※:プロ資格筆記試験では冗長過ぎると思うので『迷宮士資格・検定』と今後は設定捏造しますんで
※:今回結構下ネタ多いです
『札商』となった兄弟子……幾らか前に色々思う処と事情が有ってプロを引退して札商に転向した男からの電話内容はこんなものだった
『直ぐ近くにたまたまお前を見かけた、そろそろ夜だから家まで送ってやるから此処に来てくれ』
『彼』は見習いを漸く脱して駆け出しになってからの札商としての仕事も終わってこれから開店準備中の事務所予定地兼自宅に戻る際に
……出来れば大輝が手に入れた『例の手の目』を拝観したい。という下心も無くは無いが
『彼』は待ち合わせ場所であるカードショップ間近の駐車場に来た大輝を発見した。前に会った時よりも非常に成長している……少しだけ『好みのタイプになって来ているな』とか何とか考えつつも流石に『未成年のノンケ、しかも彼女持ちの弟分でしかもその彼女は俺にとっても妹分なのに手を出すとかマジ無いわ』と良識ある思考に立ち戻る
「久しぶりだな大輝、かれこれ一年振りか?」
「電話やLINEとかだと結構話はしますけど、そうですね高和兄さん」
この深く良く透るバリトンの効いた、まるで歌手の様な美声で大輝と会話するのは兄弟子の一人である『阿部高和』。角刈りで今の大輝以上に長身で筋肉質、男くさく掘りの深い『何処となくワルっぽい』という印象を持つ端正な美男子……いやむしろ『いい男』とでも言うべき二十代後半から三十前半に見える男盛りな元プロ冒険者で現新米札商だ
彼はその逞しい身体にきちんとした夏用スーツを纏い、愛車である魔石式自動車の中で大輝を待ってくれていた
『……冒険者時代なら愛用の
元来からの自由人の気質からか今でも窮屈だと思うスーツに辟易しながらエアコン腕時計……エアコンペンダントの姉妹品で一般的な社会人や富裕層に人気の一品にもまた窮屈さを感じはするが、今日はお気に入りの弟弟子との会話を楽しみながらのドライブである
「……って訳で『瓜子姫』の撃破にどうにか成功したんだよ」
「おいマジか!?」
……案の定、大輝の今日の大金星に驚愕する事になった
突発的な死神襲来を返り討ち、ぐらいならば高和にだって幾らか経験があるしなんなら彼自身も一つだけ
その為、一応プロ引退はしているが未だ冒険者としての鍛錬は欠かしていない……いや、むしろ欠かせない。『
これから逃れたくば『再戦時にその贈り主から失望される事』ぐらいしか無いだろうが、まぁそうなって生存出来るなら相当な運の持ち主だろう。代償は常に大きいだろうが
高和が一番驚いたのは……死神討伐や贈り物、高価値魔道具の獲得ではなく『大輝の直感』である
普通なら『嫌な予感』程度で死神襲来を予兆は出来ない。大輝の勘の良さや豪運は高和も良く知ってはいるし師匠兄弟子一同でその情報は秘匿しているが……下手したらこの勘の良さ一つ知られただけでプロチームが大輝の奪い合いをやらかしかねない
ましてやメアリー塾一同やダンジョンマートの太いコネ、その馬鹿げた豪運やかなり優秀なリンク才能、その年齢で『
高和がもし現役時代に大輝と他人でその情報を得たら即形振り構わずスカウトに行っている
……これが偶然であるならまだ良いが間違いなく今のリンク能力だけでもプロは大輝を要マークするだろうし、何なら『
少なくともそんな覚悟ガンギマリの大馬鹿野朗は目の前の
高和とて『瓜子姫』の性質にはそれなりの知識はある。実際の遭遇経験は無いが少なくとも大輝と同じ年齢時、同じ状況でそれが出来るかはまず断言出来ない
高和が二番目に驚いたのはその辺りだ。基本的に
そんな化け物を相手に魔道具でガチガチに武装したとはいえ格下の……しかも『視界を喪う』という致命的ハンデ付き装備カードで挑む、というのは流石に命知らずを通り越して自殺志願か何かを疑っても仕方ないだろう
尤も、あの時の大輝の状況と『あの手の目の真価』を理解しているならその判断は『むしろ最高の模範的解答』だと判断するだろう。これ以上を求めるのは最早只の粗探しの範疇だろうか?
