肌寒くなり始めたあくる日の夜。一人の男がモンド城下を歩いている。
街ゆく人はその男を睨み、陰口を吐き捨てる。
「またローレンス…」「罪人が何でここにいるんだよ…」
(まあもう聞きなれたことだ)
それらを背に、『雷公騎士』ヨーナス・ローレンスはキャッツテールへ歩みを進めた。
「やあ、ディオナちゃん!奥空いてる?」
なるべく周りの客に気付かれないように小さな声で確認する。
─コクコク
どうやら空いてるみたいだ。奥も奥、端っこの方に進む。
「今日のおすすめは?」
「材料の残り的にミント系のしかにゃいにゃ」
「それだったらおまかせでお願いしていいかな?」
「わかったにゃ!」
キャッツテールにはたまに来るくらいだけど、なぜかディオナちゃんになつかれてる。
うれしい。だけど、俺に関わったらろくなこと無い。
それはディオナちゃんもわかってるはずなのにな。
この前だって───
「ディオナちゃん、無理に俺と一緒にいなくたっていいんだよ?俺のせいでディオナちゃんがいやな思いするのいやだからさ」
「あたしが一緒にいたいからいるの!文句ある?!」
って言われちゃったよ。ほんと優しい子だよな。
そんなことを思ってるとカクテルが運ばれてきた。
「はい、モヒートだにゃ!」
「ありがとね、それじゃいただきます」
まずは一口。うん、おいしい。
「おいしいよ。流石天才バーテンダーだね」
「えへへ、うれしいにゃあ」
頬を綻ばせながら彼女は続ける。
「お酒も酔っ払いさんも嫌いだけど、お兄さんに作るのはす…き、嫌いじゃないにゃ!」
「んふ~、ありがとね」
頭を撫でてあげると気持ち良さそうにする猫耳少女。かわいい。
「さてと、そろそろお暇しようかな?」
「もう行っちゃうの…?」
「また来るからさ、ね?」
「うう…、わかったにゃ」
最後にもう一撫でしてキャッツテールを出る。そして家に帰る途中、ふと違和感を感じた。
「なんだ……、この感覚」
体が重い。力が入らない。視界がぼやける。
「うおっ」
消えゆく視界の中でまばゆい光が見えた。……意識を失う直前、声を聞いた気がした。
『…………』
「……んっ」
目が覚める。知らない天井が見える。
「ここは……?」
「ようやく目を覚ましたか」
「……!?」
ベッドの横を見ると、『冬国の仕女』がいた。
「…あ?鎖?」
「すまないが縛らせてもらった。貴様は危険分子であるからな」
「は?」
わけがわからない。どうして俺は拘束されてるんだ。
「危険分子ってどういうこと?」
「我々にそれに答える義務はない」
「へいへいそうかいそうかい。じゃあおとなしくしときますよっと」
周囲を見てみる感じ、ここはファデュイの基地か何かなのかな。
「これから尋問を始める。貴様の対応次第で拷問にも変わるが、覚悟はいいか」
「へいへーい」
「では、始めようか」…………
「なぜ口を割らない?!ここまでされて何も感じないのか?!」
「いやめっちゃ痛いよ」
俺はお前たちには何も話さん!ってことで話さなかったら案の定拷問されてる。
「確かに俺は旧貴族の末裔だけどさ、痛みに屈して仲間の情報を売るほど腐っちゃいないのさ」
「くそ、このままだと……」
「そのまま諦めてくれれば嬉しいんだけどねえ」
「それはできない。我らにもやらなければならない任務があるのだ。」
押し引き問答を繰り返していたら、仕女に耳打ちするデットエージェント。
「ふむ、事情が変わった。これからモンドに”交渉”しに行く。ついてこい」
おいおいまじかよ。俺人質ルートじゃん。
「その前に貴様の傷を治さねばな」
「意外と優しいじゃん」
「こ、これは交渉に優位に立つためであって、貴様のためなどではない!」
「あっそう。まあなんでもいいけど」
さて、俺も”準備”しないと。
機を待ち、光を喰らえ。
投稿遅れて申し訳ないです。将軍ヒロインとか申鶴ヒロインとか妄想してたら遅れました。要望、リクエスト等があればそちらも執筆します。