シン・サイレンススズカ   作:K氏

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 グランドライブ、楽しいですね。しかもスズカさんの台詞が一々解釈一致していたので初投稿です。


第13話 悪党と悪名

 皐月賞が終わった数日後、僕はトレセン学園の校舎内を歩いていた。

 今後サイレンススズカさんの出走するレースの予定表であったり、ブルボンのトレーニングの指標となる映像資料をトレーナー室に取りに行っていたのだ。

 現在時刻は午前11時半過ぎ。

 サイレンススズカさんの次走に関しては既に申請書類は作成し終えてるし、その他の書類作業もそれ程無く、後は集めた資料類をチームの部室に持っていけば、何事も無ければトレーニングの開始時間になるまで暇が出来る筈であった。

 

「ねぇ、あの人……」

「あの人が……」

 

 何やらひそひそと話す声が聞こえる。少し視線を向ければ、ウマ娘達が僕の方を見て何かを話し合っているようだ。

 少しにこやかな感じだが、何故かチラチラとこちらを見てきている。

 何かゴミでも付いているのだろうか?

 そう思い、さり気なく髪と顔、そしてスーツの上半身を軽く撫で払う。

 外見をどうこう言われたところで気にもかけないが、それはそれとして何かしら汚れていたり、ゴミが付いているのは気になってしまうものだ。

 

 一通り払うと、そのまま彼女らの前を通り過ぎる。

 

「私もこの人のチームに入ったらさ……」

「えー、でも……」

 

「……すまないが、チーム探しなら他を当たって欲しい。僕にはまだ、今以上にメンバーを受け入れられる程の器量はない」

 

 聞こえてしまったので真面目に返したところ、彼女らは何故か気まずげにそそくさとその場を離れて行ってしまった。

 何かまずい事でもしただろうか? まぁ、どうでもいい事だ。

 

 そして、再びチームの部室を目指して歩き出す。

 

 しばらくして、前方からスーツを着た若い男二人に女一人が歩いてくる。

 学園では見ない顔だったが、胸元に明るく輝くピンバッジを見る限り、学園に入って間もない新人トレーナーなのかもしれない。

 

「おい、あれ……」

 

 一人の男がひそひそと何かを女に囁いている。

 その何かを聞いた女が、僅かに顔をしかめたのが見えた。

 

「ウソ……『寝取り屋』……」

 

 ……大方、僕の噂でも聞いていたのだろう。そしてそれは、きっと良い噂ではない。

 だが、気にする程でもない。

 そう思い、軽く会釈しながら彼らの横を通り過ぎようとして――

 

「あの、すいません! チーム・ベテルギウスの早永サンッスよねぇ!?」

 

 やたら気安そうに話しかけてきたのは、三人組の中で一番軽薄そうな男。

 スーツは前を開けているし、ネクタイも僅かにだが緩めている。髪は黒く僅かに跳ねている程度だが、この手の人間は雰囲気で分かる。恐らくは()()()()()の人間なのだろう。

 他の二人もそれを分かっているのか、「おいよせよ」と彼を止めようとしていた。

 

「……そうだが、何か用か?」

 

 そう答えると、男はニマァと笑みを浮かべた。

 色眼鏡で見るようでアレだが、こういう笑顔は余り好きになれなかった。

 そこには好奇心と、それから……侮蔑の色合いが見て取れたから。

 

「やー! 先日の皐月賞、サイレンススズカ凄かったッスねぇ! 大逃げであのハイペース! 付いたあだ名は『緑の逃亡者』! カンドーしましたよ、ええ! ……で、先輩はその担当なんでしょ? どんなトレーニングしてるんスかぁ?」

 

 ……便宜上敬語を使っていはいるものの、明らかに人を馬鹿にしたような口調。何を馬鹿にしているのかはさておいて。

 

 ――明らかに、誘ってるねぇ。

 

「……普通の事だ。スピードを活かす為にスタミナを鍛える。何も特別な事はしていない」

「ふぅん、特別な事、ねぇ」

「……何か言いたげだな」

「いえ、別にぃ? ただ――サイレンススズカの才能()()で勝てて、羨ましい限りだなぁ、と」

 

 ……見え透いた挑発だ。分かりやす過ぎて馬鹿馬鹿しくなる。

 

「おい蛭川、そんな言い方――」

「おっと、才能だけってのは言い過ぎでしたね。彼女だって努力してるんだし。ま、でもそんな感じなら()()()()()()()()()()()()()()()()()だったんじゃないのかなー、っと」

 

 諫めるもう一人の男に対し、なおも挑戦的に言葉を紡ぐ眼前のヒルカワと呼ばれた男。

 

「ああ、そうそう。ミホノブルボンでしたっけ。聞けば彼女も別のトレーナーの担当だったのを引き抜いたそうじゃないッスか。そんで、初担当にして無敗の二冠達成。やー、羨ましいッスなぁ!」

