【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話   作:ねをんゆう

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少し遅れました。
あと数話で終わる予定です。


被害者64:撃災

 恐らく今回の一件で神々の中でアルテミスはそれほど大きな活躍はしていない部類に入るだろう。それくらいにはこの件は神々ですら必死になって動いていたし、積極的に前に立っていた。

 けれど彼女の貢献度という面においては、あまりにも大き過ぎると誰であっても言う。アルフィアという女を側で支え続け、時には厳しい言葉も伝え、それでも決して折ることなく立ち上がらせ続けたのだから。

 それは元より子供達や下界のためなら自身の命を差し出すことさえ厭わない彼女の精神性に加えて、眷属を失ったことによって生じた柔軟性。そこにラフォリアと接したことによって獲得した多くの可能性があってこそ実現していることであるのは間違いない。

 

 

 ……だが、そんなアルテミスであっても。

 

 

 流石に今回ばかりは、なりふり構わず必死になった。

 

 

 

 

「私は、私は……失敗を、失敗……失敗、失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗………」

 

 

「アルフィア!落ち着くんだ!まだ失敗した訳じゃない!仮に失敗していたら、どちらも消える筈なんてないんだ!だから……!!」

 

 

 

 言葉を尽くす。

 普通の人間であれば、このような事態になってしまえば冷静さを失うのは当然として、言葉さえも届くことはない。しかし彼女のような人間であれば、どれほどパニックになっても完全に脳の機能を使い切ってしまうことはない。故に理由付けをして言葉を尽くせば、僅かであっても確実に効果はある。

 

 ……問題はアルテミスでさえ現状がよく分かっていないこと。故に言葉を尽くしても、そこに説得力がない。アルテミスだって不安に思っている、一体何が起きたのか。まさかヘスティアの方が失敗したのか。それとも想定外の何かが起きたのか。

 嫌なことだけは、考えれば考えるほどに浮かんで来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ァァァアアアルフィアァァァアアア!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

 

 

 けれどきっと、何より重要なのは。

 アルフィアがこうなってしまってから、その娘が駆け付けるまで、それほど多くの時間が掛からなかったこと。それこそ娘はアルフィア達が潜んでいる場所に大凡の予想を付けていたし、母親がこういう状況になっていることも知っていた。

 

 だから……

 

 

 

 

 ーーーーーッッ!!!!!!

 

 

 

 春姫によるウチデノコヅチ、つまりは一時的な階位昇華(レベルブースト)。彼女自身も限界ギリギリではあったが、そこを無理させた。使った直後に気絶するくらいであったが、それをさせた。その必要があると彼女自身も判断し、それをしたのだ。

 いくら身体が小さくなっていようとも、Lv.8の脚力。そしてもう色々なものに対する明確な怒り。その末に現状のオッタルとさえまた普通に殴り合える程のステイタスを得た彼女は、何の迷いもなく高所からの超跳躍と落下による最短距離のショートカットを試みた。

 

 

 

「っ、ラフォリア!!こっちだ!!」

 

 

 

 そしてアルテミスは大声を上げる。

 きっとそれでも詳細な居場所は分からない。しかしこちらから探しに行くより、自分達の居場所を教えるのがよっぽど早い。だって彼女は全力なのだから。それこそこんなにも大きな声を力一杯に出して誰かを探している彼女の姿なんて、アルテミスだって見たこともないくらいなのだから。

 

 だからきっと、これだけの情報であっても彼女は間違いなく見つけ出す。探し出して、現れる。その確信だけは、ここにある。

 

 

 

 

 

 ーーーーーッッ!!!!!!

