拙い文章ですがもし読んでくれる方は温かい目で
見守って下さい
…落ちた葉が伝えている
偉大なる、ヴェルダナーヴァは死んだ
次元の彼方、見知らぬ異郷、魔大陸で
竜皇女ミリムは残され
美しい、夜魔の女王が生まれた夜、神祖が次に死んだ
神祖の成果たる亜人と人間たちはその知恵故に歪み、狂い、覇権戦争を起こし…
終わらぬ争いの末に
大いなる星王竜に、見放された
おお、だからこそ褪せ人よ
王となり、なお死にきれぬ英雄達よ
かつて我等を導いた祝福が、再び我等を呼ぶ
暴風竜、ヴェルドラよ
爆炎の支配者、
策謀の
導きの
そして、失われた祝福は三度、もたらされる
エルデの王となった、褪せ人の元に
次元の彼方に向かい、魔大陸に至り
魔大陸の王となる者に見えよ
そしてその王と共に歩むが良い
〜
俺はリムル。通り魔に刺されて転生し、スライムになった。
こんな異常事態でも落ち着けているのは俺のスキルの大賢者のおかげだ。(説明的自己紹介)
落ち着けたとしても何もすることがないから
草食ったりとかしかしてなかったんだけど…
「…(パッチ座り)」
誰コイツ。何かいつの間にかいた。草食ってたら
新しい草持ってくるし、たまに撫でてくる。
大賢者。コイツ何?
《解。不明。装備している防具には『投擲壺威力上昇』
『足音完全抑制』『戦技攻撃力大幅上昇』
『戦技消費FP低下』などの能力が確認されました。
また、全属性に対する微量の耐性も確認されました。》
何か色々気になる単語が出てきたな、コイツ。
また撫でてきた。優しい撫で方だ。
まぁ悪いやつじゃないのか…?鎧はかっこいいけど何で壺被ってるんだ?まあ壺男(仮)とでも呼ぼうか。
まあ今の目的はここからの脱出だ。そろそろ出発するとしよう。
特に何事もなく進み、地底湖から地上へ至る洞窟を進むと、扉があった。
水刃で切り刻もうかと考えていると壺男が扉を開けてくれた。バキッて音したけど。
気が効くじゃないか!壺男に感謝を示し、進もうとすると
いきなり持ち上げられて物陰に引きずりこまれた。
何すんだ!と、思ったんだが
「あれ!?何で開いてんだ!?」
「えー…それ大丈夫なんですかー?」
「鍵もぶっ壊れてる…この中で生まれたモンスターが
外に出たと考えるべきだな…」
なんだか騒がしい3人組が入ってきた。
そう言えば何で言葉が分かるんだ?
《解。意志が込められている音波は、魔力感知の応用で理解できる言葉へ変換されます。》
ほーん。現地語を覚えなくていいのはいいな。
壺男は…頭を抱えている。まあ鍵を壊した張本人なんだから当然っちゃ当然だな。
3人組の様子を伺っていると痩せ気味の男が何かしたのか、急に3人の姿がぼやける。でも見えないほどではない。
モンスター対策かなんかだろうか?
俺がそんなことを考えていると、3人は奥へ進んでいった。
3人の気配がなくなったのを確認し、移動を再開する。
壺男も付いてきてるな、ちょっとしょんぼりしてるけど。
こうやって見てみるとスタイルいいな…何でこんなとこいるんだろうな。
暫く進むと道が複雑に分岐している地点に到達した。
どれが地上への道なのかなんてわかる訳ないので壺男に適当に進む道を指し示してから進むことにする。
「…(リングのポーズ)」
大丈夫らしい。選んだ道を進むと、
チロチロリ!
目が合った。前世とは比べ物にならないくらいでかい蛇。
硬そうで、刺々しく真っ黒な鱗。めっちゃ強そう。
俺がビビり散らかしていると、壺男が前に出た。壺男がいつの間にか武器を持っている。
でかい剣だ!どこにしまってたんだ!?
