『チートはなるべく最小限』がコンセプトだから仕方ないけどね(あそこまでヒドいのは流石にやらないけど……)
まだまだどんな準備が必要やら……
姫子との逢瀬と関係進展……ニヨニヨ笑う両親はさておいて。大輝の精神は完全にリフレッシュされた
『ガチ勢やるならイレギュラーには絶対に遭遇する』
ガチ勢ならば当たり前の話だ。大概は運良くパーティー探索時にだが
それでもちゃんと『ソロでもイレギュラー撃退』はこのEクラス迷宮……頑張ってもDクラス迷宮までなら辛うじて何とかなるだろう(普通の冒険者でも)
だからこそ、だからこそ大輝も有り金はたいて次の日にはカードショップで新しいカードを得る事にしたのだ
休暇明けの今日もメアリーさんはカードショップで何時もの応対をしてくれた
どうやら今日は『これまでのお目当て』もちゃんと入荷していた……メアリーさんが取り置きしてくれていただけだけど
『高品質キキーモラ(老婆型、ニ百五十万円)』と『良質なボアオーク(九百万円)』
合わせて計一千百五十万という莫大な価格だが今の大輝ならば買える……魔石貯金に手を出さずとも余裕で買える
それに大輝には『とある秘密兵器』がある
皆様は『冒険者向け懸賞』という言葉を覚えているだろうか?
間話で述べたあの新人冒険者支援サービスの一種であり。その中には『女の子カードやウィンチェスター・ハウスなどの希少カード以外の高級Dランクカード割引きチケット』という比較的ハズレ枠も存在する(大概の男冒険者は女の子カードを求めて冒険者稼業に勤しむものだからだ……大輝みたいな希少な例外を除いて)
大概の一つ星冒険者ではその費用が貯まる前にチケットの有効期間が切れるケースばかりである事も不人気の理由だろう(これも滅多に出ない癖に有効期限は割と短い事も……だろうか?)
しかし資金を得た大輝みたいなガチ勢(かつリア充)には非常に有り難い代物である
大輝が持っているのは『八百万円以上のDランクカード半額チケット』という攻めに攻めた代物だ
ほとんど大半の当選者がゴミ箱に捨てていくだけのダントツの不人気景品だ(自分以外には使用不可という辺りもその不人気具合に拍車をかけている始末である)
これさえ有れば更に新しいカードが一枚二枚は買えるだろう。ちゃんとした武具系魔道具だってありだ
ボアオークとキキーモラを即座に購入してから余った四百五十万円と不要魔道具、虎の子の魔石の残高に……とある事情から出来れば手を付けたくないカーバンクルガーネット(本日の相場は二百四十万円也)を計算に入れてだいたい九百五十万円の残り資金がある
流石にもう使えるチケットは無い……願わくば狗や狼系統が欲しい(ブラウニーはまだ暫くそのままで起用だ……『低級収納』は貴重なので)
ストーンゴーレムの進化は……出来れば『しっくり来るとある妖怪系Dランクカード』で行いたいからまだ暫く進化待ちだ
……昔、姫子と二人で見たあのカードの威容がやはり忘れられない。願わくば何時かはそのカードが欲しい。父がサマナーとして使役していたあの妖怪が
ちなみにその妖怪はかの『妖怪の神』をラバウルで救った。という逸話を持つ超人気妖怪であり……発祥の地である北九州のダンジョン付近ではこのカード(ともう一種)を求めて多数の冒険者が殺到しているとかいないとか
流石に値段そのものならばだいたい七百万円其処らだが大人気カードである為非常に入手困難な代物として有名だ(供給がほとんど追いつかないという意味で)
先ずは予算範囲内でシナジーに適合する何らかの出物探しからだ
ヘルハウンド用の大概の狗系カードはライラプスばかりで偶にあるのはカーシーやヘアリージャックみたいなカードが多い……しかし何故かどれもこれもしっくり来ない。マタギだった母方の曾祖父の猟犬との触れ合いの影響と記憶のおかげで狗系統は割りと好きな筈なのだが……