 

 

 

 

『良くやったアルテミス!!』

 

 

「うわぁ!?壁を壊して来るんじゃな……い……」

 

 

 その小さな洞窟の中、入口とは真逆の方向から拳で穴を開けて入って来たお馬鹿な少女が居た。土煙が巻き上げられ、上がり始めた僅かな朝日に照らされて。浮かび上がった小さな身体。

 

 そう、それはまるで……その姿は、まるで……

 

 

 

 

 

「ラフォ、リア……なのか……?」

 

 

 

「ああ……ただいま、アルフィア」

 

 

 

「お前……なんで……いや、そうではなく……」

 

 

 

「アルフィア」

 

 

 

「っ」

 

 

 

「……ただいま」

 

 

 

「!!」

 

 

 

 土煙が降り、差し込む光の加減が変わる。

 次第に浮かび上がるその姿。

 

 ……もちろん、最初から想像してはいた。

 

 まさかアルフィアを模した姿そのままに出て来ることなんて無いだろうと。ヘスティアだってエレボスだって、流石にそんなポカはやらかさないだろうと。少なくとも以前のラフォリアの姿で、年齢相応の姿になって現れるのではないかと、そう思っていた。

 

 

 それなのに。

 

 

「あぁ……おか、えり……ラフォリア……」

 

 

「……あまりそうジロジロと見てくれるな。私だってまさかこんな姿で戻って来ることになる、とは……っ」

 

 

「おかえり……おかえり、ラフォリア……」

 

 

「……ああ」

 

 

「ラフォリア……」

 

 

 まさか、まさか思うまい。

 だってそこに立っていた娘は少女の姿をしていて、自分にとってもう2度と帰らない筈の記憶の中の姿そのままにそこに居て……ただいまと、言ってくれて……

 

 

「んっ……少し痛いぞ、アルフィア」

 

 

「……何処に、行っていたんだ。本当に心配したんだぞ」

 

 

「なに、ヘスティアに呼び出されてな。急を要するなどと言われ、その結果がこの姿だ。……どうだ、懐かしい姿だろう?」

 

 

「ああ、本当に……だが、良かった……本当に……」

 

 

「……ふふ、これでは本当に母娘の年齢差だな」

 

 

 膝を突いて、抱き締められる。そんな身長差ではあるけれど、不思議な話だけれど、今はそれはそれで互いにとって悪くはなかった。

 こうして単に抱いて、抱かれているだけでも。互いの需要を満たしていて。しっかりと抱むことが出来るし、しっかりと包まれることが出来る。だから自然と抱き上げるし、それに抵抗することもない。もう別に意地を張る必要だってないのだから。こうすることの奇跡の尊さを、互いによく理解しているから。

 

 

「……抵抗、しないのか」

 

 

「まあ、残念だが、今の私は酷く疲れているのでな。特にこの身体は未熟故か妙に疲れる、足になってくれ」

 

 

「ふふ、そうか。まあ大切な娘からの頼みなら仕方がないな。……ほら、お前もしっかり掴まっていろ。私も少し疲れているんだ、もしかしたら落としてしまうかもしれない」

 

 

「……なるほど、それなら仕方ないな」

 

 

「ああ、仕方ないとも」

 

 

 人は成長する、否が応でも。生きているだけで時間は経つし、時間が経つほどに生きていかなければならない。そして生きていくのなら、成長をしていかなければならない。自分の中の能力を引き上げ、直面した問題を解決するために精神さえも熟していく必要がある。

 ……そういう意味であれば、ラフォリアだって成長はしていた。精神年齢が低いなどということも、ないだろう。27という年齢より低いことは間違いなくとも、それでも10歳に満たないということは流石にない。

 

 それでも幼い子の肉体と精神の親和性が高かったのは、きっと彼女がずっとこれを望んでいたからだ。

 

 街中で見かけた親子のように、何処にでもいる普通の母子のように、一度でもいいからこうして抱き上げられることを求めていた。そんなことは自分自身でも認められないし、他者になど絶対に言うことなんて出来ないことではあるが。心と頭は矛盾するもの。子として愛されていなければ決してされることのないようなその行為に、ずっと憧れを持っていた。そしてそれを実現させるには、些か身体が大きくなり過ぎていた。

 

