本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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オリジナルイレギュラーですよー

魔石に対するオリジナル見解入ります


第二十四話 それは厄災の瓜蔓

一人歩きする死神(イレギュラーエンカウント)

 

 

この迷宮社会を生きる全ての冒険者……いや人類全てにとって最低最悪の災いとして忌み嫌われている『事象』だ

 

色々な種類が存在するがそれぞれ必ず世界に一種類しか存在しないとされている非常に特殊かつ凶悪なモンスターにして新米冒険者の死亡原因筆頭として悪名高い。大概は低ランクの……今大輝達が居る様なEランク、若しくはFランクの初心者が居る様な迷宮に出没して獲物を待ち構えている

 

その性質上『新米狩り』とも呼ばれているがそれは余談だろう

 

こいつらは『とある共通点』を必ず保有しており、その性質からこいつらの特性や性質、そして弱点をある程度は推測出来……はするが基本的にそれすらあまり頼れない『初見殺し』や『知っている際のペナルティー』を発生させるから非常に厭らしい

 

そのイレギュラー(クソッタレ)に狙われた佐藤大輝……さて、彼とそのカード達は一体何を眼にするだろうか?

 

 

まず最初に大輝の視界に入ったのは寒々しく鬱蒼とした山中の風景だった。大輝の母方の曾祖父が暮らしていた東北の山中に何処となく似た植生だと目星が付いたが……

 

何故か色々な蔦が生えている

 

よく見ればそれには色々な実が付いている。胡瓜、西瓜、南瓜、甜瓜(マクワウリもメロンも含む)、苦瓜、夕顔、瓢箪……兎に角色々な瓜科の植物とその蔦が至る処に繁殖している

 

……どれもこれも完全に腐っているが

 

そしてその甘ったるい腐臭の中に混じる……新鮮な血と脂の悪臭

 

腐り果てた様々なら瓜の中にその『発生源』は存在していた

 

それは『肉』だった

 

 

どうやら生皮を剥がされた……その特徴から恐らくは女だと推測できる死体が転々と転がっていた

 

 

大輝は……この惨事からこの場に存在するイレギュラー(クソッタレ)が何であるかを一発で推測、いいや断定出来た

 

山中であり、瓜科の植物、そして生皮を剥がされた女の死体……

 

日本全国にバリエーションが存在し、その中でも東日本式なら陰惨な結末になる御伽噺……

 

 

今回のイレギュラー(クソッタレ)は……『瓜子姫』だ

 

 

イレギュラーエンカウントという存在は必ず『御伽噺』をモチーフに現れる。その御伽噺に因んだ非常に性質の悪い能力を駆使して人類に災いを齎す存在だ

 

今回のは非常に悪質悪辣な性質ではあるが……今の大輝にとってはまだ比較的マシな部類のイレギュラー(クソッタレ)

 

戦闘能力に比較的振り分けられた特性と厄介な数の手下……腐った瓜の化け物どもと『知らなければ厄介、(今の現状ならば、と但し書き付きだが)知れば大した事は無い特性』を持っている。それに何より『知っている際のペナルティー』などは基本的に無いタイプである

 

尤も、ちゃんとした戦力を保有していなければ途方もない強敵である事には変わりないが

 

今の編成は主力のボアオークである剣、大輝のリンク補強役であり鎧でもある手の目の定、探査役たる送り狼の祝、そして回復役のキキーモラだが……

 

大輝は直ちに祝とキキーモラをカードに戻してやまらのおろちとジャック・オー・ランタンの燈を召喚する

 

眼前の地獄の様な風景と悪臭には一時でも構わないから心の棚に放り込む。自分で自分の頬を両手で叩いて簡易的な気付けを行う

 

ついでにやまらのおろちが【悪臭操作】で仲間達が感じる悪臭を軽減してくれた。完全に消してもまた悪影響があるから軽減で充分だ

 

無駄な恐怖や怒りで冷静さを失ってしまっては姫子(こいびと)に二度と逢えない末路に堕ちるだけ……だから姫子(こいびと)の身体の暖かさと唇の柔らかさを思い出す……さぁ気合いが魂から湧いて出る