この件については九割五分は大輝を褒め称えるべきだとは思うのだが……良識ある大人としては叱るべきでは?という五分の考えもある
高和は内心その考えに少し懊悩していたが……残念ながら佐藤家は結構近くにあるのでその懊悩は打ち切りせざるを得ない
しかし……車が着いて大輝が礼の言葉と共に降りる手間でこんな事を言って来た
「高和兄さん、明後日辺りに兄さんの
その言葉は高和にとっても渡りに船だった。今さっき悩んでいた事をさっと解決したいなら『
……ついでにあの手の目の拝観だって出来る
勿論、あの素晴らしい手の目の拝観料はきっちり払うし何なら『大輝の
そんな事を考えながら大輝の言葉に快諾する。明後日はそもそも休暇なので問題ないが待ち合わせ場所の都合で
いや、ある意味では明後日の会合には居ない方が好都合かも知れない
大輝にとっても高和にとっても『カード達のガス抜き』という目的があるからだ
……嘗て大輝はカード達に『いいお店に連れて行ってやる』と言っていたが、それがこの札商店だ
高和は『夢魔使い』としてプロ時代は有名な冒険者だった……先天後天問わぬ最早『天性』としか言いようの無い真性の女夢魔使いとして非常に高名な冒険者だった
普通の男なら幸せな話だろう。高い冒険者の素養に相性抜群なのが女夢魔で社会的にも大成功した男というものは
……しかし、しかし阿部高和という男は女には全く持て女には興味を持てない男だった。むしろ性的、恋愛的全てに於いて同性にしか興味を持てない男……いわゆる『ガチホモ』である
嘗て言及した事もある筈だが……女夢魔という存在は男の精を食事と同様に求める存在だ、という事を思い出して欲しい
高和にとって『女夢魔を抱く=真性ノンケがガチムチ兄貴や可愛い男の娘とヤる』と等価の意味がある、控えめに言って拷問である。高和自身もその辺りなど全てを覚悟しての冒険者稼業ではあるが……まぁキツいものはキツい
高和もその対応の為にボアオークやインキュバス、やまらのおろちなどを用いて『代用品』を自身の主力カード達に宛てがってはいるがそれでは女夢魔達の『飽き』が早い。高和も彼女達のケアは綿密にしなくてはならないという問題もある
其処で……愛妻家、恐妻家、女嫌い、高和の同胞等々様々な事情で女の子カードを持てない、持たない冒険者の知己の男カード達を呼んでの『相互リフレッシュ』である。まぁ、女夢魔達にとって基本的に男の精も所詮は嗜好品でしか無いが……それはそれで、と思うのが一般的な女夢魔という存在だ
一切お金のやり取りは無いし人間のマスターは基本的に対象にはしないのでまぁ白寄りのグレーである……希望するノンケは自己責任だが
その『カード達のガス抜き』と『高和の深いスキンシップ(意味浅)の軽減』も兼ねてのサービス……要は『実りすぎた野菜のお裾分け』みたいなものだと言っておこう
家に帰った大輝は高和の厚意による出前(近くの人気飯屋の豪華スタミナ定食)を完食していざ眠りに……と思っていたら
イレギュラー討伐時にワーキング24を服用していた事を思い出してしまった
火酒だのやる気ポーションだのはまだ良い、しかしワーキング24はまずい。明日の朝迄は決して眠れない効果があれにはあるし……前に使った眠りを齎す魔法のカードも既に在庫切れだ
ついでに豪華スタミナ定食で精が付いた上に……更に
掻い潜った死線の反動でムラムラする自分に気付いてしまった
……今一瞬、間違いなく姫子に夜這いを仕掛けたいと真剣に絶叫する自分の
大輝は……部屋に鍵をかけて換気MAX、つい数日前の海水浴デートでの画像脳内妄想似た様ないやらし本他姫子コレクションを引っ張り出す。隣に新しいティッシュを置く。ついでに無限水筒も近くに置く
……まぁ、その後の顛末は大輝自身の名誉の為に秘させて貰おう
これで、最後は少々しまらない結末だが『佐藤大輝の二番目に長い一日』はこれで終わった。後もまだまだ様々な後始末や換気、沢山の丸めたティッシュの親にバレない処理もあるがまぁ良い終わり方だろう
第一部 完
【Tips】札商
カードを専門に扱う商人。迷宮が現れた当初、まだカードの使い方が判明していなかった時代、カードは美術品の一種として扱われていたため、札商のビジネスシステムは画商のそれを踏襲している
国から正式に認められた職業であるため、札商から買ったカードは年末調整でちゃんと経費として認められる
(※:公式より百均様の許可を頂いて転載)
【Tips】メアリー塾(その1)
『第一次アンゴルモア』直後に『鬼瓦権三郎氏』が立ち上げたサマナー達の相互扶助組織を前身とする日本最古かつ最高峰の冒険者育成私塾
塾長、副塾長の鬼瓦夫妻を筆頭に『Bランク迷宮踏破実績持ち』である『首狩り兎』『中華大帝』『夢魔の王』などの日本有数の冒険者達を生み出した『プロ冒険者の梁山泊』とも一部では呼ばれている
鬼瓦夫妻そのものの実力は『非常に優秀なアマチュア』だが、その人間性や若手育成の巧みさなどから『冒険者業界の亀仙人』、『メアリー師匠』などなどと呼ばれて業界内では慕われている
鬼瓦夫妻はギルドの幹部でもあるのでギルドにも非常に強いコネがある。またこのメアリー塾のサマナー訓練方法は幾らか自衛隊にも輸入されている為か自衛隊にも強いコネがある
最近は『リンクの鬼才』『中学生迷宮士』の二人を筆頭に数々の優秀な若手が出て来ている様だ
いい男達が大好きです、でも魅力的な美女美少女はもっともっと大好きです
みんなもモブ高生二次……やらないか
勿論、まだまだ続きます(夏休み期間は『幕間』とでも思っておいて下さい)