【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話 作:ねをんゆう
モンスター・フィリア。
つまりはオラリオの祭りの一つ。
ガネーシャ・ファミリアが主催するモンスターのテイムショーをメインとした祭であり、今日この日のために多くのモンスターがダンジョンから地上に向けて運び込まれている。
地上に住んでいるだけでは滅多に見ることが出来ないモンスター達、冒険者以外の者にとっては珍しい機会になる。そうでなくともモンスターのテイムというのは非常に珍しく、当然ながら毎年この祭は大盛況を上げていた。
酒場のシルに財布を渡すお願いをされ、駆け回っていたところをヘスティアに捕まえられたベルは困った顔をしながら彼女とデートのようなことをしたりもしていたのだが、その一方で。
「ガネーシャ・ファミリアだ!!」
「………」
「……噂は本当だったか。ここに"静寂のアルフィア"らしき人間が出入りしていると聞いたが、まさか生きていたとはな」
「………おい」
「全員気を抜くな!この女を相手にする時は……」
「おい」
「……?」
「土足厳禁と書いてある筈だが、文字すら読めんのか貴様等は」
「は……?」
「………ぶっ殺す」
「っ!?」
入ってきた3人の団員が、一斉に教会の外へと吹き飛ばされる。起き上がったのはシャクティ・ヴァルマ。ガネーシャ・ファミリアの団長であり、Lv.5の冒険者でもある彼女。
彼女がどうしてこうも忙しい祭りの当日にこの教会を訪れたのかには理由があった。
それこそ7年前の大抗争の際、静寂のアルフィアが拠点としていた場所こそがこの廃教会であったのだ。そして当時も不審な人物の出入りが目撃され、調査を行ったガネーシャ・ファミリアの団員達が返り討ちに合い、結果的にあの悲劇へと繋がった。
シャクティにとっても妹を失ったあの一件は強く心に刻み込まれており、再び静寂のアルフィアがあの場所を出入りしていると聞けば、闇派閥の活動が再開したのではないかと、彼女にしては珍しく居ても立っても居られなくなってしまったのも無理はない。故に祭りの最中でも余裕のあった団員2人を連れて、何もなければそれでいいと確認だけをしに来てしまった。……その結果がこれだ。
「くっ……」
「……人がせっかく張り替えた絨毯を何の遠慮もなく踏み荒らしただけでなく、よりにもよってこの私をあの女と断定して話を進める愚行」
「なに……?」
「歯を食い縛れ」
ラフォリアは近くにあった物干し竿を手に取る。
構える団員達、シャクティもまた槍を構える。
しかし同時に過ぎる少しの違和感。
「がほぉっ!?」
「っ、速い……!!」
その身体能力で一気に距離を近付ける、最速の突きで吹き飛んでいく団員の1人。鳩尾に食らった一撃は例え獲物が物干し竿であったとしても強烈で、わずか一瞬でこちらの戦力を刈り取られた。
襲い掛かる女に対して残った団員と共に攻撃を防ぎ反撃を試みるが、やはりどうしても違和感を拭うことが出来ない。かつてのアストレア・ファミリアに聞いた話では、静寂のアルフィアはまごうことなき天才であり、暴喰のザルドの剣技を模倣したほどの力を持っていたという。
目の前の女の技量もまた優れており、自身のステータスとの差もあるのだろうが、それでもとてもその獲物が単なる物干し竿とは思えないほどに苦戦を強いられている。
……だが。
「対処できない程ではない……!」
「ほう」
そう、どうしようもないという程ではない。
それがそもそもおかしい。
こうして時間を稼ぐことが出来ていること自体がおかしい。
静寂のアルフィアはその近接戦闘においてもアストレア・ファミリア全員による猛攻撃を返したほどの化け物だ、もし目の前の女が本物であれば今こうして自分が何事もなく打ち合えている訳がない。そしてそれはつまり……
「考え事をしている余裕があるのか?」
「しまっ」
腹部に強烈な蹴りが入る。それに動揺したもう1人の団員も顎を強烈に叩かれ、意識を落とす。これで1対1、数の有利は無くなってしまった。
「さて……後は貴様だけだ。スキルでも魔法でも好きに使え、隠している余裕などないだろう」
「……お前は、静寂のアルフィアではないのか?」
「ほう、どうしてそう思った?」