 

言うだろう?『心はクールに、魂に熱を』ってな

 

さて……この手のイレギュラー(クソッタレ)相手ならばなるべく早く撃破を図るべきだろう。『奴』の眷属はほぼ無尽蔵故に物量戦や持久戦では非常に不利となる

 

通常の二つ星昇格試験に挑むレベルでは多分その物量に押し潰されてしまうのが関の山だろう……尤も、この物量だって所詮はまだ『露払い』でしかないのだが

 

しかし……佐藤大輝は物量ならばある程度は対抗出来る手札を調達している

 

剣の眷属であるオーク達……一度に六体、一日で最大三十六体まで(但し抜け道有り)と広範囲火炎攻撃が可能な燈、その巨体と複数攻撃能力が凄いやまらのおろちが鍵となるだろう

 

特に……本体の元に行く迄の行程では燈の火炎攻撃が重要になるだろう、当の瓜子姫を焼くにも有効だろうが

 

大輝個人としてもこのイレギュラー(クソッタレ)はその性質上特に激しく嫌悪し怨敵視しているのだ

 

さて……ならやる事は一つだ、今からこのクソッタレな空間に巣食うクソッタレの化け物をブチ殺して未来を奪い返すだけだ

 

 

最前線に出した六体のオーク達をVの字…所謂鶴翼の陣を組ませて腐った瓜の化け物どもから大輝達を守らせる

 

決意した瞬間から怒涛の如く沸いて出たジャック・オー・ランタン(南瓜型)や山魈、トウビョウといった瓜系統の外観なモンスターやゴブリン、獣らなどをグロテスクに模した瓜子姫の従僕ども……その実力はだいたいFランクの上位クラスだろうか?

 

しかもその蔦を使った即席の罠などもまた厄介だ

 

吊るし罠、爆弾の様に破裂する腐った瓜やらいわゆるベトコンスパイク、尖った先端を利用したパンジ・スティックやら草結びなど……足場の悪い山道でこれだから厄介だ

 

ちょくちょく眷属オーク達が罠にはまって負傷したり消滅したりもするが即座に剣が補充する。いわゆる督戦隊方式だ

 

これで計十二体の消費、そしてまた二体損失間近……

 

勿論、剣も金磚礫を撃ちながら大輝の護衛も努めている

 

やまらのおろちは辺り一面で大暴れして貰っている。一応は『蛇の妖怪』なので山中というのは彼にとっても過ごし易い環境なのだろうか?罠なぞ物ともしない大暴れである。流石はCランクの強カードだけはある(戦闘力だけなら今の剣にも匹敵するほどだし……これもだい豊猟だったカーバンクル狩りのお陰だ)

 

まだ連携が上手く出来るほどの付き合いは無いのでこういう運用が今は一番良いだろう

 

あのぬらぬら光る卑猥な八つの頭部を辺り一面に叩きつけながら当たるを幸いと周囲全てを薙ぎ払って進む

 

大輝も『見てくれに惑わされずにあいつを買って本当に大正解だった』と真面目に思っている(その見てくれが致命的に悪いのがやまらのおろちの最大の欠点だが)

 

ついでに……被害者のものと思われる遺体だけはなるべく避けてだ。何気に紳士的である

 

定と大輝はレーダー役かつ司令塔だ、定の能力で辺り一面の敵影や罠の気配を探って仲間達に報告する。多少は近寄る化け瓜らを盲剣術式居合い一閃で切り捨てながら

 

そして現状一番のMVPである燈は……何時もよりも非常に沢山の火炎魔法を行使していた

 

この瓜の化け物どもはやはり植物である為か火炎攻撃が有効だ。燈の中級範囲火炎魔法の一発で容易く薙ぎ払える

 

しかし……まるで津波か何かの様に押し寄せる化け瓜どもやごちゃごちゃとした罠を焼き払い続けるのは流石に厳しい

 

しかし、だからこそ大輝は調達したとある魔道具……どんな冒険者でも、いや冒険者じゃなくても今現在の人類全ての誰もが絶対にその恩恵に預かる魔道具で対処する

 

それこそが

 

魔石

 

 

