【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話   作:ねをんゆう

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被害者58:希望

「っ……リリ!ヴェルフ!命さん、春姫さん!!イリア!?」

 

 ポロポロと流れる涙を拭いながら、声を張り上げ、絶叫するように呼び掛ける。しかし返ってくるのは、自分の声の残響だけ。オリンピアから、そしてヘスティアから遠ざけられた彼は、その場で拳を握り締め、唇を震わせる。

 

 

 

「誰も居ない……装備も、道具も、神様の恩恵も、なにも……」

 

 

 孤独、そして恩恵という名の繋がりすらも断ち切られた今の彼にとって、その周囲の異様な静寂はあまりに恐ろしく、心細く感じさせた。

 

 天界から落ちた"原初の炎"、それを浄化させるためには女神ヘスティアの犠牲が必要になる。浄化を成功させなければ、下界全土にその炎は広がり、文明は壊滅することになるだろう。

 そんな事実を前にして、そんな現状を前にして、ベルには何もすることが出来なかった。ヘスティアの決心を前にして、それ以上の言葉を返すことが出来なかった。……そんな自分が、何より許せなかった。他の誰より、失望した。そんな今でも、ベルは答えを出せないで居る。

 

 

 

「何も手元に、残されていない……何が正しいのかも、分からない、のに……こんな状態で、僕は何をどうすれば……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど、そうか……お前に世界の命運を託されるのは、これが初めての経験だったな』

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 装備がない。

 

 道具もない。

 

 仲間も居ない。

 

 そして、恩恵もない。

 

 

 

 神様も、居ない。

 

 

 

 そうしてたった1人、焼けた荒野に孤独に立ち尽くした少年のその背中に、優しくも厳しい声が掛けられる。

 

 

 

『それで?お前はいつまでそこでそうしている。そうして立っていれば、物事が解決するのか?』

 

 

 

 その声を、ベルは知っている。

 中身が変わってしまったと同時に、声も変わってしまったから。きっともう2度と聞くことが出来ないのだろうなと、そう思っていたその声を、知っている。

 

 

 

「あ……」

 

 

『全く、また随分と酷い顔をしているな。ベル』

 

 

「……ラフォリア、さん?」

 

 

『……ああ。まあ、この見た目だからな。分からなくとも仕方ないか』

 

 

 

 背丈は、ベルよりも小さい。

 

 灰色の髪は、今は真っ黒なそれ。

 

 幼い。

 

 それこそ10歳前後の小さな女の子。

 

 けれどその鋭い目付きだけは変わらず、相変わらずの尊大な態度で、彼女はそこに立っていた。

 

 

 

「どう、して……だってラフォリアさんは、もう……」

 

 

『正確に言えば、私はラフォリア・アヴローラではない。その姿を一時的に借りているだけだ。……だが、当然彼女から許可は得ている。ベルの手助けをしてやって欲しいと、そう言われている』

 

 

「……あなたは、一体」

 

 

『さあ、いつまでも呆然としている暇はないだろう。炎人共が寄って来た』

 

 

「っ」

 

 

 聞きたいことは山ほどある。

 知りたいこともたくさんだ。

 しかし恩恵のない今のベルでは、戦闘など出来る筈もない。1にも2にも逃げることが先決だ。

 

 

「そ、そうだ。ラフォリアさんなら……!」

 

 

『ちなみに、戦闘も出来ないからな。あくまで姿を借りているだけだ、恩恵すら背負っていない。……くく、荷物が増えて悪いが、精々私のことを守ってくれよ。かっこいい騎士サマのようにな』

 

 

「〜〜〜!!と、とにかくこっちに!」

 

 

 彼女の手を引いて、ベルは走り始める。

 ずっとずっと自分よりも年上で、姉どころか母親のようにも感じていた人が、今こうして子供の姿となって目の前に居る。彼女は姿形を変えただけだと言ってはいるが、ベルにとっては正直困惑もあり、嬉しさもあり、悲しさもあって、心の中が滅茶苦茶になっている。

