本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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一章幕間その3 カード・リザルト

 

やや事務的に終わってしまったが姫子との逢瀬を楽しみ……その逢瀬を覗き見ようとする大人達とのアホな攻防後、大輝はまた一度身嗜みを整えてから次の目的地に向かう

 

何時ものギルド間近にある雑居ビルの一つのとある階、其処に阿部高和が作った札商事務所が存在する

 

 

『阿部カードトレーダーオフィス』

 

 

とある高名な札商の師事から認可を経ての独立したばかりと、小さなものではあるがちゃんと政府認可を持った店舗である

 

今はまだCランクが中心で商品になるBランクは数点しか無い様な駆け出し店舗ではあるが……まぁそれでも札商業界だけでなく冒険者業界にも強いコネを持つ将来性の高い優良店舗でもある

 

大輝が駅からこの事務所に向かおうとしたらLINEに気付いた。相手はこれから商談他諸々に入る阿部高和からだ

 

 

『大輝、悪いが予定より一時間後で大丈夫か?緊急で大口依頼が舞い込んで来てな』

 

 

そんな入電が有ったので適当な喫茶店で時間を潰す事にした

 

その喫茶店はあまり人気のない落ち着いた雰囲気の店舗だった。大輝は奥の席で時間潰し代わりに今まで確認出来なかったカード達……特に『瓜子姫戦』で使ったカード達の状況を確認する事にした

 

 

ブッ!!

 

 

注文して口に含んだアイスコーヒーを少し吹いた

 

……まぁ、確認した五枚が軒並み進歩して新しい技能を得たりすればそうなるだろう

 

まず最初に剣だが……縮地の制限が解除されていた。あの瓜子姫戦で見せたアレを制限解除で出来るのは真面目に有り難いし回数制限が無いなら訓練だってやり易い

 

しかし……剣は愛用してきた大戦斧だけでなく剣術の扱いにも優れていた、やはり『武芸十八般』?いやあれは多分剣自身の資質や素養だろう。だから他にも槍とか色々、最低限無銘名品シリーズを調達して試してみるのも今後の小課題に入れておくべきか?聖銀製でお茶を濁す気にはならないし

 

次に巌……こっちはランクアップの副作用で戦闘力は向上しなかったが、あの瓜子姫の強烈な一撃を完璧にブロック出来た事がきっかけにでもなったか『硬気功』という魔力気力を対価に防御力や耐久力を一時的に高める技能に目覚めていた。その防御力に更なる磨きがかかった巌、さてこれからどう磨くかを考えておかなくてはならないだろう

 

次はやまらのおろち……巌と同じくランクアップの副作用で戦闘力向上はなかったが今これを見てこいつの『本当の性質』が理解出来た

 

 

『カイロネイアの片獅子』

 

 

これは『テーバイ神聖隊』を意味する称号であり『唯一人の番』を飢求する衆道者、要は『番を求める同性愛者』という事である、だからこそあいつはいやだひめに対する欲求や衝動が薄い……いやむしろ皆無な訳だ。思い返せばあいつの発言の節々にこの性質を伺わせるものが稀に有った

 

『この技能に目覚めた』という理由でそのカードを気味悪がって手放す男性冒険者は結構多い。しかし大輝の場合はその衆道者なら知己いや同士同胞に沢山存在する、大輝にとって彼らとの真っ当な付き合い方なぞ『普通の人と全く同じ』でしか無い。今から会う高和やその仲間達だって好みのタイプには実は結構五月蝿いし粗雑なフィクションテンプレートみたいなノンケを無闇矢鱈に無理矢理襲う様な性犯罪者では決してない

 

この技能はその内容的に一般的にはマイナススキル寄りの扱いだが、大輝みたいな厄介かつ希少な特異体質持ちにはある種の福音にもなり得る……この理由で求めるのは世界広しと言えど大輝&姫子ぐらいしか居ないが

 

この『カイロネイアの片獅子』は番となるカードを揃えれば真価を発揮出来るタイプの技能だが、他にも『男女別の、番で召喚する事で真価を発揮するカードの異性の方の代わりになれる』という特性もある……この能力の対象は他のカードと組んでもその能力を使えなくなるという制約を得るが、その対象となったカード同士ならばちゃんと使えるという訳だが流石に『二体一心』迄は模倣出来ない様だ

 

要はやまらのおろちの塩漬け状態だったスキルである『八魔羅ノ大蛇』をちゃんと戦力に換算出来る、という訳である……彼、そして大輝自身とちゃんと波長の合うもう一枚の『カイロネイアの片獅子』さえ見つかれば、だが

 

それにちゃんとやまらのおろちにも『つがい』が自力で用意出来るのはありがたい。後で商談の一つに盛り込んでおこう

 

大輝にとってもこういう技能……いや性質の持ち主はむしろ好ましいぐらいだから丁度良い話だ

 

次に今回本当に頑張ってくれた燈だが……かなりの技能強化や複合が発生している。先ずは従順が忠誠に、これは恐らくあの瓜子姫戦で案山子の身体を失って尚大輝に付き従って激戦を潜り抜けた結果だろう。そして知性強化と魔力強化が英明に統合された、これは燈の中でこの二つの技能が成長した結果だと思う

 

そして新たに『詠唱短縮』と『火炎魔法範囲制御』という技能にも目覚めていた、これは読んで字の如く魔法詠唱時間の短縮効果と、『火炎魔法の範囲を制御出来る』という極めて珍しい技能だ。この技能さえ有れば火炎魔法に限れば範囲変更の魔力消費や手間が易しくなる上に『範囲指定』といった器用な真似だって出来る様になれる……訓練次第ではあるが