壺男は剣を片手で構え肩に担ぎ、片手を地面についた独特の低い姿勢をとると、横に回り込んで、跳んだ。
空中で一回転し、その勢いのままに大剣を黒蛇の首に振り下ろした。
その一撃で黒蛇の首をいとも容易く刎ねた。
驚く程の速さだった。回り込みも一瞬消えたように見えたし、あの斬撃も恐ろしい威力だ。すると壺男が黒蛇の身体と首をこっちに持ってきた。これは…喰えってことか?
せっかくだし捕食して解析することにする。
壺男は嬉しそうだ。黒蛇を捕食したら『熱源感知』と『毒霧吐息』というスキルを取得した。
さて、本来の目的はこの洞窟から脱出することである。
まだまだ進んでないからな、どんどん進もう。
〜
黒蛇戦から三日たった。俺も戦わせてもらって『水刃』をマスターした。しかし、一向に脱出できない。壺男が色んな色に光る石を置いてくれているお陰で同じところをグルグル回ることは回避出来ているが、どうしたもんかな…
なんかいい方法無い?
《解。脳内に、現在通った道を表示しますか?》
!?そんな便利な機能があるのか!早速使ってみよう!
…おかしい。何で同じところをグルグルしているんだ?
進んで無い方向に行ってみると、巣を光る石で飾り付けた蜘蛛を見つけた。お前か…
その蜘蛛を『水刃』で切り刻んで捕食してやった。その間壺男は光る石を回収していた。貴重品なんだろうか?
さあ、漸くまともに進めるぞ。
〜
段々地表に近づいてきたのか雑草が目立つようになり、薄明るくなってきた。モンスターも増えてきたがな。
全部倒して捕食した。すると、スキルも必然的に増えるわけだが、その中に気になるスキルを見つけた。
吸血蝙蝠の『超音波』だ。『吸血』?捕食者の下位互換!以上!
そんなことよりもこれを使いこなせれば喋れるようになれるかもしれない!
さぁ特訓だ。これからの為にもこれは必須だぞ。
………
……
…
不眠不休で歩きながら研究した結果。
「ワレワレハ、ウチュウジンデアル!」
成功だ!扇風機の前で喋った様な声だが、発声に成功した!
ただ、壺男が耳(?)を抑えていたので音量を調整する必要があるかもしれない。
暫く練習していい感じの音量になったと思うので、壺男に話しかけてみることにした。
「聞こえるか?」
壺男がうなづく。
「俺の名前はリムル・テンペスト。お前の名前は?」
やっと聞けた。壺男って呼ぶわけにはいかんからな。
「…」
あれ?何で黙ってるんだ?怒らせちゃったかn
「…ワ…ワシ…ノ…」
聞こえた!若い男の声だ。男と言うか少年?ってかワシて。
「…ナマ…エ…ハ…uhh…ahh…名前は…シルシテイ。シルシテイだ。」
「シルシテイか!改めてよろしくな!」
「ああ、よろしく頼むよ。」
これで会話するのは二人目だ。どうやら声を出すのが久しぶりだったからか、うまく出なかったらしい。せっかくだし色々話したいな。
〜
「お前ヴェルドラは知ってるか?でかい竜なんだけど」
「ああ、あれか。見つけた時にはもう飲み込んでいる最中でな」
「そうか…お前もヴェルドラを解放したら話すといいよ。いい奴だよ。」
「うむ。是非そうさせてもらおう。竜と話す機会なんてなかなか無い。」
「そういえば何でお前はあそこにいたんだ?」
「いや、いつの間にかいたんだよ。そしたらドラゴン取り込んでるスライムがいるわけだ。面白そうだから着いていこうとおもっての。」
「その壺と鎧は?」
「この壺は友からの贈り物でな、きっと似合うと言ってくれたからずっとつけてる。鎧は見た目が好きだからだな」
「あの大剣は?中々の業物じゃ無いか?」
「腕のいい鍛治士がいたからな。他にも色々あるから機会があったら見せてやろう」
色んなことを話した。壺がそんな大切な物だったなんて…あと聞いた感じだと彼は転生者と言うより転移者だろう。鍛治士とか鎧とかもう俺のいた世界じゃないの確定じゃん…
話しながらも迷わず上に向かっている。
段々明るくなってくる。そして遂に…!