 

 

 (この人は本当に……誰なんだろう……)

 

 

 話は聞いていた。ラフォリアの容姿はあくまで母親であるアルフィアのものであり、本来は別にあったのだと。

 もしそれが目の前の人であると言うのなら、なるほどこれは確かに全くの別人だ。髪の色だってベルとは真逆の黒色で、髪の色が変わったというだけなのに何処か冷たい印象を受ける。その上、目元も長く馴染んだものであるのか、より鋭い。それでもとんでもない美人であることに間違いはなく、そんな人に優しい笑みで"騎士様"などと言われてしまえば顔も熱くなるというもの。

 ……曰く中身が違い、まだ幼い姿でこれなのだから、成長した彼女は一体どんな美女になるというのだろう。しかし残念ながらそれを知っているのはアルフィアとアルテミスだけ。アフロディーテだって、アルフィアの要素が混じっていない彼女の姿は知らない。

 

 

『……ベル、そっちに行くと挟み込まれる。道はこっちにしておけ』

 

 

「え?あ……」

 

 

『恩恵も才能もないが、経験と記憶は全てではなくとも引き継いでいる。こういう手伝いくらいはしてやれる』

 

 

「……本当に、ラフォリアさんじゃないんですか?」

 

 

『そんなに私に会いたかったのか?』

 

 

「っ」

 

 

『くく……いや、まあこういう状況だからというのもあるだろう。世界の命運を背負った事もないお前にとって、欠片程度であっても私の存在は大きいだろうからな』

 

 

「……」

 

 

 ベルが手を引いていた筈なのに、いつの間にか手を引かれている。ベルより背の低く幼い彼女は、しかしそれでも母親のようだった彼女のことを思い出させる。けれど、彼女をラフォリアだと思いたいのはベルの我儘に過ぎない。そして甘えに過ぎない。それが分かるからこそ、自覚しているからこそ、ベルの心は曇っていく。

 

 

『……本当に繊細だな、お前は』

 

 

「あ、その……」

 

 

『さて、この場合はどうすることが正しいのか。私に新たな名前を付けて貰ってもいいが、そうなると本物が現れた時にまたアルフィアの時のようになりかねない。しかし私をラフォリアと呼ばせるのも、それはそれで違うか。……この辺りは非常に繊細な問題だな、同じ轍を踏みたくはないのだが』

 

 

「え、と……」

 

 

『……いや、ラフォリア・アヴローラならそんな生優しいことはしないな。正しいことは正しく、それで混乱するようならそれもベルの未熟さを自覚させるきっかけになる。それで泣こうが苦しもうが、必要なことだ』

 

 

「………」

 

 

『よし、ならば……うん?ああ、悪いな。本物ならこの程度の思考は一瞬で終わらせるのだろうが、私には生憎そんなことは出来ない』

 

 

「……ラフォリアさんも、そういうことを考えていたんですか?」

 

 

『ああ、考えていた。彼女は簡単に答えや結論を出していたように見えただろうが、それは単純に思考処理が早く、工程を飛ばしているだけだ。彼女はよく目を閉じて考え事をしていなかったか?』

 

 

「……そういえば、よく寝る前とかに」

 

 

『才能が足りないのなら、その才能を擦り潰すまで使い潰す。眠る時間は最小限、朝日が昇り始める前から彼女は目を閉じて常に未来のために頭を回していた。……5分で作業を完成させる相手に10分かけてしまう自分が勝つためには、単純にかける時間を2倍にすればいい。そういう泥臭い人間だった』

 

 

「……知りません、でした」

 

 

『誰にも言っていないからな、そんな泥臭いところを知られたくなかったんだ。……自分以外の誰にも』

 

 

「………」

 

 

『ああ、見つけた。……欠片程度でもやはり凄まじいな、この記憶量と思考量は』

 

