かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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第六十三章 天上の太陽、地上の混沌

 

「んじゃ、俺は刀でも鍛えてくらぁ」

 

「いってらっしゃい。ごはん出来たら呼ぶから」

 

「おうよ、頼んだぜ、」

 

 

 

そうして、岡崎正宗は円堂銀子宅の裏山の奥深くへ潜り込む。

そこにある切り株の横に立ち、片膝立てて屈み込む。

切り株の上に生まれた1本の鋼の板を、金槌で殴る。

流れはすでに出来上がっている。あとは、形を整えて、刃を薄くなるまで叩き、刃を研ぎ、鍛えるだけだ。

 

まだ彼がサーヴァントとして生存しており、そしてまだ銀子と契約していた時の事だった。

 

 

 

 

 

────ギンコ、俺ぁ、手前に本当の事を話すべきなのか、ずっと迷っていた。

 

手前が俺のマスターじゃねぇってこと………

 

俺には、外せねぇ仕事があるってこと………

 

 

そんな俺がなんで手前をあの日助けたのか………

 

 

 

俺ぁな、手前の中に魂を見たんだ。

 

刀っていうのは、誰かが差すから意味がある。

 

誰かに差すために刀は作られる。

 

飾るためであれ、魔を退けるため、眺めるため、それかあるいは誰かを斬るためであろうとな。

 

意味もねぇで作られるもんはねぇ。意味もねぇもんに捧げるほど俺の魂は安かねぇ。

 

それでも俺がこの鋼の丘に、刃を立て続けた理由は………俺の欲しかった、ただ一振りに至るためだった。

 

 

 

 

全てを銘刀と称えられようが、どれだけ人を斬れた斬れ味と硬さに優れた業物を作れようが、俺の求めていたもんはそんなもんじゃねぇ…………

 

だから探し続けた。そして鍛え続けた。

俺の作り出した、幾多もの銘刀たちを糧に、踏み台にしながらな…………人間に作れる剣の限界を知った俺はその先、すなわち神域に届く刀を目指した。

 

いや、神の剣すらも超えてみせる……………岡崎正宗の限界を求めてな。

 

 

だが、そこに来てしまえば…………俺にはあと一歩んところで足りねぇもんを見つけちまった。

 

そん時はもう俺はヨボヨボで…………魂も枯れ果て、今度は余生削って金槌振ってた。

 

そんなもう残りもわずか、そんな時に俺は真に至った。

 

これ以上のもんはねぇ、ってな。

岡崎正宗が、一生涯を剣に捧げてきたぶんで、最期の最期までやり遂げた、最後の一叩き。

 

これ以上は、岡崎正宗の残りでは鍛えられねぇ。

岡崎正宗という男の限界にたどり着いた。

望みは叶ったように思えた。この刀はこの世のどんな剣にも劣りはしねぇし、ついていかせもしねぇ。

神剣だろうと曲げてみせる一振り。

 

 

だが、俺が刀を打った領域に、それを手にする者は現れなかった。

 

俺は一人で刀を鍛えていただけで、それを握るような奴はいなかった。

 

果ての果てを越えた先にある限界の彼方にあるこの境界に、剣士はいなかった。

この刀は何よりも優れていた、だが、何よりも大事な「意味」がなかった。

 

この刀がそこにある意味。

銘もねぇんじゃ、この剣に意味はないし、俺の功績も水の泡だ。

ただ、老い先短い爺が、時間無駄にして鋼の塊を叩いただけの細長いモノ…………

 

俺が魂なげうって、命削って、人生捧げて作った剣は、剣としての意味も成さなかった、機能すらも備えなかった、これ以上とない出来損ない。

 

 

「剣」の領域の限界を目指した俺が最期に作ったのは、剣ですらない鉄の塊。

 

 

夢を叶えたように見えて、夢の途中にも辿り着けなかった俺はそれだけを未練に死んじまった。

 

 

