それと『大輝の豪運の代償』は今回見せる予定です
「大輝ちゃん……規則だからまた聞くけど。本当に私達以外の誰にも教えてはいないわよね?」
「だからいの一番に此処に来て報告してますよ、仮にも俺は貴方の生徒ですよ?姫子にすら言わずに来ましたし」
帰還して早々……大輝はギルド応接室でメアリーさんを筆頭にギルドの職員達に囲まれていた
きっかけは……あの迷宮から産出した『十個のカーバンクルガーネット』と『手の目に関する大輝のレポート』だ
大輝はあの迷宮が『まさかまさかの自衛隊の調査ミスで漏れたシークレットダンジョン』ではないか?という親切心と真っ当な冒険者としての矜持から見つけた『手の目の本当の特性など』や『カーバンクルの出現する隠し部屋などのデータ』についての資料をギルドに提出した
その結果がこれである
あの迷宮からこれだけの数のカーバンクルガーネットを持ち出し、あまつさえあの量の金銀財宝を(攻略せずに)出したという事は?
ギルドの職員達は全てこれが『必ず秘匿しなくてはならない情報』だと知っているので(心苦しいが)大輝に『誰かに喋ってはいないか?』と根掘り葉掘り聞かなくてはならない(前の所持禁止魔道具の件ぐらいには……少なくとも大輝は『あの迷宮に推薦された存在』ではあるがそれでも形式的に必要なのである)
『リンク』や『シークレットダンジョン』に纏わる情報は基本的に極秘扱いであるが……むしろ本題は『手の目についてのレポート』である
そのカバーストーリー上基本的に手の目は『役に立たないカード』の一つ扱いだが(実際はともかくとして)……今までの記録でもここまで優秀な個体は他に例が無い(自衛隊やギルド、研究機関には大概通常個体ばかり卸されている……基本的に手の目そのものの数が少ないから特殊個体なぞほとんど無いのだ)
こういう『非常に特殊かつ貴重なカードのデータ提出』は有り難い話なのだ(無論、それを売ってくれるのが一番ありがたい話だが)
その手の目に関する証言はしっかり録音(むしろビデオ撮影)された後にギルドや自衛隊の(後に幾らか流出して海外などの)研究機関に提出され……たが、大輝の夏休み終了数日前で『それだけでは足りない』とその研究機関(ギルド、自衛隊、ダンジョンマート等々の連名による)から呼び出し(兼依頼)を受けて夏休みの残りはほとんどその実験などに消費される事となったがそれは余談である(二つ星昇格試験でのどたばたの顛末もあったのが一番の理由でもあるが)
そんなこんなかつなんやかんやで大輝は金銀財宝と要らない魔道具を換金してそれなりの資金を獲得する事に成功した
これによる売り上げはだいたい『四百万円』……先のカーバンクルガーネットとの組み合わせ次第では良いDランクカードや安めのCランクカードを入手できるだろう。ウィンチェスターハウスもまた捨てがたいが
大輝の場合は……先ずは欲しいと思っていた『ストーンゴーレムのクラスチェンジ先』である『塗り壁』を求める事にした
『塗り壁』とは……九州北部(主に福岡県)を中心に出没する妖怪系Dランクカードの一種だ。主に狸や鼬が化けた姿とも岩の妖怪ともされている(それぞれ全く別の妖怪として扱われているが……今回は『岩の妖怪』としての方について語らせて頂こう)
かの有名な『妖怪神の妖怪漫画』については……日本で暮らす者なら一度はアニメか何かで見た事があるだろうか?あのアニメに登場する巨大な蒟蒻に手足の生えた様なあの厳つくも愛嬌のある妖怪の姿を思い出して頂ければそれで合っている
この『岩の方』はいわゆる『レアタイプ』であり、大概はアメリカのとある大学に収蔵されている妖怪絵巻にある『三つ目の獅子だか犬だか解らない怪物』みたいな姿が普通である(このタイプは獣系に分類され、主に幻術を扱うトリッキーな運用に適している)
大輝が求める方は幻術みたいな器用な事は出来ないし適性もないが……非常に頑丈かつ力持ちであり、しかも確実に『低級収納』を持っている。足も見かけによらず以外と(少なくともオークよりは)素早く、発話は苦手だが頭も悪くない……建築関係ならば以外に器用でもある
基本的に『気は優しくて力持ち』を地でゆく気性の持ち主なので素人でも(無体さえしなければ)扱い易い優良かつ優秀なカードである
