旦那様、離婚しても大丈夫なんですか…? 作:hapihapi
と、そんな公爵に気付いたエレーナは公爵の体からパッと手を離して気恥ずかしそうに笑った。
「あら、ごめんなさい。私ったらいきなり抱きついちゃって……でも、本当に久しぶりねエリオット!元気にしていたかしら?」
まるで本当に久しぶりに会った友人のように気安く話しかけてくるエレーナに公爵は「なんだこいつ…私の求婚を断ったことを忘れているのか?」と内心苛立ちを覚える。しかし、苛立ちをぶつける前に何故隣国に嫁いだエレーナが公爵家にいるのか、問わなければならないと思った公爵はエレーナが触れた場所をわざとらしくパンパンと手で払いながら鼻を鳴らした。
「フン、お陰様でな。そんなことより隣国の大貴族に嫁いだお前がなぜここにいる?まさか隣国の大貴族と結婚して幸せになった姿を私に見せつけにきたのか?ハッ、だったら余計なお世話だ。早く私の前から消え失せろ」
公爵の辛辣な物言いにエレーナは一瞬きょとんとした表情を浮かべるが、すぐにクスリと笑って首を横に振った。
「いいえ、違うわ。私がここにきた理由は……いいえ。貴方の元に戻ってきた理由は……エリオット。貴方と結婚するためよ。」
「……は?」
予想外の返事に公爵は惚けた顔をする。しかし、そんな公爵を気にも留めずエレーナは公爵の手をぎゅっと両手で優しく握り締めて微笑んだ。
「ねえ、エリオット。私、貴方と離れてから気が付いたの。私の運命はあんな下賤な娼婦に入れ込んでいる男じゃなくて……不器用だけどいつでも私のことを気遣って優しくしてくれた貴方なんだって……」
そう言って熱っぽい視線を自分に向けてくるエレーナに公爵は頬を引き攣らせる。
(このクソ女は何を言っているんだ……?)
自分の求婚を断っておいていまさら結婚したいと曰う、あまりにも自分勝手なエレーナの言葉に公爵は怒りを通り越して呆れてしまう。そして、相手にするのも馬鹿らしいと思った公爵は使用人を呼んでエレーナをつまみ出そうと口を開いたと同時にエレーナは衝撃的な一言を落とした。
「それに貴方の妻になった子爵家の女……ダリア家の貴公子と再婚するんでしょう?」
その言葉に公爵の動きがぴたりと止まる。そして次の瞬間。気が付けば公爵はエレーナの胸倉を掴んでいた。
「うぐっ!?エ、エリオット!?何をするの!?」
「どういうことだ?」
「え、え?」
「どういうことだと聞いている!!」
「ど、どういうこともなにも……ダリア家の貴公子が貴方の妻を娶るって話で隣国の社交界は持ちきりよ……?」
困惑の表情を浮かべるエレーナはウソをついているようには見えず、エレーナの話が本当だと公爵は瞬時に理解する。だが、理解した瞬間公爵の心を占めたのは明確な『怒り』の感情だ。その怒りの理由が「まだ婚姻関係が続いているのに関わらず自分の許可なく勝手に再婚しようとしている妻に対する怒り」なのか、はたまた別の理由なのか公爵は自分でもよく分からなかったが、激情に突き動かされるままエレーナの胸倉から手を離して執務室から出ていこうとする。と、慌てた様子でエレーナが公爵の腕を掴んだ。