【完結】最後のヘラの眷属が笑って◯○までの話   作:ねをんゆう

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被害者65:万能者&猛者

「はぁ?オッタルまで来ていたのか?」

 

「ああ、あれ以来、遂に姿を現しはしなかったが……どうせ先に泳いで帰ったんだろう」

 

「馬鹿かアイツは……」

 

 そういえばと思い出した、最初の戦闘の際にアルフィアを助けたアルテミス以外の存在。凄まじい勢いで剣を投げつけて来たその存在について聞いてみれば、返って来た返答はそんなものだった。

 帰りの長い船旅、流石にこれだけの戦力が揃っているとモンスターは襲って来ない……訳もなく。襲い掛かってくるモンスター達を完全に無視している女2人の代わりに、ベルを含めた他の眷属達が奮闘している。そんな騒がしい中でもこうして何事もなく会話をしているのだから、その図太さは凄まじいものだ。

 

「なんというか、あまりこういうことを言いたくはないのだが……アイツ、あそこまで気持ち悪かったか?」

 

「いや、流石にそれは言い過ぎだろう」

 

「よく考えろ。2日遅れの船を泳いで追ってくるだけならまだしも、お前に一度も顔を見せる事なくまた泳いで帰ったんだぞ」

 

「……まあ、多少キモいが」

 

「お前もお前でアイツに対しては甘いな……」

 

「多少贔屓しているところは認める。だがアレは歳を食っても進み続けられる可能性を持っている、期待するのも当然だろう」

 

「……あの執着はそれで済む問題か?」

 

 それとなく周囲に2人で気配を探ってみたが、オッタルの気配はもう何処にもない。何の迷いもなく船より速い速度で泳いで帰ったと見て間違いないだろう。

 これについてもアルフィアは普通に引いているが、一方でラフォリアは楽しみにも思っている。果たしてオラリオに帰った時、あの男が一言目に何を言うのか。こんな姿になった自分にどう接してくるのか。それがもう楽しみで楽しみで仕方がない。それを隠せていないから、アルフィアも何とも言えない気持ちで娘を見ている。

 

「……あとマジでそろそろ降ろせ」

 

「うん?何を今更恥ずかしがる必要がある」

 

「いいか?もう恥ずかしいを通り越して狭苦しいんだ」

 

「いいだろう、少しくらい」

 

「いや1日8時間近くこの体勢にさせられている人間の気持ちを考えろ、流石に飽きるわ」

 

「ふむ、まあ寝ている時も含めると14時間か」

 

「私に自由の時間はないのか?一周回って虐待だろもうこれ」

 

 思い付いたようにそんなことを言いつつも、それでもアルフィアは決して離してくれないことをラフォリアもそろそろ気付いている。故に諦めたように水平線の彼方に目を逸らし、溜息を吐くが、これももう何度目か。

 ……そんな水平線の彼方にも、徐々に見えて来た陸地の姿。オラリオはもう直ぐそこ、長かった船旅を終えてまた波乱の日々がやってくる。待ち受けているのは平穏ではなく、また別の問題なのだから。まだまだ隠居生活をするのは程遠い。

 

「というか、君達は闇派閥との戦いには参加してくれないのかい?そうしてくれると俺もアスフィも死ぬほど助かるんだが……」

 

「ん?ヘルメスとアスフィか……まあ悪戯に後進達から機会を奪うのもな」

 

「ああ、こんな滅多にない機会を奪う方がよっぽど酷いというものだ。これを望み叶わず無茶をし、そのまま命を落とす者も多い。フィンが率いているのなら、個人で階層主に挑むよりよっぽど安全だろうよ」

 

「あの、いえ、最悪の場合オラリオが消えることになるのですが……」

 

「ここで私達が『何らかの手を貸す』と言えば、お前達は多少なりとも安堵するだろう。最悪の場合、私達がなんとかしてくれると」

 