嘗て大輝と姫子が絶体絶命の危機に瀕したあのアンゴルモアで……初めて父が見せてくれた父のカードの召喚された勇姿に大輝は惹かれた
『何時か自分だけの塗り壁が欲しい』
『姫子や家族友人達とアンゴルモアでも生き残って幸せになる』という大目的の中の小目的の比較的優先順位の低い目標(出来れば程度で良い、という程度)だが……もしかしたら、今ならその小さな小さな目的が叶うかも知れない
磨きあげたストーンゴーレムの『巌(いわお)』をアイアンゴーレムやブロンズスタチューといった妥当なクラスチェンジをさせずにいたのは……やはりまだ塗り壁を諦められないからだ
ストーンゴーレムを塗り壁にすれば進化ルートは確実に『無機物』から『妖怪』に変わるだろうし
さて……そういった小さな願望を胸に大輝がメアリーさんに聞いてようとした
そうしたら
「大輝ちゃん、ちょっと真面目な話があるから一時間後にあの迷宮に戻れるかしら?」
そう、真剣な表情でメアリーさんが言ってきた
流石に『師匠』からそう真面目に言われたらちゃんと応えねばなるまい。その一時間はメアリーさんの厚意で出された仕出し弁当(このビルテナントの商品)を食べて(大輝も会員登録している)ジムのシャワー室でさっと汗を流したら一時間経過していた
「悪いわね大輝ちゃん。少し師匠として貴方の『素養』を見せて貰いたいのよ」
そんな事を言いながら現れたメアリーさんは……今の大輝と同じ様な冒険者装束に身を包んでいた
それから……今だけは大輝専用のあの迷宮の出入り口にある安全地帯エリアで大輝とメアリーさんは向き合っていた
メアリーさんは腰に取り付けた『大輝のものと同じ様なカードホルダー』から数十枚そこらのカード……ほぼ全てDランクの人気、不人気、女の子等々が入り乱れる中に何枚かCランクも混じった一財産を取り出して大輝に手渡す
「大輝ちゃん……貴方も『入門』に成功したからには先ずは『これ』を試してみましょう」
『リンク』という能力には『属性』というものが存在している。善悪みたいな倫理観や秩序混沌みたいな社会性、その所属する国家や神話体系に天使や悪魔、妖怪や精霊、竜や獣にアンデット他沢山の要素があり、その中から『冒険者との相性』を見つけられる
例えば……ある冒険者は『女の子』が属性ならばその『女の子』であるカードとのリンクには補正や補助が付く
逆に、『女の子属性』が苦手な冒険者がその『女の子カード』とリンクしようとすれば『相性不一致』でリンクは上手くいかず下手をすれば一発で『不信系マイナススキル』を得てしまう可能性だってある……其処まで相性が悪いケースは逆にかなり貴重ではあるが
『リンク』に目覚めたてならば自らの『適性』が解る方法が一つある……基本的に必要なものが沢山あるが、それは貸与だろうと構わないだろう
さっきメアリーさんが一見無造作に渡してきたあの沢山のカードがそれだ
大輝が持っていないライラプス、黄泉軍、河童といった不人気カードや、シルキー、エンプーサ、鬼人などの人気女の子カード、ドラゴネット、バイコーン、一反木綿に欲しかった塗り壁といった実力派人気カードが色々バラけて入っている
Cランクカードは三種あり、それぞれ『筋骨隆々の鬼』、『片目片脚片翼のマガモに似た鳥』……それと、その、何だ『八岐大蛇……の卑猥なパロディ』みたいなふざけたカードだった
それぞれ『オーガ』、『比翼の鳥/雌』、それと『やまらのおろち』だ
メアリーさんが使用していない余りのカードらしい
気に入れば『比翼の鳥』以外はどちらもCランク最低価格の一千万円ポッキリなのでメアリーさんも実験後にそれぞれ超特価で売ってくれるそうだ(比翼の鳥は何気に高価なカードである為それを買うのは現実的ではない為である)
他のDランクカードでも魔石、カーバンクルガーネット支払いで非常に安く売ってくれるらしい(このサービスは『正直に色々な事を報告してくれた大輝へのメアリーさんからの個人的なご褒美』であり、今回限りの特例である……普通ならギルド職員としてこういう行動は厳に慎むが今回だけは特別だ)
レートもまず普通ではあり得ない超特価ときた
そして……これから大輝が何をやるのかと言うと