 

 言葉の端々に見えるのは明らかな嘲り。

 ヒートアップしていっているのか、次々と言葉を投げかけて来るヒルカワに対し、僕の方はと言えば……

 

「回りくどい。端的に話せ」

 

 そう言ってやると、思った反応と違って狼狽えているのか、ヒルカワが僅かに怯んだように顔を強張らせた。

 

「……いや何。そうやって有力なウマ娘を、しかも二連続で担当に出来るのって、普通じゃ考えられないじゃないッスか。それってぇ……もしかして、()()()()()()、掴んでだからとかじゃないんスか?」

 

 最後の方を、まるでコソッと訊くような仕草で告げてくるヒルカワ。……成程。この男は、僕がサイレンススズカさんやブルボンを担当したのには何か裏があるんじゃないかと思っているわけだ。

 ヒルカワの言う「そういうネタ」とは、つまるところ彼女らの前任が何らかの不祥事を抱えていたのではないかと、そう疑っているのだ。

 そう考えれば、この男が求めているものも自然と察せられるというもの。

 

 ――実に、実に不愉快だ。

 

「……成る程。僕がそういう情報に詳しい情報通で、あわよくばその情報を分けてもらいたいと、そう言いたいんだな?」

「や、そうは言いませんがね……」

「表立ってでは、だろう。プライド()()は立派なものだ」

「……あ?」

 

 それまでへらへらとしていた顔が一転、色が消える。どうやら、何かしらこのヒルカワの触れてはいけない所に触れてしまったらしいが……

 

「君ら、この学園に入ってどれくらいだ」

 

 僕はあえて、比較的話の通りそうなもう一人の男と女の方に向き、問いかける。

 

「え? えぇと、今年の3月に入ったんで、1ヵ月と少し、ですかね」

 

 男がそういうと、「私達同期なんで、皆一緒なんです」と女が付け加える。

 

「成る程、新米も新米。どこかのチームでサブとして就いて勉強中、といったところか」

「……それが、どうしたんスか」

 

 ヒルカワは、口元に弧を描いてはいるが、その形は歪で。

 口から上の表情は、分かりやすく彼の不機嫌さを表していた。

 

「何。これは僕の単なる想像でしかないが……ヒルカワとか言ったな。恐らく君、今のチームで補佐しているトレーナーに不満があるんじゃないのか?」

 

 その言葉にヒルカワは、ピクリと、一瞬肩を震わせる。

 

「どういう理由でかは知らん。興味も無いからな。だが、今のトレーナーの何かしらが気に食わなかった君は、偶然、かつての僕の噂を聞いたんだろう。そして、それをあろう事か、「弱みを握って担当を変えさせた」と勝手に解釈した君は、僕に訊く事で何か今のトレーナーのそういう情報を得られないものだろうかと考えた。そんなところか?」

「……はっ。随分想像力豊かッスねぇ、センパイ? 俺がそんな事を考えていると思ったんスか?」

 

 僕の問い掛けに対して返ってきた答えも、先程と同じく挑発的なものだったが……そこに込められた敵意の色が違っていて。

 しかし、振舞い方があまりにも……小悪党的過ぎる。根っこにある考え方が歪なのだろう。そこをどうにかしなければ、恐らく大成もしないタイプだ。早くて1年……いや、数ヵ月で辞めるかもしれない。まぁ、僕には関係の無い事だが。

 

「君が何を考えようと知った事ではない。君とて、僕をそういう事を考えている人間だと勝手に解釈しただろう。だから、僕もそうしただけだ」

「なんスか、違うって言いたいんスか? 『()()()()』が?」

 

 わざとらしく下からこちらを見上げるように睨んでくるヒルカワ。だが……

 

「ああ。少なくとも、自分の事しか考えていない君のようなタイプとは違うだろうよ」

「……んだと」

 

 また、ヒルカワの仮面が剥がれ落ちかける。

 何がこの男を支えているのかは分からないが……少なくとも、ペーパーテストには合格できても、トレーナーとして続けていけるタイプとは到底思えない。

 何故なら……

 

「では訊くが。もし、仮に君がミホノブルボンの担当になったとしよう。彼女はクラシック三冠の達成を希望している。君はどう指導する?」

「そ、そりゃあ、三冠が達成できるようにトレーニングするッス、けど……」

 

 ――全く、実に単純だ。

 

「……本人の適性距離も把握せずに、か?」

 

 僕の言葉を聞き、しかし理解が追い付いてないのか、「は?」と間抜けな声を上げるヒルカワ。

 ヒルカワの中では、無敗でクラシック二冠を達成したブルボンのイメージしか頭にないのだろう。

 しかし、女は僕の意図に気付いたらしい。

 

