【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話 作:ねをんゆう
静寂に包まれた廃墟の中へ、男の足音が聞こえ始める。
「……アレン、ヘディン」
土煙の向こう側から現れた巨大な影。
「ヘグニ、アルフリッグ……」
男は歩む道に倒れる同志達の名前を呼ぶ。
「ドヴァリン、ベーリング、グレール……」
前だけを見て進み、決して後ろを振り返ることのなかった男が……その場に立ち止まり、彼等の姿に悲痛の表情を浮かべて向き直る。
「お前は本当に女を待たせるのが好きだな、オッタル」
「………ラフォリア」
廃墟に佇む灰髪の女。
未だ2日前の怪我も治っていない様な姿をしているのに、感じる圧は先日の比ではない。
……思い出す、あの日のあの頃の彼女の姿を。
これだ、これがこの女だった。
こちらの足が思わず無意識に下がってしまう様な、圧倒的な強者の雰囲気。ただ佇んでいるだけでも精神を削る異様な威圧感。
(ああ、そうだ……)
オッタルはこの感覚がどうしようもなく好きだった。
だからこそ30回以上もその女の前に立った。
暴風を前に抗い続けるように、炎獄を前に叫びながら突き進むように、明確な格上を前にして、それでもと自分の弱さを知り、叩き付け、足を進める。自分がこれから冒険をするのであると、自分がこれから挑戦をするのであると、否が応でも思わせてくれる。この壁をどうしても乗り越えたくて、この壁をどうしても突き崩したくて、彼は今日ここに立つまでに至った。その過程がどうしようもなく好きだった。その過程の末に打ち崩したこの女の姿を想像することが、あの頃の自分の常だった。
「……そうだ、私はお前のその顔が見たかった」
「ラフォリア………決着をつけよう」
オッタルが背中から取り出したのは、魔法弾を放つ青色の大剣……ではない。もっと巨大で、もっと厳しくて、とてもではないが魔法など放つとも思えない様な頑固な代物。
着ている物も7年前のザルドとの一戦を思い出させるような鎧ではあるものの、それは決して特別魔法に強い物ではない。
「いいのか?そんな装備で」
「……この15年間、お前を倒すためだけに多くの装備品をかき集めた。大金を叩き、モンスターを殺し、これだと言う物も漸く見つけた」
「私には到底そんな代物を、今のお前が身に付けているようには思えないがな」
「……だが、いざこうしてお前の前に立つことを考えた時、そんな装備があまりにも頼りなく感じた」
「ほう」
「こんな物でお前を倒せるのか?こんな小細工でお前を超えられるのか?そうして超えたところで、その勝利に何か意味はあるのか?………ない、ある筈がない!お前という存在を乗り越えるために、そんな小細工は必要ない!!」
「………ふふ、脳筋め」
故に、使うのはこの身体1つ。
鎧があろうと、魔法があろうと、その全てをただこの身体一つで打ち破る。オッタルはその覚悟を持ってここに立っている。
故に求めたのは硬さ、自身の堅牢な意志にも何処までも喰らいついてこられる様な鋼鉄の武装のみ。それ以外には何も必要ない。最後のその瞬間まで、この手に残っていてくれるのであれば、それ以上は何も求めない。
「オッタル、お前はこの勝負に何を賭ける」
「……"最強"を」
「ならばオッタル、お前はこの勝負に何を求める」
「……ラフォリア・アヴローラ、お前という人間だ」
「ほう」
「お前の思い、お前の記憶、お前の願い。俺にはそれが何一つとして分からない。……故に、お前自身に聞くことにする。今度こそ俺は、お前という人間を、理解したい」
人が聞けば告白とも言えるそんな言葉を、本当にこの男は単純な感情で言うのだから。そんなんだから脳筋だのなんだのと、周りから馬鹿にされるのだ。女神フレイヤが聞けばなんと言うのか、仮に彼の同志達が聞けばどうするだろうか、その辺りを考えていないのだから馬鹿なのだ。
……だからまあ、それに対するラフォリアの答えは。
「やれるものならやってみろ、図体のデカいクソガキ。その馬鹿みたいに鍛え上げた肉体で、私という壁を乗り越えて見せろ」
