知られざる王都古竜信仰の祈祷
その新たに編み出された技
赤い雷撃を、対象に落とし周囲に迸らせる
その威力は凄まじく、射程も長い
不遜にも伝説を改変しようとしたこの技は
通常の王都古竜信仰の祈祷よりもFP消費が多い
だが、それに見合う性能である
自分に当ててから相手に当てるより、相手に直接当てる方が効率が良いのでは?
本来武器のように振るう雷だったため、その考えは効率の改良こそしなかったが、新たな技を生んだ
夜が明けた。
俺達はオーガ達に何があったのか聞くことにした。
場所はドワーフ兄弟三男のミルドが建てた立派なログハウス。
リグルドと四人のゴブリンロードとカイジン、俺とシルシテイとオーガ五人組の十四名。
リグルド達を集めたのはこの話が重要な可能性があるからだ。
なかなかの強者であるオーガ達を五人にまだ減らしてしまうなんて、只事では無い。
手加減していたとは言え、シルシテイをボッコボコにしていたのだ。
一体何があったのだろうか…。
〜
オーガ達曰く。戦争が起き、オーガ達が敗北した。ざっとまとめるとそんな内容の話だった。
俺とシルシテイがイフリートと戦っていたくらいの時かな。
オーガ達も戦争に巻き込まれていたらしい。
森の中でも上位に位置するとされる(らしい)オーガに挑んで、勝つなど一体どう言うことなのか。
リグルド達も驚いていた。
「…あの糞オークどもめ!」ドンッ
「お兄様、落ち着いてください」
赤髪はブチギレていた。まあ当然だな。
オーク達はかなり質の良い装備をしていたらしく、里長を殺したオークに至っては全身を黒い鎧で包んでいたらしい。
そいつも似たような奴が四体いて、そいつらが里の精鋭である戦士達を皆殺しにし、そこから大量のオーク達による蹂躙が始まったとのこと。全てのオークが全身鋼鎧であることから、一人一人のオークの力もそれなりにあるだろう。
そして、そこにいたのはオークだけでは無いと言う。
凶悪な妖気を隠そうともしない、怒り顔の仮面を付けた魔人。
「我々が勘違いしてしまったのはその人物を見ていたからです」
「なるほど、わしは魔物を率いていて」
「「「「「「はい」」」」」」
「強力なオーラを放っていて」
「「「「「「…はい」」」」」」
「顔を隠していたから」
「「「「「「……はい」」」」」」
「共犯だと思ったわけじゃな?」
「「「「「「………はい」」」」」」
「うーむ、追い詰められとったんじゃな」
まあ、仮面と壺じゃ話は変わってくる。落ち着いていたならまともな判断も出来ただろう。
…いや、魔物を引き連れた壺頭はヤバいやつにしかみえない。
「そんなことよりよ、どうするリムル」
「…まあ、ここにも来るだろうな。オーガだけを殲滅する理由はない。目的もわからないし。しかも、そんなにいるのに気づかないなんて…しかも鎧なんてな。人間の国と手でも組んだか?」
「いや、オーク強くするより自分の国の兵を強くするじゃろ」
「うーん、それもそうか」
オークの武器、鎧の出所など、調べてもいないのにすぐわかるはずもなく、とりあえずわかったのはオークが森を侵攻していることだけだった。
〜
で、だ。はいそうですかで終わるわけにはいかない。
ここも狙われるかもしれないのにのんびりなどしていられない。みんなに意見を聞いてみるか。
「オークの目的は恐らくこの森の支配権だと思われます」
と、リグルドが代表して答える。
「なるほど、それじゃここも…」
「うむ。来るじゃろうな」
「うーん、どうしたもんかな…」
皆、俺の様子を伺っている。今、俺たちに考えられる選択肢は三つ。戦う。逃げる。軍門に降る。
三つ目を選べば、オーガ達とは敵対するだろう。そもそも選ばないけどな。