「蛭川さん、あの、これ引っ掛けなんじゃ……」

「は? どういう……!?」

 

 そこでようやく気付いたのか、ヒルカワは僕の方を睨んで来る。

 ……が、僕は構わず言葉を続ける。

 

「そこの彼女に免じて追加の情報をやろう。周囲の先輩トレーナーの評価、そして模擬レースにおける走り等の情報を総合したところ、データ上は「ミホノブルボンの適性距離は短距離である」という結論が出た。しかし、本人はクラシック三冠……つまり、2000mから3000mまでの距離を走るのを希望している。さぁ、それを踏まえた上で、君はどうする?」

 

 僕からの問いを受け、「ぐ……」と苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると……

 

「そ、それでも、クラシック三冠に向けての、トレーニングを……」

「何故?」

 

 ……我ながら、今のは意地の悪い割り込み方だが、しかし問わねばならない。

 

「そ、そりゃあ、三冠を取りたいって、言うなら……」

「口だけならどうとでも言える。だが君、トレーナーとして勉強してきたんだろう? なら……適性距離外を走らせる事がどういう結果を招く事になるのか、分かって言っているんだな?」

 

 それは、この男の覚悟を問う言葉であると同時に……ある意味で自戒の言葉でもある。……まぁ、この男の場合は良い格好をしたい、そう振舞って外面を良く見せたいだけであろうが。

 

 何故、ウマ娘の適性距離を判断し、その範疇で走らせる事を重視するのか?

 端的に言えばそれは、最大限に能力を発揮させる為であると同時に、身体的・精神的な負担を軽減させる為だ。

 

 短距離走者(スプリンター)が長距離に向いていないのは分かりやすい。単純に長距離を走り切るスタミナが足りないからだ。

 では、長距離走者(ステイヤー)が中距離を走った場合はどうか。当然、スタミナは持つであろう事は明白。では、中距離でも勝てるのかと問われれば、必ずしもそうとは限らない。何故なら、スピードとスタミナの比重が異なってくるからだ。

 簡単な理屈で、距離が短ければ短い程、その分速く走るスピードが要求されるし、長くなれば逆に走り切る為、ひいては最終盤にて速いスピードを維持する為のスタミナが必須となる。中距離はその合いの子という立ち位置で、スピードもスタミナも要求される。

 それ故にクラシック三冠一つ一つを分け合うという状況は多々あれど、その全てを達成出来るウマ娘は限られているのだ。

 

 ……だからこそ、多くのウマ娘がその称号に憧れを抱き、挑戦しようとする。ブルボンも、そんなウマ娘の一人だった。

 

 そして僕は、ブルボンの願いを叶える為に、彼女にトレーニングを施し、クラシック三冠を共に目指した。坂路トレーニングにより、短距離向きな彼女の肉体を徹底的に鍛え上げ、中・長距離に対応できるよう肉体改造を行った。

 

 ――ま、その結果彼女は怪我してしまったというわけだがね。

 

「……適性とは異なる距離を走らせるという事は、一歩間違えれば二度と走れなくなるような怪我にも繋がりかねない。だが、問題はそれだけじゃない」

「と、言うと?」

 

 興味深げに女が問いかけて来る。

 

「メンタルだ。多くのウマ娘は、勝つ為にレースに出る。だが、その能力を最大限に発揮できないようなレースに出て、負けたとしたら?」

 

 僕の質問に、三人は黙り込む。

 

「割り切れるなら、それはそれでいい。だが、そのレースがもし、自分の目指していたレース――例えばG1だとしたら?」

 

 そう聞き、想像を巡らせるように考え込む仕草をする二人。ヒルカワは……相も変わらず。

 

「そもそも適性が合わず出られないと、そう諦められるならそれも良い。その方が比較的心が傷つかずに済むからな。……だが、それで諦められるウマ娘は多くないだろう。だが、そうして合わないレースに出して、君は……いや、君達はどうする?」

 

 その問いに、答える事が出来ずにいる新米三人組。

 

「……クラシック三冠は、ウマ娘のみならずトレーナーにとっても栄誉な事でもあるのも、また事実だ。だが、間違えてはならないのは、主役はあくまでもウマ娘であり、トレーナーは彼女らを支える『杖』でしかないという事だ」

「……杖、ですか」

 

 男がポツリと呟く。

 

「そうだ。トレーナーの仕事とは、あくまでウマ娘本人が引き出しきれない才能を引き出す補助をする事にある。……だが、もう一つ忘れてはいけない事がある。それは、『杖』であるからこそ、トレーナーはウマ娘を身体的にも、精神的にも支えなければならないという事だ」

 

  僕の言葉に、ヒルカワ以外の二人の表情が強張る。

 

