さて……このヘルハウンドに挑むにあたり。今の布陣では流石に駄目だろう
オークは良い、オークは最大の戦力だしこういう時こそ一番必要だ
しかし、流石にワイルドウルフは駄目だ
今のこいつは確かに『ワイルドウルフ』という種族としては最高の領域に仕上がっただろう……
だが、所詮はFランクモンスターである
ヘルハウンドの一撃までは辛うじてどうにかなる(かも知れない)が、残念ながらヘルハウンドは『素早いモンスター』なので出せばまず確実にロストするだろう
このワイルドウルフを強化する為に来たのにそれをロスト前提の運用……それは何の冗談だろうか?
ヘルハウンドは『準Dランクモンスター』として有名な、少年達(普通の)一つ星冒険者にとっての強敵だ
この猟犬を舐めてかかり(間違いなく)唯一のカードを失い、ギルドから貰った『冒険者ライセンス』という(人工の)魔道具で救難信号を発動する羽目に陥った冒険者は偶に存在する(そしてその『救出料金』で借金塗れになって廃業である。何しろFランク迷宮なら百万円、Eランク迷宮なら一千万円もの大金が必要なのだから……大事な商売道具もロストしているだろうし)
ちなみに……ギルドへの登録料はだいたいこのライセンスの料金だと言われいる
そしてこのライセンス、実はEランク迷宮ではそんなに過信は出来ない(理由は何時か後述)し……そして『本当に最悪の危機』にもまた役には立たない(これもまた何時かに後述)
まぁ……そんな微妙に当てにならない保険はさておき。少年はワイルドウルフをカードに戻した
『オーク一枚で挑む』などとヘルハウンドを舐めている訳では無い。流石にそれでは『賭け』になってしまう(少なくとも『賭け』として成立する程度には)
少年はギャンブルというものは基本的に嫌いなのだ。少なくともギルドに有った『カードパック』なるものに手を出そうとは思わない(せめて百万円が端金になる迄は)。無謀かつ無意味な賭けなぞ以ての外だ
一応、それなりにEクラスモンスターの強敵に挑んで撃破した経験はある。先に挙げた魔法の石や他の道具を利用したり、他の冒険者と簡易チームを組んだり、時には数だけはあるFランクカードを捨て石にして『勝負』をどうにか『狩り』の内に収めた経験もある
全て、この迷宮と同じく『深いFランク迷宮』での話だ
迷宮は基本的に『深度=難易度』だと思えば良い。大概のエンジョイ勢や休日冒険者達は浅い迷宮に潜って小遣い稼ぎを行なっている(そして深度の深い迷宮にうっかり入って先に挙げた末路を遂げる)
少年の様になるべく深い迷宮に潜って己とカードを磨き、次へ次へと邁進する……彼らみたいな存在を『求道冒険者』と呼ぶ(ある意味、原作主人公が結果的に至った境地である)
そして……少年もまた、先の様に『Fランクカードを次々捨て石にして辛勝』みたいな無様は出来ればもう二度とやりたくは無い(必要なら何時でも覚悟を決めて行うが)、どんなに安く簡単に入手できるカードとは言え一応は『財産』であるし
それと……その時、幸運にも獲得出来たその強敵だったEクラスカードなら一枚だけデッキに存在している(もう一枚有ったが……流石にゾンビだったから売り払って斧代の足しにした)
今まで使わなかったのは……ぶっちゃけそのカードは探索能力が碌に無い上に足が非常に遅い、というだけの理由だ
一応、この迷宮以外の場所でもそれなり以上に鍛えてはいるしコミュニケーションも取ってはいる(むしろ現在の対ボス戦ではオークの次に大事な戦力である)
そのモンスターは基本的に感情が希薄で会話能力も最初から無い。筆談しようにもペンなど握っても直ぐに壊してしまう馬鹿力なので動作による『YES /No』でしか会話が出来ないのだ
少年は、契約したカードをしまっているポケットからあるカードを引っ張り出して念を送る
そしてそのモンスターが召喚された
そのモンスターはオークと同じだけの背丈であり、オークよりかは少しだけシャープなシルエットをしている。
しかしその身体は石で出来ている
そのモンスターの名前は『ストーンゴーレム』、ユダヤ教のラビ(指導者とも祈祷師とも言える存在)が操るとされている魔法の操り人形の一種である(本来なら泥人形の事だが、そっちはFランクモンスターに存在している)
モンスターとしての性能は……言わば『劣化版オーク』である
基本的にオークと同じく腕力と耐久力、ついでに防御力には定評はあるが……敏捷性が無く、不器用の極みかつ判断力が全く欠如していて融通が効かないのでマスターがいちいち指示を出さないと上手くは運用出来ない
