※:奪衣婆の説明に幾らか補強入れました(前に述べた奪衣婆と懸衣翁が『瓜子姫メタ』という話の説明の為)
第六部正式版アップ記念に
瓜子姫
日本各地に存在する民話の一つである
大まかな内容は『瓜から生まれた少女』が人々から愛され幸せに暮らし、その少女が祝言(結婚)する直前にやって来た『天邪鬼』に殺害されてその生皮を奪われ……そして瓜子姫になりすました狡賢いが間抜けな天邪鬼も直ぐに馬脚を現したり瓜子姫の無念から生じた小鳥に告発されたりで遺族に殺される
その
一応、このパターンが一般的な東日本式ではなく西日本式ならば瓜子姫は生きていてハッピーエンドになるパターンもあるが……『イレギュラーエンカウント』という存在の性質上そのパターンでは無い事は確定的だろう
そして……『イレギュラーエンカウントとしての瓜子姫』についてだが
基本的に犠牲者が複数人居る時、なるべくならば女性が多く出来ればカップルが居る対象の前に現れ易いとされている
その理由は……先に挙げた『天邪鬼の行動』を鑑みれば自ずと解るだろう(逸れた犠牲者を暗殺、そして生皮を剥いでその犠牲者になりすます、という能力があるからだ……犠牲者達の技量が低いなら眷属をけしかければ割と容易く分断出来る)。恐らくはイレギュラーらしく『なるべく犠牲者達を嬲りいたぶり恐怖と苦痛、そして絶望の果てに殺したい』というだけの話だろう
更に……(イレギュラーとしての)瓜子姫の一部とも言えるこの天邪鬼という怪物には『心を読む』という厄介な能力も存在する。この能力を利用してテリトリーに入った犠牲者の情報を読み取り擬態に役立てるが、広範囲に発動する為か戦闘に役立つ様な仕様では無いらしい
一説には『他の特性がメインでありこの能力は天邪鬼の側面から来る余技だから』とも『天邪鬼の迂闊さが制限になって弱体化している』ともいう推測もされている(これもまた瓜子姫が三味線を弾いているだけかも知れないが)
この『瓜子姫』という怪異は
一応、基本分類としては『戦闘型』と言うべき代物なので戦闘力も非常に高い。開幕からの莫大な眷属(腐った瓜や蔓の化け物)の大攻勢で半端者の冒険者(エンジョイ勢など)を最初の揮にかけて来る
それを越えても今度は前に挙げたあの悪趣味なオブジェ(干された女の生皮)が立ち塞がる
先に挙げた眷属どもがあの生皮を纏って強化されるからだ
この『瓜子姫』という怪異には『装備型』としての特性も存在する事が判明している……しかも生還者達の証言を纏めるとどうやら『装備/呪い型』ではなかろうか?という話だ(『犠牲者の生皮が必須』だからだと推論されている)
しかもその生皮を纏った眷属どもの中から『瓜子姫』本体が暗殺を仕掛けて来るという鬼畜コンボが非常に厄介だったという証言もある
……
しかし……先の様に大輝がやった様に『先手を切って生皮を焼く』という手段は有効だ(ランクが高まれば高まるほど難易度は増すが)
Eランクならばあの程度でもまだどうにかなった……多分Dランクまでならギリギリ何とかなるだろう(少なくとも今の燈程度の……下手なCクラスカード顔負けの練度や戦闘力と砲撃手を守る防衛力が必須だが)
その『装備型能力』にも何らかの距離的な何かの制限や欠点があるのだろう。少なくとも最初から『皮を被って奇襲する』のは(少なくとも低レベルな迷宮では)出来ないらしい
その辺りが『これは呪い型であり、その何某かの制約の為』ではないかと考察される根拠のもう一つだ(『低ランクでの舐めプ』とも『単なる三味線弾き』だとも警戒はされているが)
『瓜子姫』というイレギュラーエンカウントは、莫大な数の下僕とその最大の戦闘能力である『装備化』を使った人海戦術(からの暗殺)が最大の武器である。しかし低レベル迷宮ならばある程度はその『装備化』を封じる手段もある
その辺り……今の低レベル迷宮製、しかも『装備化封じ』に成功した状態ならばイレギュラーとしては比較的弱い範疇だとは言えるだろう(『ギミック』を破られたギミック型イレギュラー程度には)
ちゃんとあの生皮全てを焼却出来ているならば、だが
瓜子姫はイレギュラーの中では(比較的)愚かで迂闊な存在ではある……が、それでも狡賢い振る舞いは得意だという一面もまた存在する(主に天邪鬼としての狡賢さではある。瓜子姫だけでは単なる騙され易い小娘でしか無いだろう)