そして聖杯戦争…………俺はあの女に呼び出され、この地に降り立つ。俺は触媒を使わない、儀式の機能として登場したエリミネーターというサーヴァント。だからあの女は聖杯によって無作為に選ばれたサーヴァントの中から俺を召喚した。

それにただの刀鍛冶を選ぼうなんざ、どんな阿呆な聖杯かと思った。

だが…………それはそういうことだったんだろうなって今は思ってる。

 

何の理由もなく運命ってのは起こらねぇ。

 

俺がここに呼ばれた理由はまさしく、今こそ俺の宿願を叶えるためにあったってこった。俺が造っちまった「ただの鉄くず」を、俺の最後の「刀」に昇華するっていうな。

 

 

つまり何が言いてぇかっていうとな……………

 

 

かつては銘も無ければ意味すらもなかった、剣とも呼べねぇ俺の辞世の作は、何百年という時を超えた世界の、手前が握るためだけに作られたってことよ。

神の領域をも凌駕した最高の一振りをなんで手前に扱えるのかはわからねぇ。だが、それなりの理由があるんだろう。

 

 

そうだから、俺はずっと裏山で刀を鍛えていたんだ。手前のサーヴァントではない俺と手前は、いずれ別れざるを得ない。

だから、そうなってしまう前に、手前に…………託しておきたかった。

俺が、魂・命・人生その全てを贄としてでも叶えたかった夢のために。

 

 

俺の最後の一振りを握るに相応しいただ一人の人間として。

 

 

それから…………短い間だったが、俺のためにバカで最高な思い出を作ってくれた一人のダチとして。

 

 

手前がそれを握る頃には俺は消えているだろう。

しょせん俺は使い捨て。いつ消されるかわからねぇ。あんな性悪な色をした女のことだ、俺のことは必ず騙している。

なら、俺と関わっちまった手前の万が一のために、それから………こんなしょうもねぇ理由でせっかくの夢を叶える第二のチャンスをものにするために、

 

 

ギンコ…………手前が握れ、手前が振るえ。

 

 

何百年という時を生きてきた、俺の全てをな。

 

 

 

手前と出会って初めて付いた俺の全てを捧げた正真正銘最期の正宗、その銘は─────

 

 

 

 

 

 

「───────────セイバー、」

 

 

 

 

 

 

──────『正宗改人麁正(まさむねあらため・ひとあらまざ)』。

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ…………セイバー!!!」

 

『おうよ、手前の全力振るいな、ギンコ!!!』

 

 

 

黄金に煌めく刀を握る円堂銀子は空から降り注ぐ、燃え盛る槍の雨に向かい合う。

この一降りの雨だけで大地は焼け切れ、大空は燃え尽きるだろう。

 

すでに琴女高校の校舎は7割が崩壊・融解し、中にいた生徒たちのほとんどは手遅れ。

 

 

だからこそ、円堂銀子はこの相手を絶対に逃さない。

サーヴァントアーチャー・五色の瑞鳥及び、そのマスターである晴燕寺新嵐を、必ず葬り去る。

 

 

全校生徒だけでない。ここで彼らを逃がしてしまえば蝦碑市全体が火の海に飲まれ、それはやがて宮城県全土にも波及する。最終的に晴燕寺は聖杯を手にし、日本、そして世界の秩序は終わりを迎える。

魔術師や能力者が社会を支配し、全ての人々から本当の意味で平和と幸福はなくなり、混沌と煉獄の世が訪れる。

 

 

だが、円堂銀子がそうさせはしない…………!

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ッ!!!!!」

 

 

銀子が逆薙に振り抜いた刀が、燃える刀身を振りかざしながら猛烈な剣気を放ち、飛来する(いかづち)をすべて斬り裂いた。

 

無数の火の雨は瞬く間にその一切が無へと消えていき、銀子の刀から放たれた剣気は勢いを止めることなく空中を一条に裂き─────

 

 

校舎の遥か上空にあるあの地獄の太陽に直撃した。

 

轟音と共に唸りを上げる、巨大な鳥の悲鳴。

大地を揺らし、大気を震わす衝撃波に銀子や晴燕寺だけでなく、戦いを傍観しているリカルドと姫セイバーすらも吹き飛ばされそうになる。

 

