本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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一章幕間その10 三つ星とて一里塚、四つ星もまた一里塚

 

長風呂でどうにか血臭を拭い切って三つ星資格試験から帰って来た大輝は、直ちにギルドに出頭して所持禁止類魔道具の提出を最優先にしながら今回一番必要な『Dランク迷宮の白魔石』を提出する……ついでに刀や戦鎚、酒瓶のカード化依頼も忘れない

 

今日の担当はメアリーさんではないが、大輝はこの行きつけのギルドでは評判の良い冒険者……なので割と直ぐの一時間も掛からずに解放された、一応この手間は最低限必要な時間なので仕方ない

 

未成年者による酒屋殺しのカード化だけは少し渋られたが、ギルド側も大輝の特異体質やデッキ編成にはある程度知識があるので直ぐに処理手順を行なってくれたのは余談だろう。世の中には酒系魔道具は結構あるし

 

そして……大輝の習得一月未満の赤銅色のライセンスは殆ど新品ではまま返納されて代わりに白銀色に三つの星が記されたセミプロの証である『三つ星ライセンス』が配布された

 

この『三つ星ライセンス』は言わば『冒険者の上澄みの証』とも言われている。前にも何度か言及したと思うが……一つ星ライセンスは金かコネさえあれば誰にでも入手可能な言わば『道楽』である。一方で二つ星ライセンスはその『道楽』から間違いなくそれなり以上の労苦を以て得る必要がある代物であり、少なくとも『最低限の試練を超えた証』として世間や一定以上の冒険者からの信頼を多少なりとも得られる力はある

 

そして件の三つ星ライセンスだが……これは準プロ、セミプロの証とも言われているものであり、言うなれば『優秀な一般冒険者の証』である。だいたい三十数万人の冒険者人口を持つ今現在の日本ならだいたい一万二千人前後くらいはその資格持ちらしい

 

この資格さえ有ればだいたいどこの……ダンジョンアンチの息が掛かった企業以外なら大概の企業から高い評価を得られるだろう。企業次第では即日雇用だってあり得るし大企業には所属してくれる一戦級冒険者はなるべく沢山必要である。迷宮の秘宝カードはどれだけ有っても良いし何より『迷宮終末論』だってある

 

ちなみにその企業の中で上澄み中の上澄みこそが佐藤大輝や薬丸姫子の両親が重役として所属している『ダンジョンマート』であり、大輝も一応はこのダンジョンマートに就職希望している身だ……文明社会がそれまで無事なら、という但し書きが追加されるけど

 

世間からすれば三つ星ライセンスは社会的成功を約束してくれるゴールドチケットみたいな扱いだが、こと大輝にとっては単なる通過点に過ぎない。大輝的には言うなればDランク迷宮への通行許可証でしかなく、せいぜい自分の自由と独立を守る為の小道具に過ぎない

 

それでも……仮にも三つ星ライセンスを得られる実力を示せたならば、時期と都合が合う『メアリー塾の兄弟子達』にCランク迷宮に臨時戦力として連れて行って貰える可能性だってあるかも知れない

 

それに大輝は単なる三つ星ライセンス持ちではなく、ちゃんと『迷宮士資格』に『Eランクイレギュラー単独撃破実績』すらある強者であるし『拙くともリンク能力に覚醒済み』でもある。中学生かつ冒険者歴半年未満の小僧としては破格の実績だ、ついでにCランクカード四枚持ちのむしろ大人でも滅多にいない領域の実績だ

 

 

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大輝と姫子の在籍する『美城学園』は、世界的に見ても有数……いや、トップクラスに『学生冒険者』の在籍数が豊富な珍しい学園だ。しかもこの学園にはFからCまで一つづつ学園専用迷宮が存在し、学生達は良くこの迷宮に入っては己を鍛えて冒険者としての研鑽に勤しんでいる

 

だからこそ……冒険者の多いこの学園では『冒険者社会』とでも言うべき独特な秩序が形成されている。基本的には七つの『冒険者部』と沢山の泡沫の様に生まれては消える『サークル』が存在する

 

大輝みたいな野に埋もれていた実績持ちの存在が判明したら……部もサークルも問わず熾烈な勧誘合戦は間違いなく確定事項になる。大輝みたいな腕も立ち、度胸もあり、コネも豊富で、特に『迷宮士資格持ち』という辺りが一番高評価だろう。ついでにその豪運も見る人は見ている

 

大輝の場合夏休み明けには間違いなく熾烈な勧誘大戦になるだろう。だからこそ大輝はなるべく早く昇格して『独立』を守る為に立ち回っているのである、他所のカラーにはなるべく染まりたく無いし自分の陣営には憧れがある

 

学生冒険者にだってプロに昇格できる……いや、日本でも二百人弱しか存在しない冒険者の頂点と呼んで差し支えない存在だが、一応は片手の指で数えられる範囲では存在するが今はまだ高校生や大学生ばかりである。今現在の最年少記録は『高校ニ年生が夏休みに昇格』らしい

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

所持禁止類魔道具の引き渡しが手順とアイテムのカード化、三つ星ライセンス資格獲得者用の講習……だいたい三十分程度が終わり、大輝は身内一度に連絡して三つ星ライセンス獲得を伝える

 

「今日はご馳走」らしい……今はまだ午後二時なので学園制服販売店に向かう、夏休み前の制服がそろそろ怪しくなってきた。夏服のシャツのボタンや二の腕辺りがかなりキツい、いやむしろ胸ボタンが弾けたし。スラックスの太腿辺りがミチミチいっている上に脚の丈がもうあまり合わない

 