勿論、あのこれ見よがしに干してあったあの生皮も戦力ではあったが……仮にもイレギュラーがこの程度で完全に無力化出来るなら誰も苦労はしない
辺り一面に森からぞろぞろ現れた闖入者らが其れを物語ってくれるだろう
ずるり……ずるり……うじゅる……うじゅる……
まるで身体の中身がぐちゃぐちゃに潰れて、それを無理やり固めて操り人形の様に『それら』は動いている
『それら』は一見すれば襤褸を纏った人間の女……の様に見える
しかし動く度に身体がボコボコと蠢き。よく見れば眼球が無く、その眼窩や口……穴という穴からは腐った蔦がうねうねと這いずり出ている
纏う襤褸も良く見ればまた別の人の生皮だ
どうやら、こいつらは先の『女の生皮』を纏ったあの眷属どもの軍勢だろう
大輝の鋭敏になった嗅覚に瓜の、草木の、血の、人脂の腐臭が感じ取れる
そして、大輝の耳にはこんな音も聴こえてくる
『タスケテ……タスケテ…』
『イタイ……クルシイ……』
『ダレカ……ダレカ……アア……』
『生皮』にされた被害者達の呻き声だ
普通ならば空耳か何かだと感じる……感じられるだけでも非常に耳が良いか鋭敏(繊細)な感性かをしていると言えるだろう
しかし……今の大輝の様に非常に、神がかりめいた鋭敏な感覚を得られた存在。しかも定には『神通力』という更なる強い感知能力も備わっている
先程までの『生皮を纏うナニカ』は間違いなく『瓜子姫の強化を享けた眷属』だろう
瓜子姫だって流石に示威行為だけの為に己の切り札を全て晒す訳が無い。ある程度は分散しておいたのだろう
元から用意していた『予備戦力』とでも言っておくべきものだろう。基本的にイレギュラーどもは性根が腐れて捻くれているものだし(性根云々以前に『戦う為の備え』ぐらいは普通ちゃんとやるものだが)
……まぁ、今回は示威行為を優先して沢山の生皮を見せ札にしていた様だ(低ランク迷宮での舐めプとでも言ったつもりか?いや、むしろ『低ランクを利用した撒き餌』だと大輝は見ているが)
今回の『生皮』どもはだいたい百体前後と見れる。『基本的に一体一体が瓜子姫とほぼ同等の戦闘力がある』と見て良いだろう
先に焼いたあの生皮を含めれば……最低でも一桁は増えていたと見て良い
もしもあの時ちゃんとあの
……ちなみに、一度だけCランク迷宮でこいつが発生した事があるらしいが。その時にはBランク基準で途方も無い数の生皮軍勢が発生して対応したプロ級冒険者チームの数人が死亡したり再起不能になったりと酷い事になったらしい(再起可能な者達もかなり酷い被害だったらしい……主に戦力的な意味で)
さて……佐藤大輝はこの百体其処らのCランク内に入っているだろう怪異の集団とEランク最高レベルかつほぼ無尽蔵の物量に挑む事になる
もしも……もしも大輝があの時懸衣翁を入手出来ていれば『生皮集団(軍勢でも)』どうにかなっていただろう
『衣領樹招来』……これさえあれば十分間ならあの生皮集団を封印する事は出来る
無論、この能力での対処は今のレベルなら充分大丈夫であり何なら次のDランクまでなら恐らくどうにかなるだろう(それ以上になったらもうこの能力では手に負えないが)
更に言えば
『瓜子姫』というイレギュラーは
瓜子姫を倒すには無数の生皮集団に隠された『本体』を探し出して撃破しなくてはならない……ならないが
殆ど(そのレベル的には)無尽蔵に沸き出る連携能力の非常に高い瓜子姫(生皮)軍団を掻い潜ってその中にある『本体』を探し出さなくてはならない。しかも(本当にほぼ無尽蔵の)眷属の軍勢も執拗に妨害してくる(やはり連携能力は非常に高い)
瓜子姫は対処法を知っていても基本的にはどうにもならない。非常にマイナーかつマニアックな珍しいカード(しかも二体一心という貴重能力持ち)が対メタにはあるがあまり人気の無いカードである
そして、皆さまは忘れてはいないでしょう
そう、今回の切り札は『手の目の定』である
大輝は既に『泥縄を編む事』に成功していたのである
大輝/定の『
聞こえる音は沢山の生皮に魂を縛られた犠牲者達の悲鳴
嗅げる臭いは犠牲者達の鉄錆の様な腐臭
舌に感じるは滑りざらつく腐った瓜と血脂の悍ましい甘さ