 

 まるで知っていたかのように迷いなく歩き何かを探していた彼女は、そこに小さな洞窟を見つけた。否、きっと知っていたのだろう。周辺の地形や地理的環境から、恐らくこの辺りに洞窟があるのだろうと。そうして探した経験が、それを学んだ記憶が、そこにあったということ。

 

 

「こんなところに、洞窟が……」

 

 

『明日の朝までここで身体を休める、特に今は恩恵がないのだろう?超人的な体力もない』

 

 

「そ、そんなわけにはいきません!見張りくらいは……!」

 

 

『必要ない。お前は寝起きは良い方だろう、特に危機的状況であれば』

 

 

「それは、まあ……そうかもしれないですけど、でも」

 

 

『やれやれ、仕方ないな……』

 

 

 ここまで何の役にも立てていないからか、何かをしなければと身を乗り出すベル。けれど現状では彼に出来ることなど何もなく、強いて言えば身体を休めて体力に余裕を持たせておくことだけ。

 分かるとも、何もできない歯痒さに悩まされていることなど。自分の無力に立ち尽くすことしか出来ず苦しんでいることも。しかし、だからと言って今何も出来ない事実は変わらない。故にラフォリアの姿をした彼女は、一先ずその思考を奪うことから始めた。

 

 

『ベル、こっちに来い』

 

 

「え?こっちって……」

 

 

『私の膝の上だ』

 

 

「え、えぇ!?い、いやでもそんなの……!!」

 

 

『なんだ、嫌なのか?だが私はここまで十分に働いた、その見返りくらいあってもいいと思うが?』

 

 

「こ、これは見返りになるんでしょうか……」

 

 

『それを決めるのはお前ではなく私だ。いいから来い、お前に拒否権はない』

 

 

「わ……分かり、ました……」

 

 

 ベルが謙虚なことを言ったり、自分を卑下するようなことを言うと、彼女はいつも同じように『それはお前が決めることではない』と言ってくれたのを思い出す。きっとそれも記憶の中から言葉を選んだのだろうが、なんとなくそれに胸を締め付けられたような気がして、言われるがままに彼女の膝を借りる。

 

 

『……ああ、なるほど。これはいいな』

 

 

「え、と……」

 

 

『いい、そのまま目を閉じろ。私のことは気にするな』

 

 

「……はい」

 

 

 そうして目を手で覆われる寸前、弧を描いていた彼女の口元を見た。自分よりも幼い彼女にこうして甘やかされるというのは本来なら落ち着かないことなのかもしれないが、けれど同時にそれほど落ち着く訳でもないという、奇妙な感覚。何かが違うと、違和感が抜けない。それはきっと、彼女が彼女ではないからなのだろうけれど。

 

 

「……僕は」

 

 

『うん?』

 

 

「僕は……どうすれば、いいんでしょうか」

 

 

『それだけでは何を言いたいのか分からないな』

 

 

「神様が、浄化のために、犠牲になるって……でも、それを止めてしまうと、下界が消えてしまう」

 

 

『それで?』

 

 

「何をどうすればいいのか、分からないんです……他に方法があるかもしれないって、自分を誤魔化しても……神様達すら知らないような都合の良い方法が、本当にあるのかって」

 

 

『……なるほど』

 

 

 目を閉じた瞼の裏に、色々な光景が映る。

 下界に落とされたことによって汚染された"原初の火"、浄化のためには炉の神であるヘスティアの力が必要だった。しかしそれは彼女が神としての存在すら費やさなければならないほどの力が必要であり、その事実をベルが知ったのは、本当にその穢れた炎獄と向き合ったその瞬間。

 

 ……もっと、他に何か出来たのではないだろうか。

 

