【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話   作:ねをんゆう

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思い付きで書き始めたので書き溜めは殆どないですし、更新速度も多分そんなに良くないです。
ただ面倒臭い女です。
本当に面倒臭い女です。


被害者1:ロキ・ファミリア

「かはっ、ごほっ……!?」

 

灰色の艶髪に、黒く乾いた赤色が混じる。

崩れ落ちる女、それを前にした正義の使徒達。

 

「ふっ………は、はははっ………」

 

満身創痍、しかし掴み取った勝利。

それでもそこに喜びはない。

手と手を取り、笑い合い、それをすべき勝利ではなかった。

笑っているのは、打ち倒された女の方。

 

「……ああ。お前達の、勝ちだ」

 

正義を謳う少女達と悪を名乗る女との衝突が残した爪痕は、恐らく数日も経てば元に戻る。ダンジョンとはそういうものであり、そういった痕跡を残してくれないからこそ残酷であるのだと人は思う。

しかし確かに残った心の傷跡は、そして慟哭は、彼等の中に生き続ける。残り続け、繋がっていく。女の語る正義と悪に、その行き着く先への警告を、これからに望む彼等はただ静かに聞いていた。

 

「っ、アルフィア!どこへ……!」

 

「……私の亡骸は、灰に返すと決めている。あの子と、同じように……」

 

奈落の穴へと歩いていく。

終わりを悟り、死に場所を悟った。

悪くはなかった。

むしろ満足のいく終わり方だった。

ただ一つ、悔やむことがあるとすれば。

 

「……あの馬鹿娘は、怒るだろうがな」

 

一度でも勝たせてやれたら良かったかもしれないが、この道を選んだのは自分であり、アレに道を強要したのも自分だ。あの勢いでは死んだ後も追いかけて来そうだと少し恐ろしくもなるが、そうならないことを祈るしかない。

 

「さらばだ、正義の眷属達。さらばだ、オラリオ」

 

 

 

 

「……最後のヘラの眷属に、"悪かった"と、伝えておいてくれ」

 

 

「「っ!?」」

 

その言葉を残して、彼女は炎獄の中へと身を投じた。その言葉の真意を知ることは出来ず、意味を知ることも出来ず、ただ残された静寂に佇むだけ。

彼女のその言葉の意味を知るのは、それからまた7年後のことだ。つまり彼女達は既に世に居らず、その言葉を伝えることも出来はしない。故に女は怒る、怒り狂う。最後に告げられたその言葉を、知ることが出来なかったがために。

 

 

 

 

 

 

それは7年後のオラリオ。

ロキ・ファミリアの彼等が遠征から戻り、少しの平穏が取り戻された後に起きた事だった。日は暮れて既に夕方、各々が汗を流したり荷物の整理、報告などをしている頃合い。激戦を乗り越え、死の運命から逃げ切り、今日も生き残って帰ることが出来た。その安心感に包まれ、漸く達成感を感じ始めたところだった。

 

「ぐあっ!?」

 

「がぁあっ!?」

 

突如として外から聞こえて来た2人の男達の悲鳴。それに最初に気付いたのは執務室でロキに対する報告を行っていた幹部の3人。

 

「ん?なんじゃ、今の声は」

 

「なんや悲鳴みたいな声やったな、荷物運んどる途中で転けたんか?」

 

「それくらいならいいのだが……フィン?どうした」

 

「……………」

 

「………フィン?」

 

「……親指が痛い」

 

「親指が痛い?……痛い???」

 

「怪我でもしたんか?」

 

「いや、これは……まさか……」

 

 

 

 

「敵襲だぁぁあああ!!!!!ぐぁっ!!」

 

 

 

「敵襲やて!?」

 

直後、バァァアン!!!と大きな音を立てて開かれた玄関口の大扉。3人は咄嗟に立ち上がり、直ぐ様に意識を切り替える。

ファミリアの本拠地に対する直接的な襲撃、しかもド正面から。こんなことは本当に久しぶりというくらいの出来事で、ロキ・ファミリアがこうして大きくなってからは初めての出来事だった。今やこのような経験をしたことのない者達の方が多く、冷静になって対処の出来る者など、かつてそういった時代に生きていたフィン達くらいなもの。既に他の団員達からは混乱している雰囲気を感じている、いち早く指示を出さなければまずい。

 

「敵は1人……とは限らないか!ロキもついて来てくれ!状況が分からない以上、むしろ近くに居てくれた方が守りやすい!」

 