「それでは意味がないな、故に私達が手を出すことはない。……むしろ戦力を思い返せ、これで解決出来なければ怠慢も良いところだ。そうであれば闇派閥の前に、私達がお前達を叩き潰す必要が出てくる」

 

「……ヘルメス様、これ説得絶対無理です」

 

「よし、諦めるか」

 

「切り替え早いですね!?」

 

「ああ、まあダメ元みたいなところあったからな。それじゃあアスフィ、悪いが早速魔道具作りに戻ってくれ」

 

「そろそろ寝かせてくださいよぉお!!!」

 

「………」

 

 ……とは言え、勿論このまま放置するような人間でないことは分かっている。アルフィアはともかく、ラフォリアの方は本当にこのまま放置するなんてことが出来る性格ではない。ヘルメスの狙いはそんなところ。ヘルメス自身がそれを認識していて、アスフィは本当に断られたと思い込んでいる。それが重要なのだ。ここで交わされた本当の意味をヘルメスが言葉にしてしまったら、ラフォリアは本当に協力してくれなくなってしまう。

 そんな小さな読み合いも、実は今この場所では発生していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、それはもう片付いているよ。君達が出掛けていた間にね」

 

 

「「「え」」」

 

 

 なお、諸々の報告のためにロキ・ファミリアを訪れたその瞬間に、アスフィの今日までの努力は粉々に砕け散った。つまりそれまで作っていたクノッソスの鍵の複製は、完全に不必要なものになってしまった。

 

「ど、どどどどどういうことですか勇者!?終わったって!?不要!?私の努力は!?不眠で頑張った私の成果は!?」

 

「あ、あはは……いや、幸いにもアンタレスとの戦闘で戦力の増強は出来ていたからね。味方陣営にも偽って異端児達と上下から電撃的に仕掛けてみたんだ。特にガレスはもうクノッソスの壁でも簡単に破壊出来るようになってしまったから、迷宮もあってないようなものでね」

 

「ほう、異端児か……モンスターと手を組んだのか。お前にしては随分と面白いことをしたな、フィン」

 

「君の影響だよ、ラフォリア」

 

「あん?」

 

「君の説教や行動が、僕を含めた団員達全員の考え方に影響を与えていたみたいでね。説得にそれほど苦労が無かったし、僕自身も決断を早めることが出来た。……そのおかげで敵の計画が完成する前に潰すことが出来たんだ、これ以上の最善は無かっただろう」

 

「……その顔を見るに、闇派閥の計画はそこそこ面倒なものだったようだな」

 

「ああ、1月も待っていたら本当に危うかったくらいには。今回でさえ、フレイヤ・ファミリアが最初から手を貸してくれていなかったら危うかった」

 

「なるほど。それもそれで見てみたかったが、残念だ」

 

 

 

 

 

「……ところで」

 

 

 

 そうして簡単な経緯をフィンから聞いていたラフォリアであるが、まあその結末とか途中途中であった詳細はまあ後ほどでいいとして。後ろの方でさっきまでメソメソと泣いていたのに、今やそのまま気絶するかのように寝始めたアスフィのこともどうでもいいとして。

 

 それよりも。

 

 

 

「お前は良い加減に泣き止め、リヴェリア」

 

 

「い、いや……すまない……」

 

「反応に困るわ」

 

「だってお前、その……良かったなぁ……」

 

「お前は私の何なんだ……」

 

「……友人だが」

 

「は?」

 

「え?」

 

「……それは、前の私の言葉か?」

 

「ま、まさか忘れているのか!?」

 

「忘れているというか、そもそも記憶の連続性がない。私の記憶はベヒーモスを倒した辺りまでしかない。再現の触媒になったのが当時の衣服だからな」

 

「なっなっなっ……!!」

 

 悲しいかな、どんな感動的な遣り取りであっても今のラフォリアにとっては本当の意味で記憶にない。それまでメソメソと泣いていたリヴェリアもこれには酷くショックを受けたらしく、今度は違う意味で感情が揺さぶられているらしい。