それを知ってか知らずか、緊張感のある目でこちらを見つめている。
緊張感が高まっていく。
「とりあえずお茶おかわり」
「まじで言ってるのか」
シルシテイはおかわりを受け取る。
緊張が緩和され「ふう…。ありがとうな」…緩和されたな。
「はあ…まあいいや。オーガ達に、俺から提案があるんだ」
「…なんでしょう」
赤髪のオーガが答える。
「俺達に雇われる気はないか?と言っても、俺が出来るのは衣食住の保証くらいだがな」
「ほう、スカウトか。あれほどの強さを持っているなら、かなり心強いぞ。俺達って言われてもワシが出来ることなんて…武器の手入れ…武器の提供…うーん」
「俺たちを雇う…だが、それではこの村も危ないのでは?」
「もとから危ないから大して変わらんよ。むしろ戦力が増える分にはありがたいぞ」
「そうなんだよ。オーク達がどれくらいの戦力かわからない今は戦力はどんどん欲しいんだ」
「なるほど…」
赤髪のオーガは考え込んだ。断られるかな?それは…まあ、しょうがないよな。
自分達をボッコボコにしたよく分からない謎の壺がいるもんな。怖くてやってらんな「分かりました、是非よろしくお願いします」…引き受けてくれるみたいですね。
「それは良かった。契約期間は…オーク達の大将討伐まででいいかな?」
「はい、それで構いません」
オーガ達との契約も決まり、取り敢えず一安心である。
しかし…さっきから赤髪とか青髪とか、こいつらに指示するときにその呼び方はあまり良く無いよな…
「じゃあ、まずは君たちに名前をあげよう」
「へ?何を言って」
「おいおい、壺用意したほうがいいんじゃないかね」
「六人くらい大丈夫だって、へーきへーき(フラグ)。名前はすぐに思いついたんだよ。お前が
「大丈夫か?前えらいことになってたじゃろ?」
「大丈夫だよ、ほら何とも…な…い…」ポチャン
「「「「「「!?」」」」」」
瞬間、俺の体がとける。シルシテイはすかさずにその体を壺に収めた。
「それ見たことか。なんとなくダメじゃろうなあとは思っていたがな、次はちゃんと名付けをする時は対策するんじゃぞ」
「ス、スライムだったんですか!?」
「あ、そうか、話して無かったか。そうだぞベニマル君。コイツはスライムでな、訳あって人に変身できるんじゃ」
「…もしかしてシルシテイ様もでしょうか?」
「うむ、シュナちゃんが疑うのも無理はないが、わしは…一応人間じゃ。強い力を手に入れただけの、な」
「そうですか…。あれ…?なん…だ…か…ねむ…く…」
「んあ?ああ、進化すんのか。成程、しょうがないな。」
「…シルシテイ様、布団を持ってきましょうか?」
「お、リグルド君気が利くね。是非頼む。あと、座布団を持ってきてくれないか?この壺を飾…置いておく場所が欲しいんじゃ」
〜
シルシテイは壺を抱えながらオーガ達を安全な位置に移動させる。リグルド達が持ってきた布団にオーガ達を寝かせ、壺(リムル入り)を座布団に飾…失礼、置くと、シルシテイは武器の手入れを始めた。封印により使えない武器も手入れをする。いずれくる戦いのために、自らの武器を磨く…。
「シルシテイ様!お昼時ですがいかが致しましょう」
「じゃあここに持ってきてくれ。こんなデカブツ食卓に持ってくのも悪いしの」
「わかりました!ちなみに今日は湖で取れた魚のスープですよ」
「お、いいねぇ」
…そんなに高尚な思いじゃ無いかもしれない。
〜
side 三人称 ジュラの大森林 町のはずれのログハウス
〜
ログハウスにて、眠りについたオーガ達。その中の一人が目覚めた。名をクロベエ。オーガ達…いや、鬼人達の鍛治師である。見た目は前とそれほど変わらないが、強いて言うならば多少野性味が薄れていると言える。
