそんなに厳しくはないけど、それでも時間がかかって仕方ない。しかも、その所長が魔術師だっていうのが一番恐ろしい仕事だ。ときどき、怪事件が舞い込んできたりするもんで、所長はそれすらも解決しようとしてくる。それも、そっちの道のほうがたくさん太れるぐらいの手際良さで。僕もときどきお手伝いを任されることもあって、危険な目には遇わないが、なんか気持ちが悪くなる。まぁ、調べるのは僕の得意分野だから問題ないけど。

 

「おっと、もうこんな時間か。それじゃあ、そろそろ事務所に出向かないとね」

 

僕は立ち上がって、事務所に出勤する準備を始めた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

《ライダー陣営》

蝦碑市教会

 

「ふわぁぁぁぁぁぁ………おはようございます~」

 

「よし、オレが起こして一時間後にお目覚めだな。おはよう、アンザス」

 

オレはライダー。そして彼女はオレのマスター、アンザス。遅いお目覚めだ。目覚まし時計を4個も置いていたのに、鳴り出せば全て止めてそのまま眠りに就いてしまった。

 

「はい……おはようございますライダー……むにゃむにゃ………さて、朝ごはん食べてきますね………」

 

アンザスは教会の扉に歩いていく。

 

「……やっぱ、その能力、ホンモノなんだな」

 

「……え…?あー、令呪(これ)ですか。はい、ホントです」

 

アンザスの華奢な左手。そこには、赤黒く輝く令呪が、【三画すべて】ちゃんと残っていた。

昨日の今日でこれか。あれだけ令呪を使ってでオレをこき使っておいて。

 

「………う……ん……行ってきま~す~」

 

教会の扉が開かれ、アンザスは外に出ようとする。

なんだ、また担々麺でも食いに行くのか。アンザスはいまだに寝ぼけているんだろうな。……うん、きっとそうだ。もう、ドアを開けたってことは、気づいていないみたいだから教えてあげよう。

 

「アンザス」

 

「……うーん?」

 

眠そうな顔でこちらに振り向いてくる。

 

「…………服を着ろ。露出狂か、オマエは」

 

「……あー、忘れてたー今着替えてきますね~」

 

ダメだ、コイツ。聖杯戦争で負けるよりも先に警察に捕まる可能性が高いな。オレはさらにさらに不安になってきた。

ただ、オレはそのアンザスの身体から目が離せなかった。それは、アンザスの裸体に見惚れたわけではなく、アンザスの身体じゅうに刻まれた【ソレ】が、オレの興味を引き付けていたからだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

《バーサーカー陣営》

 

「なんだなんだ………なんなんだ、この女はッ!!!」

 

おれは今朝、昨日の映像を【視て】いた。そうしたら、なんと、とんでもないモノが映し出された。聖堂教会の人物と思われる女が、ライダーのサーヴァントに令呪を二画行使している…しかも、一画目はチャリオットの召喚、二画目は、行き先の指定……だと!?何故にそこまで簡単な条件に令呪を二画も消費できる!?正気の沙汰ではない。

 

「いや……どういうつもりか、何を考えているのかは知らんが、これはチャンスだ。相手の令呪は、今は一画しかない筈だ。間違いなく、彼女は二画の令呪を消費している。あとは他の連中に任せて、あの女を排除する……!」

 

そうなれば、手間が減る。今回最大の敵を減らせる!

 

『昨夜、蝦碑市近郊にて、通り魔殺人事件が三件発生しました』

 

ラジオから、朝のニュースが流れる。

 

「………………」

 

なんだ、それは。極東は、田舎の治安が悪いのは承知だが、一晩で三人か?

 

『三人の被害者の共通点として、三人とも、全員、遺体の血液が著しく不足しており、警察は、何者かが、血を抜き取ることを目的とした殺人だ、と調査を進めています』

 

「………死徒…だと?」

 

馬鹿な。この期に及んで、吸血鬼だと?そんなまさか、なぜこんな片田舎に吸血鬼が今更…?予定が狂う……くそ、序盤戦からイレギュラーばかりだ。ここは一度、工房に戻ろう。バーサーカーとじっくり話し合おう。死徒狩りにおいて、埋葬機関以外で彼女の右に出るものはいまい。今更ながら、こんな映像を視るために入ったこの倉庫に滞在することもない。さっさと帰って………

 

「…………!?」

 

今、おれの真横を、弾丸らしきものが通った気がした。傷は……ないな。奇跡的に避けたか。おれをこのような真っ昼間から狙うということは、マスターではないな。サーヴァントか、あるいは、ただの暇人か。

 

「なんだ、おれを殺して、なにかお前にメリットがあるというのか」

 

倉庫の入り口から、誰かがやって来た。中華風の五十代始め程の老人だ。老人……とは言いすぎか。もう少し若いが、顔にシミやシワがあるものだから、おれよりも年寄りなのは確かだ。五十は越えている。その右手は、しっかりと拳銃を握っていた。

 

「中華老人が何のようだ。暗殺……とはいかないが、殺しが趣味か?いや違うな。その顔、知らないことはないな。お前、暗殺で名を馳せたとか、いないとか、少なからず心得ている。名は……確か………」

 

「………………」

 

「あぁ、そうそう、會云(フィユゥン)だ。お前、中国で行方をくらましたのではないのか。まさかこんなど田舎に潜んでいたとはな。あれから殺し屋は続けているのか?」

 

會云は答えない。成る程、つまりは、

 