「外だ!おい見ろ太陽が見えるぞ!」
「おお、太陽だ!太陽万歳!(太陽賛美)」
「お、何それ!俺もやる!(太陽賛美)」*1
スライムの触腕を伸ばしてポーズを真似る。
俺たち二人の機嫌は最高潮に達していた。
数ヶ月ぶりの太陽だぞ?テンション上がるに決まってる。
ある程度ふざけて気が済んだ俺たちは、
「森か…」
「どうしたシルシテイ?森でなんかあったのか?」
「…恐ろしい話を良く聞いたからなぁ。まあここではないだろうが」
「へー」
目の前の森について話していた。
とりあえず真っ直ぐ進むことにした。何もわからんからな。
「ガルルルルル」
「あん?」
「キャイーーーーーン。゚(゚´ω`゚)゚。」
「今のはあれか?スキルってやつかの?」
「いや、凄んだだけなんだが…」
旅は順調に進む。木端の魔物は少し睨むだけでどうにかなる。そんな事を繰り返しているうちに俺に近づくモンスターはいなくなった。
日が傾き始め、俺が野営の提案をしようとした時だった。
俺の魔力感知が30匹程の魔物を感知した。
しかしあまり強くなさそうだ。
「おいルーン、なんか来るぞ。」
「強そうかの?」
「いや全然。俺一人でもどうとでもなるな。」
「ヴェルドラ以外全部そうなんじゃ無いかね」
軽口を叩いていると件の魔物が姿を現した。
その魔物は全身霞んだ緑色で小柄だった。耳は少し尖っていて粗末ではあったが盾や剣、斧や弓を持つ個体もいた。
そう!俺たちの前に現れた魔物は
でも、やっぱり怖くないな。どうしてくれようか…
そんなことを考えていると群れのリーダーらしき個体が話しかけてきた。
「グガッ、強キ者ヨ……コノ先ニ、何カ用事ガ、オアリデスカ?」
ゴブリンって喋れるのか。魔力感知の応用で分かるのかな?
って強き者って俺たちのことか?ルーンの方を見てみる。
(がんばれ)
そんな感じの顔?とジェスチャーをしていた。おい!
まあ、世話になってるし、任されてやるか。
「初めまして、でいいのかな?俺はスライムのリムルという。この先には別に用事があるわけではないが」
「
「強い魔物の気配?そんなのいるか?」
「いや貴公のことじゃ無いか?」
「俺そんなに強いか?スライムだぞ?」
「少なくともわしはどでかいトカゲや蜘蛛の首を簡単に刎ねれるスライムは見たことがないのお」
「オオ、ヤハリアナタハ、オ強イノデスネ!…トコロデ、隣ノ人間ノ方ハ?」
「リムルの友人ってとこかね。それなりに強いぞ。蛇の首刎ねれるからな」
「オオ、アナタモオ強イノデスネ!…御二方、オ疲レデハナイデスカ?セッカクデスシ、我々ノ村デ休ンデイッテハイカガデショウ?」
「…どうする?俺は行ってみたいんだけど」
「ワシもいいと思うぞ。行くあても無いしな。」
「まあ、それもそうだな。よし!お前たちの村に案内してくれ。」
「ワカリマシタ!サァ、コチラデス」
〜
俺たちはゴブリンたちに色んな話を聞きながら村へ向かった。
そして会話を続けている内に、相手の言葉をスムーズに聞き取れるようになった。
『魔力感知』の応用でする会話に慣れてきたみたいだ。
人間と話す前にゴブリンで練習できてよかったかもしれない。
そんな事を話しながら村に向かったわけだが…
「…」
「…ふむ。」
村はえ?言いたくなるほど、小汚い感じだった。
言わなかったけどな?所詮ゴブリンの巣穴、期待してはいけなかった。
俺たちはその中でも一番マシに見える建物?に案内された。
「お待たせいたしました。お客人」
年老いた一匹のゴブリンが入ってきた。
先ほどまで俺たちを案内していたゴブリンリーダーも付き添っている。
「いえ、それ程待っていません。お気遣いなく」
「何、最近は忙しいんじゃろ?みんなボロボロで疲れとるわ」
ルーンはこの村の事を先程の短い時間で把握したらしい。年の功ってやつかね。なんでそんなボロボロで疲れているかと言うと、3ヶ月ほど前に彼等が信仰する神が居なくなって、魔物たちが活発化したらしい。装備も力も貧弱な彼等は格好の餌であり、つい最近名付きの戦士までもがやられたらしい。俺のせいかもしれん…
その戦士たちが命懸けで手に入れた情報によると牙狼族って言うのがもうすぐ100匹くらいで攻めてくるらしい。ちなみにこいつ一匹でゴブリン十体で勝てるかどうからしい。
「…中々厳しいですね」
「厳しいってか無理じゃ無いか?」
言ったよコイツ。事実だけども。しかしルーンは続けて
「だから我々を雇いたいのだろう?」
!?何言ってんだコイツ!