「アストレア・ファミリアの眷属達から聞いていたほどの脅威が、お前にはない」
「具体的に言え」
「……確かにお前は強い。ステータスだけでなく、技量もそうだ。単に槍を操る技術だけで言えば私と同等かそれ以上はあるだろう」
「それで?」
「だが本物の"静寂"は、他者の技能を一眼見ただけで模倣すると聞く。もし対峙したのが本物の彼女であったのなら、その技量が私と同程度である筈がない。より強者の技術を持って、我々はものの数秒で蹂躙されていた筈だ」
「………ふむ、それでは不合格だな」
「?」
持っていた物干し竿で軽く肩を叩きながら、女は軽く目を逸らす。
「確かにアレは他者の技能を模倣することが出来るが、肉体が異なる以上、それにも限度というものがある。基本的には模倣元の8〜9割程度の性能に落ち着くのが常だ。加えて技能を模倣するからこその制限もあり、普通の槍があるのならばまだしも、この様な物干し竿では十全の性能は発揮できない。……だがそれでも、お前の言う通りあの女は私の努力と才を超えて来る。数多の模倣を複合し、最善の瞬間と組み合わせで叩き付けて来るからな、それこそがあの女の脅威だ」
「……ということはやはり」
「別人だ、この格好は賭けに負けて強制させられているに過ぎん。……それに、貴様の技量もそう悲観するものでもない。ただ私の才の方が優れていたというだけだ」
「………」
急に早口になったり、かと思ったら突然自分の才能を自慢されたりと、シャクティはなるほどこれは別人だと確信する。
しかしそれにしても、それにしてもだ。
ならば目の前のこいつは誰だという話になる。
明らかにLv.5の自分を手玉に取るほどの実力者、そんな者はこのオラリオには指で数えられるくらいしかいない筈で。
「というか……お前のことは何処かで見たことがあるな」
「なに?」
「もう殆ど思い出せんが……」
「………名前を聞いてもいいか?」
「ラフォリアだ」
「お前か!!!」
バシーン!とシャクティは自分の槍を地面に叩き付けた。
ラフォリアには覚えが無かったかもしれないが、シャクティの記憶にはこの女のことがしっかりと刻まれていた。
シャクティ・ヴァルマ、現在38歳。
15年前もバリバリ冒険者をしていたし、当時多くの冒険者を叩き潰していたこの女のことは本当に嫌というほどよーく知っている。
「なんだ、やはり知り合いか」
「お前が暴力沙汰を起こす度に何度走らされたと思っている!というか変わり過ぎだろう!本当に誰か分からなかった!いや分かるか!」
「何でも良いから土足で踏み荒らした部屋を掃除しろ、鼻を折るぞ」
「そういうところだけは変わらないな……」
ラフォリアの方はもう殆ど覚えていないというか、興味すら無かったくらいではあるが、その被害者とも言えるシャクティはしっかりと覚えていた。
シャクティ自身、今日はそれほど余裕がある訳ではない。起き上がった団員達に事情を説明し、掃除を指示すると、溜息を吐きながら事情聴取を再開する。……この女の性質はなんとなく分かっているが、かつての静寂と同じようにオラリオに牙を剥かないとも限らない。
「それで?こんなところで何をしていた」
「寝泊まりをしていただけだが」
「……今はヘファイストス・ファミリアの管理になっていた筈だが、許可は取っているのか?」
「取ると思うか?」
「取れ」
「ここの地下に住んでいる女神に許可は取っている、それは女神ヘファイストスに許可を得ているのだから問題ないだろう」
「なるほど、そういえばこの建物は以前はもう少し廃れていなかったか?」
「私が補修したからな」
「……許可は取ったのか?」
「むしろ感謝して欲しいくらいだが」
「お前は……本当に……」
場合によっては女神ヘファイストスが闇派閥との関わりを疑われることになっていたかもしれないことを、この女は理解しているのだろうか。シャクティは頭を抱えながら、なんだかこういうやり取りも懐かしい気がして、確かに目の前の女があの悪餓鬼であったことを確信する。
「この街に来た目的は?」
「あの女を殺した奴等を殺しに来た」
「……事情は聞いているのか?」
「アストレア・ファミリアは壊滅したそうだな。今は黒龍討伐を目的に動いている」
「……すまん、どうしてそうなった?」
「あの女に勝つまでこの格好をやめられんのでな、直接殺せなくなったのなら超えるしかあるまい。つまり黒龍を殺す」
