【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話   作:ねをんゆう

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被害者40:月の女神

「……また仰々しいものを、持って来たな」

 

「……必要な物ですから。此度の功労者である貴女の為となれば、惜しむ物などありません」

 

「……大袈裟だ」

 

 患者を運ぶための特別製の馬車。そこに更に布団なりなんなりで緩衝材を作り、走行中の振動を極限まで抑えたそれ。ラフォリアはそんなものを横目で見て、棺桶のようだとも思った。声には出さないが、不謹慎でもあるけれど。

 

「それにしても……まさか迎えが、お前だとはな……」

 

「ああ、君はこちらに来てくれなかったからな。私の方から迎えに来たんだ」

 

「……悪かったな」

 

「冗談だ、事情は聞いている。君の機転のおかげで、私もなんとか生き延びられた。感謝しているよ」

 

「オッタルは、上手くやったようだな……」

 

「ああ、凄まじかった。鬼気迫るものがあったほどだ、彼のおかげで形勢を逆転させる事が出来た」

 

「……そうか」

 

 一度来た普通の馬車を、レフィーヤを乗せて帰らせて。ついでに特別製の馬車を手配して、そうこうしているうちに数日が経ち、大樹海の方も問題は解決出来たらしい。それは何より、こうして馬車を先導してきた"女神アルテミス"の存在が裏付けていると言っても良いだろう。

 ……そしてオッタルは本当に。どんな速度で走って行ったのか、という話で。ラフォリアでももう少し時間がかかると思っていたが、あの男は本当にあれから一睡もせずに走って行ったらしい。とんだ脳筋猪野郎である。単純に馬鹿だと言っても良い。そのおかげで助かったものもあったのだろうが、ラフォリアであっても呆れてしまう。

 

「それにしても……随分と、容姿が変わってしまったな」

 

「そうでも、ないだろう」

 

「いや、髪の色や目の色だけじゃない。顔の形や体格だって変わってしまっている」

 

「……よく、見ているな」

 

「一時でも私の眷属だったんだ、見ているに決まっているさ」

 

「そういうお前は……少し、柔らかくなったか?」

 

「……頑固で守れるものなど自尊心だけだ、そう言ったのは君だろう?」

 

「それだけで捨てられるほど、安いものではないだろう」

 

 記憶の中にある相手と今の相手が一致しないのは、なにもラフォリアだけではないという話。ラフォリアの容姿が以前とすっかり変わってしまったように、アルテミスの内面も以前とは変わっているようにラフォリアは思う。それこそ話し方でさえも、柔らかい印象を受けるようになった。頑固で実直であった彼女の雰囲気も、今ではかなり柔らかい。

 

「あれから、色々とあった」

 

「………」

 

「……ランテが、私を庇って死んだんだ」

 

「……そうか」

 

 "ランテ"、それはアルテミス・ファミリアの眷属の1人であった。一時期行動を共にしていたラフォリアも、その女性のことを知っている。なにせ、それほどに喧しい人物でもあったから。

 ……しかしそんな彼女は、アルテミスがこの下界に来た際に拾った眷属であり、彼女が雌熊の乳を与えて育てたくらいには思い入れのあった子供でもあった。そしてランテもまたアルテミスのことを少し過剰なくらいには信仰していた。そんな彼女が自分を庇って命を落としたというのなら、なるほど、アルテミスでさえも心は変わるのかもしれない。

 

「君が旅立ってから、私は君の言葉を何度も思い出した。本来なら子供達を導く筈である私が、君の言葉に導かれていたんだ」

 

「……それは光栄だな」

 

「"頑固で守れるものなど自尊心だけ"、それを思い出したのはその時だ。団員達が撤退を促す中で、私だけは最後までアンタレスを相手に抵抗を続けようとした。……その結果がこれだ」

 

「……」

 

「周囲には集落もあった、アンタレスをあのまま放置することは出来なかった。だがそれでも、私はあの時、折れるべきだったんだ。……命の価値を、秤るべきだったんだ」

 

