Side 狩澤 ナオヤ
=狩場・山地=
ナタネヤ村の近くの山地。
鉱物資源や様々な植生などに恵まれた人気スポットであり、ナタネヤ村の大きな収入源でもある。
同時に多くのモンスターが徘徊するスポットである。
そこにはある時から不格好なリノブロ装備に身を包んだ双剣使いのハンターが住み着いている。
文字通り、ナナシと呼ばれている野生児だ。
双剣使いで鈍重なリノブロ装備では考えられないぐらい身軽に起伏が激しい山の道を飛び回り、獲物を狩る。
遂先日までハンターの資格すらなく、勝手に狩りをしていたのだが――
普通そう言う事をしていればギルドナイトから注意勧告を受けるのだが理由はある。
まず実力がある。
単独で大型のモンスターを狩れるぐらいの実力はあり、既に上級レベルで装備がしっかりしていればG級だかマスターランクレベルであるらしい。
何よりも必要以上にモンスターを狩らず、下手なハンターよりも真っ当なハンターであるからだ。
だがとんでもないバカである。
他のハンターの依頼を騙されて代わりに遂行していたなんてのは珍しくはない。
物の価値も良く分かっておらず、鉱物資源などの重要な情報を他所から来た悪徳ハンターに教えてしまうなどやらかしていたようだ。
そんな事あってナタネヤ村のハンターは定期的にナナシの教育を行う事になった。
その中には俺やアリアも含まれている。
今は山地の真昼間のベースキャンプで俺やアリアと一緒にナナシと会話をしていた。
『俺、反省してる。だけど何が悪いのかどうか、分からない』
ちょっと片言気味でナナシは言う。
ナナシは大体こんな口調で喋るのだ。
「しかしどうしてここに住み着いているんだ?」
と、俺は何気なしに当然な疑問をぶつける。
『俺、気が付いたらここにいた。皆、良くしてくれた』
ナナシはそう返した。
『俺、何回かナタネヤ村にいった。けど馴染めなかった。だからこの山が俺の家』
「ふーん」
この世界の基準から見て貴族様のような生活をしていた現代日本の高校生だった自分にはナナシの感覚は想像もつかない。
正直この世界の一般人からも自分は感覚が逸脱している部分があるんだ。
あれこれ言って考え方が変わるとは思えないし、哀れんで考え方を変えようなどと言うのは失礼なのだろう。
「ふと思ったんだがその装備は何処で手に入れたんだ?」
ふとリノブロ装備と双剣について気になったので尋ねた。
アリアも「私も気になるわね」と興味があるようだ。
『ここに訪れたハンターがくれた』
「貰ったの?」
アリアが聞く。
『命助けた。その礼。他にも色々と持っている』
との事だった。
続けてこう言う。
『ここの狩り場、危険。だけど価値ある物もある。だからそう言う人間が後を絶えない。正直騒がしい』
「本当に山の主してるんだな、ナナシは」
『山の主?』
「ああ。山で偉い人って意味だよ」
『俺偉い?』
「ああ、偉いよ。俺なんかよりもずっと」
この世界の人間は皆自活していて偉い。
少なくとも日本人が忘れてしまった何かがこの世界にはあるのだろうと思う。
ナナシを見ているとよりそんな気持ちが強く湧いてくる。
「あなた自己評価低いのね?」
アリアに呆れたように言われてしまった。
『お腹減った。飯食べる?』
そう言ってリノブロ装備の不格好な兜をとる。
そこから薄幸系のクールな美少年の顔が現れた。
髪の毛はぼさったいが、それ以外は完璧だ。
「人気漫画のキャラと似てるんだよな――」
最初見た時はあまりのギャップに面食らったもんだ。
同時にあの作品を思い出してしまった。
「ニンキマンガ?」
「ウチの故郷で凄く評判がいい登場人物になんかソックリなんだよ、ナナシ」
ここで「ナナシみたいなのが出て来る物語ってどんなのよ?」とアリアが呆れたように尋ねる。
「そいつは上半身裸で二刀流使いでファンゴの被り物をつけているんだ。それ以外はほぼナナシと同じだ」
「俺もファンゴの被り物を被った方が良いか?」
と言うがアリアが「ナナシって新手のモンスターと間違われた事何度かあったんだから、やめときなさい」そう言って止めておいた。
ナナシは「そうか」と携帯用の肉をムシャムシャ食べている。
(生活がもう自己完結しているんだな、ナナシは)
などと俺はナナシを羨ましく思った。
「さてと、もうそろそろ一狩り行きますか」
気持ち切り替えるように立ち上がり、依頼をこなしに行く事にした。
「そうね。ナナシ、報酬弾むから案内お願い」
アリアに頼まれてナナシは「分かった」と返事をする。
山の主、ナナシはこの狩り場ではとても心強い。
これからもきっと山の主で居続けるんだろう。
新キャラは出すけどレギュラー入りになるかどうかは未定です。
ナナシはサブレギュラーぐらいが妥当ですかね?
ご意見ご感想お待ちしております。