「その上で訊こう。君達が今背負っているものは、背負うべきは、あるいは背負おうとしているのは何だ? 己の夢か? ウマ娘の未来か? それとも……自分の評価か? ……まぁ、僕としては君らがどれを選ぼうと知った事ではないが」

 

 冷たいと言われるかもしれないが、しかし事実だ。

 実際のところ、どれを選んだところで上手く行く、上手く行ってしまうトレーナーというものはいるのだ。人は、そうした存在を天才と呼ぶ。

 そして、少なくとも僕はそうした人種ではない。凡人の域を出ない、二流が精々のトレーナーだ。ただ……たまたま出会ったウマ娘の才能に助けられているだけの。

 

「……んだよ、偉そーによぉ」

 

 ボソリと、ヒルカワが呟くのが聞こえた。

 

「そーゆうアンタだって、最終的にはミホノブルボンを怪我させちまったじゃねぇんスか? あァ? じゃあ、人の事言えねーでしょうがよ」

「おい蛭川! 流石に失礼だぞ!」

 

 男がヒルカワを制止するが、ヒルカワは頭に血が上っているのか、僕の方を睨みつけながら尚も続ける。

 

「んで止めんだよ。偉そうに言って来てっけどよ、結局運が良かっただけじゃねーのって話なわけ!」

 

「あーでも? 運が良くても腕がそこまでだから、怪我させてもしゃーないってか? そんなんで良く偉そーにできるッスねぇ?」

 

「まぁ? 俺らよりちょっとでも先輩で、ウマ娘の才能頼りでG1が取れたからって、調子に乗っちゃってるって事ッスかねぇ」

 

 ヒルカワは顔を歪めながら、あれやこれやと好き勝手に言って来るが、正直気にも留めていない。事実でもあるから。

 自分の事は自分が良く知っているし、そんな自分の事をけなされたとて、何ら気に障る事はない。

 

「そうだな。ブルボンに怪我を負わせてしまったのは僕の責任でもあるし、G1を勝てているのも彼女らの才能あってこそだ」

「……へぇ。素直に認めんスね」

「それで?」

「え?」

「それで、それがどうしたんだと訊いている」

 

 僕の問いかけに、ヒルカワが目を丸くする。

 ……正直、これ以上この男と問答をしたところで、無駄だと思っていた。

 この男の言葉の端々に、この男の自己中心的な内面が発露していたから。そういう人間は、意地でも自分を曲げようとしない。

 だが……それでも、問わねばならない。問わねば、ならないのだ。

 

 ――そうさ。ウマ娘のトレーナーは、早永信道の『友』の夢なんだから。

 

「……そういえば、お前。まだ僕の質問に答えていないだろう。それで、もし仮にミホノブルボンに中・長距離適性が無く、それでも本人が走りたいという意志があったなら。お前はどうするんだ?」

「そ、そりゃ、えっと……そ、そう! スタミナ! スタミナを鍛えて――」

「そこには当然、尋常ならざるトレーニングが必要となる訳だが。それによる怪我のリスクも、当然考えているんだろうな?」

「そ、それ……は……」

「彼女が怪我をした時、誰が矢面に立つのか。そんな簡単な事、分からないとは言わんだろうな?」

 

 「矢面に立つ」と聞いた瞬間、ヒルカワの顔が露骨に引き攣った。

 

 ……結局、その程度の器でしかないのだろう、このヒルカワという男は。

 ()()()()()()()()()()()()()()、まだどうなるかも分かりもしない未来に、勝手に絶望して。

 手に取るように分かる。この男の中で、如何にして自己保身を図るかの算段しか行われていない事が。

 

「もう一度言わせてもらう。僕は君らが……お前が何を選ぼうと、知った事ではない。だが、お前はお前一人でトレーナーなんじゃない。トレーナーである時点で、お前はウマ娘と共に在らねばならない。それがどういう意味か、分からんとは言わせん」

 

「お前、まさかこの世界が自分に都合の良いゲームの世界で、自分はなんだって出来る主人公とでも思っているんじゃないだろうな? ……ここは()()だ。僕らトレーナーは命を張る事は無いが……ウマ娘は違う。彼女らは、命を懸けて走っている。そして、下手な怪我をすれば二度と走れなくなる、そんな世界だ」

 

「そんな世界でお前が求めているものはなんだ? それらしい地位や名誉か? それとも金か?……ああ、面倒だ。ハッキリ言おう。この世界の主役は、どこまで行ってもウマ娘であって、トレーナーじゃない。そもそも自分の事しか考えられないような男がトレーナーをやるなど、烏滸がましいとは思わないか?」

 

 そんなつもりは無かったが、知らず知らずのうちに言葉がどんどん溢れて来る。

 言葉に怒りが滲んでいくのが分かる。

 だが……その怒りの根源は、僕が口で言っているような、情熱的で純粋なものではないのも、頭では分かっていて。

 

