本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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第二話 狼と斧

 

 

鬱蒼と茂る森林型の迷宮の中で、少年はそれなりの……まだ一月其処らの付き合いである大事な商売道具である豚鬼であるオークと連れ立って歩く前にもう幾つかのやるべき行動を行った

 

直ぐに出せる様にタクティカルベストのポケットに入れていたオーク……ではないもう幾枚かのカードを引っ張り出してそのカードに『来い』と念じる

 

一番大事なオークのカードは別の……脇のカード用ホルダーに入れて大事に大事に持っている

 

低い獣の唸り声と共に現れたのは灰色のごわごわとした毛並みの大型犬……いや狼だ

 

これは他のFランク迷宮で見つけてから行使しているFランクモンスター『ワイルドウルフ』と呼ばれる……見ての通りの普通の狼だ

 

それなりに『強化』はしているが所詮はFランクモンスターなので大した戦力にはならないが、そのスキル的に少しだけ索敵と不意打ち対策が出来るので以外と重宝している従魔である

 

……少しはちゃんと使いこなせる様になる迄に3回はロストして今では四代目だが

 

そして、もう一枚……ギルドのワゴンセール的な新米サポート用設備からたまたま見つけた『掘り出し物』をそのままオークに渡す

 

そのカードは基本的に人間ではなくカードモンスターが使う為のものであり。そしてそれを使えば……

 

オークの手には先の大鉈ではなく、無骨ながらもしっかりした造りの非常に大きな両刃の戦斧……いわゆるバトルアックスが存在していた

 

これもまた迷宮産の魔法の道具『魔道具』と呼ばれる歴としたマジックアイテムである……が、非常に残念な不人気アイテムとして有名な代物だった

 

銘は『凡庸の大斧』、武器としてかなり頑丈かつそれを使うモンスターの戦闘力に+30という効果をもたらすが……それなり以上の体躯と腕力が無ければ使用不可能という制約のある装備アイテムだ

 

こういう序盤ならそれなりに役には立つがある程度力量が付けばむしろ邪魔なだけのお荷物になる程度の代物だ。それに『初期装備』というそのモンスターが最初から持っている装備と違って『壊れたらそれまで』だし

 

現に……この大斧も元の持ち主が廃品処分も兼ねてギルドに二束三文で捨て売りしたものをワゴンセールで見つけて買い込んで来た代物なのだ

 

ちなみにお値段はたったの十万円。迷宮踏破の際に出てくる通称ガッカリ箱から産出される……中でもかなりガッカリな代物として悪名高いアイテムである

 

売値はだいたい同じ重量の屑鉄程度、しばらくワゴンセールに置いて買い手が付かない場合は屑鉄リサイクル送りになる為……だが、一応は『カード化能力』のあるタイプだから売値は一万円でワゴンの中で埃を被るだけで済んでいただろう。それとカード化能力を持たないタイプなら一万円も有れば買えたかも知れない。下手すれば20kgはある物騒な鉄塊をえっちらおっちら抱えて迷宮に行かなくてはならないが……少なくとも対象カードに渡す迄は

 

しかし、こういう『きちんと育てたオーク』を使う初心者にとってはそれなり以上に有り難い道具でもある

 

『ゴレ……イイモノダ』

 

少々難のある発音ながらも(むしろこのオークはオークという種族にしては流暢に人間の言葉を操れている方だが)『武術』と『斧術』を両方しっかり後天技能として獲得しているこのオークは主人から貰った大斧を殊の外気に入った様である

 

新しい武器の素振りを終えて準備は万端……だが、あと何枚かカードはあると書いた。ならもう何枚か召喚して戦えば良いのでは無いか?と思う人もいるだろう

 

だが……残念ながらこのFランク迷宮では一人が一度に召喚・使役出来るモンスターは2体までと決まっている。一応『抜け道』はあるが今現在では無理だと断言出来る方法だが

 

迷宮では『ランク毎に召喚出来るモンスターの数が定められている』というルールがある。これは『普通の世界の普通の物理法則みたいなもの』とでも考えれば良い。先の『抜け道』は『鳥は空を飛べる、魚は水中を泳げる』みたいなものと考えれば宜しい

 

だから現状ほぼ唯一のメイン戦力であるオークと警戒・索敵要員のワイルドウルフを召喚して準備は完了だ

 

 