「お、おう!頼むわ!」

 

こうしている間にも階下からは団員達が返り討ちにされているような声や音が聞こえており、フィンはロキを連れて、ガレスやリヴェリアと共に階段を駆け降りる。

敵が何処の誰かは分からないが、大抵の敵であればこの3人が居ればどうにかなる。それは都市最強の"猛者"でさえもそうであり、それほどにロキ・ファミリア最上位3人の能力というのは今のオラリオに於いては飛び抜けている。ここ数年レベルが上がることがなかったとは言え、それでも未だその座が揺るがされることはなかった。

……そう、少なくとも、今のオラリオにおいては。

 

「「「「っ!?」」」」

 

「ほう、漸く知った顔が出て来たな……」

 

大扉が蹴破られ、何人もの団員達が気を失って倒れており、彼女の手にはLv.4のラウルが首を掴まれ持ち上げられている。彼は既に気を失っており、他の団員達同様に乱雑にその場で投げ捨てられて転がっていった。

 

「……アルフィア、なのか?」

 

リヴェリアはその姿をよく知っている。最後に見た彼女が着ていた黒のドレス。それはまさに目の前の彼女が着ているそれであり、流している長髪は以前の彼女より長くウェーブは掛かっていないが、それでも見まごうことなく"静寂"と呼ばれていたあの女と同じ灰色。そして彼女が纏っている雰囲気もまた、あの時感じたものによく似通っていた。

……しかし。

 

「"九魔姫(ナイン・ヘル)"……貴様は今、私をあの女と見違えたのか?」

 

「っ」

 

返って来たのは強い否定、そして殺意。

ガレスが前に立ち、フィンも同様にリヴェリアとロキを隠すように前に出る。しかし女の目はそれでも真っ直ぐに明確な怒りと共にリヴェリアを貫いていた。言われなくとも分かる。聞かされなくとも分かる。あの女は間違いなく……Lv.6以上の怪物であると。

 

「っ、ええい!!"静寂"と間違えられたくなければ、そのようなややこしい格好をするでないわ!!」

 

「……"重傑(エルガルム)"、腹が立つな貴様」

 

「は?」

 

「殴らせろ」

 

直後、"重傑"ガレス・ランドロックの頬にめり込む女の拳。そのまま二転三転と転がっていき、壁に激突するガレス。この街でも最高クラスの防御力を持つ鉄壁のドワーフ。そんな彼を殴っただけでなく、吹き飛ばした。それはただそれだけで凄まじい偉業だと言えよう。

 

「チッ」

 

反動が来たのか雑に手を振りながら掌にポーションをかけ始める女、人の家の中でビシャビシャとポーションを垂れ流すのだから普通に最低である。床がずぶ濡れだ。

流石にガレスもあの程度の攻撃に重傷を受けることはなく、普通に立ち上がり赤くなった頬を撫でているが、それにしても目の前のこの女。あまりに暴君が過ぎるのではないかと、この様子を見ていた誰もが同様にそう思った。

 

「……なるほど、確かに君は"静寂"ではないらしい。彼女は目を瞑っていることが多かったけれど、君はそうではないし、そもそも両眼の色が同じ青。色違いではない」

 

「あの女とて常に目を瞑っている訳ではない、むしろ瞑っている時は必ず何か理由がある時だ。……そしてロキ・ファミリア。私がこうして貴様達と相見えるのは、実に15年振りのことになる」

 

「15年だと!?」

 

15年、それは暗黒期よりも前。それこそ暗黒期に突入した原因となった事件が起きたのが、その15年前の話となる。

そしてそれはつまり、15年前に姿を消した者達の中に彼女が居たということにもなって。だとしたら彼女の正体も、なんとなくではあるが想像も出来てしまう。

 

「君は……ゼウスとヘラのファミリアの、生き残りなのかい?」

 

「生き残り……ああ、生き残りだろう。そもそも黒竜討伐などという話すら聞かされることの無かった、哀れで愚かな生き残りだ」

 

背後から彼女を捕えようとゆっくりと近付いていた団員の1人が顔面を蹴り飛ばされ、そのまま開かれた大扉の外へと吹き飛ばされていく。

……一応、死人はまだ出ていない。誰も彼もが意識を失っているだけ。ラウルを介護していたアキが頷き伝えて来る。そして何人かは武器を取りに行けたのか、武装の準備も整って来た。幸いにもこちらは遠征帰り、団員達も多くこの場にいる。数の暴力で取り押さえることならば可能だろう。

 