 ――そうだね。君の怒りは……借り物に過ぎないから。

 

「……お前が自分で言った通り、ウマ娘の為にやるなら、それもいいだろう。だが少なくとも、お前の態度からウマ娘を想うようなものは何一つとして感じられなかった。態度というものは実に雄弁だな。言葉にせずとも、為人(ひととなり)というものがわかるというものだ」

「……れよ……」

「そも、最初の目論見通り自分に都合の良い情報を得られたとして。他人を平然とけなすお前のような男に、誰が付いて行こうと思うんだ?」

「黙れよ……」

「その上で言わせてもらおう。……この仕事(トレーナー)を、無礼(ナメ)るなよ」

 

「黙れって! 言ってんだろォ!」

 

 突如として叫びながら、ヒルカワが僕の胸倉を掴んでくる。

 吐息が掛かる程にヒルカワの顔が近づき、思わず顔がしかめっ面になるのを感じる。

 

「さっきから聞いてりゃよぉ! 説教垂れてんじゃねぇぞ『寝取り屋』が!」

「おいよせヒルカワ!」

「っるせぇ黙ってろ!」

 

 激昂するヒルカワを、男が止めようとする。

 しかし、僕の服を掴むヒルカワの手の力は緩まない。

 

「どんだけ偉そうにしててもよぉ、結局他人ンとこのウマ娘を二度も引き抜いてんのは事実だろうがよ、ああ!?」

 

 分かりやすく凄んでくるヒルカワに、僕はただ――呆れる事しかできない。

 

 「悪名あらば罵倒してもいい」というその考え方の時点で、品性を疑う。

 形としては引き抜きのようではあるが、二度ともトレーナーへの合意は取れているし、そもそもウマ娘側の意志を尊重した上での事だ。

 そもそも他のチームやトレーナーの担当ウマ娘が移籍するというのは、実際のところままある事であり、過去に例がないというわけではない。

 そのいずれもが、トレーナーやウマ娘にやむを得ない事情があっての移籍であり、つまるところそれ自体に何ら問題性はないのだ。

 寧ろ、ウマ娘の自主性を重んじた移籍である以上、それを悪い事であるかのように語るのはあまりにもお門違いであろう。

 そういうのは、噂を流しだした何処かの誰かに言ってもらいたいものだ。

 

「そんな事しなきゃスカウトもまともにできねぇとか、とんだセンパイサマだよなぁ!?」

 

 厳密に言えばスカウトとすらも呼べない、川の流れに身を任せるかのような出来事の連続の結果でしかないのだが、そんな事言ったところでどうせ聞きやしないだろう。それに……実はさっきまで喋り過ぎて喉がカラカラだ。咳喘息の身としては、喉が渇くというのは非常にまずい。これ以上何かを話そうとすると咳ばっかりしてしまいそうだ。

 

「しかも? アンタ自分で言ったよな? G1を勝ててんのはウマ娘の才能あってこそだって! ……俺だってよぉ、そうゆうウマ娘に巡り合いてぇっていうかさぁ……分かるでしょ? 勝てる奴を抱え込まなきゃ意味ねぇんスよ、この仕事ってさ。それで食い扶持稼いでんだから。アンタだってそうでしょ?」

 

 恫喝しながら急に同意を求めてくるんじゃない、と言いたいところだが、咳がせり上がってきたのでやめた。

 

「ならさぁ、別にキョーリョクしてくれたっていいじゃないッスかぁ……助けてくれりゃ、アンタの汚名、濯ぐ事だって出来るぜ?」

 

 ……成る程。それが本当なら、この男は元々それなりに上手い事立ち回っていて地盤を築いているのか、もしくはバックに誰かお偉いさんがいるかのどちらかだろう。もしくはタダのハッタリか。

 ……まぁ汚名など正直どうでもいいし、協力する義理もないのだが。

 

「あ、そーだ! なんならアンタのトコに俺が移るってのはどースか!? んで、俺がミホノブルボンかサイレンススズカのどっちかを担当するんスよ! そうすりゃ俺も良い具合に経験積めるし、アンタの名声も上がる!お互いWin-Winの関係になれると思わないッスかぁ!?」

 

 ……唐突に何を言い出すんだ、この男は。

 

「ちょ、ちょっと、そろそろやめた方が……」

「今良いところなんだから邪魔すんなよ! ……で、どースかぁ? 悪い話じゃないでしょ!?」

 

 根が善良なのか止めようとする女を邪険に扱いながら、自信満々に笑顔でそう言い切るヒルカワに、僕は―――

 

「断る」

 

 きっぱりと、そう告げた。これぐらい短いフレーズなら、咳も出そうに無くて良い。まぁ、会話というのはそう上手く行かないものなのだが。

 

「……はぁ?」

 