そして……大輝は『そのカード』を見つけた
『送り狼』
正式には『送り犬』とも言われるが『送り山犬』という呼ばれ方もする東北から九州まで日本全国津々浦々に類似伝承が存在する妖怪の一種だ(同じDランクカードに『送り犬』という亜種も存在する……『迎え犬』という『二体一対スキル』持ちの奴が)
江戸時代の本所七不思議にも『送り提灯』や『送り拍子木』という亜種に纏わる怪談がある……ちなみに提灯はEランクカード鬼火系、拍子木はアイテムに存在しているのが確認されている
ついでに……Eランクにも一つだけ確認されている『空間系』が本所七不思議の一つを元にある
『燈無蕎麦』
『常に行灯の消えた担ぎ屋台』という型で現れるカードであり、一応蕎麦が(その屋台として普通の在庫までなら)出せる事(完全にセルフサービス)と傍らを寝床代わりに使える事しか出来ない『不便な二人用』だが一応は空間系カードだ(屋台のすぐ傍まで……蕎麦屋台だけに)
(日本は東京以外には出没しない上に出没自体も希少な為)非常に珍しいカードではあるが……市場価格は百万円だ(低級収納が付きやすいカードでもあるけど『戦闘力』が有っても動けないからまともに戦闘すらできないカードではあるが仮にも『空間系』である)。発見する事自体もかなり難しい事もありギルドでも完全な把握の出来ないカードとしてもある意味有名な代物だ(発見にはそれ用の能力持ちカードか魔道具が必要なのは空間系としての特性上必須だし)
一応は火炎魔法と水魔法なら使えるが……あまり魔力も無いから直ぐに戦力外になるけども(本来は蕎麦を湯掻いたり鍋に水を張る為の能力につき)
ちなみに……この七不思議の由来通りに『行灯に灯りを灯す』と不幸になる(要はこのカードがロストする)から要注意だ。しかも燈無蕎麦の中ではなるべく自前のライトなどもあまり付けない方が良い(こっちだとモンスターとのエンカウント率が高くなるとか何か不運を招きやすいとか?)
ついでに……この蕎麦は非常に絶品らしく、このカードにはごく一部の蕎麦好きが懸賞金を賭けて追い求めているらしい
同じく本所七不思議の一つである『足洗屋敷』もつい最近新種の空間系Dランクカードとして発見されたらしいが……かなり『アレ』な代物だったらしい(居住可能なDランク空間型カードは基本的に必ず何らかの欠陥住宅だから仕方ない話だが)
閑話休題(それはさておき)
夜道に山道を歩いていると……何やら『四足の獣』がひたひたついて来る気配を感じる事がある。もしもこの時走って逃げようとしたり転んだりするとその『四足の獣』に喰い殺される事になる(転んでも一休みのふりをすれば無事に済むパターンもあるらしい)
皆様も『親切を装ってうら若い娘さんを襲う悪い男』の事を『送り狼』と呼ぶがそれはこの妖怪を元に謂れた言葉だ
……されどそうは言われても逆に送り狼には『対象を保護して無事に目的地に送り届ける』という性質もあるのだが(これはこの妖怪の原型であるニホンオオカミの習性から来たらしい)
この『送り狼』というカードにもそれに纏わる能力がある……殆ど帰路に限定されたナビゲーション能力みたいなものでしか無いが
『とある事情』で精密機械が駄目になりやすいEランク迷宮以降に入る際のちょっとした命綱……とも言えるが所詮はDランクの比較的弱い分類のカードでしかない
『完全に頼りきるには心ともないが。万が一の命綱の一つにはなるカード』として送り狼はDランク下位なれど以外と人気のある『知る人ぞ知る優良カード』だ
