超昂大戦 二次創作SS 真の仲間になれないエスカ・チームのお嬢様は、ルビーにスパーリングを挑むことにしました。 作:環 藍河
※苦痛や負傷、悲鳴に関する表現が含まれます。所謂ソフトリョナレベルですが、苦手な方は読むのをお控えください。(一応「残酷な描写」タグをつけておきます)
※本文中に出てくる特殊効果(バフ・デバフ等)の名前と効果が、原作通りに対応していない場合があります。
※原作のキャラクターに実装されていないスキルが描写されています。
※pixiv様へも投稿します。
Round 1 危うしルビー! 紫水晶の毒牙
「うあ…っ!」
どさっ。
ダイビート基地内・トレーニングルームの無機質な床に、息も絶え絶えの戦士が倒れ込む。
紅蓮の超昂戦士・エスカ・ルビー。新人ながら、サファイアとトパーズを加えたエスカ・チームの主軸を務める、荒削りながら成長著しい有望株だ。
そんな彼女を翻弄しリングに沈めたのは、紫光の超昂戦士・エスカ・アメイズ。つい数日前にADDD適性を認められ、ダイビート長官・戦部トキサダの判断で変身を許可されたばかりの、新人超昂戦士。
…
「ねえ長官くん? 私ー、入隊祝いに、アカリちゃんと…エスカ・ルビーと模擬戦がしたいなーって。…ダメ?」
昨日のこと。突然のオファーに、場がざわめく。
「実際問題、私もエスカ・アメイズのポテンシャルとか、どこまで実戦で踏ん張れるかとか、手応えを確かめたいの。ADDDの経験豊富なアカリちゃんに、引き出してもらえたら嬉しいなって。」
「スパーリングは許可する。相手が…アカリが了承すれば、だが…」
トキサダがアカリの目を覗く。
「はい! やります!」
アカリとエリーの間に何かがあったことは、理解していた。だから、躊躇いやわだかまりが少しでもあれば、不許可のつもりだったが。
「…よし、許可する。ユーノ、明日16時、トレーニングルームを押さえてくれ。」
…
「『フラックス・プロージョン、ビート・チェンジ!』」
変身キーワードを同時に唱え、紅と紫、2色の閃光がリングを包む。程なくブザーが響くと同時に、赤い弾丸が紫めがけて放たれる。
「やああああっ! えいっ! はあっ!」
「くっ! ふんっ! それっ!」
ルビーの突撃を食い止めようと、アメイズのウィップがしなり、左右に上下に、ルビーを牽制する。
手刀とローキックで捌き、じりじりと距離を詰めていくルビー。
だが。
「くはあっ!?」
背後から、ブーメランの軌道でウィップの尖端のチャームがルビーを突き飛ばす。死角からの一撃に不意を衝かれ、全身をくの字に曲げられるルビー。
「ぬなっ!? あんなムチの動き、アリい?!」
「…ガラガラヘビの動きか…!」
ボックスでスパーリングを見守る、うららとヒビキが、共にアメイズの鞭さばきに舌を巻く。
ガラガラヘビ、別名・サイドワインダー。
敵と対峙した際、横へ跳び敵を急襲する習性を、その名に持つ蛇。
上下左右に散らした攻撃の本命は、裏からの一撃。狡猾に冷静に、紫の鞭がルビーを仕留めた。
姿勢を立て直そうと踏ん張る。が。膝が笑う。
(足に力が…入らない…っ?)