 何故かは知らないが余程自分に自信があったのだろう。その上で僕の返事が予想外だったのか、ヒルカワは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 

「な、なんでッスか。俺、自慢じゃないッスけどトレーナー免許の試験で成績上位者だったんスよ!? なら――」

「テストと実戦が同じだとでも?」

「応用は利くじゃないッスか! あ、そうだ。ミホノブルボンはともかく、サイレンススズカの場合ならどうスか!俺、実は思ってたんスけど

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んスよ! 皆も言ってるでしょ? ()()()()()()()()()()()()()って!」

 

 ……そこまで聞いて、ブツブツ、と何かが千切れていく音が頭の中で響いた。

 これが、堪忍袋の緒が切れるという感覚だろうか。まだ切れきってはいないらしいが……

 

「多分、次はダービーに出るんスよね? だったら、()()()()()()()()()()()()()じゃんスか。俺に任せてもらえりゃ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を――」

 

 ……ブツン、と、そんな千切れる音がするのには、そう時間は掛からなかった。

 

「……おい」

「あ? なんスか? なんか文句でも――」

「今すぐその口を閉じろ。貴様如きがあのお方の崇高な名を、走りを、気安く語っていいと思っているのか?」

 

 ……正直、トレーナーという仕事を無礼たような態度の時点で腹に据えかねるところはあったが、まだ我慢が効いた。

 「勝った者が正義」という言葉があるように、トレーナーにしてもウマ娘に結果を出させる事が出来たなら、それは正しいと言えるだろうからだ。そのトレーナーの風聞や評判はともかくとして。

 しかし……サイレンススズカさんの事とあらば話は別だ。この無知蒙昧なる哀れな愚か者は、あのお方が過去にどれだけ苦しみ、その上で今の大逃げというスタイルで走れてどれだけお喜びになられたのか、まるで理解していない。にも関わらず、平然と「走りを矯正する」などとほざくこの男を、どうして許す事が出来ようか。

 僕にとって、彼のお方の意志による走り、そして()()()()()()()()こそが理想であり、不変の理であり、絶対だ。

 その孤高にして至高の在り様を称賛するならばともかく……貶めようなどと、許される筈がない。

 その安っぽい笑みを殴ってぶち壊してやりたい気持ちは、ないと言えば嘘になる。……が、僕は殴らない。

 それは、僕が敬愛する縁谷(エンヤ)(ツヅク)氏の理想に反する行為だから。この男は、話の通じない怪獣や侵略者ではない。同じ星に生きる、同じ地球人なのだ。

 それに、もしここで僕が感情的になって殴れば、サイレンススズカさんの名誉に傷が付く事になる。それだけは避けねばならない。

 

「な、何マジになって――」

「次にそんな軽口を叩いてみろ。()()()()()()()にしてやろう……誰の、とは言わんが」

 

 だから、理性的に言葉だけで留める。言外に「もしそのままふざけた事を抜かしたらお前の弱みを握ってやる」と告げるつもりで。

 

「ん、んだよ……脅してんスか?」

「事と次第によってはそれで済ますつもりはない、とだけ言っておこう」

 

 どうやら意図は伝わったらしく、思わず嫌味っぽく作り笑いをするが……自分がマスクをしていたのを忘れていた。

 一方で、僕の言葉を聞いたヒルカワの表情が、青ざめているやら赤くなっているやら、良く分からない色合いになっている。

 

「……センパイさんよぉ、調子乗んのもいい加減に――」

 

 

 

 

「――コラーッ! そこ、何をやっているのですか!」

 

 唐突に、甲高い少女の叫び声が廊下に響き渡る。

 なんだと目を向ければ、一人のウマ娘がこちらを指さしながら仁王立ちしていた。

 

「例えお天道様が見えない屋根の下でも、無用な喧嘩はこの学級委員長であるサクラバクシンオーが見逃しませんし許しませんよーッ!」

 

 いかにも熱血そうなそのウマ娘……サクラバクシンオーとやらが、そう叫ぶなりこちらに向かってダッシュで駆け寄ってくる。

 

 ……いや、彼女だけではない。騒ぎが耳に聞こえて来たのか、様子を見に来たらしいウマ娘達がチラホラと廊下に集まってくる。

 

 そんな様子に、流石に今のままでは分が悪いと判断したのか、ヒルカワは舌打ちしつつ、しかし乱暴に僕の胸元から手を離した。

 

「あっ! コラッ! 見ましたよ今! そのような乱暴は流石に見逃せません!」

 

 かなり真面目な性格なのだろう、サクラバクシンオーが、まるで母親のようにヒルカワに注意を促す。

対するヒルカワはバツの悪い顔をして、しかし一瞬で顔に笑みを作った。

 

「……いやだなぁ、バクシンオーさん。僕はただ、この人の胸元に埃が着いてたから払っただけですよぉ」

 