「おいおい、俺はスライムだぞ?そんなに活躍できると思えんが」
「いえリムル様、アナタからは恐ろしいほどに力が溢れております」
村長がそう言った。どゆこと?
《告。現在、身体から魔素が溢れ出しており、それがオーラとして認識されているようです。》
え、マジ?ダダ漏れなの?
《はい。》
うわー…ちょっと恥ずかしいな。抑えれないの?
《解。可能です。実行しますか?》
ありがとう大賢者!そーかー、ダダ漏れだったかー。それっぽいこと言っとくか…
「ふっふっふっ、よく分かったな。君には見所がある。」
「おお、有難うございます。」
ルーンが震えている。笑いを堪えているらしい。シバくぞ。
「だが、ただで雇い入れるのは違う。そうだろう?ルーン」
「くっくっくっ、えっ?くふっ、まあ、そうだな。」
まだ笑ってるよコイツ。しかしツッコんでいる場合じゃ無い。
「そこでだ。お前たちは俺に、俺たちに何を差し出せる?」
すると村長を含めた全てのゴブリンが平伏し、村長が
「我々の忠誠を!心からの忠誠を捧げます!」
えぇ…。要らないよ、忠誠なんて。でも、覚悟はあるみたいだな。
「ルーン、お前はどうする?」
「うむ、ワシもお前たちを守ってやろう。人間と魔物合わせてもまともな奴は数えるほどしか出会えない土地に住んでいたからな。まともな奴等は護られなければならない。」
なるほど、こいつのいた世界は相当過酷らしい。それにまともの定義を会話できると仮定すると大多数が会話できない恐ろしい世界ということになる。
「さて、じゃあ早速始めようじゃないか」
「ああ、そうしよう。先ずは壁でも作ろうか。」
…
……
………
あれから俺達は村の強化と村人の治療を進めた。殆ど瀕死みたいな奴等ばっかりだったからな。そして、時間が空いたので、シルシテイにいろんなことを聞いてみることにした。
「…シルシテイはさ、何処に住んでいたんだ?」
「…狭間の地と呼ばれる場所だ。まあ、貴公の思う通り君の住んでいた所ではないよ」
「あ、やっぱり?」
「秘匿をかけてもらった筈なんだが、…。まあ、そんな秘密にすることでも無いし時間もあるから、わしの身の上を明かしておこう」
「お、気になってたんだよ。少し楽しみだな」
…
……
………
シルシテイは小国の騎士であった。
恵まれた立地、肥沃な土地、豊富な鉱山資源。狙われるのは必然であった。
しかしその国は負けなしであった。シルシテイの力によって。
他の国のお座敷剣術ではお話にならない。優れた技量で剣を振るい、独特の剣技で敵を翻弄し、凄まじい生命力で生き残った。
しかし他の騎士はそこまで強いわけではなく、最終的にはシルシテイとシルシテイ直属の精鋭対軍の戦いになっていた。そこからがシルシテイの本領であった。敵の剣や盾、時には敵の死体を拾ってぶん投げ、敵の腕や脚、時には頭に直撃させた。百発百中であった。その様は獣の如く、いや化け物の如く。精鋭達はそこまでの戦い方では無いものも、彼等もとても強かった。
その戦い方はシルシテイもそれを慕う精鋭達も語らなかったが、ある生き残りがそれを伝えたことでかれは呼ばれるようになった。全てを使い、死者の死体までを武器にするその様から。
…「外道英雄」と。
〜
ある時シルシテイは追放された。その戦い方故に。その国の傲慢故に。英雄達がいると鷹を括ったが故に。
シルシテイを慕った英雄達と民達が怒り狂い、内乱が起きた。その国のトップは英雄達となり、それ以降も栄え、平和であった。しかし彼等はシルシテイを探さなかった。
シルシテイの追放を言い渡された時の穏やかな笑顔を見て、連れ帰ろうと思うものは居なかった。確かにそれはまともな道を外れた者であった。それ以上にシルシテイは英雄だったのだ。