肌に触れるは犠牲者の救いを求める意思と灼けつく悍ましい悪意
この空間の中から……
聴こえる。その悲鳴の中から更に深く感じる悪意の息遣いを
嗅げる。その鉄錆の腐臭の一番キツい場所が
舌に障る。腐った瓜と血の一番凝り固まったものを感じ取れる
肌に感じる。絶望渦巻くその中にある悍ましい悪意の源を
そして僅かなりともちゃんと存在する神通力
手の目が元来持つ『手の目かじり』とも呼ばれる犠牲者を探し出して生皮以外を啜り取る妖力
詳細は不明ながらも間違いなく役に立っているだろう『心眼』
大輝自身が生来持っている下手な獣よりよほど鋭敏な直感、そして激烈な幸運……いや最早『神がかりの豪運』とでも言うしかない運の良さ
これらが一体となってその全てを以て『権能』の域にその身を捩じ込む事に成功した
……しかし、しかしだ。それでもまだ『瓜子姫討伐の鏑矢を射れる』というだけだ
『その鏑矢を当てて瓜子姫の
先ずはその瓜子姫本体の元に向かう必要があり、そしてその瓜子姫を倒すだけの戦力を用立てる必要もある
そして大輝の考えた作戦は……
先ずは息を深く深く吸う。穢れに穢れた不快な空気ではあるが少なくとも吸える空気である事は変わらない
カードホルダーと最低限のポーション入れ以外の邪魔なジャケットや装備はほぼ全て脱ぎ捨て蔵を経由し巌から渡された魔道具のカードを使う。ついこの間まで重宝していた『俊敏の銅剣』を左逆手に持ち、右手には白木の仕込み杖。背中に無銘の名剣を背中に背負うという出立ちだ
脱ぎ捨てた装備やジャケット、白木の鞘を収納した蔵を戻してやまらのおろちを出す。今回は攻撃一周等の一発勝負だ
今の大輝の戦力は……
大輝自身&定、
そして作戦……と言うには単純なものだが
1:大輝&定と遠距離攻撃手段兼護衛役である燈以外の全てが先ずは大輝/定の指示で突撃
2:そしてなるべく瓜子姫の隙を狙って大輝/定が三本の刀剣で瓜子姫を刺して固定
3:そして全ての力を振り絞って瓜子姫をタコ殴り
それだけだ
しかし……この一歩間違えれば下手すれば死ぬより悲惨な末路を遂げそうなこの状況。流石の大輝も内心では恐怖で体が震えてきてしまう
心臓がまるで早鐘の様に激しく鳴り響き、喉は激しく枯れて呼吸を慎重に行わなくてはならない
今まで愛用していた(普通の)水筒の水を一気に飲み干して放り捨てる
水を飲む為に一旦地に刺した仕込み杖を抜く
もう一度、姫子の抱き心地と唇の暖かさを思い出す
そして最後に一気に深呼吸をして……
「雄雄雄雄雄雄雄雄愚ギア゛っ悪悪悪悪悪悪悪ッアッア!!!」
大輝(とその仲魔達)が明日を得られるか?それとも全てを喪うかはこの一戦に掛かっている
そしてその結末は?
次回に続く
【Tips】瓜子姫(その1)
日本各地に存在しないする御伽噺……をモチーフにしたと思われる
一見すれば襤褸を纏い山姥が持つかの様な凶悪な出刃庖丁を持った人間の美女(老若問わず)に見えるがその姿はこの死神が嘗てアンゴルモアで殺した女の姿である。そしてその襤褸も『人間の生皮』である
このイレギュラーはその出刃庖丁で他者の生皮を剥いで他者に化ける能力を持っているが、前に言った『美女の姿』もまた『嘗ての犠牲者の姿』である
その本当の姿は生皮を剥がれた人間と鬼が融合したかの様な悍ましい怪物だとこの死神に遭遇した生還者達から証言が寄せられている
この死神にはある程度の読心能力があるらしく、戦闘などには使えないが代わりに『他者を欺き騙す』事には無類の効果を発揮する(恐らくは『天邪鬼としての特性』だという説が研究者内では有力視されている)
読心能力で犠牲者の来歴や基本的な癖を真似るのが非常に巧く、余程の観察眼か獣の様な直感でも無いと初見ではそうそう気付く事は出来ない(服も剥いでちゃんと着てくるというのもあるからだろう)
この死神は他の死神と違い『パーティー攻略する者達が遭遇する方が更に危険』という珍しい性質を持っている
瓜子姫相手に多人数で挑むと……
【Tips】瓜子姫(その2)に続く
私が良く使う特殊フォントは『怨霊フォント』、次点で『吐き溜フォント』、『暗黒ゾン文字フォント』です
ホラーやグロテスク描写の強い味方です
二巻発売ブーストォ!!!