「当然だ……!!」
そうしてこの日ようやく、最強と最凶が衝突した。
15年の時を経て、奇跡とも言える過程を経て……男と女は、交わった。
「……なんだい、あれは」
「これがLv.7同士の、戦い……」
「馬鹿げとるな……」
「格が違うとはこのことか……」
フレイヤ・ファミリアを囲い込むようにして配置された冒険者達、既に避難誘導は完了し今はその行末を見守るだけという形になっている。
そんな最中で始まった、Lv.7とLv.7のぶつかり合い。
都市最強が全身全霊をかけて挑む、15年ぶりのリベンジ。
それを屋根の上から見守っていたリヴェリア、ガレス、フィン、シャクティの4人は、信じられないような物でも見るような目でそれを見ていた。
『ウォオオオオオオ!!!!!!!』
"猛者"の一振りで空気が弾ける、突風が巻き起こる。しかしその威力でも足りず弾き飛ばした"撃災"が、今度は右手の剣と左手の魔法で反撃を開始する。
物理攻撃は通用しない、しかしそれにも許容量というものが存在する。"猛者"が狙うのは単純にそれだけ、最大威力の攻撃をこれでもかというほどに叩き付ける。一方で"撃災"は敵の強靭な鎧と肉体を崩しに掛かる。いくらLv.7の"暴喰"の剣技を使えど、散々にそれを喰らった過去のある"猛者"にとっては有効な一打とはなり得ない。それ故に魔法による爆破、それによる削りと目眩し。長期戦になるほど"猛者"が不利であり、しかし体力的な問題を考慮すれば時間を稼ぐという手段も決して悪いものではない。
「ハァッ!!」
「っ……!」
"猛者"が剣を叩き付け、大地を破る。
そうして浮き上がった女の足元、"猛者"はそこを狙って攻撃を仕掛けた。足元であれば反射の魔法は掛かっていないと、そう考えたのだろう。……しかし女の口が弧を描く。
「爆砕(イクスプロジア)ーーー撃災(カラミティ)」
「っ!!!!」
女が自分の身体で隠すようにしていた右手、持ち上げたそこにあったのは脈動する魔力の塊。剣は地面に突き刺していた、破壊された床石と共に彼女の横に浮かび上がっていた。
それに気づけず、いや、隠されていた。
「ぐぉぉあっ!?」
"猛者"を凄まじい蒼の爆風が襲い掛かる。
身体を焦がし、臓物を揺らし、鎧を焼く。
腰を落とし、歯を食い縛り、大剣を盾にしてでもその爆風から身を守る。
月の光は既に消えていた。
状況は悪い、時間が経つにつれて"猛者"の身体ばかりが削られていく。一方で"撃災"の身体には未だ傷一つなく、焦りばかりが募っていく。
しかし最初から決めていた。
勝ち筋など一つしか残っていなかった。
故に焦っても見失いはしない。
ただ自分にすべきことをする。
それはつまり拳に力を入れ、巨大な大剣を掲げ、それを目の前に振り下ろすだけ。"撃災"の鎧の許容量を超えた、純粋な力を叩きつけるだけ。
『オオオォォォォオオオオ!!!!!!!』
爆風を切り裂き、そのまま女に大剣を叩きつける。弾き飛ばされては、叩きつける。弾き飛ばされる反動を全身で堪え、それ以上の威力を持って次へと繋げる。……猛撃、獣化した"猛者"の乱撃はその一撃一撃が中層の階層主程度ならば致命的な損傷を与えられるほどのものだ。
それでも"撃災"の鎧は破れない。
それでも彼の目の前にある壁は崩れてくれない。
「爆砕(イクスプロジア)」
「ゴオァッ……!?」
全身を囲うようにして範囲指定された爆破魔法、"猛者"の全身が一瞬にして炎獄に包まれる。鎧は爆ぜ、衣服は焼き切れ、全身が一瞬その反動で停止した。
「意識を途絶えさせている場合か」
「ッ!?」
顔面に叩き込まれた"撃災"の蹴り、フラつく"猛者"、それでもなお倒れることはない。肉体も、精神も、この程度でブレるほど柔ではない。あってたまるか。
「……まだだ、まだだ!!!」
「当然だ」
"猛者"のギアがもう1段階上がる。
彼自身も、これを待っていた。
『アァァアアァァア!!!!!』
限界を超えたはずの彼に、再び活力が戻る。
先程までより破壊力も防御力も格段に上がる。
