――幼き日。僕はレース場に来ていた。
何やら凄いレースがあるらしく、人が沢山来ていたのを覚えている。
それをイマイチ理解できていない僕は、ただただ、人の波と熱に圧倒されるばかりで。
「……おとうさん、おかあさん、どこ?」
気付けば、僕は広いレース場の中で、一人ぼっちになっていた。
それに気付いた僕は、恐怖で涙が溢れそうになった。
けれど、僕はお気に入りのヒーロー、初代スターマンのソフトビニール人形を握りしめ、それに耐えた。
ヒーローはいつだって、僕に寄り添ってくれる。ヒーローはいつだって、僕の心を救ってくれる。そう信じていた。
けれど――
「あっ――」
気付けば、そのヒーローも僕の手から消えていた。
希望を失った僕は、無力だった。
無力な僕は、ただただ泣く事しか出来なかった。
けれど、なんとか涙と堪えようと、せめてもの意地で僕は大声で泣く事をしなかった。
こんな時こそ、自分の中の勇気を奮わなければならないと思ったから。
そうして大声で泣きたいのを必死に我慢しながら、僕はあちこちを彷徨った。
そして見たのは――
『――さぁ最終コーナーから直線に入る! 先頭は依然として――!』
皆が叫んでいた。皆が腕を振り上げていた。
思わず僕は、前を向いた。
気付けばそこは、所謂スタンド前の立ち見席、その最前列で。
『――■■■■■■■■だ! ■■■■■■■■がリードをキープ! 後続を全く寄せ付けません!』
僕は目を見開いた。いつの間にか、涙は止まっていた。
彼女は、先頭を走っていた。ただひたすらに、前へ前へと進んでいた。
後ろの一団も彼女に追い付こうと必死に追いすがる。しかし――まるで羽が生えているかのように彼女は走り、残酷な事にその差をどんどん広げていく。
不思議だった。そんなに走って、疲れないのか、と。
だが……間近に迫った彼女の顔を見て、その疑問は吹っ飛んだ。
彼女は、笑っていたのだ。
僕は圧倒されていた。目の前を駆け抜ける彼女の、その走りに。その――美しさに。
まるで、川を流れる清流が如き澱みのないその走りに、僕はすっかり釘付けになっていた。
『■■■■■■■■! 先頭でゴール!』
そう実況が高らかに叫ぶと同時に、その場にいた観客から歓声と拍手が巻き起こる。
その場にいる皆が、勝者たるその少女を称えた。
だが――僕は見たのだ。
「―――――――」
彼女が浮かべる、恍惚とした表情を。
僕には分かった。それが勝利から来るものではなく――思うが儘に走り切ったが故のものだと。
それでも僕は――いや、寧ろ彼女が自然体でそう振舞うからこそ、希望を抱いた。光を見た。
「……………」
気付けば僕は、涙を流しながら笑顔を浮かべていた。
多くの人はこれを、「勇気を貰った」と表現するだろう。
だが――僕にとってはそんな言葉すらまだ軽く思える程の感動に打ち震えていた。
そこには、テレビのヒーローでは得られない、確かな現実があった。
――その日、僕は本物の