先にも言った通りに不器用の極みなのでオークの様に武装しての強化も基本的に不可能なのである(岩を投げるとか丸太を抱えて突撃とか程度しか出来ない)
その代わり疲労も痛感も無いのでどれだけでも動けるし、幾らでも酷使が出来る(何処かで『迷宮の外で召喚出来るなら重機やフォークリフト代わりに使えるのに』、とかぼやいている色々な兼業冒険者が居たとか居ないとか)
一応、このストーンゴーレムも育て方次第では感情を得て不器用を克服する事も可能らしい(そういうブログと育成記録が存在しているのだ……原作にも『イライザ』というケースがちゃんとある様に)
そんな今現在、少年にとっても貴重なEランクカード……切り札の一枚を切って猟犬に挑む準備は完了した
……それから十分後
大した苦労もなくヘルハウンドをオークの斧で仕留める事に成功していた
まぁ……普通なら素のオーク一枚でもヘルハウンドなら問題なく仕留める事は簡単だ(このヘルハウンドは『ボス補正』で強化されているが)
丁寧に育成したDランク&Eランクカード二枚相手なら多少強化された程度のヘルハウンド程度では最早事故などあり得ない話である
少年はこの一戦を『戦い』ではなく『狩り』にする為に色々な手間暇や資金を掛けてやってきたのだ
少なくとも今の状況で勝負や賭けなぞまず出来ない。今の少年にあるチップはオークのカード一枚と新しいカードの為の貯蓄、そして己の命だけだ
貯蓄だけならまた一から(直ぐにでも)出直せる。オークのカードだと出直しの時間はかなり掛かるがやはりまだ出直せる……しかし、命は一つだけでやり直しは効かないのだ
世間様の評価なら『中の上』とでも評価されるだろう平々凡々なありきたりな一般家庭の一人息子
中肉中背、何処にでも居る様な平々凡々な顔、成績も運動神経もだいたい平均的な今年中学三年生になったばかりの小僧だが……両親の説得と多少の援助を勝ち取って冒険者デビュー一月目
子供の頃、世界中の誰もが体験した『ありきたりな出来事』がきっかけで冒険者を目指し、そして今この場所で『狩人見習い』だ……まだまだ『冒険者』とは言えないかも知れない
『冒険者』ならは少なくとも『戦う覚悟』が必要だろう……断言しても良いが少なくとも今までの様な『狩り』ばかりでやってゆけるほど冒険者という稼業は甘くはない
『求道冒険者』として迷宮に潜るので有れば何時かは必ず『絶望』に出会すだろう
少なくとも……今遭遇すれば間違いなく悲惨な最期が待っているだろうその『絶望』に対処する為に『狩人見習い』みたいな金策とデッキビルドをせこせこ頑張っているのである
迷宮には沢山の夢がある……お宝や名誉、美少女モンスターみたいな幸せな夢だけでなく、危険で悍ましい災禍やら何やらみたいな悪夢だってある混沌の坩堝だ
少年は、その夢の坩堝の浅瀬で悪夢をおっかなびっくり避けつつ幸せな夢の欠片を拾い集める狩人見習い……いや、まだ只の採取人でしかない
今は『狩人としての武器』を作る為に頑張っている状態だ
そして……少年の新たな『武器』はどうなるだろうか?
『戦利品』を拾ってオークが少年の元にやってくる
そして……その手のひらには?
何時ものものより幾らか大きな魔石だけが其処にあった
要は『今回はハズレ』である
少年も『それが普通』だと理解しているのでもう一つのお楽しみに目を向ける。このFランク迷宮巡りで一月二枚ならむしろ普通に幸運の範囲である(そして一枚でも『使える』範囲のモンスターなら更に倍率ドンだ)
広場の中央に何やら豪勢な宝箱がある
それは迷宮攻略の報酬である『ガッカリ箱』だ
何故に『ガッカリ箱』かと言うと……ただ単にその箱の見た目と裏腹に中身は大概ショボいものばかりだからである
極めて稀に『良いもの』が出て一躍莫大な金を獲る冒険者の話もある……大概『宝籤当選者の未来』みたいなオチを迎えるらしいが
ちなみに……オークが持っているあの大斧もこのガッカリ箱からの贈り物らしい
ちなみに……こういう『迷宮攻略報酬』として出てくるガッカリ箱には決して罠は無い(少なくとも今まで一度もそういった報告は無い)
少年は宝箱に手をかけ、そしてその蓋をゆっくり開く
中身は……
どんなガッカリ箱にも必ず有る白い水晶みたいな石。俗に白魔石と呼ばれる……迷宮攻略達成の証である特別な魔石だ。この階層だから少なくとも九万円はするだろう(Fランク迷宮の白い魔石はだいたい『階層×一万円』が基本的レートである)
ちなみに……二つ星冒険者には『十ヶ所のFランク迷宮攻略』と『Dランクカード一枚の保有』で昇格試験を受講する権利を得られる。要は少なくとも十個はこの白魔石をギルドに納品することが条件だ
それと……大概ガッカリな結末に終わる『もう一つの中身』は?