幾度も反射と剛力によってズタズタになっていた全身の筋肉が再び膨張する。
【銀月の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪を拝命せし】
「!」
【駆け抜けよ、女神の……
『爆砕(イクスプロジア)!!』
「ゴッ!?」
詠唱を紡ごうとした"猛者"の口内が爆ぜる。
指定した空間は詠唱を行うために開いた彼の口の中、驚いた彼は思わず口の中に広がる自身の血液に咽せて顔を歪める。
……しかし、それは決して悔しさばかりではない。
彼は嬉しかった。
彼の心は高揚している。
自分の味わったことのない技の味。
未だそんな手段が残っていたのかと。
未だそんな魔法殺しの手段を持っていたのかと。
目の前の女がそれを使って阻止しなければならないほど、今の自分は脅威になれているのだと。嬉しくて嬉しくて堪らない。
追い付けている。
追い詰めている。
いつも無表情で立っていただけだった女が、今この瞬間、自分の攻撃の威力を少しでも軽減するために真剣な表情で足を動かしている。いつも見下ろされていたばかりの女と同じ高さで、自分は今その目の炎を感じることが出来ている。
『ラ"フ"ォ"リ"ア"ァァァアアアアアア!!!!!!!』
『来い!オッタル!!』
最早誰も近付かない、近付けない。
倒れていたフレイヤ・ファミリアの団員達は、Lv.5以上の冒険者達がフィンやガレスも含めて決死の覚悟で救い出したが、彼等でさえもこれ以上に近付くことなど出来なかった。
……死人が出ていないのは、偶然なのか、はたまた必然なのか。青褪めた表情で彼等の戦いを見つめる子供達、しかし一方で神々はそんな彼等の奮闘に目を輝かせる。欲のためでもなく、正悪のためでもなく、ただ相手に負けたくないというあまりにも純粋な心から成るこの果たし合いは、彼等にとって何よりも美しく見えたからだ。
それは当然ながら、彼自身の主神であっても。
「妬けちゃうわね」
そう呟いたのは、この騒動の原因とも言える美の女神:フレイヤ。
バベルの上からこの騒動を見ていた彼女はロキに強引に連れ出され、今この場で行末を見守っている。心の底から歓喜の声を上げながら、剣を振るっている己の眷属に、称賛と、嫉妬と、複雑な想いを抱きながら。
「何が"妬けちゃう"やねん!こっちの方が焼けそうやわボケぇ!」
「いたっ……なにするのよロキ」
「なにするのやあらへんがな!!それが自分とこのファミリア滅ぼされようとしとる奴の言うことかいな!!」
「……だって別に、あの子は理由がないと無闇に殺したりしないでしょう?その理由を作ってしまったから、私は眷属を失ってしまったけれど」
「……なんや、恨んどらんのか?」
「恨んでるわよ、けど私だって自分のミスくらい反省する。今のあの子がオッタルに勝てる筈がないと踏んで私の前に連れて来るように指示をしたけど、それがまさかこんなことになるなんて……本当に駄目ね、下界は異常事態(イレギュラー)が多過ぎて」
「せやからこそ面白いんやろ」
「そうね」
そんな2柱の会話を近くで聞いていたフィンは俯きながら頭を掻く。
結局のところ、この騒動の火種となったのは、女神フレイヤがラフォリアを欲しがったこと。その指示を受けたオッタルが直前にシャクティから例の話を聞いており、そこに必死さを付け加えてしまったこと。
女神フレイヤがどうして彼女を欲しがるのか、彼女をどうするつもりなのかは分からないが、きっと彼女自身にとってもこの事態は想定外が過ぎる状態なのだろう。もしかすれば彼女もまた、オッタルがここまでラフォリアに執着していると気付いていなかったのかもしれない。
それほどにオッタルは15年前のあの日から、2日前のあの日まで、彼女に対しては何の言及もして来なかった。7年前にザルドを前にしたあの時でさえ、彼は彼女について聞くことはなかった。女神への愛に全てを捧げ、その思いを封じ込めて来た。ラフォリアも面倒臭いが、オッタルも相当な物だ。だから今、こうしてそんなものを見せられてしまったフレイヤは反省をしている。自分の最も近くに居たはずの眷属の真意すら見通せなかったほどに、自然と目を向けられていなかった過去の自分に対して。