ルビーに突き立てたのは、蛇の僅かひと咬み。だがそこから、ルビーを魅了するかのように魔力を麻痺毒として体内に巡らせ、確実に、ルビーの最大の武器である脚力を蝕んでいた。
「ルビー、蛇のフルコース、たっぷり堪能してねっ。スキュラ!」
ウィップが新体操のリボンのように螺旋を描き、ルビーの全身を絡め取る。
「あっ、ああっ、きゃあああああっ!!」
刹那、鞭は大蛇へと化身し、ルビーを締め上げる。抱えるほどの太さの蛇が、胸を二の腕ごと、腹周りを手首ごと、そして両足を太腿から捻り上げる。
ぎしっ。ぎりぎりぎりぎりっ。ぐぎぎっ。
「ぐうう~~っ!! あっ、あああ〜〜っ!!」
全身の骨という骨が、悲鳴を上げる。
肺が両腕ごと締め潰され、酸素を求める。
かろうじて動く足をばたつかせても、大地に届かない。
為す術なくルビーは、妖艶なる大蛇の捕虜となった。
「おいっ、スパーリングだぞ! やりすぎだっ!」
ボックスを飛び出し、割って入らんとするヒビキ。しかし、それを阻む厚い扉。
「くっ…ロックがっ…! 若頭領、解除を!」
『ダメだっ、別の力で内部から二重ロックされている!』
「内部?! …アメイズ!」
「ゴメンね、ヒビキ。乱入NGなんだ。」
完全密室と化したリングに、ルビーを助ける手は届かない。
「あんたねーっ! ルビーは一緒に戦う仲間でしょー! フレンドリーファイアなんて軍法会議で銃殺刑モンの狼藉、何してくれてんのよー!」
「…逆なんだー、うららちゃん。」
「…は?」
「私たちが一緒にこれから戦うために、避けられないのが、今日のこのスパーリング。…わかってとは言えないけど」
「わかるかー! こらっ、ロック開けなさいよー!」
セコンドの抗議の間にも、アメイズの蛇は拘束を緩めない。
「あ…かはっ…ぐっ…あああ…っ…」
(呼吸が…できないっ…か…体じゅうの骨が…潰されちゃう…っ!)
為すがままに蹂躙され、もはや失神寸前のルビー。
「う…っ!?」
突如消滅する大蛇。ルビーのブーツがようやく床を掴むも、足取りはおぼつかず、立つのがやっと。
「フィナーレよ。ヒュドラ!」
今度は鞭が九頭の蛇と化し、満身創痍の紅き戦士を急襲する。
まず両脚を這い登り、二頭がその峰に牙を打ち込む。
更に登る四頭が、スーツ越しの腹に、臍に、両胸に。
進路を左右に曲げた二頭が、両腕に。
がぶっ。ぐりぐりぐりっ。どくっ。ぶすっ。
「あぐっ! うあっ、あーっ!! あああ〜っ!!」
牙から全身に回る、ヒュドラの淫毒。指先も爪先も弛緩し、ルビーの残ったスタミナとガッツはごっそり奪われてしまった。
そして最後の一頭が、ルビーの眼前に迫る。
「ひ…っ!」
一瞬の恐怖と、予見される最悪の未来。
次の瞬間。
がぶっ、どくどくどくっ!
予見の通り、首筋の頚動脈に突き立てられる、最後の毒牙。インナー越しの注射が、ルビーの意識を消しにかかる。
「嫌ああっ! …う…あ…あっ…!」
抵抗するかのように、首を左右に振るルビー。そんな程度で、ヒュドラは獲物を逃さない。
どくん。どくん。どくん。
警報の如く、早鐘の鼓動がルビーの体内から響く。そのひと打ちごとに、意識は闇に引きずられていく。
(そんな…一撃も反撃できずに…やられる…!)
「これで、おしまいっ。」
ウィップをくるりと巻き取るアメイズ。
ヒュドラの牙から解放されるも、ルビーにはもはや、体躯を支える脚力は残されていなかった。
「うあ…っ!」
前のめりに、卒倒。
吹き出す汗が、冷たい床を濡らす。
「…ルビーが、こんなに容易く…!」
「こらっルビー、立ちなさいよ、私以外に負けるなー!」
アメイズの圧倒的な強さに戦慄する、ヒビキとうらら。
「…ルビー、ホントにこれで、おしまい? あなたの狩人の素質、やっぱりまだ、つぼみのままなのね。」
(つ…強い…! これがアメイズの全力…!)
薄れゆく意識を振り絞るルビー。だが、ヒュドラの毒は更に全身を蝕み、重力に抗う力をルビーから奪う。
(た…立たなきゃ…! ガッツ、全開…!)