 そんなことを思っても、何が正しかったのかもベルには分からない。ただ必死に走り回っても、異端児達の時のようにどうにかなるイメージが湧かない。そんな希望すらも、ヘスティアは自らの言葉で断じた。これは神と眷属の物語ではなく、神が解決しなければ問題なのだと。眷属達には何も出来ないし、何もして欲しくないのだと。そう、断言された。

 

 

『……私は、ラフォリアほど頭は回らない』

 

 

「……」

 

 

『だが、彼女よりもずっとお前のことを知っている』

 

 

「知って……?」

 

 

『ラフォリアが消え、アルフィアが現れた後、お前がどれほど混乱していたことか。アルフィアに会いに行く度にラフォリアと接している時のような感覚に陥り、何度も名前を呼び間違えそうにもなったな』

 

 

「な、なんでそれを……」

 

 

『異端児達との騒動の時もそうだ。アラクネの異端児がラフォリアに感謝を伝えたいと言っていたことを知っていながら、彼女を助けられなかった。それをお前が酷く悔やんでいた事も知っているし、何度も心折れそうになりながらも最後まで向かい合えたのは、それ故の後悔だってあったのだろう』

 

 

「……」

 

 

 それは本当に、ベルの仲間達でさえも知らなかったであろう彼の中の本心。誰にも言ったことのない、薄暗い感情。

 何年も前にラフォリアに助けられ、そのまま人の少ない階層まで送って貰ったというアラクネの異端児であるラーニェは、人間に対して非好意的なグループに属していたにも関わらず、その時の感謝だけは忘れていないと話していた。しかしそんな彼女はイケロス・ファミリアに襲われ、最後は自決を選んだという。

 ……それを聞いた時、自分の責任ではないと分かっていながらも、ベルの心には強い罪悪感が染み付いた。ベルは何の悪い事もしていないにも関わらず、不思議なことに。けれどその罪悪感が彼を最後まで立たせていた一本の蜘蛛の糸と言っても良い。この一件において最後の最後まで、どんな結末になるとしても責任を持つと、覚悟を決めた。その覚悟を、糸1本で繋いでくれていた。まだまだ未熟なベルの心を、繋ぎ止めてくれた。

 

 

『何度も言うが、私はラフォリアではない。だが彼女が言いそうな言葉なら、伝えることは出来る』

 

 

「……教えて、欲しいです。どんな言葉でもいいので」

 

 

 

 

 

 

『知らん、お前が決めろ』

 

 

 

 

 

「……」

 

 

『……』

 

 

「……」

 

 

『……』

 

 

「……確かに、言いそうですけど」

 

 

『まあ聞け、何も本当に適当に言っている訳ではない』

 

 

 もう少し感動的な言葉とか、ためになる言葉をベルは期待していたのかもしれないが、しかしラフォリアなら確実にこういうことを言ってくるだろうなぁと想像出来てしまうのが悲しいところ。それでも彼女の場合は、そこから先の言葉こそが大切なのだとも、ベルはちゃんと理解している。

 

 

『お前も分かっている筈だ。彼女は何よりお前自身の選択を大切にしていると』

 

 

「……そう、ですね」

 

 

『そして彼女は、こうも言うと私は思う。……自分のしたい事を、しっかりと口に出せ』

 

 

「口、に……?」

 

 

『お前は先程、神々すら知らない都合の良い方法……と言ったが、それを本当に確認したのか?お前の希望が絶対に叶わないと、本当にヘルメス達に聞いたのか?』

 

 

「それは……」

 

 

 していない。不要だと思っていた。だってそんな方法が本当にあるのなら、きっとそれを教えてくれている筈だから。それをもう試している筈だから。

 ……そう、思い込んでいた。

 

 

『ベル、何も言葉を口に出すことは質問をするためだけではない。自分に、そして他者に、自分の想いや願いを伝える意味もある』

 

 

「……それで、何かが変わるんですか?」

 

 

『あるとも。お前の言葉が本気のものであると分かれば、お前の仲間達は本気になって手伝ってくれるだろう。お前はここに来て1度、それを既に体験している筈だ』

 