(しかし出来ればそうはしたくない、あまり大事にはしたくない。もし彼女が当時の"静寂"と同等であるのなら、最悪死人が出る)

 

故にあくまで対話で。

せめてなるべく怒りを沈めて。

実力行使はそれすら失敗してからでいい。

ヘラの眷属との正面衝突など、しないに越した事はない。フィンはそれを嫌というほどによく知っている。

 

「……目的は?」

 

「殺すことだ」

 

「それは、誰をかな?」

 

「あの女を殺した糞共をだ」

 

「………」

 

密かにロキがリヴェリアの方を見る。そしてリヴェリアは必死になってそれを否定する。あれは自分ではなくアストレア・ファミリアがやったことだと、アストレア・ファミリアの手柄であると。故にフィンもまたそれを利用することにした。この場を収めるにはそれしかない。

 

「……彼女を倒したのはアストレア・ファミリアの少女達だ、僕達ではない」

 

「ほう、ならばその小娘共は今何処に居る?」

 

「もう居ないよ」

 

「なに……?」

 

「5年前に闇派閥の罠に掛かって全滅した、だから彼女達はもうこの世には居ない」

 

「……死んだのか?」

 

「ああ、残念だけれど」

 

「…………………そうか、死んだのか」

 

「うん」

 

「……………そうか」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「…………ならば」

 

「なに、かな……?」

 

 

 

 

「………………………………死ぬか」

 

 

 

 

「いや待て待て待て待て待て待て待てぇい!!!!」

 

「ガレス!彼女を止めるんだ!!」

 

「思い切りが良すぎるじゃろうが!!」

 

「このっ、死なせるものか!!」

 

「どけこの虫ケラ共が!!私はここで死ななければならないんだ!!……離せクズがァ!!私に触るなドブ蛆虫共め!!!」

 

「口悪っ!!そんでもって力強っ!?フィンが持ち上がっとるやんけ!!」

 

「ぜ、全員かかれ!とにかく彼女を死なせるな!死に物狂いで取り押さえろ!!」

 

「「「「う、うおおぉぉおお!!!!」」」」

 

その後はもう、酷い有様だった。

団員達は吹き飛んで行くし、玄関はズタボロ、なんとか取り押さえたものの全員が満身創痍。しかも最終的にはガレスにフィン、ベートにティオナ、ティオネ、アイズなど、近接戦闘を得意とする上位メンバー全員で漸くその身体を拘束出来たのである。ちなみにその全員が満遍なく1発以上は殴られて吹き飛ばされていたりする。本当の本当に最低だ、地獄絵図だ。

 

「た、頼むから一度落ち着いてくれ!せめて、せめて事情を聞かせてくれ!頼む!!」

 

「黙れ年増ァ!貴様に話すことなど何もない!」

 

「と、とし……」

 

「チッ……いいから離せ貴様等!2秒以内に離れなければ館ごと魔法で爆破する!」

 

「「ひぃっ!?」」

 

「それはマジでやめろや!!」

 

「全員退避!」

 

「イカれてんのかこの女ァ!!」

 

言葉通り、本当に魔力を高めだした彼女を見て、フィンは慌てて退避の指示を出す。

遠征帰り、アイズも含めて疲労は大きい。正直これ以上の厄介ごとはお断りしたいところ。この暴君が落ち着いたかどうかは分からないが、一先ず全員が彼女から離れた。

それからまるで何事もなかったかのように起き上がり、パッパとドレスから埃を取る彼女。そうして見ていると本当に彼女が7年前に冒険者達の踏み台として消えた"静寂"にしか見えなくて、しかし人格的なことを考慮すれば、彼女が確かに別人であるということも分かってしまって。静寂を知っているアイズもまた、警戒するように目を細めて他の団員達の前に出る。それでもやはり彼女は"静寂"ではない。

 

「さて…………帰るか」

 

「って、待てやコラ!なにサラッと帰ろうとしてんねん!ここまでしたんやからせめて理由くらい話さんかいボケ!」

 

「あの女を殺しに来たら既に死んでいた、その女を殺した奴等も死んでいた。ならばもうここに居る意味もあるまい」

 

「殺しに来た……?君はそこまで"静寂"のことを恨んでいるのかい?」

 

「………当然だ」

 

「「っ」」

 

瞬間、彼女から放たれる先程までのものを更に超えるような凄まじい殺気と怒気。思わず全員が本気で身構えるほどの脅威。

一体なにがこれほど彼女を怒らせているのか。果たして彼女と"静寂"との間に一体何があったというのか。その目的が果たせなければ、自殺すら考えたほどの理由とは一体何なのか。