「そうか、おれに任務(ごよう)が当たっている訳か」

 

會云は無言で腰を落とす。闘いのために構えているのか。拳銃を服の中にしまい、代わりに、針の用な武器を出して、両手の指の間に挟んで爪のように構える。棒手裏剣とでもいうべきか、いや、それよりもずっと細い。スーツに身を纏っているが……いや、どちらかといえば、学ランのように堅苦しい服装だ。動きにくそうだが、多分、裏に防弾防刃が仕込まれているのだろう。そうか、本当に殺し屋だな。拳銃と棒手裏剣だ。まだまだいろんな武器を仕込んでるに違いない。それはそれでいいとして、多分、武器がなくても強いだろう。流石は、「中華一金のかかる殺し屋」と謳われた者だ。

 

「おれの観測の上では、その体勢はお前の戦闘モードの体勢だと記憶している。やる気か。残念だが、お前の相手はしてやれない。今は忙しくて仕方がないのでな。少し、バーサーカーの相手でもしてやれ」

 

正直、相手の力量が解らない。ひとまずバーサーカーとやりあわせて、どれほど強いかだけ見ておきたい。

 

「バーサーカー、いいか、少々立て込んでいるんだ来てくれ」

 

念話で問いかけてみる。すると、

 

「はいはーいわたしでーす、このメッセージを聞いているということは、今わたしは映画を見ている最中です!申し訳ないけど、時間を置いてから、また掛けてね!じゃーねー!」

 

「は?」

 

明らかに、バーサーカーが前もって保存しておいたオートリプレイメッセージだった。

 

「………………ヤバい、キレそうだ」

 

あの馬鹿野郎……!なんだってこんな大事な時に………!

 

「仕方がない、やるか、良いだろう、幕を引いてやる」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

《セイバー陣営》

「おい!ギンコ!見ろコレ!なんだこれ!薄っぺらい板ん中に人がいるぞ!?」

 

朝から騒がしいセイバーだ。私こと円堂銀子は昨日、変な人に襲われたところ、セイバーに助けてもらったのだ。

 

「あぁ、テレビのこと?それは、中に人がいるんじゃなくて、遠くで撮影した映像を受信してその画面に映し出すものなの。日本なら、どこでも見れるわ」

 

「てれび?へぇ、映像を映す……か。あ、ラジオの進化形って訳な」

 

「まぁ、端的に言えばそういうこと。映像が見れるラジオって感じ」

 

「便利だな!これじゃあ、聖杯戦争での情報も、よう集まるようになんじゃねぇか!」

 

そう、その聖杯戦争とやらに、私は巻き込まれたらしい。

 

セイバー曰く

聖杯戦争。それは、万能の願望器、聖杯を巡って、七人の魔術師たちと、そのサーヴァントたちによる、殺し合いを伴う「儀式」だそう。戦争と聞くと、銃弾爆弾の飛び交う炎の戦場で、戦車が走り回り、その横を兵士が駆け抜け、空には偵察、攻撃を行う飛行機が翔んでいる。……なんて状況を思い浮かべるが、これはあくまでも魔術世界における、極東のマイナーな儀式であるため、盛大に行うことはなく、参加人数も少なく、寧ろ、一般人や政府に目をつけられぬよう、秘匿までしなければならない、結構、ひっそりとしてる割には大掛かりなものだそう。七人の魔術師たちは、サーヴァントを召喚し、マスターとなって、最後の一人になるまで殺し合う。

サーヴァント。それは、「英霊」と謳われる者たちを、この世界に実体化させた、いわゆる奇跡というものだ。それは偉人であれ、勇者であれ、神であれ、怪物であれ、どのような戦士だろうと、英霊の座に座れば、それはサーヴァントとなりうる。わたしのセイバーも、英霊に含まれるらしい。

サーヴァントはその適性によって、七つのクラスに分けられる。

剣士の英霊セイバー、弓兵の英霊アーチャー、槍兵の英霊ランサー、騎兵の英霊ライダー、魔術師の英霊キャスター、暗殺者の英霊アサシン、狂戦士の英霊バーサーカーの七つだそう。

 

 

「あ、学校行く時間だ。そろそろ私、家出るね。遅刻しちゃう」

 

「なんでぃ、そうか、んじゃあ、俺も連れていってくれよ、学校に他のマスターが居ねぇかどうか知りてぇんだ」

 

「ダメに決まってるでしょ?あんたみたいなの学校入れたら、校門で追い返されるわよ?」

 

「いいんだよ、俺にいい作戦があるんだ」

 

「………?」

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

おまけ【マジカル赤褐色の知恵袋】

 

この作品にはときどき型月関連のキャラが登場していて、元ネタが存在する場合もあります。時間があるファンたちは、是非とも探してくださいね。ヒント……といわれると、そう、マスター側には元ネタキャラが多いかも。サーヴァントにも何体かいますよ~




てなわけで、いつも見ていただいている方、毎度ありがとうございます。
今回は完全なほのぼの回となりました。でてきた魔術師たちは一部だけでしたが、それぞれの人となりを知ることはできたと思います。今回は現時点で紹介できるようなキャラは居なかったため、おまけメッセージで締めることになりましたが、皆さんは元ネタキャラや擬似サーヴァントの正体が分かりましたか?性格や嗜好だけでなく、名前にもご注目。わかった方は是非とも感想欄でじゃんじゃん言ってみてくださいね!それでは、次回もお楽しみに!
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