結論から言えば……流石にゴブリン一体程度なら素手でも簡単に退治出来るオーク。しかも最低ランクとはいえ武装し、更にはそこそこ鍛えているそれなり以上に優秀な当たり個体。ついでにオークの鈍足をフォロー出来るワイルドウルフが付いている
十秒すらも要らずにゴブリンは撃破されて身体は迷宮の成分に還っていってしまった
そして……ゴブリンの斃れた辺りには小さな、黒曜石の様にも見える黒い小石が残されていた
その小石は俗に『魔石』と呼ばれるある種の万能資源である
このゴブリン辺りから採取出来る最低クラスの代物でも常に需要は豊富であり必ず一律の値段で秤り買い取りして貰える……なんでも、クリーンなエネルギーにも最高の肥料にも医薬品の材料にもなるとかならないとか?
そして……それは冒険者自身にも色々と需要は存在する。冒険者独自の使い道は何時か後述
そして……それから三十分もしない内に何体かのモンスターに遭遇するも簡単に撃破成功。そして幾つかの魔石ともう一種類の戦利品を獲得出来た
先のゴブリン……の姿が描かれたカード、そう。ゴブリンのモンスターカードだ
モンスターカードはこの様にその対象のモンスターを斃して獲得する物なのだ
モンスターカードは元々、迷宮が発生した時に稀に出てくる『何だかわからないカード』として今現在で考えたら間違いなく捨て値で市場に出回っていた代物である
そして……それから何やかんや紆余曲折の大騒動の果てにその正しい使い方が判明したのである
皆様は第一話の『サマナー』という言葉を覚えていらっしゃるだろうか?それがその何やかんや紆余曲折の大騒動の最中でカードを所有し、そして偶然カードの本当の機能を発見した『冒険者の前身系』である
その大騒動……『アンゴルモア』と呼ばれる未曾有の大災禍についてはまた何時か話そう。これはかなり長い話になる
そんなこんなでオークと狼を率いた少年は破竹の勢いで迷宮の最深部へと足を進めていった
この迷宮には雑魚の代名詞であるゴブリン、ワイルドウルフ、そして迷宮の掃除屋(またはスカベンジャー)たるスライムしか居ないらしい
あまり実入りの宜しくない迷宮の様である
少年の様な新米……アマチュアもアマチュアの『一つ星冒険者』にとっての収益は『モンスターを退治して獲得する魔石とカード』、そして最深部に存在する『お宝』と『攻略報酬』、後は『ギルドからの依頼』もあるが基本的に依頼は取り合い状態でアマチュアでは滅多にありつけない……原作主人公だって滅多にありつけないレベルで希少なのだ
普通の新米冒険者なら少なくとも此処まで速く手際よくは進まない。基本的に少年はモンスター達に出す指示は最低限にしてなるべく自由に彼らを運用していた
普通の新米冒険者だと……いちいち無駄に指示を出して逆にモンスター達の邪魔にしかならない事が多い。特に駄目なエンジョイ勢辺りにその傾向が強い様だ
そして……それらの要因を重ね重ねた後に手酷い失敗を冒し、少なくとも学生としてなら莫大な借金を背負い冒険者廃業の憂き目に遭う冒険者は毎年必ず一定数は存在していた
この借金は手酷い失敗から命だけは拾う為の緊急措置に関わる必要経費であるが……
中には莫大な借金では済まずに命を落とす冒険者だってそれなりの数存在する……そう、最低最悪の『イレギュラー』が迷宮には必ず存在しているのだ
とりあえず今日も不運と踊らずにご安全に最深部のボス部屋に到達出来た様だ
鬱蒼とした森の奥深くにあるだいたい体育館程度の広場には今回の『普通の』迷宮主が居た
その姿を見て少年はひゅうっ、と口笛を小さく鳴らす。
その迷宮主は……今連れているワイルドウルフよりも一回り大きな狼、いや猟犬に見える。
犬としてならばドーベルマンが近いだろうか?しかし普通のドーベルマンと違う一点がある……
『炎を纏っている』
その猟犬の様な何かは『ヘルハウンド』と呼ばれるEランクモンスターの一種だ
イギリスの凶事に纏わる妖精の一種とも言われている怪物とも、墓守りの魔犬とも謂れる怪異の一つとも言われている存在である
同じ『黒妖犬シリーズ』の中では最弱の部類ではあるが……それでもEランクモンスターとしてはそれなり以上に強い怪物だ
しかもこいつは『ボスモンスター仕様』である為か迷宮からのバックアップを万全に受けている……恐らくは生命力が幾らか強化されたり下位同族の召喚が出来たり色々強化が施されている
ちなみに……この迷宮の基本的な情報は最初から購買済みであり。このヘルハウンドの情報も既に割れている
このヘルハウンドは下位同族の召喚と生命力倍加の特性を持っている事が多いらしい
まぁ……召喚出来るのは弱体化したワイルドウルフを二十秒に一匹召喚する程度だが
しかし、召喚出来るのが『弱体化ワイルドウルフ』だからと言って舐めてかかると痛い目に遭うだろう
こういう『眷属召喚』で召喚した魔物は基本的にその魔物の最低限スペックの八割程度の力量しか無い上にスキルも先天スキルしかない
しかし……ワイルドウルフの唯一しか無い先天スキルを皆様は覚えていらっしゃるだろうか?
