一応第一部の山場は簡潔に完結です(脳に酔った六代目シンデレラガールを憑依させながら)
勝敗の結論だが……幾つかの犠牲は払ったものの瓜子姫の討伐は成功した
『愚否卑……お゛魔エ゛のがオ゛ば、覚えダぞグぞ餓ギぃッ!!!』
そんな断末魔の声とドロップアイテム、そしておまけのガッカリ箱を遺して死神は消え失せた
さて……佐藤大輝は如何にしてあの悪夢の化身たる
あの雄叫びから大輝達の行動は迅速だった。雄叫びを挙げる行程の中でこっそりと『テレパス』でカード達に最低限の指示を同時に出していたのだ(今の大輝が此処まで器用な事はまだ本来なら出来ない。今が緊急事態故に何らかのリミッターが外れた状態だから出来たのだろう。これも一種の『火事場の馬鹿力』かも知れない)
……ぽたり、ぽたり
その代償に大輝は鼻血を出して目が激しく充血している、そして滅茶苦茶頭が痛い。何らかの負荷がかかってしまったのだろう
勿論、その鼻血と眼の充血に頭痛は即座にポーションパックから適当に掴んだポーションで治しておいた(ミドルポーションだった様だ)
しかし、その僅かな情報共有は値千金の価値があった
真っ先に突き進んで当たるを幸いに生皮の群れを千切っては投げ千切っては投げと活躍するのはやまらのおろち。今現在の限られた、大輝の持つ
元来Cランクとしてなら強い(基礎戦闘力400)上に
見た目と臭いの酷さのせいで評価は致命的に低いもののその分安く……セール期間ならばCクラス最弱候補のオーガよりも安くカードショップなどで買えるし売る際には激しく買い叩かれたり在庫次第で買い取り拒否すらある程だ(時にはオーク以下の捨て値で売られている事すらある……勿論、それはマイナス技能持ちだが)
稀に出る『買い手』もその外観や(特に)臭いの酷さで直ぐに手放してしまう(基本価格一千万円だがギルド売価は五十万円が普通という……中には買取り拒否で塩漬け状態というのもよく聞く話だ)
ちなみに……大輝の今持つこのやまらのおろちもメアリーさんの塩漬けCランクカードだった(もう一つの瑕疵オーガ含めて)
あの『生皮』どもは『美女の生皮』である為に『女』という属性が僅かなりとも付与されている(『瓜子姫』は言わずもがな)
まぁ……そんな訳で
『ぐバぁッ!!!』
『ゴがぁ!!!』
『ひギィっ!!!』
まるで熱々の湯槽に入れた泥団子か何かの様に『生皮』どもが溶けて砕けてゆく……ゆくが
ぐじゅるうぞうぞうぞぐちゃぐちゃうぞぐちゃうぞうぞッ!!!
まるで無限に、無辺に、無尽に沸き出る腐れた瓜蔓の群れ……もはや腐樹の津波としか言いようの無い『眷属』の無限沸きだってある
不快な甘さと穢れを纏う草木や実で出来た
『瓜子姫』……いいや『イレギュラーエンカウント』というものは割合低ランク迷宮では所謂『舐めプ』に走る事が多いらしい(『見どころのある獲物を探す為』だとか何だとか研究者は言っているが)
……大概の半竹者の冒険者達はその『舐めプ』であっさり死ぬが
まさか、まさか此処まで『自分に直撃ガン刺さりメタ仕様冒険者』が来るとは流石の
良く磨かれた
普通なら良くてやまらのおろちや奪衣婆・懸衣翁コンビのどちらかが来れば上出来の部類である。中には金にあかせて下位の(比較的従順な)Bランクカードで蹂躙しにかかる
限りある資源で手間暇かけて真剣に
……尤も、それで絆されて簡単に殺させてくれるなら
尤も、『
この怪異はどうやら佐藤大輝を『何が何でも絶対に
……『本当にそう思ったかどうか』は知らないが
だから『瓜子姫』はイレギュラーらしく今盛大に佐藤大輝に
『ヤるねェ゛、ながナか殺ルジャないカい坊ヤぁ゛?』
『瓜子姫』の言葉……今までは只悍ましいまでの殺意と悪意だけが詰まった空虚な言葉だったが今のその言葉に『熱』が感じられる
『男ノ皮はいらなイゲどアん゛だノ皮ハ゛戦リ品にデも゛頂グわァ!!』
「そうかい……その要求は却下だ
それだけで返した大輝/定は……辺り一面の腐った瓜蔓から反響する瓜子姫の声の出所に突撃する
やまらのおろちの補佐に回していた剣と後衛の燈を伴いながら瓜蔓津波を掻き分け切り裂き焼き払いながらの決死行だ