さらにいうと見えない部分で凄まじい進化を遂げているが、ここでは省く。
「おや、起きたか。飯はそこにあるぞ、クロベエ君」
クロベエに声をかける者が一人。名をシルシテイ。みなさんご存知の褪せ人である。コイツは未だに武器の手入れをしていた。武器一本一本に十何分もかけてりゃ当然だが。
「あ、ありがたく頂きますだ。…その刀は?」
「これか、これは隕鉄の刀って物だ。重力に由来する力を使えるイカした武器じゃ」
「す、すごい…こんな武器オラ見たことないだ…!」
「他にも色々あるぞ。見てくか?」
「お願いするだよッ!」
「お、おう。じゃあ次は…これはどうだ。巨人砕き」
「で、でかい…」
別世界の不思議な武器達。
人ならざる者たちに対抗するため作られた武器は
材料であったり、形からして通常とは異なる。
降る星より生まれし者、凄まじい巨体をもつ巨人。
生まれた時から強い強者達を倒す為に狭間の人々は知恵を絞った。
その発想はクロベエに刺激を与えるだろう。
「次は…これじゃな。ミエロスの剣」
「せ、背骨…?悪趣味な武器だけども…」
「ギザギザだからな、敵の身体を引き裂く事によって出血を強いることができる結構いい武器なんじゃ」
「凄い発想だ、オラには真似できねぇ」
「真似なんてせんでいい、ここにある武器だって真似して作ったわけじゃないじゃろうしな」
〜
続いて目覚めたのはハクロウ。鬼人達の中で最年長の老人である。
しかし技量は恐ろしく高く、シルシテイの後ろに回り込んでその首を狙えるレベルの技量である(残念ながらシルシテイは首を切るより背中に突き刺した方が効くのだが)。そして進化した事で、なんと若返っている。死にかけの老人(スゴイ・シツレイ)から初老くらいまで若返った。
その技量はより研ぎ澄まされているだろう。シルシテイ危うし。
「目覚めはどうかね、ハクロウ殿。飯はそこにあるぞ。温めてあるから美味いぞ。あとクロベエはドワーフの鍛治師に会いにいったぞ」
「そうですか、有難う御座います。では遠慮なく。…武器の手入れをしているのですかな?」
「そうじゃな。数が多いからだいぶ時間が掛かっとる。朝からやってんじゃが、三割も終わっとらん」
「ほほほ、よほど多いのか、一つ一つ時間をかけているからなのか…」
「どっちもじゃな、がはは!」
「…つかぬ事をお伺いしますが」
「なんじゃ?」
「シルシテイ殿のあの凄まじい力、そして高い技量、一体どうやって手に入れたのですかな?」
「ああ、そりゃ簡単な話じゃ。腐った沼、水浸しの街と聳える城、ってか魔法学校、罠だらけの城館、金色の大地、疫病蔓延る火山、巨人が住まう雪山、etc.etc.…。そしてそこらに住まう化け物達をぶっ倒す為にあらゆる手段を使えるようにしたんじゃ」
「…」
英雄譚。ハクロウの頭にその言葉が浮かぶ。
その遥かな旅路。想像もつかない過酷な戦い。
あの技量も筋力も謎の力も、すべてそこで手に入れたのだろうか。
「まあ、詳しいことは覚えとらん。見た目より遥かに歳を取ってる故、ボケとるんじゃ。自分で言うのもあれだが」
「それはもう、しょうがないもの。受け入れるしか無いですじゃ」
「それもそうじゃな。がはははは!」
暫くして、ハクロウも家を出る。
曰く、情けないゴブリン達に修行をつけてやるとの事。
シルシテイは再び手入れに集中する。
傍らにある壺に眠る、友人の目覚めを待ちながら。
残りの人達(人でない)は次回。てか遅すぎる。
とんでもない遅筆です。許してください(懇願)
短めにして、ペースを上げたい。
そして、シルシテイはボケが入っている様です。
これは、リムル君にも話し忘れてる事がありそうやなぁ