両眼をつぶり、歯を食いしばるも、かなわない。
(ヒビキちゃん…うららちゃん…ゴメン)
強化ガラスの向こうの仲間たちに、チームメイトとして無様な不甲斐なさを詫びるルビー。
(ああ…!)
薄れる視界、その端…
誰もが、アメイズの完全勝利を確信した。
その時。
「…まだ、できるよね。ルビー」
「…うん、まだ、負けない…!」
ルビーの中で目覚めた闘志が、最後のスタミナをブーストさせる。震える両手足を振り絞り、ファイティングポーズを取る、紅蓮の超昂戦士。
「私だって、ダイビートの超昂戦士、エスカ・ルビーだから…何もしないまま、負けたくない!」
Interval in Blue corner. 悲しき決意・アメイズの捧げし贄
「足りんな。あれしきの力で、我らが手を取る意義を何処に見出だせるものか」
「だーかーらー、結成間もないダイビートで、あなたが酷評するルビーは戦士になって1ヶ月そこら。ニルと対等で戦える方がおかしいでしょー!」
スパーリングの数日前、魔女を束ねる上位組織「箱船」の会合の一角。
時に国家さえも動かし、紛争さえも鎮めてしまう、魔女にとっての脅威を排除する実行部隊・ジークフリート派を束ねる『皇帝』ファヴニルは、エリーの提言を一蹴する。
エリーが見込むほどの組織・ダイビートとは如何なるものか、ニルが赴き検分した戦いは、皮肉にもエリーに心乱されたルビーが空回りを繰り返し、普段の三分の一も実力が出せない戦いだった。
「見込みと希望的観測で組む相手を選ぶな、『恋人』よ。浅慮に釣り合うほど、我等の命運は軽くないぞ」
「…証明があれば、いいのね。ダイビートの、ルビーの実力の証明が…!」
…
「エキドナ、ちょっとだけ私の美味しいとこ、しゃぶらせてあげる。だから、あなたの娘たちを何体か、私に預けてちょうだい!」
エキドナ…エリーが纏う、母なる淫蛇。伝説では蛇のみならず、地獄の門番たる三つ頭の猟犬ケルベロスや、山羊の胴に獅子の頭と蛇の尾を持つ淫欲の怪獣キマイラなど、いくつもの獣を仔となす、美しくも業深き邪の蛇。
ぺちゃっ。じゅるじゅるっ。ちゅううっ。
「くう…っ…、あんまり、がっつかないの…!」
エキドナは決してエリーに無償の力を授ける守護神ではない。むしろ駆け引きをしくじれば、躊躇なくエリーの魔眼を吸い尽くし、抜け殻を無慈悲に捨て置くだろう。
じゅぶっ。こりっ。じゅううううっ。
「あ…あぐうううっ! あーっ!」
奪われる魔力に悶え、歯を食いしばるエリー。
この苦痛こそが、スキュラとヒュドラ、二頭の娘を貸し出す担保。
どさっ。
差し出された贄を堪能し、満足気に舌舐めずりを二度、三度。
エキドナにねぶり尽くされたエリーが、力なく大地に崩れ落ちる。
「…はあっ、かは…っ! これで、ルビーを…!」
…
かくしてアメイズは、奉納と引換の猛獣をルビーにけしかける。ダイビートの、エスカ・ルビーの真の実力を引き出し、ニルの評価を一転させるため。箱船の沈没を目論み今も暗躍しているであろう真の敵は、近くいよいよその牙を剥き出しにするだろう。その時、箱船が対抗するための異能の力…ダイビートと手を携えるため。
だが、祖母・雅から幼くして薫陶を受け、叩き上げの知性と帝王学でエリザベス派の魔女を導き、若くして複合企業体NAUの舵を執るエリーの、総てを見通す深謀遠慮は、そこには無い。
それは、仲違いする父母を取り持ちたいのに、何を言ってもわかってくれないパパとママに振り下ろす、少女の小さな握り拳のように。
寄る瀬なき自らの想いが大切な人を傷つけてしまう、二律背反に心を焼かれる痛み。
それこそが、エリーの捧げた真の代償だった。
Interval in Red corner. 立ち上がれルビー! 護りたい人のために
…
アメイズがこの日の為に用意した、エキドナの二体の愛娘・スキュラとヒュドラが繰り出す縛鎖と淫毒に、エスカ・ルビーは全身の力を奪われ、重力に支配された四肢を床になげうつ。
びくっ、びくん、どくん。
(あ…か…くはっ…!)