「……あまりそう、人の言葉を使ってくれるな。私とて恥ずかしくはなる」

 

 これはもうラフォリアの癖のようなものではあるが、彼女は説教をする時に自分の考えを強調して言葉にすることがある。『命の価値を秤れ』というのも、そのうちの1つだ。

 割りかし説教をした覚えのあるオッタル辺りは、ラフォリアが言葉にしたことを幾つか覚えていそうではあるが、アルテミスもまたそのうちの1柱だと言えよう。ラフォリアは彼女に対しても多くの言葉を放っていたから。そして同じように、アルテミスからも多くの言葉を受けていたから。

 

「懐かしいな。一緒に居た時、私は君の言葉に何度も反抗して、何度も喧嘩をした覚えがあるよ」

 

「そう、だな」

 

「今なら、君の言っていた言葉の意味が分かる」

 

「……私の考えは、変わらないがな」

 

「そうか……」

 

「お前の考えは正しく、尊い。否定されるべきものではないし、尊重されるべきものだ。……だが、潔癖に生きていける程、この世界は優しくない」

 

「ああ、あの時と一言一句変わらない答えだ」

 

「……それでも、目指す事は止めるべきでない」

 

「っ」

 

「理想など、全員が諦めてしまえば、そこで潰える。清濁を受け入れた上で、それでも理想を追い求めるのであれば……結果は、より良いものになるだろう」

 

「……ふふ、何処かに書き留めておきたい言葉だね」

 

「やめろ、恥ずかしい……」

 

 ふぅ、と一息吐いた彼女の頭を、アルテミスは優しく撫でる。その行為にも少し不機嫌な表情を返すが、アルテミスだって彼女のことはそれなりに理解している。こんなにも大人なことを言う癖に、彼女は意外とこうして可愛がられるのを嫌っていない事とか。後輩達の面倒を見たがる癖に、意外と後輩気質なところもある事とか。

 

「よく、頑張ったね」

 

「っ……」

 

「君はもう十分に頑張った。……十分に戦った」

 

「……そう、だろうか」

 

「オラリオを出る時に、たくさんの人が君を心配していた。君は多くの人に慕われているんだ。……生憎、この馬車の定員は少なかったから、私が役割を貰ってしまったのだけど」

 

「……キンキンと、喧しい奴等でなく良かった」

 

「君は声の高い人や大きい人が苦手だからね、身体に響くんだろう」

 

「……よく見過ぎだ」

 

「いや。理解出来たのは君と別れた後のことだった、むしろ遅過ぎたくらいだ。……君のために話し方だって変えてみたんだ、少しは褒めて欲しい」

 

「そうか……」

 

 喧嘩をしていた、とは言うものの。その実態はラフォリアは淡々と言葉を返していただけに過ぎず、アルテミスの言葉に眉を顰めるだけ。アルテミスはそれを気に入らないからだと思い込んでいたが、実際には単純にそれほど前から彼女は大きな音や声を苦痛に感じていたというだけだ。

 そう言う意味では、彼女は自身の爆破魔法でさえも苦痛だったのだろう。人の多いオラリオ。平穏で居られる時間はそれこそ、早々なかったはずだ。

 

「……ああ、そうだ。あのアホ女神には、会ったか」

 

「アフロディーテのことかい?ああ、会ったよ。私の変わり様に酷く驚いていた」

 

「あの女は、お前のことを探していたらしい」

 

「そうなのかい?まあ、彼女は本当に素直じゃないからね。天界にいた頃から私に変な絡み方をしてきた。私に向かって『恋』をしろだなんて言うんだ」

 

「……出来るのか?」

 

「さあ、分からない。私は出来ないと思っていた。……けど、下界に来て私も色々と変わった。もしかしたらそんな事もあるかもしれない」

 

「神からの評判の悪いロキが、あの様だ。そういうことも、あるだろう」

 