その中で剣の眷属オークは全て討死し、燈も案山子の身体を破壊された……尤も、眷属オークならDランク魔石を代価に追加召喚させているからまだ眷属召喚は機能してはいる
その眷属オーク達の動きは本来の眷属よりも少し鈍く貧弱に思えるが、まぁ肉壁や漢探知には充分に使えるから当場は凌げるだろう
まだ魔石の余裕はある……だからこそなるべく余裕のある内に全てのカタを付けておきたい(やまらのおろちの方だけはあまり余裕は無いが……Cランク魔石は貴重故に)
序でに言うなら剣に持たせていた『ミノタウロスの戦斧』も刃毀れが酷くなって来た。一応軸や重心からの違和感は無いらしいが少なくとも後で必ず研ぎが必須ではある(上質の出物ではあるが所詮これは中古品だ、むしろ良く此処まで持ち堪えてくれたものである)
ちなみに、こういう『純正の武具型魔道具』という代物は研いだりする事は出来るが補修や打ち直しは基本的に『そういう技能持ち』でも調達したり(そのマスターを)雇用したりしないと不可能だ。壊れたら只のガラクタになるか消滅するかのどちらかだ(余程特殊な魔道具でもなければ壊れたら直せないのだ)
「剣、使えッ!」
『承知!!』
間髪入れぬやり取りで大輝は背負っていた『無銘の名剣』の背負いベルトを手に持つ刃で切り捨てて鞘ごと剣にぶん投げる。ぼろぼろになった戦斧をカード化しながらその名剣をさっと掴んで邪魔な鞘を一振りで放り捨てて再突撃を仕掛ける剣
一番長い付き合いだけあって正に阿吽の呼吸だ
『
首だけになっても大輝の背にしがみ付いて火炎魔法で支援を続ける燈だっている
『不快な雌と草臭さですねぇ、臭くて臭くて嫌になって来ますよ』
……そんな暢気な事を呟きながらやまらのおろちは当たるを幸いに大暴れ。何か不穏な感じの台詞を吐いているがそれはさておき
そんな中で定の声が大輝という発信局からテレパスを通して仲間達の魂だけに響く
『旦那、そろそろ奴の本体ですぜ』
定のドスの効いた渋く深い声が示す先に……確かに『奴』は居る。『眷属』の群れに隠れ潜み今尚諦めずに大輝の
『血イ゛っ、ミヅがッダか!!』
既に『生皮』は
「……その不快なコスプレは、今すぐ辞めさせて貰おうか
『愚腐ッ、れでぃのヌゥどが観ダいの゛がイ坊ヤ?』
「そいつは失礼
軽口?罵倒?の応酬の果てに大輝(定&燈)は瓜子姫とぶつかり合う事に成功した
瓜子姫という怪異は基本的に接近戦タイプの怪異である。その特徴的な出刃庖丁と『鬼(天邪鬼)』としての牙や爪で襲いかかって来る
ある意味では読者貴兄も良くご存知の『ハーメルンの笛吹き男』に近いスタイルだとも言える(瓜子姫は決してあそこまで賢い怪異では無いが)
無数に……本来ならば(その迷宮のレベル基準ならば)無数と言えるぐらい存在する『生皮』からの奇襲こそがこの瓜子姫の必勝戦法である
一方の大輝も自分の得物を一瞬で確認する……仕込み杖は腐汁でべたべたに濡れている。柄の木や軸に僅かに違和感を感じる、沢山の刃溢れの中に僅かな
少し、辺りの木に(わざと)軽くぶつけてその反響音で理解出来た
多分、この仕込み杖はこの戦いを持ち堪えられるかどうかだろう。仕込み杖というものの宿命だ(所詮は脆い暗器である、仕込み杖はその機構的な脆さ故に良くて『珍品』扱いであり普通に
一方の『俊敏の銅剣』は……腐汁に塗れてはいるし幾らかの刃毀れはあるがまだまだ普通に使えるだろう。やはり仕込み杖と同じ方法で確認しても大丈夫だった
鋳造式西洋剣という代物にはこういう『性質的な頑丈さ』という利点だけで愛用する冒険者が多い(刀型魔道具だと『銘有り』なら非常識に頑強だが無銘シリーズ程度だと……である)
尤も、今回のケースなら『非常に苛烈な荒試し』よりも更に苛烈な実戦である為『良くぞ今まで持ち堪えた』という評価が正しいだろう。大概の素人なら途中……いや序盤戦どころか道中でへし折ってしまうのが関の山だ
大輝からしても定からしてもあの『仕込み杖』は非常にしっくり来る代物だから今の仕込み杖の状態はとても残念な話なのである(むしろこの鉄火場に来てくれた事を感謝する感情の方が大きいのだが)
しかし今は『たられば』何ぞ気にしても仕方ない。今ある、今までの帰結で調達出来た手札だけでどうにかするまでだ
豪ッ!!!