先ずは愛用のサバイバルナイフで左親指を傷付ける……そしてメアリーさんから借りたカードにその傷口から出た血を一滴づつかけてカード達と『契約』を結んだ上で
「すまないな手の目、もう少し頑張ってくれ」
「……まぁ、任せて下さいな旦那」
手の目を喚んで憑依して貰う……そして(掌の)目についたカード達を一枚一枚召喚して簡単なコミュニケーションを取る
これは(リンクを知る者だけに伝わる)『札見ノ式』というリンク能力に目覚めたての者に行うテストにして実験だ
この目覚めたての状態で沢山のカードを召喚、使役することでそのカードを見て感じる事で己の属性を知る事が出来る
大輝の場合……まず特筆すべき点として『女の子カードとは絶望的に相性が悪い』という事が判明した
召喚してもあまり良い感じが……さっぱりしないし手の目の力を借りても『リンクの糸』すらさっぱり見えないし女の子カード達も何やら気分が悪くなるとの事だった
その召喚したカード達にはお詫び代わりの魔石を幾らか与えて帰って貰ったからかどうにかマイナススキルは付かなかったが……流石のメアリーさんもこんな珍事は非常に珍しいと驚いていた
一方で相性の割と良い『女』のカードもあるにはある……が、それは『山姥』だの『奪衣婆』だの『ハッグ』みたいな老婆カードばかりだった
逆に相性の良いカードは『妖怪』、『鬼』、『狗(犬も狼も含む)』、そして幾らか落ちるが『妖精』と『老人(老婆含む)』の系統だという事もこの一時間以上かかった実験で判明した
休みに入ったばかりなのに力を貸して貰った手の目には褒美代わりにビルのテナントで大量に買っておいた握り飯とメアリーさんが出してくれた日本酒を出してから……全ての借りたカードの契約を解除してメアリーさんに返却する
そして……今日一番のメインイベントである『買い取り交渉』の始まりだ。持っているカーバンクルガーネットは十個全てと魔石がなんだかんだで四百五十万円分はあるから良い買い物が出来るだろう
……後々、この『珍しい体質』の検証などに協力する義務もまたあるが
「このライラプスと一反木綿と塗り壁、それと奪衣婆が欲しいかな?それと……用心の為に『アレ』も」
「それならこれだけで、ライラプスはおまけしてあげるわ」
「それと……従順持ちのオークと罠解除持ちホブゴブリン、後はケットシーとオーガ下さい」
「それならこのくらいかしら、そのオーガは瑕疵カードだからかなりまけといてあげるわよ?」
「比翼の鳥は……無理だな、相性そのものは最高だったけど」
「最低価格五千万だしね。あれはむしろ私が『雄』の方探しているからねぇ……むしろ私が売って欲しいぐらいね」
そんなこんなでの会話の後……大輝はぽつりと
「ねぇ、メアリーさん……」
大輝が何を言いたいのかはメアリーも分かっている。冒険者界隈で『女の子カードが使えない』というのは実はかなり深刻なハンディキャップである
不人気カードなどにしか縁の無いエンジョイ勢などなら特に深刻な問題ではない。しかし……これが大輝の様なガチ勢ならば話は違う
女の子カードは確かにDランク辺りではその性能の割には高い代物ばかりだが……その中でも強い、優秀なカードはちゃんとある
Cランクともなれば優秀なカードも更に増えるし……何より女の子カードは回復魔法を得意としているカードが沢山存在するし何よりカードの大半は男か女(稀に無性)だ
要は……大輝は結構な数のカード使用を禁じられた様な状態だという事だ
一応は『老婆系統』ならば女のカードでも使用は可能だし……自分の属性と絡めれば相性の良いカードだってあるのは救いだが
流石に歳若い少年に『これ』は流石に無いだろうに……
と思いつつ大輝に慰めの言葉を……
「女の子系統以外で何か優秀な回復魔法持ちって何か居たかな?確かユニコーン以外にはカラドリウスとかいう鳥カードがDには有った筈だけど……」
全く堪えてははいなかった
大輝にとって女の子カードは『戦力(若しくは『戦友』)』以外の何物でもない。前々から(無自覚ではあったが)女の子カードにそういう興味は薄かった
今では僅かにはあった筈のそういう興味すら失っている有り様だ
まぁ……その理由を挙げるのは野暮天も良いところだろう
ともあれ。佐藤大輝は最後に残った換金素材でヒッポグリフとカラドリウスを購入して今回の大チャンスをものにした