 しかし仕方ないだろう、当時のラフォリアは本当に自分が生き返るとは思っていなかったのだから。あれで最後だと考えていたから、本音だって語っていたし、色々と寛容になっていたところもある。それが予想出来るからこそ、ラフォリアもなんとなく気不味くて。

 

 

「ちなみにラフォリア、あまりこういう言い方をするのは良くないけれど……その辺りの連続性の途絶えを、君はどう考えているんだい?」

 

「まあ、普通に考えて私の方が偽物だろうな。本物の私は既に死んでいる、そう認識すべきだ」

 

「「「「っ……」」」」

 

「まあ、だからどうしたという話だがな」

 

「は……?」

 

 ラフォリアはアルフィアの膝の上で足を組みながら、出された茶を優雅に啜る。そんな中でも何事もないように娘の頭を撫でるアルフィアの姿は、最早完全に母親のそれだ。……彼女からしてみれば、ラフォリアがこう答えることは最初から知っていた事なのだから。そんな今更を、どうこう言うつもりもない。

 

「偽物だろうと本物だろうと、私は私の成すべきことを成すだけだ。それが仮に以前の私の想い描いたものとは違うものであったとしても、私は私として生きていくことしか出来ない。……つまり、どうでもいい」

 

「……なるほど。やっぱり君はラフォリア・アヴローラだ、間違いない」

 

「そうか、ならそういうことなんだろうよ」

 

「安心しろ、お前は私の娘だ。間違いない」

 

「……僕としては君の変わりようの方が驚きかな、アルフィア。ラフォリアが子供の姿になったことよりも」

 

「そういえばロキはどうした?他の団員も」

 

「もう直ぐ帰ってくる筈だよ。……何事もなく全てが綺麗に終わった訳じゃないから。後始末としてしなければならないことも多いんだ」

 

「……そうか」

 

 もちろんいくら問題が解決したとしても、それで傷付いた者も居れば、涙を流した者も居る。少しは時間が出来るかと思えば、どころか余計に余裕が減ってしまった者だっている。

 

「だが、それでいい」

 

 酸いも甘いも噛み締めて、人は生きていかなければならない。そこで折れてしまうのも、そこで立ち直ることも、その人間次第。けれどそこで立ち直った時にこそ、人は良くも悪くも変わることが出来る。……その変化を、ラフォリアは求めている。願わくばそれが、良い方向への変化であることも。

 

「アルフィア、どうも私には平穏に浸る前に少しすべきことがあるらしい。後ほど付き合ってくれ」

 

「……過保護だな、お前は」

 

「変化をしようとしているのなら、その先を導くことくらいはしてもいいだろう。むしろそれこそ、先達の役目だ」

 

「お前が慕われていた理由だな」

 

「ふっ」

 

 娘を誇らしく思い可愛がる母親の姿が、そこにあった。それと同時に母親に褒められて得意げな顔をする娘の姿も、そこにあった。

 

 

 

 

 

 

「ラフォリア……!!」

 

「ああ、心配をかけ……ぶふっ」

 

「お前は!お前は、本当に!!本当にどうしてこうも!!」

 

「ま、待てシャクティ……心配を掛けたのは悪かった。だから公衆の面前で泣くな、扱いに困る」

 

「大体どうしたこの姿は!というか何がどうなってこうなった!?全て説明するまで離すつもりはないからな!」

 

「……おい待て、もしかして私はこれから延々と同じ話をし続けないといけないのか?」

 

 

 

 

 

「ラフォリアさま……!」

 

「ああ、アミッド……迷惑をかけ」

 

「治療院へ連れて行きます!!」

 

「いや……おい……こら、待たないか」

 

「突然生き返ったかと思ったら……!今度は子供の姿になどと、一体どんな病を拾って来たのですか!?」

 

「違う、いいから聞け、これは病ではなくてだな」

 

「問答無用です!ご安心ください、今度こそ治してみせます!そのためにLv.3への昇華を成し遂げたのですから!!」

 