「……好きになさい、オッタル。この件は貴方に預けるわ。私の命令や指示なんて、今の貴方には邪魔にしかならないでしょう?」
ラフォリアの剣が砕け散る。
オッタルの大剣も限界が近い。
それでも決して互角ではない、それは理解している。
「まだやれるだろう!!」
「っ!!」
「まだ!!走れるだろう!!」
武器を破壊されたラフォリア、しかし彼女は直ぐ様に近くに落ちていた団員達の2本の槍を足で蹴り上げ、それを両手で待って構える。
ラフォリアの本質は魔導士ではない。
魔導士ではアルフィアには勝てないからだ。
故に彼女の目指す理想スタイルは戦士、ステータスもまた徹底的に万能に振っている。剣技をアルフィアと同等にまで持ち上げた後、剣技以外も実戦で使える程度には磨いた。磨けた。なぜなら彼女は間違いなく天才であったから。天才であっても更に上の天才を目指し、決して努力を怠ることのなかった秀才でもあったから。
「グッ、ォォォオオオオオオオ!!!!!」
ラフォリアの高速の槍捌きにより、オッタルの傷が増え始める。
ラフォリアは10年近くの闘病生活のせいで体力がないが、それよりもオッタルの受けたダメージの方が今この瞬間では大きい。オッタルのスキルによる治癒の発現もこれを覆すほどのものではなく、むしろ獣化を発動したことによって大きく自身の体力も減らしてしまっている。彼の攻撃の威力も弱くなっていくばかりだ。
……このままでは負ける。
オッタルにもこれ以上の隠し球はない。このまま徐々に削られ続けて、敗北する未来は容易く想像できる。
……だが。
「ガァッァッ!!!!」
「っ!?……ガハッ!?」
槍が放たれた瞬間、オッタルはそれを正面から迎撃し、弾き飛ばした槍を彼女の腹部にぶち当てる。
「げほっ、げほっ…………チッ、やはり使いにくいか……」
「ハァ、ハァ……」
ラフォリアの反射の鎧は、酷く曖昧な性質を持っている。
物体を持ち上げる際に掌で弾いてしまうということは無いし、そうして持ち上げた物体は何故か反射の性質を帯びることはない。それでいて持ち上げた物体をそのまま自分で自分自身の身体に打ち付けたとしても、ダメージは通る。
つまりこうして彼女が持っている武器を弾き、それを彼女自身に当てることが出来れば、ダメージはそのまま通る。
これはオッタルが30戦を超える戦いの中で確信した事実だ。それを知っているからこそラフォリアは扱いやすい短い剣を多用するし、攻撃を受ける際には決して武器で受けずに自らの体で受ける。
決して彼女は無敵ではない。
「ならばこんな物はもう要らん!」
「くっ……ガァッ!?」
ラフォリアが武器を捨て、その右腕で思いっきりオッタルの脇腹を貫く。彼女の反射は、決して防御だけに秀でたものではない。反射は外部からの攻撃のみに反応し、内部からの攻撃はそのまま相手に通る。故にラフォリアの拳の威力は単純に2倍、いくらオッタルのステータスがあったとしても大きなダメージは避けられない。彼女の顔面への蹴りがあれほどオッタルにダメージを与えていたのも、それが理由だ。
「なっ!?」
「まだ……だ……」
……それでも、何度も言うようであるが、彼女の反射魔法は決して無敵という訳ではない。
「ま"た"や"れ"る"!!!!!」
自身の腹部に突き込まれた拳をオッタルは唇を噛み締めて強引に耐え、その右手をゆっくりと自身の手で掴み取る。掴み取れる。
速度をつけて掴みに行けば弾き飛ばされるが、しかしこうして一定以下の速度であれば彼女に触れる事は出来る。反射が反応する対象にも条件があることを、オッタルは知っている。
彼女に呪術が効くように、彼女に毒が効くように、彼女には鈍足で発動する拘束が通用する。
「貴、様……!!」
「グッ、ガァッ……!!」
拘束されたラフォリアは、とにかくオッタルを蹴り付けた。その顔面に拳を振り抜き、更に拘束をしようとしてくる左腕を肩部の骨を粉砕することで機能停止させる。全身に青痣が出来るどころか、肉体が弾け飛ぶのではないかと思うほどの拳打。……それなのに、どうしてもその右腕だけが振り解けない。万力のように締め付けてくるそれだけが、どうしても振り解くことが出来ない。