「最後の方誰から聞いたんだよ」
「その英雄達からじゃ。追放された時も旅立つ時も見送ってくれた。いい奴等だよ。年も若いのにねぉ」
「いくつぐらいだ?」
「よく戦ってたときで平均15ちょいぐらいだったかね?」
「そんなのを戦わせてたのか?…ひどい王様だったんだな」
「まあリンチされるような政治ではあったな。あと、この話はここからが本番でこれは前座だぞ」
「波乱すぎだろ」
あてもなく放浪していシルシテイであったが、転機が訪れた。光が見えた。戦士の末裔、褪せ人達を導く祝福が。
ああ、これが祝福か。わしも、褪せ人だったのか。シルシテイは悟り、その導きに従うことにした。特にやる事も無いから。自分を慕った英雄達にそのことと「着いて来るで無いぞ」と伝え、彼は旅立った。霧の彼方、褪せ人の故郷…狭間の地へ。
〜
狭間の地は恐ろしい土地であった。百戦錬磨の英雄であっても太刀打ち出来ぬ化け物が跋扈する土地であった。輪廻転生を司る律が壊れ、まともな者は数えるほどしかいなかった。この旅の目標は王となること。彼は手段を選ばなかった。多くの者を殺し、奪い、自らの糧とした。謎の『二本指』なる上位者も「奪え」とほざいた。言われなくとも、シルシテイは略奪した。…略奪なぞせずとも、奴等は襲ってきたのだが。
旅の最中で多くのものを得た。多種多様な装備。生き抜く為の素材と製法書。驚異的な
「夜の王っていうのがその国の王様なのか?」
「うーむ、なんて説明したもんか…王様の種類みたいなもんだな」
「ていうか、さっきの言い方だと、お前が王様みたいな感じだけど…その夜の王って」
「もしかしなくてもわしだな」
「え?敬った方がいい?」
「いらんいらん、夜の王ってのも名前だけだ。統治なんぞしとらんし」
「夜の王にはどうやってなったんだ?」
「それも話そう。リムルにはいろいろ話すと決めたからな。…この話が終わったらリムルのことも教えてくれんか?」
「勿論だ。お前がこんなに話してくれてるのに、俺が話さないわけないだろう?」
ある時、シルシテイは出会った。隅々まで、罠が張り巡らされた「カーリアの城館」で。
最初は大きな建物だから強い武器も有るだろう、という邪な考えであった。
実際に
親衛騎士を倒し、辿り着いたのは三つの塔が並ぶ霧のかかった土地。
魔術師喰らいの竜を追い払って、真ん中の塔を登っていく。他の二つの塔は封印されていた。
しかし真ん中の塔は封印こそ無かったが竜が護っていた。きっと良いものがあるに違いない。
俗物的思考で駆け登り、頂点に辿り着いた。
そこには魔女がいた。白いとんがり帽子をかぶっている。
良く分からないまま話しかけてみる。
「ほう…?貴公のようなもの(壺頭)を招待した覚えはないのだが、何用だ?」
「いや別に。」
「特に用は無いのか?」
「強いて言うなら強い武器を探していたのだが…貴女の様な美女に会えたのはよかったかもしれんの。はっはっはっ」
「ふむ…どうだ?私に仕えてみないか?美女に仕えるなんて嬉しいんじゃないか?」
「いいぞ。」
「即答か。欲に正直なのは悪いことではないと思うが…。しかし良いのか?私は暗い路を行く。いづれ全てを裏切るだろう…その中にはお前も含まれているかもしれん。」
「構わんよ。こちとら
「そうか…面白い奴だな。では私の為に早速働いてもらうとしよう。まずは私に仕えている他の者達に挨拶をせてくると良い。」
「おぉ、ぜひそうさせて貰おう。仲間がいると言うのは良い事だ」
「あとその鎧は女物だぞ」
「え」
〜
「お前…その鎧って」
「言わんで良い。大丈夫、割と女顔じゃし、割と若いぞ?」
「じゃあなんで爺言葉なんだよ」