「それは本当にめでたいことなのだがな、うん、取り敢えず話を……」

 

 

 

 

「ラフォリアさん……!」

 

「おい待てリュー・リオン、私はもう十分だ。これ以上1から10まで説明して質問攻めに合うのは……いや、お前はオリンピアに一緒に来ていた筈だろう」

 

「あ、いえ、私はただの使いで来ただけですので」

 

「……なんだ、そうか」

 

「ええ、ミア母さんから貴女方を呼んで来るように言われていまして」

 

「………」

 

「色々聞きたいことがあるそうなので、お付き合い願います」

 

「……そろそろ帰らせてくれ」

 

 

 

 

 

 ある程度は覚悟していたものの、実際にこうなってしまうとラフォリアだって疲弊するというもの。気付けば日も暮れ始め、黙って膝の上の娘を愛でていたアルフィアとは違い、流石に喋り続けていたラフォリアはミアから解放された頃には眠気を隠そうとしていなかった。

 ……どうやら幼い身体であるためか、直ぐに眠気に襲われてしまうらしい。そんな姿すら愛おしそうに、アルフィアは抱き抱える。

 

「良かったじゃないか、アルフィア」

 

「……迷惑をかけたな、ミア」

 

「別に何もしていないよ。ただ知らない仲じゃないからね、今日だって興味本位で呼んだだけさ」

 

「ふっ、別に構わない。むしろそうして、この子との繋がりを絶やさないであげてくれ。この子は孤独を嫌っている」

 

「なんだい、急に母親らしくなっちまって。変われば変わるもんだね」

 

「お前は子は作らないのか?」

 

「アタシにだって娘は沢山居るよ、毎日喧しくって暇もしないくらいにね」

 

「……そうみたいだな」

 

 店の外壁に寄り掛かりながら、2人は今日も多くの冒険者達で賑わう店の入口を見る。彼女の娘であるという店員達が忙しなく接客をしており、繁盛しているらしいことがありありと分かる。

 

「変わったな、この街も」

 

「……不変を謳う神の連中でさえ変わるんだ。街も人も変わらない方がおかしいだろ」

 

「かつての私は……こうしてただ平穏に浸るお前達を見て、苛立ちを感じていた。残された時間で抗い続けるラフォリアを見ていたからこそ、八つ当たりだったかもしれないが」

 

「それだってアンタ等の勝手だ。アタシは別に世界を救うために冒険者やってた訳じゃない、引退したことを責められたところで知ったことじゃないよ」

 

「……世界を救うことさえ、自己満足か」

 

「少なくとも、店閉じてまでダンジョンに行こうとは思わない。似たようなこと考えてる連中は、この街に腐るほど居るだろうさ。1日2日くらい店閉じて手伝ってやる事くらいなら、考えてやらなくもないけどね」

 

「……そうか」

 

 7年前のあの時、衝動に突き動かされ、無心で役割を成し遂げた。それによって多くの悲劇が生まれたが、英雄が生まれる土壌を作り上げたこともまた事実。

 ……けれど、そうだろう。世界を救うなんてことより、よっぽど大切なことを他に抱えている人間など当然に居る。誰もが同じ思いなど持ってはくれないし、誰もが災厄を前に立ち上がれる訳ではない。どれだけ追い詰めたところで成長する者は生まれるが、逆に立ち止まってしまう者も居る。

 

「それが漸く分かった。……今の私は世界の行末より、娘の方が大切だからな」

 

「……はっ、それでも結局やることは変わらないんだろう?」

 

「ああ、だがそれこそが重要だ。仮に同じように黒竜に立ち向かうことになったとしても、私の目的は救世ではなく娘の将来だ。……その小さな違いが何より大きいものなのだと、今なら分かる。その違いが、今の私には見えている」

 

「……立派な親バカの完成ってことかい」

 

「妹への愛とは、また違う感覚。愛というのは不思議なものだ」

 

「……安心したよ、その子が泣いてる姿を見た人間としてはね」

 

