「いつものとこでいい?」
「ええ、明日は何も予定ないし、とことん飲むわよ!」
「ったく、ほんとに酒好きだな。ほどほどにしとけよ?」
「わかってるわよ!この前はたまたま飲みすぎたってだけ!」
エウルアは前回ヨーナスと飲んだ際にとんでもないペースで飲み続け、帰宅するころには酩酊状態になっていた。
「それに今日は聞きたいことだってあるんだから!」
そんな彼女の抗議を聞き流しつつエンジェルズシェアに入る。
「よう、チャールズ。二階空いてる?」
「おう、久しぶりだなヨーナス。空いてるぞ」
「そんじゃ適当なつまみと蒲公英酒二つ頼むわ」
そう言ってエウルアとともに二階のテーブル席に腰掛ける。
「ほれ、蒲公英酒。あとつまみな。ハムとチーズしか残ってなかったけどいいだろ?」
「ばっちりだ。ありがとよ」
チャールズが持ってきた蒲公英酒をグイッと煽ると喉の奥が熱くなる。
「ぷはぁ〜、やっぱりこれだよな」
「そうね。やっぱりこれが一番美味しい」
「ところでさっき言ってた聞きたいことってなんだ?」
「あー、それなんだけど」
体をズイっと前に出してこう囁いた。
「あんた、いつから神の目持ってたの?」
──ギクッ
いつから気付いてたんだよ…
「2か月くらい前からかしら」
「いやさらっと心読むな!」
「あんたがわかりやすい顔してるからよ。そんなことよりいつからなの?」
「そんなことって…。まあいいや、俺が神の目もらったのは2か月半前だよ」
心を落ち着かせるように蒲公英酒を呷る。
「きっかけは…、なんだったかな。忘れちゃったよ」
「ふーん。まあ、大体予想つくけどね」
「え、マジで!?」
「ええ。多分だけど、『雷公騎士』に任命された時じゃないかしら。」
「…あー、いわれてみればそうだったかもなー」
「そうだったかもなーって…、あんたどんだけ自分に無頓着なのよ」
「しゃーねーだろ、あんまり自分に興味ないんだから」
「それはそれで問題だと思うけれど……」
エウルアが呆れたような顔をしている。
「俺は別にいいんだよ。お前ほど価値ある人間じゃないんだし」
「……っ!あ、あんたねぇ!」
顔を真っ赤にして怒鳴ってくるエウルアを宥めながら言う。
「あ、そうだ。」
「な、何よ?」
「この後、一曲どう?」
「…言うようになったわね。もちろんよ」
───
──
─
「ふう、飲みすぎたあ……」
「私もよ……」
2人でエンジェルズシェアを出て家に帰る途中、エウルアがそう呟く。
「明日大丈夫か?」
「ええ、なんとかなるわよ。」
「ならいいけどさ。この間みたいに夕方まで世話すんのはこりごりだぞ」
「うっさいわね。わかってるわよ」
「へいへい。そんじゃ帰りますか」
───
──
─
二人は闇に消えた。悲劇のような人生の中の小さな幸せを噛み締めながら。
だが真の悲劇は彼らに牙を剥いている。今にも喰い殺さんとして。
風が吹いた。自由を謳う風が。悲しみを乗せた風が。
それに気付く者は誰もいない。
ただ風車を揺らすのみである。
喜劇のような一瞬を、あなたと