「頭でもおかしくなったのか?」
「殺すぞ」
「……まあ、とにかく、闇派閥に加担している訳ではないのだな」
「そもそも闇派閥のことを私はよく知らん、あの女が利用した馬鹿の集まりくらいの認識だ」
「……ああ、そうか。15年前には存在していなかったな」
闇派閥とはゼウスとヘラのファミリアが消滅したことをきっかけに生まれたもの、故にこの女が彼等をよく知らないというのは仕方のないことなのかもしれない。
だとすればこの女は白なのだろう。
多少頭がおかしくはあるが、それでもオラリオに脅威をもたらす存在ではない。
「……病はもう治ったのか?」
「知っているのか」
「当然だ、お前を送り出す先の選定を我々も手伝った」
「……完治はしなかった。だが治療の効果と恩恵が昇華したことで完全に押さえ込めている。薬もあるからな、最早存在しないに等しい」
「そうか、それは何よりだ」
「……悪かったな、覚えていなくて」
「!……ふふ、それは仕方のないことだろう。12の子供にそこまでのことを求めはしない。こちらこそ悪かったな、まさかあの小さいのがここまで大きくなっているとは夢にも思わなかった」
「そうか」
まあ色々と迷惑をかけられはしたものの、別に嫌っているという訳ではない。これほどの才能を持ちながら、あのファミリアで育ったのであれば、まあこうなるだろうという範囲の中ではあるし、当時既にLv.5に到達していながらそれでも命の危機に陥る様な病に罹ったというのは不幸にしても程がある。ある意味ではそれで命拾いしたとも言えないことはないかもしれないが、結果的にこうして1人残されてしまった彼女に同情くらいはする。
「……それで、いいのか?」
「ん?なにがだ」
「今日の祭の主催はガネーシャ・ファミリアなのだろう。こんなことをしている暇があるのか?」
「あぁ……そろそろ時間的に不味いが、それほど急いでいる訳でもない。掃除が終わってからでも……」
「シャクティ様!!!」
背後から聞こえて来る男性団員の声、振り向けば酷く焦った様子のガネーシャ・ファミリアの団員が駆け寄って来ていることに気がつく。……その様子は尋常ではない、シャクティも直ぐに頭を切り替える。
「何があった!」
「襲撃です!西ゲートの職員が何人か倒れていて……監視していたモンスター達が全て逃げ出しました!!」
「なんだと!?」
このフィリア祭のために地上に運び込まれたモンスター達。その生息域は12〜13階層付近のモンスターが中心となっており、Lv.1どころか恩恵すら持っていない者達にとっては恐ろしい脅威だ。それがこの人が集まる祭の日に10匹近くも地上に放たれたとなれば、最早秘密裏に隠す隠さないどころの問題ではない。
「…………っ、ラフォリア!」
「報酬は?」
「……私の個人範囲で出来る事であれば」
「そうか、ならば貸しを1つということでいい。金品よりもお前に貸しを作っておくことの方が有用そうだ」
「言っておくが犯罪の見逃しはしないからな」
「お前は私を何だと思っているんだ」
「街中で人を殴るのも罪だということを忘れていないだろうな?」
「………」
「あ、こら待て!」
ここ最近の被害者の数はシャクティも当然把握している、むしろそれを見逃してやるというだけで貸しとして十分に成り立つ。というか本来ならば見逃したくもない。しかし一部の不埒者の負傷を見逃すことで、より多くの善人の命を救えるのだと考えれば、考える必要もない。
「〜〜っ、住民の避難誘導を急げ!モンスター討伐はあの女に任せておけばいい!怪我人だけは絶対に出すな!!」
同時刻、アイズ・ヴァレンシュタインもまた同様の依頼をギルドから出されていたりもしたが、2人の最終的な討伐数は同等だったという。……付与魔法【エアリアル】による高速移動があるにも関わらず。
「……ということがあったんだよ!どうだい凄いだろう!うちのベルくんは!」
「知っている、見ていたからな」
「え?見ていた?……………えぇ!?」
「見てたんですか!?何処から!?」
「屋根の上からだ」
「いつから見てたんだい!?」
「仰々しくもお前がそこの馬鹿乳と最後の別れをし始めたところくらいからだ」
「殆ど全部じゃないか!」
「僕ほんとうに死ぬところだったんですよ!?」