「精神年齢は別じゃ」
〜
「新しい従者が増えたのは聞いたが、お前だったのか。改めて俺は半狼のブライヴ。同じ従者として、よろしく頼む。」
「あぁ、こちらこそ。」
「今俺はシーフラ河でノクローンに通じる道を探している。何か分かったら俺に教えに来てくれると助かる。あと…えー…」
「おぉ、たっぷり撫でてやろう。それにわしがいれば頼み事なぞすぐ終わる。そうすればラニにも撫でてもらえるぞ!」
「…ありがとう。恩に着る」
「おお、貴方の事だったのですか。こんなことになるとは私も見通せませんでした。改めて私は軍師イジー。宜しく頼みます」
「あぁ、こちらこそ頼むぞ。」
「困ったことがあれば聞いてください。私は軍師。知恵を使う場でこそ輝けるものです」
「じゃあ王族の幽鬼の弱点を教えてくれんか?あいつ死ぬほど面倒臭いんだが」
「うーむ…確かアレは回復祈祷が効いた筈」
「マジかい…試してみよう。ありがとう」
「いえいえ、これくらい」
「私は魔術教授セルブス。君みたいな下郎と働くのは勘弁して欲しいところなんだが」
「シバクゾゴラァ!!」
「ヒッ…。あ、ゲフン、まあ、頑張りたまえ」
〜
それからは怒涛の勢いであった。デミゴッド最強のラダーンが星の運航を妨げていると分かってからは腐敗に侵されたラダーンの供養ついでに星の運航を再開させ、落ちた星の下にあいた巨大な穴に突撃した。そここそが永遠の都、ノクローンであった。奥へ奥へと進んでいく。銀の雫と言う
「感謝する。これで漸く全てが揃った。後は私が行くだけだ。…私だけの暗い路を。」
そして彼女は『カーリアの逆さ像』をシルシテイに渡し、何処かへ消えた。隣の塔の封印が解けた。それは感覚で分かったが、その像を使ってから行くことにした。
…詳しいことは省く。置いて、デブをしばいて、登った。以上。狭かったのでそれなりの死闘だった。登った先にあったのは、『死のルーン』。かつて、神の身体に刻まれた『死』だ。それが刻まれた身体はボロボロではあったが、かろうじて女の身体であることがわかった。
指殺しの刃、死のルーン。おそらく彼女は神人である。それによってもたらされる運命から逃れようとしているのだろう。そこには自由が無いから。それは良くない。だから貴公、逃げたまえよ。忌まわしい運命から。
〜
先程開いた3棟目の塔。そこにはラニの服と転送門があった。転送門の先、地の底の河の岸の石の棺。その中には小さなラニの人形が。怒涛の旅は再び始まる。
「聞こえるかー」ユサユサ
「…ええい。お前、存外しつこい奴だな
それとも、人形に話しかける趣味でもあるのか」
「しつこさだけならモーゴットにも負けんよ」
「確かにアイツは一度定めた相手は絶対に逃がさないからな。はあ…。知られてしまったからには、逃がしはしないぞ。協力してもらおうか。この地にいる、災いの影を探し出し、消し去るのだ」
「もとより逃げるつもりなどない。見つけて、殺す。わかりやすくて良い」
「では早速行くが良い。…よいしょっと。この中(ポーチ)の中で待っているからな」
「えぇ…」
「…少し、昔話をしようか。私は、かつて神人だった。デミゴッドの中で、ミケラとマレニア、そして私だけがそれぞれの二本指に見出され、女王マリカを継ぐ、次代の神の候補となったのだ。だから、私はブライヴを授かった。神人の特別な従者としてな。」
「あいつそんな凄い奴だったんか」
「…そして私は、二本指を拒んだ。死のルーンを盗み、神人たる自らの身体を殺し、棄ててでも私は、あんなものに操られたくはなかったのだ。」
「分かるぞ、なんかうねうね動いて気色悪いしの」
「分かってくれるか?…それ以来、私と二本指はお互いを呪っている。災いの影とは、あやつの刺客なのだよ」