 

「あの女に……」

 

「あの女に……?」

 

 

 

 

「あの女に勝たなければ、私は一生この姿のままだろうがァ!!」

 

 

 

 

「……え?」

 

目の前にいたガレスがまた大きく殴り飛ばされた。本日3発目である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、君は"静寂"との賭けに負けて、彼女に勝つまで一生その格好を続けることを強制させられていると」

 

「……忌々しいことにな」

 

「なんというか。何をやっとるんじゃ、お主等は……」

 

「ええやん、よう似合とるで」

 

「殺すぞ乳無し」

 

「どつき回したろかボケ!!」

 

「落ち着けロキ」

 

あの後、急遽近くの部屋に押し込んで事情聴取をすることとなったロキ・ファミリア。部屋の外では彼女が暴れたせいで受けた被害の修繕が始まっているが、しかし目の前の女はそんなことも気にせず足を組んで出された茶を偉そうに飲んでいる。例え相手が神であろうと、変わることのない傲岸不遜。これと比べればまだ"静寂"には良識があった方だろう、正直性格が終わっていると言っても差し支えない。

 

「あのクソ女め……これ以上のない屈辱を私に与えておきながら、勝手に消え失せた。それを殺した娘共も居なくなったとなれば、私は一生このままだろうが」

 

「いや、その……うん、別に嫌ならやめてもいいんじゃないかな?」

 

「は?巫山戯るなよクソ小人族。私にあの女との賭けの約束を破れというのか殺すぞ」

 

「ああ、そういう……」

 

「面倒臭い奴よのぅ」

 

「いや、だが単に勝ち負けと言っても色々な解釈が……」

 

「貴様如きが私とあの女の勝敗に口を出すな幸薄」

 

「幸薄っ!?」

 

「なんやねんもうほんま面倒臭いわ」

 

変なところで真面目というか、無駄に拘りが強いというか、妙な執着すら感じてしまう。それくらいに酷いことをされたのかとも思ってしまうが、それよりも前に確認すべきことがあることをフィンは思い出す。色々と衝撃的過ぎて今の今まで聞いていなかったが、そもそも彼等はまだ目の前の女の名前すら知らない。

 

「あ〜、確か君は僕達と15年ほど前に出会っていると言っていたね。ヘラの眷属の一人であったとも」

 

「ああ」

 

「しかし申し訳ないが、僕達は君が誰なのかまだ分からない」

 

「まあそんだけ容姿を似せとったら分かる訳ないわな」

 

「その頃の君は幾つだったんだい?」

 

「12だ」

 

「12!?」

 

「嘘やろ小っさ!?」

 

「冒険者になったのは6つの頃だ」

 

「「「「………あの子か!!!!!」」」

 

「ようやく思い出したか」

 

そこまでの情報を掴んで、やっと思い出す。なぜ忘れていたかと言われれば、それは単純に彼女の話題で盛り上がったのが一時期だけの話だったからだ。少なくとも黒龍討伐の話が出た際には彼女は表舞台には居なかったし、終わった後も都市はそれどころの話ではなかった。

 

「ラフォリア・アヴローラ……確か二つ名は、【撃災】だったかな」

 

「私自身もう朧気だがな」

 

「最年少Lv.到達記録がまだ幾つか残っとったやんな、一時期めっちゃ有名やったやん。路上で小さい子供にボコボコにされた冒険者が何人も居ったって」

 

「……もしかして、髪色も変えているのかい?」

 

「まあな」

 

「す、凄まじい気合の入れようだな……」

 

「最初はウィッグを付けていたが、戦闘中は取れて使い物にならん。苦肉の策だ」

 

「そこまでしとんのに目の色は変えんのやな」

 

「消耗する、管理が出来ん、そもそも流通が少な過ぎる。最初はしていたが無理な物は無理だ」

 

「しとったんかい」

 

「やるならやるが徹底的過ぎる……」

 

「……もしかして、その口調もなのか?」

 

「これは自前だ、そこまでする訳がないだろう。あくまで格好だけであり、最初にさせられたことをそのまま続けているに過ぎん」

 

「最初の一歩がデカかったんやなぁ」

 