その気になるお値段は……だいたいニ百五十万円。日本全国の迷宮から割と良く出るカードなのでそれなりにギルドも普及活動に勤しんではいるのだ(これは極めて一般的な代物だった)
『奨学カード』と言うにはちと高いが……このカードは何気に海外でも人気がある為奨学カードには出来なかったのである(日本だけなら奨学カードにも出来たかも知れない)
この送り狼に(大輝の知人であるアイドルプロデューサーや社長、専務達の言葉を借りて)『ティンと来た』からやはり即決で買う
そして次は……もう少しはマシな武具を(今はまだ)オークの為に調達したり何らかの魔法薬を見たりと色々考えなくてはならない
オークが使っているあの斧もそろそろガタが来た……刃こぼれやひび割れが見えてきたのだ
一応はたまにメンテナンスにはだしてはいたがそろそろ買い替え時だと言われたので今日は後で刃物供養に出しておくつもりだ(仮にも武具の類なので)
最近ではこういう『冒険者が使っていた武具の供養』を専門にする寺院もそれなりに増えて来たから武具の処理も楽になった……らしい(メアリーさん曰く)
最初はもう一度新しい凡庸シリーズをワゴンセールから探すつもりだったが……今の懐具合なら大丈夫だろうともう少しは良いものを物色する
通常の武具型魔道具は『カード化能力』を持ってはいない(凡庸シリーズみたいな一部の例外を除いて)
新品の武具だとカード化能力は期待出来ない。中古品ならたまにカード化しているものもあるが逆に品質に不安が残る
今の大輝ならば新品を買っても大丈夫だろう……求めるものがでかい斧だから結構な確率でカード化能力を有するだろうし。そうでなくともブラウニーの『低級収納』を使えばどうにでもなる
今回は丁度良い代物があった
それは『ラブリュス』と呼ばれるデザインの(青銅みたいな素材で出来た様に見える)両刃の大戦斧だった
鍛える前の通常のオークでは持て余す様な重量とサイズの長柄のこの馬鹿でかい斧には『カード化能力』が最初から付与されている(メアリーさんの見立てでは『低級収納では難しい』らしいからだろう)
しかし……オークをボアオークにマイナーチェンジすれば丁度良い塩梅になるとメアリーさんの太鼓判も付いている
この馬鹿でかい大斧……『ミノタウロスの戦斧』は先の凡庸の戦斧と同じ様な制限と『ひたすら頑丈』というだけの(使い手を選ぶが)ありきたりな魔道具だがこの手の武具としては安くて強い(価格は百万円ぽっきりで戦闘力+120という破格さだ)
……装備可能なのは『ちゃんと鍛えたかそれなり以上に強いDランク以上の怪力かつ頑丈なカード』に限られるが
ついでに予備で『凡庸の斧』でも買おうかとワゴンセールを見てみれば……
その中で少し『面白いもの』を見つけてしまった
【Tips】キキーモラ
ロシアを発祥とする妖精の一種。その語源は『家鳴り(家屋がキィキィ鳴る音)』から来ている
少女、老婆、幻獣の三つの姿を持つとされ、本場ロシアではその三つの姿を使い分ける事が可能とされている
屋敷妖精らしく働き者の主婦の手助けをするが怠け者の主婦を喰い殺すという一面を持つ
日本ではそれぞれ少女、老婆、幻獣の三つの形態で現れる(変身能力のオミット)。値段は高い順から少女、幻獣、老婆。希少性は老婆、幻獣、少女。総合評価は幻獣、少女、老婆となる
ちなみに……老婆形態だけは『とあるロシアの魔女』へのクラスチェンジが可能になる、という特徴がある(その『ロシアの魔女』は非常に取り扱いの難しい存在だが、老婆形態キキーモラをちゃんと育ててクラスチェンジすると取り合い易くなる……とも言われている)
属性は『妖精/家(時に獣や鬼女)』で主に空間系か家事、職人妖精などにクラスチェンジが一般的(幻獣系なら一部の獣系統、老婆系なら魔女や鬼婆などに適性を得られる)。勿論ネイティブカードにクラスチェンジもあり