「うん……けれど、仮にそうだとして。その時に私はどんな顔をして自分の眷属達と向き合えば良いのだろう?恋愛をしたいのならファミリアを抜けろとまで言っていたのに、そんな私が」

 

「……馬鹿なことを言う。謝れば良いだろう、頭を地に擦り付けてな。抜けて行った眷属も含めて、全員に報告しに行けば済む話だ」

 

「……なるほど、それもそうだ」

 

 そんな話をしていると、アルテミスだって気になることは出て来る。それこそオラリオを出る前に、その男は走ってでも着いてこようとしていた。最低限の休息で2連戦をこなし、疲労困憊で見るからに限界な顔をしていたのに、それでも必死になって彼女を迎えに行こうとしていた。そんな彼のことを、アルテミスは知っていた。

 

「君は、恋をしたことがあるのかい?」

 

「……無いが」

 

「あの猪人の彼と、そういう関係だったりしないのかい?」

 

「……オッタルのことか?馬鹿を言うな、そんな訳があるか」

 

「なんだ、彼は随分と君のことを心配していたように見えたのだけれど」

 

「あの男に見えているのは女神だけだ。それで良いし、そうでなければならない。……半分死人の様な女に、万が一にも目移りなどさせるものか」

 

「……珍しい、それは君らしくない言葉だ」

 

「あの男はこの世界の数少ない希望の1つだ、私とて過保護にもなる」

 

「30を超えた男性にかい?……なるほど、確かにそれは過保護だ」

 

「………」

 

 なんとなく嫌味染みたアルテミスのその言葉に、ラフォリアは目を細める。けれどまあ、言いたい事は分かる。自分とてそう思っているところはある。彼に対して自分は甘過ぎると、そう感じているところもある。それに……

 

「君は、彼のことが好きではないのかい?」

 

「……人間としては好ましいと思っているが、アレを恋人にしたいとは思わん」

 

「いや、というか、それなら君はどんな人を自分の恋人にしたいんだい?」

 

「……分からん、考えたこともない」

 

「君の場合、恋人にしたいかどうかではなく、出来るかどうかが基準な気がするよ」

 

「……恋の1つもしたことのない処女神が、今日に限って口が回るな」

 

「う〜ん……」

 

 これもアフロディーテの影響なのか、それとも多少は受け入れられたからこその興味が芽生えたのか。自分のことではなく他人のことだからこそ、アルテミスはここぞとばかりに仕掛けて来る。

 

「君は遠慮し過ぎだ」

 

「遠慮……?私のどこを見てそんな言葉が出て来る」

 

「自分の先が短いからこそ、我儘を言って迷惑をかけるべきだと私は思う」

 

「………」

 

「君はもっと自分のために生きていい」

 

「………」

 

 だから、別に今からオッタルを困らせたっていい。彼だってもう良い年齢の男性だ。そうして戸惑わせても、どんな結論を出すにしても、自分1人で勝手に立ち直るだろう。むしろ一度も衝突せず、このまま別れる方が不健全ではないかと、それはアルテミスですら分かる。

 子供達は恋によって成長するのだと、アルテミスは自分の眷属達から言われたことがある。アフロディーテではないが、それならば一度くらいはそういう経験をしてみるべきではないだろうか。もしそれで本当に成長することが出来るのなら、彼女だって。

 

 

 

「はぁ、ふざけるな」

 

 

 

「っ」

 

 ……けれど、彼女から返ってきたのは明確な拒絶の言葉。怒りでもなく、勢いもなく、彼女は呆れる様にそう言った。叱るではなく、諭すように。溜息と共に、吐き出す様に。

 

「この世界に、この世界の人間に、その様な余裕などあるものか。そんな悪影響を与えて満足にこの世から消えられるほど、私は人間の精神の強さを信用してはいない」

 

「……」

 

「忘れろとまでは言わん。だが私のことなど、思い出程度にしておくのが最善だ。……あんな奴も居たな、と。それ以上のことは求めない」

 