今回潜る迷宮は『森林型/九階層』のFランク迷宮としてはかなり高いレベルの代物だ

 

この『森林型』と言うのは『迷宮は森林の様な姿をしている』という意味であり、この迷宮が発生した場所が例えば都市部の新築の民家だったりしても外との関係は一切ない。勿論ちゃんと『管理』しておかないと後でえらい事になるけれど

 

そして階層は……これの数次第で『迷宮のランク』が決まる重要極まりない情報だ

 

もしもこの迷宮が『成長』したら直ちに『Eランク迷宮』に昇格してしまう程に

 

少年は『一つ星冒険者』と区分される、今居る様な『Fランク迷宮』にのみ侵入を許されているド新人でしか無い。一応は『これ以上の迷宮に合法的に侵入出来る裏技』も存在するが……先ず『コネ』が必要である

 

今Eランク迷宮何ぞに行こうものなら……多分唯一の主力であるオークをロスト、ついでに自分の命もロストしそうだから今は絶対に行かないが

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

前方にオーク、やや後ろにワイルドウルフ、その内側の護衛対象として少年と、この程度の迷宮で今の戦力ならばかなり最適解だと言える編成と布陣だ

 

普通の新米冒険者なら編成はオークだけでそれを自分の傍らに置いてオークの邪魔にしかならないだろうが

 

少なくともワイルドウルフみたいな気休め程度でも警戒・索敵(兼囮)要員を用意する様な気の利いた者はあまり居ない

 

大半の新米冒険者はDクラスカード以下の下級カードを馬鹿にしてあまり使わない傾向にある……『女の子カード』だとか『有名なお役立ちカード』みたいな代物でもない限りはまずあまり使おう……ましてや育成するという発想には至らないらしい

 

 

基本的にこういうFランクカードは大概はギルドに売られるのが普通だ……女の子カードや人気のあるカードみたいな例外でも無い限り一律千円で売れる。そして学生冒険者はそれや他の収入をお小遣いとして豪遊したりするのが普通なのだ

 

そして……ちゃんとした上昇思考を持った学生冒険者は逆にその収入を貯めてゆくのがセオリーとなる

 

そうして学生冒険者は大半を占めるエンジョイ勢と少数かつ精鋭のガチ勢に別れてゆくのである

 

 

そうして……一人と一体と一匹が森林を進むと。この迷宮に棲まう怪物とでくわした

 

それは……黒ずんだ緑色の、卵が腐ったかの様な悪臭を放つ醜い小鬼だった

 

ゴブリン

 

世界中のどの迷宮にもほとんど必ず存在する冒険者にとっては日常的に見かけるありふれた魔物の中のありふれた魔物だ

 

この鼻が曲がりそうな悪臭のおかげでワイルドウルフは索敵要員としてやってゆけるのである……現にこの悪臭を遠くから嗅ぎつけたワイルドウルフが低い唸り声を上げて少年とオークに警告を促した。だからこのゴブリンには先手を仕掛けられる

 

少年は狼とオークに攻撃指示を出した

 

 

 

【Tips】ワイルドウルフ

 

大型犬サイズの灰色狼、ぶっちゃけてこれだけのFランク最弱クラスの雑魚モンスター

 

それでもきちんと武装していない人間ぐらいなら初期の……それこそ迷宮一階に出る最弱状態のワイルドウルフでも簡単に仕留める事が出来る程度には強い(原作最序盤程度に武装した一般人……歌麿レベルならまぁ一対一なら比較的何とかなる範囲だが)

 

一応は先天技能として集団行動を保有しているのでオークとはシナジーがある……それしか無い、というだけの話だが

 

一応は狼なのでスキルは無くとも嗅覚は敏感なので索敵・奇襲対策要員として起用した

 

属性は『獣/犬系統』でぶっちゃけ使い捨て前提の運用になる程度の強さしか無い……が、鍛えてEランクのヘルハウンドやDランクのライラプスなどにクラスチェンジさせる育成系マスターもたまに居たりする

 

 

【種族】ワイルドウルフ

【戦闘力】15

【先天技能】

・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正。

 

後天技能で追跡や嗅覚、索敵、奇襲といった技能を獲得している事がある

そろそろ新しいDランクカードを買いたい……どんなカードにしようか?

  • 後衛:魔法系アタッカー
  • 中衛:遊撃手兼盗賊
  • 後衛:回復役兼バッファー(少しお高い)
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