「…私が、二本指を拒んだ時、それでもブライヴは、私の味方でいてくれた。…フフッ 神人たる私の、特別な従者であるというのに二本指にしてみれば、とんだ出来損ないだったろうな。」
「いや、二本指の使いにしては素晴らしい人物とも言える」
「ふふふ…ブライヴも、イジーも、私には過ぎた者たちだよ。知っているはずなのにな。私の行く暗い路の先を。私がいつか、すべてを裏切り、棄てることを…ああ、お前も加えるべきだったか?お人よしということでは、奴らとよい勝負だろうしな」
「…この姿だと、どうにも気が緩むな。余計なことを喋ってしまった…忘れろ。いいな」
「全身全霊を持って脳に刻みつけるっ」
「だーかーらー、忘れろーっ」
雷を纏った銀の雫達を退けた先、災の影がそこにいた。
百戦錬磨のシルシテイに影如きでは勝てやしない。
徹底的に切り刻まれ、絶命した。
「…見事な戦いだった。感謝する。手間をかけさせてしまったな」
「言うてみごとでもない気がするが(腐れブレス)」
「まあそう言うな。だが、これでやっと、あやつに至れる。…お別れだな、お前」
「…成し遂げるんだぞ」
「ああ。…ブライヴとイジーに、伝えてくれ。…愛していると」
ラニはそう言い今度は身体を残して居なくなってしまった。しかし、シルシテイはすぐに別のアイテムを見つける。『王家の鍵』。ラニにまつわる王家…。シルシテイは迷わずレナラのいる部屋の宝箱へ向かった。シルシテイの考えは正しく、その中にはあるアイテムが入っていた。
『暗月の指輪』
…。彼は走り出した。
腐れの沼を越え。
悪意の流星を討ち滅ぼし。
暗月の騎士の竜を打ち破り。
大教会に穿たれた大穴。その最奥にラニはいた。
身体はボロボロで人形の身体の体内が丸見えで、しかし二本指には勝利したようだ。シルシテイは迷わない。ボロボロのラニの薬指に『暗月の指輪』をそっと指した。
「…そうか。お前…いや貴方が私の王だったのだな。」
「そうだとも。わしこそが君の王だよ」
「…ふふっ。忠告など無駄な事だったか。だが、嬉しいよ。貴方が私の王で良かった。お前は王の道を歩んでくれ。そして、互いに全てが再び見えるとしよう。」
「ああ。すぐに会えるとも、待っていてくれよ。」
「待っているよ、私の貴方…ふふふ」
………
……
…
「その後の試練なんぞもう蛇足よな」
「ラブラブじゃねえか…」
「次に、わしのスキルをば」
「おー」
「といきたいところなんだが、話すにしても、実はどう言うスキルがあるかわしにも分からん。そこでな、わしを食えんかな?ヴェルドラみたいに」
えぇ…そんな無茶苦茶な事できんのか?
《解。対象に抵抗されなければ可能です。》
〜
シルシテイのスキル…はっきり言って無茶苦茶だ。まとめるとこうだ。
名前:シルシテイ
種族:褪せ人
称号:外道英雄…夜の王
魔法:〜封印〜
能力:
固有能力『王の召喚』
無茶苦茶だよ!
なんだよこれ…暴れまくってんだけど…。まともに使えるのか?
《解。これらのスキルの殆どが封印されてあり、使用は困難です。》
なるほど、あれは封印されたからああなったんだな。…いやそれでもおかしいな。それは置いといて。
使えないのか、封印は解けそうに無いのか?
《解析の結果、一番脆い『黄金覇気』『大魔道士』『大祈祷士』『大戦士』の封印も無限牢獄よりも強力な封印が施されていました》
え、どうすんだよ。スキルなくても強いだろうけど、何があるか分からないのにそれは不安だぞ?
《そしてこれらの封印には、主人との繋がりが確認されました》
…はい?
区切り方分からんくて長くなっちゃう…
不定期投稿ですんでよろしくお願いします