「……あまり、寂しいことを言わないで欲しい」

 

「悲しみたいのなら黒龍を倒してからにしろ。私が死んだ後ものうのうと平穏に浸っているようであれば、それこそ私に対する1番の侮辱だ。……別に私を覚えていなくとも構わない、世界に対する危機感さえ忘れていなければ。それで」

 

 それだけがラフォリアは心配だったから。最後のヘラの眷属である自分が死ねば、もう誰も彼等のケツを蹴り上げてくれる人間はいなくなる。その時に、今度こそ彼等が本当に同じ間違いを繰り返さないか、それだけが心配なのだ。

 

「……彼等に、死んで欲しくないからこそ、なのかな」

 

「……否定はしない」

 

「生き残って欲しいから、未来を手に入れて欲しいから。そう思うくらいには、君は気に入ったんだ」

 

「……寿命が近かろうと、身体が動かなくとも、私のする事は変わらない。最後の最後まで、私はヘラの眷属としての責務を果たす」

 

 故に、恋愛に現を抜かすことなど絶対に有り得ないし、自分の我儘を振り撒く様なこともしない。命の最後の最後まで、それこそ彼女の母親がそうしたように、ラフォリアはオラリオのために自分を費やす。

 

 

「こほっ、こほっ……」

 

 

「……喋り過ぎです、ラフォリアさん」

 

「……お前とて、黙って見ていた、だろう」

 

「それは、その……貴女のことが知りたかったので」

 

「……そうか」

 

 2人の会話をただ静かに聞いていたアミッドだけは、ラフォリアの願いが叶わないことを知っている。彼女のことを容易く忘れられる人間など早々居ないことを知っている。けれどそれを口にすることはない、それは単なる治療師である自分が言うべきことではないと思ったから。

 ……本当に、ベヒーモス討伐に向かうまでの間に、何人の者達がラフォリアの病状をアミッドに直接聞きに来たと思っているのか。そしてそれを説明し、どれだけの者達が唇を噛んだと思っているのか。彼女を送り出すことが決まって、どれだけの者達がアミッドに彼女を助ける様に願ってきたと思っているのか。

 

 オラリオの冒険者達は今度こそ、彼女を救うつもりであったのに。ザルドとアルフィアの時の様に、自分達の未熟さの犠牲になどさせないと思っていたのに。

 ……それでも結果としてこうなってしまっている。もし彼女がこのまま命を落としてしまうことになれば、彼等は再び悔やむことになる。それこそ、以前の時よりもずっと深く。ずっと強く。忘れることなど絶対に出来ないくらいに。

 

 

 だって彼女は、優しかったから。

 

 

 悪になってくれなかったから。

 

 

 彼女は常にずっと、先達の1人で居てくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

「……ラフォリアは、子供なんだ」

 

「子供、ですか……?」

 

 そうしてラフォリアが再び寝息を立て始めてから、アルテミスはアミッドにそんな言葉を切り出す。優しく彼女の頭を撫でながら。27の女を相手にするには、少し甘過ぎるくらいに愛でながら。

 

「この子は聡い。きっと幼い頃から多くのことが見えていて、多くのことを知っていた。……だからこそ、大人になる機会を失ったんだ」

 

「……正直、あまりそうは見えませんが」

 

「それはきっと、君達の周りにラフォリアを甘やかせる様な者が居なかったからだろう。この子は元々はファミリアの末っ子だったんだ、本当の気質はそこにある。大人で居なければいけない状況だから、彼女は大人を演じ続けているだけさ」

 

「大人を、演じる……」

 

 アミッドは繰り返す。

 

「彼女は幼い頃、母親を自称する女性に隙あらば挑み続けていたらしい。……今の彼女の姿から想像出来るかい?」

 

「……挑むのは想像出来ます。ただ、ラフォリアさんなら策を十分に立ててから挑みそうなので。隙あらばというのは少し」

 

「きっと彼女にとっては、それが甘えだったんだよ」

 