 ラフォリアの精神年齢が幼いのではなく、幼い身体で在りたかったという抑圧され続けていた感情。母娘としては年齢の近過ぎたことを、気にしていた。だから娘として愛されなかったのではないかと、そう思ってすらいた。

 ならばきっとヘスティアは、それが意図的ではないにしろ、最高の形で願いを叶えてくれたのだろう。だって全部ヘスティアのせいに出来るのだから。させてくれるのだから。……そしてそんな抑圧された感情だって、誰にもバレなくて済んだのだから。ラフォリアにとっては、最高の形だった。

 

 

「……やれやれ、ヘスティアも冷や冷やさせてくれるなぁ」

 

 

「……世話をかけたな、アルテミス」

 

 

「うんうん、まったくだ。……でも良いんだ、君が戻って来てくれたのなら」

 

 

「……少し変わったか?悪いが今の私にはベヒーモスを倒した辺りまでしか記憶が無くてな」

 

 

「その辺りも追々話すから大丈夫だよ。……それより、今は街の方に向かおうか。アフロディーテも含めて、君の顔を見たい人は沢山居る筈だからね」

 

 

「むっ」

 

 

 少し腰を折り、アルテミスはラフォリアの頭を撫でる。それに対してラフォリアは少し不満そうにしながらも受け入れるが、そんな様子さえ可愛らしいという顔でアルフィアもアルテミスも彼女を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっっっっっっっっわっっっっっっつ!!!!?!?」

 

 

「相変わらず喧しい奴だな……」

 

 

 荒廃した町の外れに、彼等は集まっていた。

 オリンピアにおける全ての戦いは収束し、この場には巫女達も含め全ての者たちが様々な感情を抱えて結末を見渡している。

 

 どうやらラフォリアがヘスティアの眷属であったことが幸いしたのか、穢れた炎とそれに連なる炎人に成り果てた民の魂達も無事に浄化することが出来たらしく。世界の焼失を防げただけではなく救えるものを粗方救えた、最善を拾うことが出来たらしい。

 

 ……まあ今はそんなことより、子供の姿になってしまったラフォリアに興味津々なアフロディーテの喧しさの方が空間を支配しているのだが。

 

 

「だってだって!仕方ないじゃない!アンタのこんな小さい姿なんて見たことなかったんだし!元から超好みの顔してたのに!それがこんな可愛いくなっちゃって!」

 

 

「おい、それは初耳だが」

 

 

「何歳くらいなんだろうね?8つとかかな?アルフィア、私達にも抱かせてくれないかい?」

 

 

「駄目だ、これは私のものだ。頭を撫でるくらいなら好きにしていいが」

 

 

「おい、何を勝手に許可を出している、ふざけるな。駄目に決まっているだろう」

 

 

「ラ、ラフォリアくん?僕もいいかな?」

 

 

「指をへし折られたいか馬鹿乳」

 

 

「それならばこの太陽神アポロンによる光の祝福を……!」

 

 

「お前は本当に命が惜しくないのかアポロン、どんな度胸だ。今私はお前にむしろ感心さえしているぞ」

 

 

 キャイキャイとはしゃいでいる彼等であるが、その中にアポロンが入っているのは本当に意味不明であるが、ラフォリアも実際のところそこまで嫌がっている訳ではない。それを知っているからこそのはしゃぎようでもある。だって本当に怒っているのなら、頭に忍び寄るその手を跳ね除けているだろうし。

 

 

「まあ、なんだ……取り敢えず一度降ろしてくれ、アルフィア。流石の私とてベル達の前でこれは恥ずかしい」

 

 

「……そうか。まあ、それなら仕方ないな」

 

 

「………………なぜ手を握る」

 

 

「いや、心配になった……」

 

 

「……一応言っておくが、別に中身まで幼くなってはいないからな?1人で歩けるからな?」

 

 

「もう、仕方ない子ね!そういうことなら私が左手を握っておいてあげるわよ!」

 

 