 ……成る程。普段はこんな風に、人の好さそうな人間として振舞っていると。

 

「やや? そうでしたか。それであればいいのですが、もう少し優しく払ってあげて下さいね!」

 

 ……正直、僅かにこのウマ娘の事が心配になってしまう。それこそ、口八丁な手合いに騙されてそうな……まぁ、そんなに関わらないだろうからいいが。

 

「では、失礼しますね、早永センパイ?」

 

 そう言いながら、こちらに頭を下げるヒルカワ。その視線には、明らかに敵意が宿っている。

 

「……ああ。君も、()()()()()()には気を付ける事だ。特に、()()()()()()()()()()()のには、な」

「……ええ、肝に銘じておきますよ」

 

 ピクリ、と眉を顰めながらも、あくまでも紳士的に振舞いたいのか、ヒルカワはそのまま去っていく。

 

「あっ、おい! ヒルカワ! ……すいません、蛭川のヤツ、ちゃんと謝らなくて……」

 

 ヒルカワに置いていかれた残りの新人達は、何故ヒルカワと一緒にいるのが分からない程に礼儀正しく頭を下げて来た。

 

「いや、君達が謝る事ではないし、僕の事であれば別にあの男に謝ってもらいたいとも思わない」

 

 サイレンススズカさんの事であれば、土下座でも足りないぐらいだが。

 

「……その、早永先輩も苗字で察せられたかもしれないですけど、彼、父親が元トレーナーで、結構有名な方で……」

 

 ……正直知らなかったが、まぁどうでもいい情報だろう。とりあえず無言で頷いておく。

 ヒルカワがあんな事を言いだしてきたのも、大方、親の栄光がプレッシャーでなりふり構っていられないとか、そんなところだろう。

 実際その通りらしく、ヒルカワの連れの女の方が、おどおどしながらそんな事を言っていた。

 

「……まぁ、だからどうとかってのは無いとは思いたいですけど……その、早永先輩、失礼ながら()()()()()()()なので……」

「おやっ、この方、有名な方なのですかっ!?」

 

 驚くようにこちらを見てくるサクラバクシンオー。

 その名前に反してまるで桃の花弁のような虹彩が、こちらの全てを見通さんとするかのように僕の姿を映し出す。

 

「え、えっと……そう! ミホノブルボンさんや、最近ならあのサイレンススズカさんのトレーナーなんですよ! そりゃもう、私達新人の間でも、トレセンに入ってすぐG1を勝った名トレーナーって事で有名なんです!」

 

 ……まぁ、サブトレーナーをやっていたのは此処に来てから大体1年ぐらいだけだっただから、入ってすぐ、というのもあながち間違いではないが……恐らく、彼ら新人の間では、別の意味で有名なのだろう。恐らくは、さっきヒルカワが言っていたような悪名汚名の面で。

 

「ややっ、貴方がブルボンさんのトレーナーさんでしたか! 私、サクラバクシンオーと言います! ブルボンさんの学友ですっ!」

 

 このサクラバクシンオー、どうやらブルボンの知り合いだったらしい。……ああ、思い出した。権藤先輩がブルボンをスカウトした同じ頃に、短距離で凄い奴がいるって話題になっていた、気がする。……確か、本人は「短距離のみはお断りします!」とか言っていたらしいが。

 

「聞けば貴方は、元々スプリンターだったブルボンさんが長距離を走れるようにトレーニングなさったそうですね! 素晴らしい! まぁ私も1200×3で3600mを走ったのですが!」

 

 何やら不思議な文言が聞こえたような気がしたが、気にせずスルーする。

 

「結局、菊花賞は取れなかった。僕の指導力不足だ」

「いえいえ、そんな事はありませんよ! 距離適性をものともせず克服させられるその腕、私のトレーナーさんも凄い人ですが、貴方も立派だと思います!」

 

 サクラバクシンオーの声音に熱が入る。ここまでの会話で見えて来た彼女の実直な性格上、嘘偽りのない言葉なのだろう。

 

「世辞でもありがたく受け取っておこう」

「はい! ありがたく受け取って頂けると幸いです! ところで、ブルボンさんは最近ちゃんと電池の補給が出来ていますか!? 最近私良くレースに出てて、ブルボンさんやライスさんと会えていなくてですね――」

 

 ……何やら不穏な言葉が出て来たが、どう答えたものだろうか。

 

 そう悩んでいると、ヒルカワの連れの女が急に「あっ!」と声を上げた。

 

「そ、そういえば早永先輩、お急ぎなのではないですか!? ほら、書類をお持ちなので……」

 

 別に急いでいるわけではないが……腕時計に目をやると、もう間もなく昼食の時間だ。

 そう意識すると、妙にお腹が空いてくる感覚がある。

 仕方ない。ここは一つ、彼女の言葉に乗るとしよう。

 