しかし魔石と言ってもそんじょそこらの只の魔石じゃない、Dランクモンスターの魔石である

 

魔石というものには生産系の消費量を増やしたり、眷属召喚の召喚スピードを上げたり制限数増加したり、スキルを使う時に媒介とすることで威力を上げたり魔力体力の消耗を抑えらたり、カード達の体力魔力を回復したりと色々使い道が存在する

 

しかし……世の中そう美味い話ばかりでもない。Dランクモンスターに魔石をそういう意図で使わせるならちゃんと等価としてDランク相応の魔石が必要となる、という制約も存在する

 

また。眷属召喚にもスピード向上はそれほど役には立たず、召喚数の増加も制限数の半分までがせいぜいでありだいたい制限超えした個体は三分の一から半分くらいの時間で消滅してしまうし幾らか弱体化もする、媒介としての威力向上だとせいぜい一発で一割、負担軽減でも数回の行使で一割程度といった塩梅だ

 

体力魔力の回復ならば体力か魔力を選択して一割程度の回復だ(ちなみにじんわり時間が掛かる)。ついでにある程度までなら疲労回復だって出来る

 

悪魔系統のカードの中には魔石強化が乗りやすいという能力を持った存在も居るらしいし高位悪魔の使役には魔石が欠かせないとも聞く

 

他にも重要な使い道があるがそれは割愛しよう……どうせ後で嫌でも使う事になるだろう

 

ちなみにDランク魔石は売値でだいたい千円から千五百円程度、やまらのおろち用になるCランク魔石なら二千円から五千円。一応ちゃんと市販もされているがだいたいその三倍其処らが市価となっている(前に売ったカーバンクルの魔石や迷宮踏破報酬の魔石、そして今回の件が上手くいけば入手出来る特別な魔石はまた別の価格判定になるがそれは割愛だ)

 

一発三千円から四千五百円其処らでそんな真似は普通はやらないだろう……そう、『普通』ならばだが

 

今はイレギュラーエンカウントが跳梁跋扈する地獄の釜底だ。どんな僅かなリソースだって重要だし必要だ

 

大輝の場合は普通に冒険者ギルドから百個を即買い出来た(ついでにCランク魔石をニ十個も含めて)

 

これ以上は購入制限で出来なかったがまぁ良いだろう(ちなみにお値段計八十万円也)

 

ついでにメアリーさんが主力である剣用に『聖銀製の戦斧(カード)』を貸してくれた。『後で必ず返しに来なさい』という言葉と一緒に

 

もしもイレギュラー(クソッタレ)がアンデッドなら効果的面だし、予備の武具として非常に良いものでもある

 

大輝も出来れば手斧でも良いから聖銀製の武具は欲しかったからこれは嬉しかった

 

……一番嬉しかったのはこのカードに託された『必ず生きてこれ返しに来なさい』というメアリーさんの意図だが

 

 

そして……そんな苛烈な波状攻撃をどうにかこうにかいなして振り払って『目的地』に近づけた

 

山中の中にぽつんと佇む一軒のあばら屋……しかしその周囲には

 

 

無数とも言える女の生皮が干されていた

 

そしてその『生皮』達が蠢いている

 

何か……何か悍ましい音が響く

 

 

タスケテ……タスケテ……

 

 

小さく、囁く様な音が聴こえる……発生源は言わずともわかるだろう

 

『無数の生皮』からだ

 

 

その見てるだけで気が触れそうな光景とBGMに……大輝は唯

 

 

煮え激る怒りを燃やすだけだ

 

 

その感情とは裏腹に平坦な声と表情で自らの配下(なかま)達に告げる

 

 

『よし、殺す(やる)ぞお前ら』

 

 

かくして戦線布告は為された

 

 

 

 

次回に続く




特殊フォントや機能の練習したりイレギュラー戦を考えていたりペルソナ5ロイヤル(Switch)やっていたら……二か月以上お待たせしました。すみません(土下座)

ブラウニーのクラスチェンジ先と懸衣翁、どっちが欲しい?

  • ブラウニーのクラスチェンジ先
  • 懸衣翁(二体一心カードのもう一つ)
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