film STARS 作:葛篭
VIPルームでのギャンブルの内容は『丁半』。サイコロを2つ籠の中へ入れ回し伏せ、出てきた数字が偶数(丁)か奇数(半)かを当てるというとても単純なものだ。ただそのサイズが大男がやっと一つづつ持てるような重量の鉄製のサイコロとフランキーよりも大きい鐘のような籠であるということを除けばだが。
単純故にイカサマも多数存在するゲームではあるが、このサイズと重量のものならばそうそうそう言ったことも出来ないだろうとロビンは多少の楽観視をしながら既にゲームを始めてる我らが船長を尻目に周囲を観察する。
ほぼ全ての人間が仮面を被っている。妥当だろう。いくらここが独立国家、世界政府に認められた治外法権の元にあるとはいえVIPルームに通されるような裏社会の大物同士、あるいは海軍などとが素顔で鉢合わせるような事態は歓迎されない。あくまでも「知らなかった」という言い訳が立つ方が都合がいいのだ。
装飾の趣味もあまり良くない。この街そのものもであるがどこもかしこも金を使っておりギラギラと主張が激しい。有り体に言って目が痛い。まあこれはここの女王の能力の関係もあるのだろう。この街に到着してすぐ別の海賊に襲われたあと、金で出来た触手のようなものが伸びてきて彼らを海へ叩き落としていた。十中八九、そういった能力者と見て間違いないだろう。この黄金で出来た国の支配者《黄金女帝》ヴェルデ・ステラ。この国全てがいつでも彼女の敵へと牙を剥く準備を整えている。
「まあまあまあ! これはこれは麦わらのルフィ様とその御一行様! ようこそ、我が『グラン・ステッラ』へ!」
思考に囚われていたロビンの耳を軽快な声が打つ。先程彼女たちが降りてきた中央エレベーターがある階段の上から一人、素顔を晒した女が優雅に手を広げながらこちらへ歩み寄っているところだった。
豊かな金の髪には何かの植物を模ったバレッタが飾られ、それに似合う真っ白なAラインドレスを麗しく着こなしている。繊細なレースが首元と両腕を覆い、所々に宝石や金が装飾として嫌味なく飾られていた。海というよりも空の色をした瞳が穏やかに大勝ちしている我らが船長を見下ろした。
「誰だ?お前」
「わたしはヴェルデ・ステラ。この国の女王です。ようこそいらっしゃいました。歓迎しますわ」
「ふーん、そっか」
あいも変わらず礼儀というものをどこかに置いて忘れてきたルフィは興味なさげにステラを見返す。
そのふてぶてしさに気を悪くした風でもなく彼女は丁半をしていたルフィの隣へと座る。「あなたが5億もの賞金首とは信じられませんね」とおかしそうに笑いながらルフィの腕に触れ、そして一つ賭けをしないかと持ちかけた。
「わたしに勝てば掛け金の10倍のチップをお返ししますわ。もちろん、負ければ全て没収となりますが…いかがです?」
「10倍!? やるわよォ! ルフィ! 今日のあんたなら勝てる!!」
目も眩むような金額に文字通り目を輝かせたナミがルフィへと発破をかける。ルフィもやる気十分という風に快挙した。
その背へ相変わらず信用出来ない軽薄な笑みを浮かべ、シリウスが緩慢に手袋を外しながら歩み寄った。その露骨な動きにロビンが声を上げたが時既に遅し。素肌の手のひらがルフィの肩へ触れる。訝しげに己を見上げるルフィにシリウスはにっこりと微笑んだ。
「勝てると、いいですね?」
「ん? おう!」
サイコロが鐘の中に投入されかち上げられる。ダイスと言う元デスマッチショーのチャンピオンだという巨漢が床に叩きつけられた鐘をその頭蓋でかち割る。出た目は七・四の『半』。
ルフィが先程宣言したのは『丁』だった。
「ルフィが、負けた…!?」
ナミやウソップが驚愕を浮かべる中、ゾロを筆頭に戦いに長けた者たちはステラの雰囲気がガラリと変わったことを察し各々構えを取る。
「おやおや! わたしの勝ちですね! ……それではお貸したチップ、3億2000万ベリー。お返しいただきましょう」
「…さっき、彼がルフィに触れた時なにをしたの」
ロビンの問いかけにシリウスは金製のステッキで床を叩き「手の内を晒す真似をするとでも?」と小馬鹿にしたように笑った。当のルフィはバナナの皮で足を滑らせたあげく腹痛に蹲るという『不幸』に見舞われていた。
まさか、触れた相手の『運』を奪う能力者とでも言うのだろうか? それならば、そもそもこの賭けは彼女らの掌の上でしかなかったということになる。
当然ナミたちは納得しなかった。果敢にもステラへと食ってかかった。金を返すか一生ここで奴隷のように働くか、二択を突きつけられゾロが大将を叩けばいいだろうと短絡的に直接ステラへと斬り掛かった。だがその凶刃は当たり前のようにシリウスのステッキに防がれ、その上腕が、脚が、体が金に侵食され固着する。
「これ、は…!」
「あなた達、この国へ入ってすぐ金粉の雨を浴びたでしょう? あれは悪魔の実の能力を受けた金──あなた達はこの国に足を踏み入れた瞬間からわたしたちの手の中なのよ」
妖艶に笑うステラへと再びナミが食って掛かるが、その首元へカリーナがナイフを当て大人しくするように脅す。ナミはサングラスをかけた彼女の顔を見てしばらく訝しんでいたが、何か気がついたのか「お金は払うわ。でも少し待って」とステラへと告げる。
「いいわ。明日の夜まで待ってあげましょう。その時までにお金を用意出来なければ……《海賊狩り》の命はいただくわ」
二人の女の視線が絡み合い、その間に激しく火花が散った。
《coming soon》
VIPルームの話だけで一話…長さにばらつきがあるなぁ…