「……ああ、そうだな。サクラバクシンオー、と言ったか。その件についてはブルボンには僕から伝えておく」

「そうですか! よろしくお願いします!」

 

 真面目そうに……というか実際大真面目に頭をグイッと下げたサクラバクシンオーに、僕も会釈をし、その場を立ち去った。

 

 ……何故か周囲のウマ娘が、何か妙なものを見るような目でこっちを見ていて、少しだが居心地が悪かった。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……ふぅ、緊張した……」

 

 新人の女トレーナーが深い溜息を吐いた。

 

「どうかされましたか!? 溜息を吐いては、幸せが逃げていくと言いますよ!」

「あ、いえ、その……」

 

 言えない。まさか、早永信道があの名スプリンター、『驀進王』サクラバクシンオーをスカウトしようとしていた()()()()()()など。そして、それがどうやら見当違いだったらしい事も含めて。

 これは彼女の……というより同期組の共通認識のようなものだが、早永に付けられた『寝取り屋』という異名から、「早永信道は軟派な男である」というイメージがあったのだ。

 

 このトレセン学園には、所謂問題児と称される存在が何人かいる。

 有名どころと言えば空き教室のマッドサイエンティストコンビと幽霊が見えるらしいウマ娘の奇妙なチームがそうだし、早永もまたそのカテゴリに分類されているのだ。

 彼の場合はこうだ。巧みな話術で他所のチームのウマ娘を口説き落とし、自分のチームに加えてしまう、悪い男だと。

 そんな彼が、サクラバクシンオーを口説き落として担当契約を結ぼうとしている。二人の新人がそう考えるのは、当然の流れだった。

 だから、いざとなれば自分達がそれを防ごうなどと、そんな正義感が働いたのだったが……

 

「……でも、思った感じじゃなかったなぁ、早永先輩って。どっちかと言えば不愛想な感じというか」

 

 新人の男トレーナーが、早永の去った方向を見ながらぼそりと呟いた。

 

「でも、とても良い方のようでしたね! 流石はブルボンさんのトレーナー!」

 

 早永の噂を知らないらしいサクラバクシンオーは、にっこりと笑みを浮かべながら、自信有り気に彼に相槌を打つ。

 

「どうして良い人だって?」

「はい! ブルボンさんと話をしていた際に、あの方の事を「自分の夢を叶える手助けをしてくれる人」だと仰っていたので! なら、悪い人ではないでしょう!」

 

 この言葉に、男は「当のミホノブルボンがそう言っているなら、まぁ大丈夫なんじゃないだろうか」と思い、女は「寧ろ色々言い包められているんじゃないだろうか……でも実績はあるし……」と危惧しながらも悩んでいた。

 しかし、そんな彼らにも共通して感じた事があった。それは――

 

「……でも、なんでサイレンススズカの事になったらキレたんだろ……」

「だよね……マスクで表情よく分からなかったけど、目がマジだった、っていうか……」

 

 ミホノブルボンを引き合いに出して説教していた時の早永と、サイレンススズカの事で色々言われた時の早永は、まるで別人のように思えた。

 

『今すぐその口を閉じろ。貴様如きがあのお方の崇高な名を、走りを、気安く語っていいと思っているのか?』

 

 それは、おおよそ一般的なトレーナーの口から出るような台詞ではないし、どう見ても殺意が籠っていた視線もそうだ。

 まるで大昔の王様を描いた映画に出てくる、王に忠実な部下のような……もしくは、何かしらの宗教で神を崇める信徒のような……。

 そう言われるようなウマ娘を想像すると、どうしても『皇帝』シンボリルドルフや『女帝』エアグルーヴのような、高貴さを纏わせたウマ娘が想起される。

 しかし、彼らが新聞等で見たサイレンススズカのインタビューからは、そのような雰囲気を感じ取る事は出来なかった。

 

 ――そこで、考える。今日見た早永信道が彼らのイメージに反していたように。あるいは蛭川が『善良なトレーナー』という仮面を被っていたように。

 

(……もしかしてサイレンススズカも、実は何かしらヤバかったりする……?)

 

 唐突に無言になりだした二人の新人トレーナーを見て、不思議そうな顔をするサクラバクシンオー。

 

 考え過ぎかもしれない。考え過ぎかもしれないが……それでも彼らは、背筋が薄ら寒くなるのを感じてしまった。

 

「……と、とりあえず、仲裁ありがとう、バクシンオーさん」

「いえ! これも学級委員長の務めですから! ……ん? 仲裁? 喧嘩ではなかったのでは?」

 

 何度も左右に首を傾げるサクラバクシンオーを見て、新人達は思った。

 

 ――「あ、この子天然だわ」と。

 

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