 

「くっ……………うっ……?」

 

 

晴燕寺には一瞬、何が起きたのか分からなかった。

銀子の手にしたただの刀が、届かぬはずの距離にある太陽を切り裂いた瞬間を、知るはずもない。

 

 

「ば………馬鹿な…………!不死の太陽が…………!」

 

 

不死の太陽は完全なる存在…………ゆえに、それはたった一つの傷で価値を失う。

完全なる存在のどうしようもないただ一つの欠陥。

 

むろんそんな傷を付けることは不可能だからこそ完全な存在なのだが、真の意味で完全なものはこの世にない。仮にも魔力を糧に生きる、自然物でないサーヴァントであるのならなおさら。

 

 

 

【ありとあらゆる物を斬る】という意味だけをこめられて作られたその刃は、神の中の神、大いなる日の星を斬るに至ったのだ。

 

 

 

「──────────────」

 

 

銀子の刀は輝きを失うことはない。

銀子の手にこれ以上となく馴染むように握られている。

 

 

 

 

 

「銀子、お前死んでねぇのかよ?」

 

 

そんなところへスパイアー谷三十郎が銀子に合流してきた。

 

 

「スパイアー、無事だったんだね」

 

「野郎………俺の宝具を受けておいてまだあんな姿になれる余裕が残っているとはな………だが気にすることはねぇよ。【どうせもうすぐアレは死ぬ】からな」

 

「それってどういう……………」

 

「それよりその刀…………お前、」

 

「あぁ。私はもう大丈夫………あんたが言ってた覚悟、決めたから」

 

 

銀子は今度こそ覚悟を決めた。

これは、人のための大いなる運命。

彼女のたどるべき道であり、進むべき未来であり。

 

 

「大口叩きもいい加減にしろ。覚悟ぐらい、誰でも決めれんだよ…………とはいえ、お前のくせに生意気な成長しやがって。これはもう少し、ほっといてやらないとな。それに、いかにもタダ物に見えないその刀がどんな代物なのかも見させてもらいたいしな」

 

 

スパイアーも珍しく生意気な薄笑いを浮かべて槍を取る。

 

 

 

「スパイアー、行くよ」

 

「黙れ死ねクソが指図すんな殺すぞ」

 

「痛った………このタイミングで頭しばく!?」

 

「お前帰ったらハンバーグ作れ、それでチャラにしてやる」

 

「どうしよう朝の予言当たっちゃったぁぁ!?」

 

「あ゙あ゙ん?」

 

 

 

 

 

「お前ら…………何俺を前に余計な談義で盛り上がってんだ…………!」

 

 

絶望に手を伸ばすどころか、希望すらも持っている銀子を見て晴燕寺はいい加減、我慢の限界を迎えていた。

 

 

「黙れクソ雑魚、お前こそ何もできねぇくせにイキるなクソ陰キャが。早く死ねや、ハエ共のいい餌になったほうが世のためだぞ」

 

「覚悟………だって?」

 

「コイツは誰にでもできる覚悟を決めただけまだマシだ。だが、お前はてめぇのハラをくくる事もできねぇ臆病もんだよ。銃にばっか頼りやがってそろそろ何か違うことしてみろよ。強気なのはその口元とサーヴァントだけか?」

 

 

「……………………なるほどな、今の言葉忘れるなよ?」

 

「…………晴燕寺……?」

 

 

晴燕寺はニヤッと笑うと、自分のこめかみに銃を突きつけた。

 

 

「何をする気だ…………!」

 

 

銀子が晴燕寺に向かって叫ぶ。

 

 

「あーあ。そのサーヴァントのせいだぜ?俺がせっかく、犠牲者を学校の人間だけに留めようとしてあげたのに…………これで、俺を怒らせたせいで街の人まで犠牲になっちゃうな!」

 

「どういう事だ?お前、他にも切り札あんのか?」

 