しかしこうなると不味いことも多々出て来る。

そもそもこの街においてアルフィアの存在は、やはりよろしいものではない。

元闇派閥の最大戦力にして大幹部、この街に大きな絶望を齎した。その姿を視認しただけで恐怖してしまう者も少なからず居るし、特にあの時最前線で戦っていた今の幹部層の人間達のことを考えれば、色々とトラブルが起きることも容易く想像出来てしまう。しかもこの性格となれば大きな争いに発展することも簡単に予想出来る。

 

「そんで……これからどないするんや?ほんまに帰るんか?」

 

「……一つ思い付いた事がある」

 

「変な思い付きでないといいのだが……」

 

「あの女と直接やり合うことは叶わなくなったが、確実にあの女より上だという実績を作れば、流石に堂々とこの格好をやめても文句は言われまい」

 

「先ずお主以外文句を言う人間がそもそも居らんのだがな」

 

「つまり黒竜を倒せば私の勝ちだ」

 

「「「「……………」」」」

 

何を言っているんだこいつは、と全員が白い目を女に向ける。いや、それは確かにいつかは成し遂げなければならない話ではあるが。少なくともそんな軽い感じで語る話でもない筈だ、それもそんなついでみたいな言い方で。死んだ彼女の元同僚達が聞けば普通に怒られるだろう。名案を思い付いた、みたいな顔をしているが、その名案には誰も共感することはない。

 

「ということで、暫くこの街に滞在することにする」

 

「いや、それはええんやけど……え、何処に住むつもりなんや?」

 

「まさかとは思うが……」

 

「流石にそこまで図々しいことを言うつもりはない、一応あの女から適当に寝泊まり出来そうな場所は聞いている。貴様等は私のレベル上げに付き合えばそれでいい」

 

「突然とんでもない要求がぶっ込まれたね」

 

「普通に図々しいんやけど」

 

「代わりに貴様等の団員のレベルも上げてやる、遠征に付き合ってやってもいい」

 

「「「「…………」」」」

 

それは普通にありがたい申し出だった。

彼女の実力はまず間違いなくLv.6を超えていて、性格はともかく、戦力としては申し分ない。今回の遠征で分かったことではあるが、今後更なる想定外に出会す可能性は十分にある。戦力の増強は必須であり、それが元ヘラ・ファミリアの2人目の天才児となれば、その性格の悪さを考慮しても受け入れる価値は絶対にある。むしろどれだけあっても足りないということはない、それが遠征というものだ。

 

「まあ、そういうことなら、むしろこっちからお願いしたいくらいやけど」

 

「そうか、ならば3日後にまたここに来る。……そうだな。あの何の長所も無さそうな愚図と、その愚図を介護していた黒髪の猫人、あとは口だけ達者な狼人の3人の予定を空けておけ。ダンジョンに連れて行く」

 

「ええと、ラウルとアキ、それとベートのことだね。僕達は連れて行ってくれないのかい?」

 

「貴様等には最前線の地獄を用意してやる、私がダンジョンに慣れるまで待っていろ」

 

「さ、最前線の地獄……」

 

「た、大変そうやなぁフィン達……」

 

「……ロキ、暫く禁酒しろ」

 

「なんでや!!」

 

「不公平だからだ」

 

「ウチ関係ないやろ!」

 

そうこう言っているうちに、女は荷物をまとめ始める。どうやら本当に改宗する気もなく、ここに居座りつくつもりもないらしい。あれだけ暴れておいてよくもまあこうも何事も無かったかのように帰り支度が出来るものだと思わなくもないが、そこを突くとまた何をされるか分かったものでもないので、ここに居る誰もがそれについては指摘しない。

 

「エルフ」

 

「ん?……っ、これは」

 

「迷惑料だ、取っておけ」

 

「っ、これは……魔宝石か!!」

 

「マジで!?しかもこれ最高級品やん!!こんなん魔法大国(アルテナ)でも早々見つからんやろ!どないしたんや!?」

 

「その魔法大国(アルテナ)から奪って来た物だからな」

 

「「「「……………」」」」

 

「また来る」

 

そうして彼女は、最後に最大級の爆弾を残して帰って行った。

売り物にもならないような最高級の魔宝石、あらゆる魔術師が喉から手が出るほどに欲する宝物。きっと奪われた魔法大国では必死になってこれを探しているだろうし、奪われたことを知った魔術師達も血眼になって捜索を始めているはずだ。

 

((((押し付けられた……))))

 

さっさと使うか、さっさと売り払うか。

何にせよ手元に置いておきたくないものを受け取ってしまった彼等は、凄まじく嫌そうな顔をしながらそれを丁重に仕舞い込むことにした。

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