【種族】キキーモラ
【戦闘力】130
【先天技能】
・中級家妖精:人間の代わりに家事をしてくれる妖精。……が、迷宮内では家などないためいまいち使いどころは不明。メイド、高等家事魔法を内包。
(メイド:メイドに必要な技能を収めている。料理、清掃、性技、礼儀作法を内包)
(高等家事魔法:高度な家事魔法を習得している。家事魔法は攻撃能力を持たないが、家の中でできることに不可能はない)
・中等回復魔法
・中等状態異常魔法
後天技能には『使用人(メイドに在らず)』や使用人として適切な技術を獲得しやすい
【Tips】送り狼
日本に以外と数多く存在する狼の妖怪の一種。今は絶滅したニホンオオカミの習性から生まれた妖怪
夜道を往く者(特にか弱い存在)の周囲(特に後ろ)に張り付き跡を付け……走り出したり転んだりすれば容赦なく襲いかかる……が、転んだ際には『休憩をとるふり』をすれば襲われないと謂れている
夜道の恐怖から生まれた妖怪は結構な数が存在するが……この妖怪もまたそんな妖怪の一種であり今も慣用句の中で生きている存在だ
外見的には基本的に普通の狼であり……ほとんど『ワイルドウルフ』と代わりない灰色狼(ワイルドウルフよりも毛並みなどは綺麗)だが、二張りの提灯を召喚して自由自在に操る能力を持っている
会話能力は無いがその提灯を使えば『YES /NO』での会話などや『行け/行くな』などの簡単な意志疏通は可能(この提灯には戦闘能力は一切無い。壊れても『Fランク魔石一個』で直ぐに再生産可能らしい……無くても半日で修復可能)
提灯の灯火には『多少の感知能力』があり、たまに『空間系カードの影』
を捉える事が可能(かなり注意深く見ないとわからないが)
そして……送り狼最大の能力は『帰路限定のナビゲーション能力』であり。例えワープや何かで全く解らない場所に居ても必ず迷宮の出口まで連れて行ってくれる(勿論、送り狼が生きて動ける事は大前提だが)
このナビゲーション能力には幾つかの『制約』があり、その『制約』を遵守しないと『帰路のライン』を喪失するから要注意
その一:最初に必ず送り狼を召喚して迷宮出入り口を見せる事。これをしないと『帰路のライン』を構築出来ない
そのニ:使用中は決して走らない……送り狼に襲われる代わりに『帰路のライン』を喪失するから注意
その三:使用中は決して転ばない……やはり『帰路のライン』を喪失するが、転んだ場合は直ぐに『休みを取るフリ(最低でも一分は必ず)』さえすればラインの喪失は免れる
このナビゲーション能力にはある程度の『エネミー感知能力(提灯由来)』もある……それを利用して帰路のモンスターを(ある程度は)やり過ごす事も可能だろう
その能力から『廉価版アリアドネの糸』とも呼ばれている(アリアドネの糸は非常に貴重な『何度でも使える転移系魔道具』だが)
属性は『獣(狼)/妖怪』で犬科の怪物か妖怪かが一般的なクラスチェンジルートとなるだろう。Cランクの『黒妖犬シリーズ/バーゲスト(ネイティブ)』やライカンスロープ(人狼)、犬神や鍛治が嬶(ばば)など多岐に渡るクラスチェンジ先がある
【種族】送り狼
【戦闘力】110
【先天技能】
・獣は老いても道を忘れず:送り狼の最大の特徴である『帰路限定のナビゲーション能力』と『提灯を操り敵を感知する能力』が内包されている(先に挙げた制約も含めて)。
・奇襲
・集団行動
後天技能にはやはり狼らしい技能などが多い……稀に『火炎魔法』などを習得できる個体も居るとか居ないとか
流石に色恋沙汰よりかはこういう話の方が書きやすい……やはりそういう話の書き方や糖分向上は今後の課題だね