『それ』は……何かの革で出来た。まるでモンスターカードや魔道具カードなどの様な『迷宮のカード』がピッタリ入りそうな、そんな薄いカードホルダーがくっ付いた黒いベルトだった(西部劇に出る様な『ウエスタンガンベルト』みたいな……ガンホルスターの代わりにカードホルスターの付いたデザインの)
……どうやら、今日はとんでもない『大当たり』を引いた様だ
それは『カードホルダー』と呼ばれるプロ……少なくとも三つ星からの必需品として有名な魔道具だ
保有しているモンスターカード、魔道具カード、手持ちには無いが使い捨ての魔法が使えるマジックカード等の『迷宮製カード』なら無限に収納出来てしかも所有者の意思で『欲しいカード』が手元にやって来てくれる機能すら付いた。しかも所有者以外には決してカードを取り出せない防犯機能付きのもの凄く便利なアイテムだ
ちなみに……値段は市場だと三千万円だが、余りにも人気が高く市場そのものに滅多に流れない
市場に流れるとするなら大体は『予備もあるけどダブった』とか『引退した冒険者が市場に流した』、レアケースだが『その冒険者の破産や犯罪等での賠償で没収、市場に流れた』だとかいった理由ぐらいだろう
もう一つ挙げるなら『金目当てに幸運なエンジョイ勢が即売った』とかか?
この少年の場合は勿論……
ベルトに収納しているナイフ……いわゆるサバイバルナイフを取り出して左親指に切っ先を向け。軽く刺した
ぷくりと少量の血液が珠の様に出たのでそれをベルトのバックルに垂らす
……要は『カードとの契約』と同じだ。これでこのカードホルダーは『少年のもの』となった
ちなみに……ヘルハウンドは三回目のリテイクでドロップした
【Tips】ストーンゴーレム
ユダヤ教のラビ(指導者とも祈祷師とも言えるユダヤ教の祭司みたいなもの)が断食や祈祷といった儀式を以てして作成し操る魔法の人形
本来なら泥人形の事だが、それはFランクモンスターとして存在している
以外とバリエーション豊富でFランクには泥、木、紙製のゴーレムが存在し、Dランクなら鉄と銅のゴーレム……他にも錬金術関連ならだいたいクラスチェンジ候補になるらしいしC、Bランクにも更にゴーレム系統が存在するらしい(ちなみに……このゴーレムの最終進化系統の一つには『フランケンシュタイン・モンスター』や『哪吒』などが存在する)
『(主に額などにある)核』を破壊しない限り決して破壊出来ないしぶとさを持ち、決して疲労もしない上に怪力持ち
但し……岩で出来た身体だから非常に不器用かつ鈍足でちゃんと育成しない限り決して複雑な命令はこなせない上に融通も効かないという欠点も存在する
普通なら『一芸特化型』としてDランクカードの代用扱いとして運用されるのが普通だが、真面目に育成すれば案外強くなる素養はある玄人仕様の渋いモンスターでもある
【種族】ストーンゴーレム
【戦闘力】80
【先天技能】
・自動人形(下級):魔力に因って作成された操り人形、しかし素材があまり宜しくない為デメリットの比率が高い(『生きた屍』の自動人形バージョン。絶対服従、状態異常耐性、知能低下、不器用、怪力、疲れ知らずを内包する)
・石の身体:身体が石で構成されている。刺突や斬撃には強いが打撃には普通、魔法攻撃にやや弱い
後天技能には火事場の馬鹿力などが多い……内包するデメリット技能の清算などが優先される事が多い
何気に絶対服従持ちなので訓練(プログラム)次第で色々成長できる……が、かなりピーキーな仕様なので大概のマスターは一時使いか使い捨てするのが普通の悲しい存在(見た目も悪いし所詮はEランクモンスターだしで)
『ちゃんと命令すればオークの代替品』というのがこのストーンゴーレムの評価だが余りに面倒くさい仕様なので人気は無い
しかし……ちゃんと育成すればする程どんどん輝きだす『冒険者を映す鏡』の様なモンスターでもある
まさか……まさか原作者自ら来てくれるとは、このリハ○の節穴ではわからなかったよ
真面目にありがたやありがたやです
そして……お気に入り登録してくれた人や評価してくれた、感想くれた人等々。全てのこの拙作を読んでくれた人に、ありがとうです
……それと最後にアンケートを一つどうぞ(三つとも必ず必要だから入れます、優先順位ですよー)
追記:この中に『女の子モンスター』は絶対に居ません。全て普通の不人気モンスターばかりです
そろそろ新しいDランクカードを買いたい……どんなカードにしようか?
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後衛:魔法系アタッカー
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中衛:遊撃手兼盗賊
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後衛:回復役兼バッファー(少しお高い)