『集団行動』
『群れで行動する事に補正が向上するスキル』である
そんなスキルを持っている存在が次々召喚される……はっきり言ってヒドい話である
しかし。それでも今回のヘルハウンドには元来無いスキルであり、所詮はFランク迷宮のボスモンスター。そのスキルで召喚出来る眷属には制限が存在する
『最大九匹まで』であり『一度に維持出来るのは三匹まで』
だけど……ヘルハウンド自身も炎を纏い、そう何度も出来ないが火を吹く能力を持っている。そしてワイルドウルフとは比べ物にならないレベルで強いモンスターでもある
まずオークの方がよっぽど強いけど
今回のボスは個人的にもかなり美味しいモンスターだ。少年は自分の側に侍るワイルドウルフを見て小さく祈った
『どうかこのヘルハウンドがドロップします様に』
この何気に使い勝手の良い狼を少しは強化出来そうな良いモンスターが来てくれたのだ。これは嬉しい話だ
冒険者にとって自分のデッキに組み込めて戦力として計算出来るカードの補強は常に大切な事だ。それこそ少年も授業中であろうともたまにその費用捻出に頭を悩ます程に
『新しいDランクカードを買う』か、それとも『このヘルハウンド辺りを買う』かで最近は少し悩んでいた……やはり冒険者にとって一番大事な『Dランクカードの頭数』を優先する事に天秤が傾いていた時にこの迷宮の存在を聞いたのだ
『運が良ければヘルハウンドを只で入手できるかも知れない』と、淡い期待を抱いてこの迷宮の地図やデータをギルドから買い取り(お値段凡そ一万五千円哉)明日は休みである事を利用して今日はがっつりゆく事が出来る
少なくとも『オーク一枚あれば余裕』と判断出来る……比較的雑魚しか居ない、かつヘルハウンドが良く出る迷宮を選んだ結果がこの迷宮だった
一応、今の戦力もちゃんと補強はしたし。ある程度の準備も出来た
初級攻撃魔法一発分程度の威力を持った魔法の石が三つ、軽度の骨折や多少深い傷なら瞬く間に癒す魔法薬一つ、それと熊撃退用催涙スプレー幾つか……まぁ、あのヘルハウンド相手に役立ちそうなアイテムはこのくらいだろうか?
少年は最下層の出入り口……要は『安全地帯』でもある階段付近で小休止をとる
オークとワイルドウルフに買って来ておいた鳥の丸焼きと飲み物を与え、自分はエネルギーバーをスポーツドリンクでゆっくり食べる
さて……どう挑んだものか?
【Tips】凡庸シリーズ
迷宮から時おり産出される『魔道具』の一種……なのだが、その中でもハズレ扱いの不遇な代物
近接系の武器ばかりであり、半々の確率で『カード化能力』を持っている……が、効果が『戦闘力+5から30』というだけしかない
+5なら短剣や杖みたいな軽い装備、+10から15なら普通の武具、それから+ 30と存在するが、その+ 30は少なくともオークみたいな怪力と頑強さが無いと使えない仕様になっている
+15迄なら普通の人間にも使える……けれど普通はカードに持たせて戦わせるだろう。そして使えるカードが増えたら大概ギルドに捨て値で売ったりする……前に壊れてしまうだろう。それなり以上に頑丈ではあるのだが
+5から15までなら需要は初心者を中心にそれなり以上にあるが、+ 30は余りにピーキーな仕様故に『カード化能力』を持たないものは大概迷宮に捨てられてゆく運命にある
+5から15迄ならだいたいどんなものでも三十万円もあれば買える……が、大概の冒険者はそんな金が有れば『新しいDランクカードの積み立て』に充てるだろう
+ 30の武具なら『オーク使い』ならば需要はある……が、そのオークに適した武具かは分からない。中には適応出来ずに無駄金になるだけだったというケースも多い……が、基本的にオークは不器用である
そしてデザインも全て『いかにもな量産品』といった風情なのでやはり人気がない
そろそろ新しいDランクカードを買いたい……どんなカードにしようか?
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後衛:魔法系アタッカー
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中衛:遊撃手兼盗賊
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後衛:回復役兼バッファー(少しお高い)