「覚悟だ?うるせぇ…………俺は!!!特別な人間なんだよ!!!お前らみたいな人間の糞どもと…………一緒にするんじゃねぇぇぇぇ!!!」

 

 

容赦なく晴燕寺はその引き金を引いた。

銃弾はもちろんその頭を貫いた。

 

 

 

「へへへ……………へへへへへへ!!!!!あーあ!あーあーあーあーあー!!!これで終わりだな、何もかもが!お前らが滅ぼしたようなもんだ!特別な人間を怒らせると、どうなるか…………教えてやるよ!──────俺の起源、『腐敗』の真価………見せてやる!!!」

 

 

晴燕寺の側頭部は一瞬にして破裂し、脳と血液がぶちまけられる。

 

それと同時に、彼の身体も生物とは思えない色に変色していく。

 

次第に血管が膨張し、髪が抜け落ち、眼球が零れ落ち、皮膚などの組織が崩壊していき、骨が溶けていく。

 

ただ一つ残っているのはその肉。

身体から、様々なものがなくなっていくと引き換えに、その肉だけはさらにさはに大きさを増していく。

人間がミュータントへと変化するように、メキメキ、バキバキ、と音を立てながら人間だった彼の姿は異形へと変貌していく。

 

体長5メートル、10、15、60…………90………100………

 

ついに膨張した肉塊は辛うじて残っていた校舎ノ残骸を踏み潰してさらに肥大化していく。

もうそこに当然ながら彼の面影も、彼がいたという痕跡も、人間の身体の一部も見当たらない。

ただ、泡のように、風船のように膨らんで巨大な腫瘍のように膨らんでいった、腐った肉の塊が現れた。

 

体長300メートルぐらいで肥大化をやめた時、銀子たちの正面にある肉の壁が切り開かれ、無数の牙のようなものが見えた。

そして、黄色に妖しく輝く6つの瞳、奇形を通り越したこの世のものと思えぬ怪物が銀子とスパイアーを睨む。

 

 

 

『ハハハハハハ………ハハハハハハハハ!!!!』

 

 

巨大な怪物の咆哮。

 

天空には煉獄、地上には地獄。

 

たった今この空間は、史上にない混沌と化した。

 

 

「で……………っか……………」

 

「バカじゃねぇのか。どんだけでかいもん好きなんだよ」

 

 

 

『あははははは!!!邪魔だっ!!!学校の生徒も教員も………全員潰したし………次はお前ら全員を殺してやるよ!!!』

 

 

肉塊から同じような腐った色をした巨大な図太い腕が無数に伸びてくる。

 

 

「スパイアー!」

 

「クソが脳天撃ったら大人しく死んどけよ……!」

 

 

スパイアーが襲ってきた腕の数々を燃え盛る槍で弾き返す。

 

 

「死ね─────!!!」

 

 

スパイアーが槍で地面を抉るようにすると、竜巻が巻き起こり、腕が切断されていく。

 

 

「ま、魔術…………!?」

 

「うるせぇ、上しっかり見とけ!アホかお前は」

 

「うっ…………そうか…………!!!」

 

 

晴燕寺の攻撃だけでなく、空からの焔の雨もある。

銀子とスパイアーは同時に飛び退いて、火雨を躱すが、伸びてきた腕に不意を襲われ、防御をするも弾き飛ばされる。

 

 

 

「ぐっ…………」

 

「ちぃっ…………!」

 

 

 

『全員、死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

 

 

 

晴燕寺の身体から放射状に腕が際限なく伸びていく。

学校の区域を一周しても余裕があるほどの長い腕から逃れるすべはない。切り落とすか、弾くかしない限りどこまでも追いかけてくる。

 

 

 

 

 

『こうなりゃオマエも用済みだ、消してやる、死ね!!!』

 

 

そして晴燕寺の腕は、空から戦いを傍観していたリカルドの元へ飛んでいった。

 

 

「──────────────」

 

「マスター───────!!!!!」

 

 

不意を突かれて驚く暇もなかったリカルドに、姫セイバーは必死で呼びかける。

 

 

 

「─────あっ………!!!」

 