 

そんな特技を得た燈はやはり鬼火系統として更なる火炎特化型に育成・クラスチェンジするべきだろう……燈自身の意見も聞いてからだが

 

そして最後に……今色々な意味で悩みの種であり大輝のデッキの屋台骨と言える定についてだが

 

あの一件から一つの技能を得ていた、それは『二刀流』という代物で効果は『片手で扱える武具型魔道具であれば二つ問題なく扱える』という代物だ

 

『装備するだけ』ならば普通に出来るし特殊能力があるならばどれだけ装備していても使うだけなら出来はするが、どれだけ装備していても上がる戦闘力は利き手にもっている一つだけだし能力もマトモに制御は効かないというルールが存在する。故に大概の冒険者は一枚のカードに装備させる魔道具をなるべく多くはしない傾向にある

 

あの瓜子姫討伐時に定/大輝がやったのは『仕込み杖を盾代わりに使って最後に杭代わりに瓜子姫にブッ刺して地面に磔にしてから解体ショー』という使い方だからまぁ問題ない

 

この『二刀流』という技能は……片手剣や片手斧みたいに片手を想定している二本持ちの武具型魔道具の戦闘力を『高い方+低い方の半分』に出来る能力とそれぞれの手にある武具の特殊能力の制御補助が出来る。武具型魔道具がメイン戦力の定みたいなカードには非常にありがたい技能である

 

先に挙げた通り武具を多用、重用するタイプの冒険者からは垂涎の技能だがその習得方法は未だいまいちハッキリとはわからないからこの技能の希少性は非常に高い……だいたいカード次第ではあるがそこそこ良い程度のお値段、いやDランクカードならばニ百万円追加程度だろうか?

 

勿論、武具型魔道具を持っていなければ宝の持ち腐れでありそれを知らずに手放したり乱雑に扱ってその幸運を台無しにして泣く冒険者の話は稀に聞く

 

 

『見てくれから何となく予想は付いていたが……まさか此所まで武闘派だとは』

 

 

心の中で大輝はそう思いながらこの定の為のクラスチェンジ先や新しい得物について思案する

 

クラスチェンジ先だが……はっきり言って座頭系はあまり強くは無いし数も少ない。入手したリビングアーマーみたいなガチガチの甲冑と座頭系ではクラスチェンジ先には出来てもそもそも相性が悪すぎる。大概の手の目が拒否する

 

一反木綿なら割と相性は良いが手の目によると『何処かしっくり来ない』らしい。後は高和頼みで大輝が目星を付けたとある装備化カードの入手が必要だろう。そのカードは日本固有で海外では大人気だが日本では『使って戦うのはリビングアーマーや小袖の手より怖い』と敬遠されがちな代物なのだ……何せ『生身で戦え』とでも言う様なビジュアルだ、アレは

 

……間違いなくリビングアーマーより強いし愛好家もかなりの数存在する、ついでに希少だからお値段もかなり。間違いなくリビングアーマーよりお高いのが珠に疵だが

 

定の戦力化に必須の武具型魔道具……これも最初の凡庸の仕込み杖(なまくら)は兎も角、瓜子姫戦で最期まで奮戦してくれた無銘の仕込み杖(業物)みたいな代物はそうそうお眼にはかかれない、そもそも武具系魔道具は結構なお値段だし使い潰しを前提にしないといけない代物である。だから武具系魔道具をあまり好まない冒険者も一定数は存在する

 

大輝も一度両親が持っている無銘の刀(打刀)を借りて定に持たせたりもした、俊敏の銅剣よりはしっくり来るが流石にあの無銘の仕込み杖の様にはいかなかった。どちらかと言えば脇差しや小太刀みたいなリーチが適合するサイズなのだろうか?(姫子の軍用サーベルみたいな?)

 

その悩みも……もしかすれば『定の新しいクラスチェンジ先』が大輝の予想通りにいけるならばもしかすれば解決出来るかもしれない

 

その辺りは定にそのカードを直に見せて相談するだけだ

 

 

そんな思案に耽っていたら約束の時間が近づいていた。そろそろ店を出て商談やら何やらせねばならない頃合いだ

 

 

 

【Tips】装備型魔道具のシステム

 

『手に持つ武具タイプ』で片手持ちならば盾型魔道具と併用可能、両手持ちならば『片手で扱える力』が有ろうとも両手でしか扱えない。そして武具型なら『特技な技能持ち』でも無い限り基本的に一種類しか有効化出来ない

『甲冑型』、ならば勿論一種類限定であるが『一部の衣服型』、『陣羽織(サーコート)型』や『外套(マント)型』などの様に『甲冑と一緒に扱える羽織り』みたいなものならばどれか一種類だけ併用可能

盾型を二つ装備は……やれなくもないが戦闘力の向上はなく扱いが非常に難しいのであまりオススメは出来ない

しかし例外として『両手バックラー』だけは格闘技使い達の一部で使われている

アクセサリー系統は……指輪なら左右の指合わせて二種類、首飾りなら一種類、腕輪、足環それぞれ一種類、冠も一種類、衣服も外套(マント)もそれぞれ一種類といった制約が存在する

非常に稀だが『義肢型魔道具』という物も存在する、勿論その該当する四肢が欠損した者にしか使えないがこれにはそれ以外の制限は無い(理論上の話だが『重要臓器以外全てが魔道具に置き換わった人造人間』というものも……出来なくはない、らしい)

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