「おい、こいつは本当に何の話も聞いていないのか?アフロディーテは遂に阿呆ロディーテになったのか?」

 

 

「ラフォリア、それは元からだよ」

 

 

「誰が阿呆ロディーテよ!……っていうかアルテミス!?元からって言った!?元からじゃないわよ!!……いや、今でも違うわよ!!」

 

 

「おい、いいから離せ。なんだこいつ、私の言うことを何も聞いてくれないんだが」

 

 

 歩き近づいて来たベル達に対して、もう左右の手をしっかりと握られてしまっているラフォリアは苦笑いを浮かべるしかない。もちろんベルの方も苦笑いだ。ヘルメスとヘファイストスも、なんだか困ったような顔をしていた。当然である。

 

 

「あ〜、えっと……」

 

 

「ベル、助けてくれ」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

「ふふ、なんだかすごく可愛い姿になったじゃない?小さい頃のラフォリアってこんなに可愛かったかしら?昔をあまり知らないのが残念だわ」

 

 

「ああ、まったくだ。ヘラも思わず見に来るくらいなんじゃないか?」

 

 

「おい、縁起でもないことを言うな」

 

 

「とは言え、何処かで顔くらい見せに行く必要はあるだろう。その時はお前も連れて行くからな、ラフォリア」

 

 

「……ベル、お前も来るか?」

 

 

「え……あの、どういう方なんですか?」

 

 

「駄目だ!絶〜っ対に駄目だ!僕の大事なベルくんをヘラの前に連れていくなんて!そんなことは絶対にしたらいけない!!」

 

 

「まあ、それは俺もオススメしないかな……」

 

 

「ほ、本当にどういう神様なんですか……」

 

 

 まあ、そんなことはさておき。

 

 色々と話しておかなければならないことも多くある。それこそラフォリアを愛でることなど、この先いくらでも出来るのだから。今ここですべきことは、より多くある。

 

 

「まあ、その、なんだ……すまなかったな、お前達」

 

 

「「「……!」」」

 

 

「実のところ記憶はベヒーモスを倒したところから無いのだが、どうやら前の私はお前達に、その……心配というか、悲しませたというか……」

 

 

「……どうした、お前にしては歯切れが悪いな」

 

 

「し、仕方ないだろう。私がやったという認識が無いんだ。……まあ、あの状況であれば同じことをする自信はあるが」

 

 

「そ、そこは同じことをするのね……」

 

 

「まあ、その時点での最善の行動だろうからな。謝罪はするが、それは行動に対してではなく、お前達を悲しませたことについてだ。それは事実として私は考えているし、受け入れている」

 

 

「ううん、間違いない、ラフォリアくんだこれ」

 

 

「お前が生き返らせたんだろうが、馬鹿乳」

 

 

 自死という行動については謝らないが、悲しませたことについては謝罪をする。結局同じことであるように思うが、謝りたくないことには謝らないという頑固さに、悲しませたことには責任を感じているところが、ラフォリアらしいと言えばラフォリアらしい。

 

 

「それで、これから君達はどうするんだい?オラリオに戻るのかい?」

 

 

「……はっ!べ、別に私と一緒に歌劇の街に来てもいいのよ!?」

 

 

「いや、私達はオラリオに戻るつもりだ。教会とは別に家でも建てて生活しようと思っている」

 

 

「え、そうなんですか?」

 

 

「が〜ん……」

 

 

「ああ、まあな。どう生活していくかはまだ決めていないが、それでも時間を無駄にするつもりもない。……とは言え、少し人生を休めたいとも思っている」

 

 

「人生を……」

 

 

「これまで走り続けて来たからな。少しくらい何事もなく日々を平穏に過ごしても、罰は当たるまい」

 

 

 もちろん、それは本当に少しの間でしかないだろうけれど。まだまだ世界に闇がある以上、心の底から安寧を受け入れることなど決して出来ないだろうけれど。

 それでも漸く手に入れた今を楽しむこともまた、人には必要なことだ。世界のために切り詰めてばかりでは、世界を守った後に居場所が無くなってしまう。人として生きるのなら、人としての楽しみもなければならない。