「何を大袈裟に、もう一撃くらい耐えれただろう」
「僕まだLv.1ですからね!?」
モンスターフィリアの翌日、朝食を食べながらラフォリアはヘスティアによるベル自慢を聞いていた。ベル君がカッコ良かっただの、これからもっと凄い冒険者になるだの、まあ本当に喧しいくらいに。
しかしながらラフォリアはその一部始終を知っている。何故なら彼女はその光景を屋根の上でずっとみていたから。モンスターを粗方討伐した後、適当に買って来た飲み物を片手に屋根の上に腰を下ろして優雅にその様子を観戦していた。背後から感じる視線と一緒になって。
「そもそもあれ以上に良い機会も無かったろう、恩恵の昇華を目的とするのであれば」
「あ……」
「それは確かに……」
「だが結果的にはそうはならなかったようだな。武器を変えなければ、ステータスを更新しなければ、その目はあっただろう」
「……も、もしかして僕、もったいないことしちゃいました?」
「機会を一つ失ったというのは間違いあるまい」
「うわぁあ……」
「ま、まあまあ!別に良いじゃないか!こうしてみんな無事に生きているんだから!!」
そんな風に呑気に話してはいるが、さてそれもいつまで続くことか。時々ラフォリアの方にも向いていたあの不躾な視線、睨み返してやれば即座にベルの方へと戻ったが、まず間違いない。
この子兎は美の女神に狙われている。
(難儀な話だ)
あの女神は欲しい物は確実に手に入れるまで執着する、耳に挟んだ現場の状況からしても今回の騒動の原因はあの女だろう。正にあのベルとシルバーバックの死闘を見たいが為に引き起こしたのだと容易く想像出来る。途中で視線を向けて来たのも、ラフォリアが手を出すのではないかという心配故なのか、それとも警告であったのか。
(どちらにしても、不快な視線を向けたケジメは取って貰うとするか)
ラフォリアは諸々組み立てていた予定を頭の中で入れ替える。差し当たっては明日、ロキ・ファミリアの眷属と行く筈であったダンジョン探索。これの内容を少し変える。
「馬鹿乳、明日からまた留守にする」
「またダンジョンかい?今度はどれくらい居なくなるのか教えておいてくれよ」
「大体10日ほどだ」
「ぶっ!?」
「と、10日!?そんなにダンジョンに潜るんですか!?」
「少々深くまで潜ってくる、どうやっても時間がかかる」
「……それで何処まで行くつもりなんだい?」
「49階層」
「「ぶほっ!?」」
「ごほっ、ごほっごほっ」
「汚いな貴様等」
「よ、よよ、49階層ー!?そんなの深層も深層じゃないか!何を言ってるんだ君は!!」
「余計な心配など必要ない、事前知識はある。そもそも50階層はモンスターの存在しない安全地帯だ、他の階層に留まるよりは安全だ」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
そんなこと言われても、心配なものは心配で。
というか50階層など本来は遠征で行くような場所であり、明日から行ってくる、というような軽いものでもない。あのロキ・ファミリアでさえもファミリア総出で出向くくらいなのに、それは流石に無茶だ。
「ま、まさか1人で行く気だったりしないだろうね……?」
「?1人だが」
「そんなの無茶だ!!」
「なに、聞いた話ではオッタル……フレイヤ・ファミリアの長も単独でそこまで辿り着いたと聞く。アレに出来るのなら問題ない」
「……というか今更なんですけど、ラフォリアさんのレベルっていくつなんですか……?」
「6だ」
「6!?」
「都市でも最高クラスじゃないか!!」
「アイズさんより上!?」
「本当に何者なんだ君は!!」
「喧しい奴等だな……」
「「痛っ!?」」
バシバシッ!と指で弾いたゴミを2人の額に打つける。事前に伝えず行ったら喧しい、こうして事前に伝えても喧しい。面倒にも程がある。
「何を勘違いしているか知らんが、お前達に私の行動を制限する権利はない。こうして伝えたのも貴様達が先に教えろと喧しかったからだ、それに文句を付ける様であれば今後一切貴様等には何も伝えん」
「う……」
「そもそも他人に構っている暇があるのであれば自分を磨け。低位の冒険者に高位の冒険者の心配をする資格があるとでも思っているのか、言われずともお前達以上に私達は頭を使っているし情報も仕入れている。馬鹿にするのも大概にしろ」