リザルト
Cランクカード
・オーガ(瑕疵あり、オーク二号強化後のクラスチェンジ素材)
・やまらのおろち(通常品質、一応の切り札として)
Dランクカード
・一反木綿(空戦用かつ装備化能力持ち)
・塗り壁(ストーンゴーレムのクラスチェンジ先)
・奪衣婆(追加戦力)
・ケットシー(ある程度強化後に……)
・カラドリウス(キキーモラとのローテーション用)
・ヒッポグリフ(空戦用かつ騎乗用)
(全て通常品質)
・ライラプス(追加戦力)
・オーク(二号、従順持ち、追加戦力)
・ホブゴブリン(罠解除持ち、ブラウニーとのローテーション用、盗賊ビルド型)
・ジャック・オー・ランタン(瑕疵カード、復活用)
(これらはおまけ、やはり基本的に通常品質)
カーバンクルガーネットは残り二つ、魔石は殆ど使い果たしたがとても良い買い物が出来た
そんなこんなで沢山の戦力を獲得に成功し、その日は帰って家族に新しいカードを見せようと思う。そして明日を楽しもうと思う
……残念ながら両親は急な出張が入って数日は帰らないらしい
出鼻を挫かれたけどまぁ電話で近況報告は出来るしメアリーさんのご厚意をちゃんと伝える事が出来たからよし。である
【Tips】カードの属性
カードの種族にはそれぞれ属性が存在する。
属性はスキルの対象先となるだけではなく、それ自体がステータスに影響している。
そのため、同じ戦闘力であっても属性が多い方がステータスや状態異常耐性などが高くなる傾向にあるが、同時に属性を対象としたスキルに対する弱点を抱えることにもなる。
またマスターによって、相性の良いカードの属性というモノも存在する。
(※:公式より百均様の許可を頂いて掲載)
【Tips】札見ノ式
最低限でも『リンク』を理解したばかりのリンク初心者マスターに推奨される行為
そのマスターの師匠(若しくはパトロン)などがそのマスターに取り行う
沢山の……なるべくバラバラな属性のカードをそのマスターに契約させてその使い心地を試させる事でそのマスターが保有している属性を推し量る
これによって『そのマスターと相性の良いカードの傾向』が解る様になり、デッキをその傾向で編成する(そしてリンク能力を高め易くする)のが目的
この『札見ノ式』は基本的に『その傾向がある程度推測できるだけ』なので他にもまだ見ぬ可能性が眠っている事は忘れてはいけない
【Tips】不適合属性
今作品オリジナル設定。リンク属性には極めて稀に『その属性とは致命的に相性が悪いマスター』が存在する
基本的に敬遠な十字教徒なら悪魔、メガテニストなら天使、若しくは恐怖症とその対象みたいにその属性を蛇蝎の如く嫌っていても普通なら多少相性の悪い食わず嫌いも同然の状態なのだが(現に原作でもダンジョンヘイトの連続殺人鬼がリンク能力を使い熟せて凶行を繰り返しているのが何よりの証拠である)
しかし……極めて稀にそういう好悪一切関係なくその対象とのリンクどころか召喚にすら悪影響を齎すマスターが存在する
『佐藤大輝』も極めて希少な『属性不適合』持ちの……それも特に厳しく珍しい『女の子』に対する『属性不適合』である(普通ならば『天使』だの『妖精』だの『アンデット』みたいな種族系統だけであるのが普通なのだが)
ちなみに……現在『女の子』に対する属性不適合持ちは佐藤大輝ただ一人だけだが『男性』に対する属性不適合者は一人だけ確認されている(ある意味大輝より酷い制限である)
この『属性不適合者』という存在にはその制限の対価として何らかの『冒険者としての強み』が必ず存在する……らしい(大輝ならばあの冗談みたいな豪運だろうか?)
そしてこの『属性不適合』だが……人に拠っては『その対象の召喚、契約すら不可能になる』事すらあるらしい(更に実例の少ない未確認情報だが)
【Tips】予備戦力
ガチ勢のカード達だって常に戦いっぱなしでは身体や心が持たない。だからちゃんとしたマスターはカード達にもある程度ちゃんとした休息を与えたり……万が一にも主力が全滅した際に備えて『予備戦力』を作る
ちゃんとしたガチ勢ならばこれは『一般常識』としてそれなり以上に稼げる様になれば行う不文律として扱われている話題だ