「甘え……?」

 

「自分が子供で居ても許してくれる存在、自分を子供として扱ってくれる相手、彼女には何よりそれが必要だった。けれどそんな相手はそうそう居ない。それこそ彼女の様に才能があり、実力もあり、言葉でも言い負かすことが出来ない相手なんて。ラフォリアに母親らしく接することが出来る者なんか、神でさえ多くはないだろう」

 

「……静寂、才能に愛された女」

 

「うん。そんな人物くらいにしか、ラフォリアは甘えることなんて出来なかったんだ」

 

 だからそういう意味では、彼女にとってはアルフィアこそが自分の全てであったと。きっとそう言っても過言ではない。力でさえオラリオのトップに立ってしまったのであれば、それはつまり彼女にとって最悪だった。他者が想像していた以上に、彼女は無意識のうちにショックを受けていたに違いない。仮にそれが自分が望んだ状況であったとしても。

 

「この子がアフロディーテと仲良くしていた理由も分かる気がする。彼女はあんなでも面倒見は良い、ラフォリアが相手でも引っ張っていく積極性もある。母性はないけれど、駄目な姉のような部分があると言えばいいのかな」

 

「……お二人が話している姿は、確かにそのようなところがあったように思います」

 

「ラフォリアは確かに傲慢なことをするけれど、基本的に大人すら愚かに見えてしまう様な人生を歩みながら、むしろ優しく育った方だと思う。単に見下すのではなく、相手の目線を理解しようとするのはラフォリアのいいところだ」

 

「アルテミス様も、彼女に惹かれた一柱ということですか?」

 

「惹かれた、か……なるほど、そうかもしれない」

 

 アルテミスは目を逸らす。

 何かを思い出す様に、何かを考える様に。

 

「彼女を知れば知るほどに、彼女がその無表情の下にどれほどの強い感情を抱いているのか理解することが出来た。知れば知るほどに、合点がいくんだ。……その上で、ただ只管に悲しくなる」

 

「悲しく……?」

 

「ラフォリアを救ってあげられる唯一の存在が、消えてしまった」

 

「っ」

 

「神では駄目なんだ、人でなければ。彼女は私達(神)の大半が下界を遊戯(暇潰し)にしか思っていないことを知っている。本当の意味で存在を懸けてくれる神など、殆ど居ないということを知っている。だから仮に気に入った相手であっても、必ず一歩の線を引いている。心から信用してくれることはない」

 

「……」

 

「だが、そもそも彼女を救える人間がそうそう居ない。だから、もしかすれば"彼"ならと思ったんだけど……」

 

「……"猛者"は、フレイヤ・ファミリアの団長です。つまりそれは」

 

「フレイヤの信仰者の中でも、最も彼女に近い存在。……ラフォリアの言っていたことは正しい。そんな相手と恋愛だなんて、疲れるだけだ」

 

「……」

 

 それを疲れるだけだと言ってしまうのが、アルテミスがまだ恋愛について理解出来ていないが故なのか。しかしどうせ面倒なことになるだけなのだから、そんな話は冗談でも出すべきではないというラフォリアの言いたいことだってアミッドには分かる。

 

「だからもう、誰もラフォリアのことは救えない。彼女は救われないまま、死んでしまう」

 

「……どうすれば、救ったことになるのですか?」

 

「彼女が心の内に溜め込んだその凄まじい感情を、本音を、引き出して、受け止めてあげられるような。せめてそれが前提だ」

 

「……そんな姿、想像出来ません」

 

「泣いている姿すら、想像出来ないからね」

 

「……そもそも、泣いたことがあるのでしょうか」

 

「どうだろう、少なくとも私は見たことがない」

 

 そうこう話している内に、次第にオラリオの姿が窓の外から見えて来る。きっと彼女の帰りを待っている者は多く居る。けれど英雄の帰還を祝福するような、そんな盛大なことをすることは出来ない。そんなことをされても、彼女にとっては苦痛なだけだから。

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