 

「……あ、イリア」

 

 

『そうだ、あの巫女はお前の言葉に心を動かされて、自分の仲間達を裏切ってでもお前をヘスティアの元まで送り届けることに決めた。……他ならぬ、お前の言葉で』

 

 

 そう、それは決して仲間だけではない。

 見ず知らずの相手にも、それこそ敵にだって、言葉は伝わる。言葉が伝われば、気持ちが伝わる。気持ちが伝われば、心も動く。故に言葉というものは、発さなければならない。伝えなければならない。心の中に閉まっていては、ただ埃を被るだけだ。

 

 

『そして何より、お前の意思を固めてくれる』

 

 

「……!」

 

 

『ベル、言葉にしてみろ。お前はこれからどうしたい?何をどう変えていきたい?お前の本当の願いはなんだ?出来る出来ないなど、考える必要はない。そんな誰かに付けられた縛りを無視してでも、お前のしたいことはなんだ』

 

 

「……僕、は」

 

 

 記憶が蘇る。

 どんな時でも言葉を尽くして真正面から向き合ってくれた彼女は、確かに言葉というものに強い意味を持っていたように思う。彼女の言葉は時にはとても耳に痛かったけれど、同時にとても心に響いた。

 ……自分にも、彼女と同じことが出来るのだろうか。それは分からない。けれど事実として、自分の言葉でイリアは手を取ってくれた。それなら。

 

 

「僕は……神様を助けたい」

 

 

『それだけか?』

 

 

「下界も、救いたいです」

 

 

『それは相反する事象らしいぞ、神々曰く』

 

 

「……それでも、諦めたくない。都合の良い話かもしれないし、滅茶苦茶なことを言っているかもしれないけど。それでも折れたくない」

 

 

『……ああ』

 

 

「僕はまだ神様と、一緒に居たい」

 

 

『ふふ……その言葉、次こそ伝えられるか?』

 

 

「伝えます……アルフィアさんにも、神様にも、誰にでも。だって絶対に、諦めたくないから」

 

 

『そうか……』

 

 

 たとえ恩恵を失い、無力となってしまっても、人の強さは力だけではない。才能が無いのなら人としての価値が無いのだと、そんなことをラフォリアは絶対に言わない。むしろ彼女はそうして強い意思を宿して前へ前へと突き進んでいく人間が大好きなのだから。

 

 

 (……もしかしたら私自身も少し、ラフォリアの記憶に影響されているのかもしれないな)

 

 

 本当ならもう少し時間をかけて導いていくつもりだったのに、そんな悠長なことをしたくなくなった。きっとそれは、姿を借りた人間が問題をさっさと解決したがる性格の持ち主だったからかもしれない。

 

 

『ベル、私に名前を付けて欲しい』

 

 

「名前、ですか……?」

 

 

『私がラフォリアではないことは、もう十分に理解した筈だ。だからこそ、私に別の名前を付けて欲しい。……私は彼女にはなれない。なれないからこそ、私で居たい。そんな私の願いを、ベルに叶えて欲しい』

 

 

「……分かりました」

 

 

 きっともう、ラフォリアという被り物は必要ない。彼女の口調を無理に真似る必要もない。だってこれから本当に、その彼女は帰って来るのだから。そのために彼女の母親が、懸命に戦っているのだから。

 だからこそ、自分の役割はただ1つだ。炎とヘスティアを通じて宿った彼女の意思もあるけれど、それよりも何よりも、自分自身がしたいこと。

 

 

「じゃあ、その……『希望(エルピス)』とか、どうでしょうか……」

 

 

『……本当に、そういうセンスは抜群なんだな。君は』

 

 

 ただ彼の側に居たい。

 ただ彼の力になりたい。

 ただ彼を支えていきたい。

 

 もしかしたらこれも口に出したほうがいいのかもしれないけれど、今だけは、心の内に秘めることにした。

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