「……ごめんなさい」
「心配とは押し付ければ否定になる、何も知らぬ他者に対して心配などするな。……ああ、不愉快だ」
そう言って、彼女は立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
……確かに、ベル達は彼女のことをまだ何も知らない。それこそレベルだって今日知ったばかりであり、彼女が普段どこを出歩いて、誰と話しているのかも全く知らない。彼女の実力や経験、それに付随する過去すら知らずに自分達の勝手な想像を押し付けたのは、確かに失礼だったかもしれないと2人は思う。
まあだとしても、49階層まで1人で行くと言われれば心配くらいしてしまうのも当然で。それこそ以前にベルが言われた様に、無茶をするのであれば他に誰かを連れて行くべきではないのだろうか。そうすべきだと思うし、むしろそうして欲しい。それこそが押し付けであるとしても、それでも。
「……という訳で、49階層まで行ってくる。正しくは50階層になるか」
「……え?」
「……なにを言ってるのかな、君は」
「遂に頭おかしくなったんか……?」
「貴様等……」
なお、ロキ・ファミリアでもラフォリアは同じ反応を受けていた。
当然である、それはそうなる。
「いや、流石に単独で50階層に行くのは……うん、簡単には頷けないかな」
「当然じゃな」
「頷く必要などない、私はただ予定の変更を伝えに来ただけだ。お前達の意見など元より必要としていないし聞くつもりもない」
「あ〜……一応聞くけど、魔導士やんな?"猛者"が行くのはまだ理解出来るんやけど、流石に無謀やないんか?」
「そもそもその理論が分からん」
「どういうことだ……?」
「何故お前達は魔導士が近接戦闘に弱い前提で話す」
「「「「……………」」」」
「あの女を本気で殺そうとしていた私が近接戦闘もできないと思っていたのか?むしろそれでしか殺せんだろう、アレは」
「それは確かに」
「つまり君は、少なくとも"静寂"と打ち合える程度の力は持っているという理解でいいのかな?」
「一度も勝ったことはないがな」
ここまで自信満々に言うのであれば、まあ大丈夫なのかもしれない。
しかし彼女はまだ冒険者に復帰して間もない、ダンジョンに対する慣れもそこまででは無いだろう。不安要素は正直幾らでもある。
「……よし、それならこうしよう。明日、僕達も一緒にダンジョンに潜る」
「?まさか着いてくる気か?」
「いや、流石にそこまでの準備を今日明日では出来ない。だから着いていけるのは、精々"白宮殿"くらいまでだろう。僕達もそろそろダンジョンに潜ろうと思っていたから丁度良い」
「ふむ……」
「フィン、誰を連れて行く?」
「武器の返済と弁償が必要なアイズとティオナは確定かな。そうなるとティオネとレフィーヤも着いて来そうだね、個人的にはリヴェリアにも来て欲しいかな」
「となると、留守はガレスとベートに任せるか」
「仕方あるまい、主力が総出というのも良くないしのぅ」
「……ふむ、貴様等の実力を測る良い機会か。良いだろう、許可してやる」
「はは、それは良かったよ」
実際のところはラフォリアの実力を測るためのものではあったのだが、本人がこうして乗ってくれたのであればもう何も言うまい。
「……ああ、そうだ。武器を用意せねばならんな」
「アテはあるのかい?」
「帰りに適当に買ってくる、剣で良いだろう」
「金はあるのか?足りなければ少しくらいは……」
「問題ない。事前に腐るほど魔石を回収させたからな、全額突っ込めば相応の物は手に入れられるだろう」
「金の使い方荒過ぎやろ」
「金などダンジョンに潜れば幾らでも手に入る、冒険者をしていれば嫌でも余って来るだろう」
「多分それは武器の整備が必要のない、君や静寂くらいの話じゃないかな……」
「……まともな盾の居る集団戦闘であれば、私もあの女も杖くらい持つからな?」
「「「「………」」」」
そういえばあの女、杖無しであの威力の魔法を使っていたな……と考えると、思わず誰もが閉口してしまった。そう言われるとリヴァイアサンにトドメを刺したという話も理解出来てしまうのだが、そうなると果たしてそれはどれほど馬鹿げた威力であったのか。想像するだけでもリヴェリアは身震いした。