 

 

「それにまあ、他にも謝りに行かねばならない者も多く居るからな」

 

 

「まあ、そうね。悲しんでたわよ、特に"象神の杖"」

 

 

「君の病気を治すためにロキ・ファミリアどころかフレイヤ・ファミリアまで協力していたんだ。悲しむより怒っている子の方が多いんじゃないかな?」

 

 

「……やれやれ、自分の尻拭いも大変だな」

 

 

「安心しろ、私も着いていってやる」

 

 

「……母親同伴で謝罪周りか、本当に何歳児なんだ私は」

 

 

 怒られるどころか困惑されて、なんだか毒気が抜かれたような顔をされるのが今から目に浮かぶ。まあ責められるよりかはマシなのだろうが、それはそれでやりづらい。

 それに今更な話ではあるが……

 

 

「あの、ラフォリアさま。今更な話なのですがそのお姿、元に戻るのでしょうか……?」

 

 

「……どうなんだ、馬鹿乳」

 

 

「……あの、やっぱり成長って大事だよね」

 

 

「なるほど、私はまたここから10年以上かけて成長していかなければならない訳か。体術も鍛え直しか?クソが」

 

 

「で、でもステイタスはそのままなんですよね?ということは普通にLv.7ではあるという……」

 

 

「とは言え、それでは気に食わん。しかし10年以上か……全盛期がもう一度来るのはいいとして、先が長過ぎるのは困りものだな」

 

 

「……単純に考えて8歳のLv.7ってヤバいわよね」

 

 

「それも"強くなることは難しくない"とか言っちゃう天才児だしな、アルフィアの系譜はこんなんばっかりなのか?」

 

 

「言われているぞ、ベル」

 

 

「そ、そんなこと言われても……」

 

 

 なんだかんだ言いつつ、恐らく1番ヤバいことになりそうなのはアルフィアでもラフォリアでもなくベルであろう事実。それはラフォリアだって認めていること。そしてアルフィアも気付いていることだ。

 ベルこそこの場にいる誰よりも英雄としての資格を持っている、それが偶然の産物かどうかは分からないが。ならばやるべきことは、やはり先達としてそれを導いていくことか。

 

 

「……まあいい。ベル、お前達はあそこの巫女共と別れを済ませてこい。私達は暫くここに居るからな」

 

 

「!……分かりました、行ってきます」

 

 

「……」

 

 

 背中を向けて走っていく彼を見ても、アルフィアと話している彼を見ても、嫉妬していない自分を見て、軽く息を吐く。ずっと心配していたことが起きていないことを、心の底から安堵する。

 まあ普通に考えて、元々はアルフィアとは関係なくベルのことを気に入っていたのだから。その可能性は元より低かったことなのかもしれないが。それでも。

 

 

「ラフォリア」

 

 

「うん?…………なぜまた持ち上げる」

 

 

「したくなったからだ」

 

 

「……はぁ、私は本当にどんな顔をしてオッタルに会えばいいんだ」

 

 

 嫉妬などする筈もない。

 だってもう、アルフィアが自分のことを愛してくれているということを知っているから。隙あらばこうして抱き上げてくるくらいには愛されているのだと、理解しているから。その安心感が胸の内にある限り、そんな悩みは不要だ。

 

 

「……行くか、謝罪周りに」

 

 

 今はまだ、オラリオの誰もこのことを知る者は居ない。それでもきっと、色々と面白い反応が見れることは確かだろう。確かに気の進まないことではあるが、せめてそれくらいは楽しみにしていきたいとラフォリアは思う。

 

 

 

 ……まあ、オッタルに関してはもう全て知っているし、ラフォリアが子供の姿になっていることもバッチリ見て認識しているのだが。

 

 今も船と桟橋の間に漂いながら。

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