 

その様子を見ていた銀子は走り出す。

実は銀子は空から誰かが見ていたことに気がついていた。

敵か味方かもわからない警戒すべき存在だが、すでに何百という生徒を殺されて、安静な思考でない彼女には人を助けるという意思しかなかった。

 

 

「おい、銀子!!!」

 

 

スパイアーが怒鳴るが銀子を止められるものは誰もいない。

 

 

「危なーい──────!!!!!」

 

 

銀子は全力で先ほど手に入れたばかりの勝利のための切り札を上空へ投擲した。

リカルドへと伸びた腕を斬るために遠距離からの高速の攻撃を図った。

 

 

「馬鹿野郎!!!!それがなきゃ…………!!!」

 

 

スパイアーは銀子の背中を蹴り飛ばすがもう遅い。

 

剣は空高くへと飛んでいってしまった。

しかも、もう腕はリカルドの目の前まで迫っていた。

 

 

 

(しまった…………!!!最後の武器を投げた上に…………間に合わなかっ…………)

 

 

 

 

 

────────その瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────スカサハ」

 

 

 

 

 

 

リカルド・アルゴノーツは右手の指をパチン、と鳴らす。

 

 

 

その一瞬……………リカルドの陰から、紅の槍が現れた。

そして、その槍を握る…………一人の人影。

 

 

 

それは一瞬にしてリカルドの前に現れた肉の腕を、彼女に触れようとした手先だけでなく、腕の芯に至るまで全体を螺旋状に切り裂き、腕の根元にある肩口となった晴燕寺本体にすらダメージを与えた。

 

 

『ギ────アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

 

 

暴風となって響き渡る晴燕寺の悲鳴。

リカルドの背後に現れた人影とそれが握る赤い槍は一瞬にして光の粒子となり、消えてなくなった。

しかし、その代わりに─────

 

 

「─────ワルキューレ!」

 

 

新しい影が3体同時に現れ、今度は一斉に光の槍を投擲した。

肉塊から大爆発が起こる。

 

 

 

「あら。酷いわね、せっかく協力してあげて、挙げ句戦いに手を出さずに見届けてあげていたこの私にすら喧嘩を売るおつもりなの?」

 

 

 

 

 

 

 

『おいギンコ、今の見たか!?』

 

 

岡崎正宗が銀子に語りかける。

 

 

「えぇ…………今のは…………まさか………」

 

『嘘だろ信じられねぇよ…………ありゃぁ、【ぜんぶがぜんぶサーヴァント】だぜ………!?』

 

「簡易召喚…………にしては質が良すぎる。それに、まさか宝具までは持ってこれねぇはずだろうし、そんなサーヴァントをコロコロ切り替えれるほどの回転率も、3体一斉に喚べるほどの出力もあり得ねぇ。ありゃたぶん、確実に【きちんと契約をしている】な」

 

 

スパイアーは冷静な分析をするが、彼自身も顔にも動きにも出さないだけで、まさかまさかと驚きのようなものを感じている。

 

 

『ギンコ!!!焔の雨だ!!!』

 

 

そんな状況もお構い無しに降り注ぐ点からの焔。

 

 

「しまった…………また気が逸れて…………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と戦争がしたい………なるほど。────令呪を以てこの場への転移を命ずる。選択するサーヴァントは…………キーパー、貴方よ!」

 

 

そんな時、リカルドの左手の令呪が光る。

 

この空間に、リカルドが呼んだサーヴァントが転移してくる。

 

 

 

 

「まずい……………!!!」

 

 

銀子が間に合わなくてもなんとか火の雨に備えようとした時。

 

 

 

 

 

「───────護れ、」

 

 

銀子とスパイアーの前に巨大な花が開いた。

それは飛来してきた火の雨をすべて防ぎ、無効化した。

 

 

「え……………?」

 

「なっ、アイツ……………!!」

 

 

スパイアーは真っ先に空へと目をやる。

そして彼は空からこちらを見下ろしてくるリカルドと目が合った。

 