 意外と酒に弱いという性質を持つラフォリアのその涙を、ミアはしっかりと覚えている。そしてその瞬間に彼女がまだまだ子供の気質を持っていることだって、知っていた。だから気に掛けていた。こうしてわざわざ呼び付けて、事の経緯を聞いたくらいには。

 そして安心した。今度こそ母親の下に帰れたのだと、安心出来た。身体は小さくなってしまったが、母親の腕の中で何の警戒もなく眠っているその様子を見れば、あるべきところに収まったと今なら思う。

 

 

「……ところで、ここからが本題なのだが」

 

 

「うん?本題?」

 

 

「ああ、お前に相談したいことがある」

 

 

 話も良い具合になって来たので、そろそろ店に戻ろうとミアが腰を上げたその瞬間に、何やら空気が変わった。アルフィアは何やら深刻そうな顔をして、ラフォリアを見ていた。

 

 

「……なんだい、病気のことなんかアタシに言われてもどうしようもないよ」

 

「いや、病に関してではない。私が相談したいのは……お前のところの馬鹿猪についてだ」

 

「……ああ、なるほど」

 

 

 どうやらそれだけでミアにもアルフィアの言いたいことは伝わったらしい。彼の存在が出て来た瞬間に、ミアも思わず顔を顰めた。

 ちなみに今日一日、ラフォリアは彼とは会っていない。一体どこで何をしているのか、それすら分からないくらいだ。

 

 

「ミア、どう思う……」

 

「アタシだって知らないよ、そんなこと。……けど仮にそういう感情をあの馬鹿が持っていたとして」

 

「ああ」

 

「……この年齢差は何やったって犯罪だろう」

 

「やはりお前もそう思うか……」

 

 

 現在のラフォリアの身長は大凡120cm無いと言ったところ。対してあの猪の体格はアレである。そして年齢もアレである。

 元よりそこそこあった年の差、けれど互いに良い大人であったからこそ周囲から見ても頷けるような間柄だった。しかし今こうなってしまっては、ちょっと笑っていられない。なにをどうやったところで、彼は一瞬で現行犯逮捕である。

 

 

「というか、そんなことがあり得るのか?未だに信じたくないのだが」

 

「別に女神に酔いしれたからって、女神しか愛せないなんてことはないさ。他の女を愛しちまうってこともある、そういう奴は絶対認めないもんだけどね」

 

「……正直に言っていいか?」

 

「うん?」

 

「私はあの馬鹿に愛娘をやるつもりなど、1mm足りともないのだが」

 

「……安心しな、アタシが同じ立場でも同じことを思う筈だよ。近付けたくもないね」

 

「そうか……」

 

 

 本人の知らないところでボッコボコに言われている猪は、どうやら母親受けはかなり悪いらしい。

 果たしてこれから彼はどうするのか。何をどう思って、どういった選択をするのか。取り敢えず今日1日であっても一切顔を見せに来なかったことについて、母親であるアルフィアからの評価は地の底まで落ちていたことだけは事実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?ゼウス、ヘラもここに居たんだろう?彼女はもう居ないのか?」

 

「む?娘達の再会を見たら、満足して帰ってったぞ」

 

「なんだ、せっかくなら会っていけば良かったろうに」

 

「娘には見せたくない顔があるんじゃと、甘味を盗んで土下座させられてた女が今更何を言っとるんじゃと思わんか?」

 

「……まあアルフィアの恩恵はヘラのままだろうし、気付かない方が無理があるか。良かったよ、伝える手間が減った」

 

「言われなくとも、そのうち会いに行くじゃろ。ラフォリアがあんな小さくなって、馬鹿みたいに可愛がるに決まっとるわ」

 

「あれ?ヘラはそんなにラフォリアのことを気に入っていたのか?」

 

「嫁に出すつもりはないって昔言っとったぞ」

 

「……なるほどなぁ」

 

 

 人知れず、ハードルだけはどんどん上がっていた。

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