痺れる両手を微かな力で前に伸ばし、大地から体を引き剥がそうと拳を作る。
だが、姉たる大蛇・スキュラに両胸ごと潰されかけたルビーの両腕は痙攣を止めず、九姉妹の雌蛇・ヒュドラの牙が放った淫毒はルビーの体を隅々まで誑し込んでしまった。
真朱と純白に輝くルビーの戦闘服は、スキュラの拘束で千切られ、ヒュドラの毒牙で血に染められ、全身が冷汗でぐしょ濡れとなり、かろうじて原形をとどめているものの、これ以上は妖蛇の牙に耐える力を残してはいない。
もはや官能的ですらある、満身創痍の坩堝に呑まれ、ルビーは未だ闇の中にあった。
(アメイズ…エリーちゃん…どうして…?)
ほんの数日前、アカリはエリーといがみ合い、いざこざを経てエリーの背負う業の片鱗を知った。
(エリーちゃんには…護るべき人たちがいる…なら、この模擬戦も…エリーちゃんが…誰かを護るための…?)
頭を回すも、疲労とダメージと毒に支配された思考回路は、結論を返してくれない。
ぼんやり、霞む視界に覗く、二人の仲間。
(ヒビキちゃん…あんなに狼狽えて…)
エリーに中からロックされた扉の向こう、届かない助太刀の拳を悔しく握り締め、防弾ガラスを叩くことしかできない、ヒビキとうらら。
(うららちゃんは…ヒーローの心得を…私に叫んでくれてるんだろうな…)
…どぷっ、どぷっ、ごぷっ…
刻一刻と、光届かぬ海の深淵へと、体の全てが鉛のように沈む。遂に瞳もとろりと弛緩し、意識混濁となるルビー。
(このまま…負けても…いいのかな…)
私が負ければ、エリーが護りたい人たちが救われるのかもしれない…そんな考えに心を侵略される。
(護りたい…ひと…?!)
そうだ。
エリーだけじゃない。
私にも、護りたい人がいる。
…
僅か数日前。
エリーに心乱され、ついに大義のために戦えなくなった自分の弱い心を嘆き、立ち上がれなくなったルビー。
だがその止めどない落涙を拭ってくれた、憧れの戦士・エスカレイヤー。
彼女が気づかせてくれた、大切なこと。
ふるうべき正義が、わがままだっていい。
救いたい人を、依怙贔屓したっていい。
だって。
(私の…護りたい人は…!!)
みんなが持つ平凡な幸せを、未だ知らない人。
誰よりも伝えたいこと、何よりも見せたいもの。
してあげたいことが、たくさんできた。
してほしいことも、たくさんできた。
自分の全部を、この人には惜しみなく渡したい。
貴方の全部を、もっともっと知りたくて心が震える。
私の護りたい人。
アカリが心の底から、そう思える人。
…
エスカ・ルビーのADDDが、最後の、そして最大のD2エナジーを放つ。
腕から指先に、脚から爪先に。
輝きを失いかけた瞳は、今や眩しい翠を灯す。
心の翼を再び広げ、ルビーの五体がエナジーで満たされていく。
【後編へ続く】
初めまして。環 藍河(たまき あいか)と申します。2022年GWに超昂大戦にずっぽりハマり、勢いで二次創作SSまで手を出してしまいました。
同人誌でも公式アンソロジーでも、超昂大戦二次創作がもっと増えてほしい…わずかな呼び水になれば幸いです。
あまりエロいのは書けませんが、笑って泣いて熱くなるSSを届けられるよう頑張ります。とりあえず後編もすぐ出します。 よろしくお願いします!