彼女はスパイアーを見てニヤニヤと笑って、晴燕寺と太陽のある、向こう側をツンツン、とこれ見よがしに指差す。

 

 

「どうやら…………この空間の敵は焼き鳥と肉ダルマだけでいいみたいだな、」

 

「えっ?」

 

「なんでもねぇよ、行くぞ、」

 

 

 

「お前らだけじゃ足りないだろう。同じ目的とあるのなら、俺も力を貸す」

 

「あ、あんたは……………!?」

 

 

さらに、銀子とスパイアーの前に一つの背中が立っていた。

 

 

白いメッシュの入った赤銅色の短い髪に、洒落気の欠片もない服装。

Tシャツ1枚の上から黒いジャケットを羽織ったどけの、酷く疲れた目つきの男が銀子たちに背中を見せながら彼女らを振り向き見る。

 

 

「お前はスパイアーか。こんな所で油を売って何をしているんだ?」

 

「ふん。クソつまんねぇ仕事の暇つぶしだよ」

 

「ちょっ、え!?あんたら………どゆこと!?」

 

 

「挨拶がまだだったな、俺はキーパー。リカルドのサーヴァント、『近衛兵の左衛士』だ」

 

「え、円堂です…………」

 

「お前らはあの太陽の事だけを気にしていろ。この雑魚は俺が斬り捨てる」

 

 

 

 

『次から次へと俺の邪魔をするクソどもめ…………殺す、殺してやる………死ね死ね死ねぇぇぇ!!!』

 

 

 

晴燕寺の身体からこれまでにない本数の腕が伸びてくる。

その数、15本に達する。

その質量と速度も過去にない勢いだ。

それを初見で見てもキーパーは一切動じない。

 

 

「いきなり呼んだかと思えば肉塊退治、か。そう言えば…………【オレ】の初めての戦いも………もっと小さかったがこんな肉塊だったな…………」

 

 

何か呟いてからキーパーハ歩みだす。

15もの腕はすでに彼に触れようとしていた。

 

 

次の瞬間、

 

 

 

「──────投影、開始(トーレス・オン)

 

 

彼は瞬く間に全ての腕を切り落としてしまった。

 

 

 

 

「強─────ッッッ!?」

 

 

驚愕する銀子の前に立つ彼の両手には白と黒の双剣が握られていた。

 

 

『オマエエェェェェ…………!!!!!』

 

「その調子じゃ、勝てるもんも勝てないぞ。「無限の腕」を伸ばした所で、切られるようじゃ俺の「無数の剣」の前では全て無効だ。俺の刀が尽きる前に、てめぇの魂が枯れ果てるだろうさ………」

 

 

「───まさかあのサーヴァントは………!!!」

 

 

 

 

「お前は俺に勝てやしない。オレもたった一人のために全てを切り捨てる覚悟を持ったが…………お前には、全てを切り捨てることができても、護るものが何もない。悪は正義の味方に負けるもんなんだよ…………オレも大概な悪だが、正義の因子までは忘れちゃいねぇ」

 

 

『うるさい…………うるさい…………!!!!!オレは…………特別なんだ…………!!!オレは、この戦争に勝って、オレの…………思いどおりの…………!』

 

 

「話にならねぇ。お前はもう終わりだよ…………命令された以上は、俺が処分するだけだ!」

 

 

 

そう言ってキーパーは右手を伸ばし、左手で二の腕を握りしめる。

 

 

 

 

 

「───────『無数の剣製(インフィニテッド・ブレイドワークス)』」

 

 

 

 

 




いつも読んでくださっている皆さんありがとうございますマジカル赤褐色です。
リカルドがそれらしい能力をしっかりと発揮した描写があるのが今回で初となります。
サーヴァントを自在に召喚できる謎の能力。
彼女の秘密の核心に迫る非常に重要な設定となります。

そして、どこかで見たことのある人を依代に持つサーヴァントキーパー。無数の剣製の能力、そして彼の真名は一体───?

今後の展開もどうぞご期待ください、それでは次回もお楽しみに!

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