「ア、ガァッ……!!」
「っ………いい加減に、壊れろ!!!」
顳顬(こめかみ)に叩き込まれた最大威力の蹴り。
漸く解き放たれたラフォリアは距離を取るが、右腕の骨が破壊され、息は荒い。対してオッタルは既に意識があるかどうかも怪しく、全身に凄まじい傷跡が刻み込まれているが、それでもなお間違いようもなく立っていた。全身から熱を放射して、ミシミシと音を立てるほどに大剣を握り締めて、全霊で。
「フ、フフ……けほっ、けほっ………バケモノめ……」
最早、彼は執念だけでそこに居る。
ただ目の前の女を打ち下すために、無意識の状態でここに居る。
彼の目の中に、頭の中に、残っているのは目の前の女だけだ。
それ以外のことなど、かなぐり捨てた。
かなぐり捨てなければ届かない境地だと、覚悟を下した。
『ーーーーーッッ!!』
「………来るか」
最早剣の状態すら保てておらず、殆ど鉄塊と化しているような大剣を持って、構える。
これが正真正銘、彼の最大であり、最後の一撃。ラフォリアはそれに対して何もすることはなく、ただ同じように腰を落として両手を十字にすることで、迎え撃つ態勢を取るだけ。避けることなど出来るはずもない、そんな勿体のないことなどするはずもない。
オラリオの冒険者達も何かを察したのか、全員が揃ってその場から距離を取り始めた。フレイヤとロキすらも、フィンやガレス達の背後に隠れる。
これが極地にまで達した意地。
肉体の限界を超えてなお、意識と精神の垣根を飛び越えてなお、この男は立ち上がり、放つのだ。彼が今日まで振るってきた剣の中で、最強で、最大で、至高とも言えるほどに研ぎ澄まされた……全身全霊の一撃を。
『ーーーーー』
「………心配しなくとも、お前の全てを受け止めてやる。いいから来い、馬鹿者」
『…………!!!!!!オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
口の中を破壊された彼は、それでも都市全体を揺らがせるほどの咆哮を持って踏み出した。彼の1歩はそれだけで地面を破壊し、彼が右腕だけで持ち上げた大剣はあまりの熱量に発火する。全生力を込めたその一振りは、唸り声を上げながらラフォリアの元へと迫った。
避ける避けない以前に、そもそも避けられる物でもなかった。こうして目の前にすれば、それは当然。最早目視することも難しい、その脅威は完全にバロールと相対した時を超えている。否、あんなものと比較することすら烏滸がましい。これほどに美しい一撃を、ラフォリアはこの27年の生の内に一度たりとも見たことなどなかった。
「本当にお前は………………泥臭いな」
血塗れになって、泥に塗れて、なおここまで他者を魅了できる男が一体この世にどれほど居ようか。故にラフォリアはその一撃を彼と同様に、全身全霊を以って迎え撃つ。
ラフォリアの反射の鎧に、灼熱の鉄塊が衝突する。
瞬間、生じるのは爆発。
それは決してラフォリアが魔法によって生じさせたものではなく、莫大なエネルギーが二重に生じ、衝突したことによって生まれた破壊の嵐。それによって揺れたのはオラリオだけでなく、ダンジョンでさえもそうだ。今やオッタルのそれはLv.8を超える脅威的な破壊力を生み出しており、それと全く同じ威力の破壊と衝突したのだから、爆風だけで冒険者達が吹き飛ばされてしまったことも当然の話。
そして吹き飛ばされたのは彼等だけでもない。
起爆地点から前後に数百m、残っていた建物に突っ込んだのはそれを引き起こした元凶とも言える2人。
オラリオは散々だ。
巻き込まれた者達も疲弊し切っている。
だがこの瞬間、僅か1時間にも満たない抗争は終焉を迎えた。
この抗争の勝者は……
「………ぷっ、くっ……くはっ、はははははははっ!!あはははははははっ!!」
「あぁ……これで私の目的の半分は果たせたよ、オッタル」
ラフォリアだった。