凍ッ!!!
大輝は今まで温存しておいた二つの高等攻撃魔法のカードで紫電と氷河をばら撒いて道を切り拓く。運良くその中の氷河が『瓜子姫』の脚を捉える
『ヂい゛っ、殺ッ゛でぐレルネ糞餓鬼ィ゛!!!』
脚を封じられた『瓜子姫』があの凶悪な出刃庖丁を何本も投げながら大輝達を牽制する
『吻ッ!!!』
「厄介だねぇ!!!」
生来武器である戦斧で軽々と出刃庖丁を弾き飛ばす剣、そして寿命間近な仕込み杖を盾に乾坤一擲の突撃を繰り出す大輝/定/燈
後数歩で『瓜子姫』という地点で奴……『瓜子姫』は更なる悪足掻きに出た
『擬非卑、最高ニ゛最悪だネあン゛ダらァ!!!』
ぞんっ!!!
『瓜子姫』は……何と氷河に囚われた己の両脚を躊躇いもなくその出刃庖丁で切断して大輝達から更に距離を取ってきた
ブシャァ!!!
『「ぐげっ、腐あっ!!!」』
まるで
これには流石の大輝達も一瞬面食らったらものだ。眼には見えずともその腐血は激しい音とゾンビ……いややまらのおろち以上に強烈かつ悍ましい悪臭で流石の大輝/定でさえ聴覚と嗅覚、そして味覚が一瞬馬鹿になる程だった
大輝と定が同時に吐きそうになる程に
そして、その一瞬の、絶好の隙をあの往生際の悪い『瓜子姫』が見逃す筈は無い
確かに『瓜子姫』は(イレギュラーの中でも)頭のあまり宜しくはないタイプではあるが、流石にこの状況でこのチャンスを棒に振る様な間抜けでは無い
ぐじゅる……ぐじゅる……
即座に切り落とした脚の代わりに『眷属』を巻き付かせて代用の脚……いや蛇胴をでっち上げて来た
まるで『腐った蔓の姦姦蛇螺』とでも言った様な塩梅の姿になった『瓜子姫』。この『瓜子姫』は『眷属』を
ずるずる……ずるずる……と正に姦姦蛇螺の様に他多数の眷属どもの津波にまた身を隠そうと足掻く……しかし
ザシュッ!!!
『瓜子姫』の胴体、その背中からを『何か』が貫き深く地面に喰らい込ませる。それはやはりあのボロボロになった仕込み杖だ
「……この鉄火場に悠長に悶えてられるか、
口から酒臭い胃液を涎の様に垂らした大輝が突撃を止めずに突き刺した仕込み杖。それが『瓜子姫』を地面にまるで昆虫採取の蟲の様に留めている
『……ッの、糞゛餓゛鬼゛が悪悪悪亞亜ッ!!!』
『瓜子姫』の絶叫をどこ吹く風と無視しながら背中を踏み付けてその背を小剣で滅多刺しにする大輝/定。更にはとっておきの縮地で大輝の傍らに馳せ参じる剣(間髪入れずに『瓜子姫』の腕を切り落としてもいる)
しかもやまらのおろちが頭の半分で『瓜子姫』の蔦蛇胴を喰らい引き裂きながら燈と『眷属』を牽制している
『瓜子姫』を封じる仕込み杖は割と直ぐに折れてしまったがその功績は最後の最期まで莫大だった
悲鳴と罵声をがなり立てる『瓜子姫』をバラバラに切り刻むのに暫く時間が経過して話は冒頭に繋がる
『瓜子姫』の残骸から響く(あの冒頭の)断末魔から漸く……漸く『死神の招待状』は棄却出来た
後は身支度と戦利品回収後に帰るだけだ
次回に続く
漸く……漸く『第一次瓜子姫討伐』が完了です。後は後始末ですね