夏休み前までは騙し騙しどうにかなってはいたが流石にもう限界だ。夏休み開始前に試着したら袖や股の部位が裂けてしまったから夏休みが終わる迄にちゃんとした制服の買い替えが必要だ……いや、ジャージもだった

 

今の大輝は身長187㎝、体重89㎏の筋肉モリモリの『巨大な狼』めいたナイスバルクである……一見すると普通の体格に見えなくもないが、非常に筋肉質な体付きをしている

 

……流石にこのサイズや筋肉だと特注扱いになるらしく、納品は五日後となるらしい。どうも迷宮に潜る様になってからか身体の成長が著しい気がする

 

ちなみに大輝の父親である『佐藤源輝』は身長190㎝体重100㎏、大輝が歳を重ねればこうなっていく見本みたいな熊を彷彿とさせる男性フェロモンの塊みたいな大多数の筋肉と健康的な脂肪率を誇るガチムチマッチョのナイスガイ……阿部高和のチーム一同全員やその同胞たる『さぶ』な人達から凄く人気らしい

 

母親である『(旧姓:谷垣)佐藤稲穂』は身長172㎝体重(検閲削除)の狐めいた印象のする長身グラマラス美人である……マタギの家系だが祖先にアイヌの占い師が居たとか何とかで非常に勘が鋭く、大輝も母の血をこの勘の良さで受け継いでいるのだろう

 

ちなみに両親共にかなり運が良い方らしい……大輝の豪運程では決して無いが

 

ついでにそろそろ窮屈になり始めて来た野戦服やボディーアーマーも買い替え兼グレードアップをダンジョンマート系列店で図る……大輝の体格は自衛隊なら結構多く居るので直ぐに調達出来た。簡単な裾の調整だけで即日持ち帰りが出来るから有り難い話だ、しかし大輝の場合『メアリー塾のエンブレムワッペン』や『ダンジョンマートの社章ワッペン』を入れる必要があるので受け取りは明日になるだろう

 

前まで使っていた最早窮屈な野戦服やボディアーマーはその系列店に引き取って貰う。系列店ではその古着を洗濯手入れし直して格安で売ったり嘗て挙げた『奨学冒険者キャンペーン』の支給品にしたりする、そしてなるべく一人でも優秀な冒険者が育つ土壌を作る。これは世界各国『冒険者システム』を起用している国ならどんな冒険者用装備販売店でも必ず行う事だ

 

社会はそれだけ冒険者……少しでも迷宮攻略を行う冒険者を欲している、という事だろう

 

今日は最後にカードショップに寄って何か良いCランクカードが無いかを物色しに行ってみる、Cランクは基本的に在庫がダブっているDランクカードと違って割と希少なものばかりである。オーガやケンタウロスみたいな頻繁に出る様な代物ややまらのおろちみたいな超不人気カードでもないかぎりはまぁまず在庫がない、まるで回転寿司か何かの様に絶えず流動するカード達から目当てのものを探して引き上げる必要がある

 

今日の目玉はライカンスロープのオスと男吸血鬼……他のカードも余り良いカードは無い

 

Cランクカードの良いものは基本的に自衛隊が最優先、次にプロが買い漁る……特にカード消費の激しいデュエリストとか。だからカードショップに流れ着くCランクカードはあまり良いカードは無い事が多いので冒険者として大成したいなら『良い札商との縁』は本当に大切なものになる

 

まぁ……カードショップにも稀にピーキーな掘り出し物が流れ着いてくる可能性もあるから偶には顔を出してみるのも悪くはないだろう。基本的に瑕疵カードも販売はしているが『復活用』だと念押しが必ずされる

 

魔道具も大都市レベルの大型ショップに限るが基本的に聖銀武具や『無銘シリーズ』の定番武具やハイポーション辺りまでなら比較的安定供給される……それ以上の高品質魔道具はやはりCランクカードと同じく運次第だろう

 

今日は珍しくカードホルダーが売り出されていたが既に『sold out』のマークが入っているし

 

タブレット端末にももう良いカードや魔道具は無い。もしも良いカードが有れば『取り置き』をして貰っていたが

 

この『取り置き』というシステムは……カードショップにあった『良さげなカード』をある程度の『保証料』を払う事で暫くの期間取り置きして貰うシステムである。期間内に買い取りが出来ればその保証料は返金されるが買えなければ保証料は没収される。まぁ良くあるそんなシステムだ

 

ちなみにこのシステムは冒険者免許が有ればDランクカードからなら誰だって出来る……『ブラックリスト入り』でもする様なやらかしさえしなければ。そしてCランクカードからの取り置きは三つ星からの権利になる

 

カードショップと札商はある意味似た存在ではあるが、カードショップは『素人、新米向け』で札商は『プロ、玄人向け』で区分される。カードショップでは沢山のDランクカードと比較的頻繁に出るタイプのCランク、ごく稀に出る弱いが扱い易いBランクカードがカードショップの基本的なラインナップだが基本的に『親方日の丸価格』とでも言うべき適正価格で手早く販売してくれるし『チケット』があれば格安販売だってあり得る

 

一方の札商はCランクカードからが始まりであり、『横の伝手』やら子飼いの冒険者の力などで顧客の依頼に応じたカードを探したりする。普通のカードショップでは見つからない類いの良カードや珍カード、例えば海外ネイティブカードなどが欲しい冒険者は札商にたよる必要があるだろう。運が良ければ女エルフやサキュバス、猫又屋敷みたいなオークション前提の激レアCランクカードや高位Bランクカードだってオークションよりかは安く入手できるかも知れない……時間はかかるだろうが

 

だからこそ『信用出来る良い札商』との縁はプロやプロ志願にとって値千金の価値がある訳だ

 

なるべく早く『カードホルダー』みたいなプロ冒険者必携魔道具を入手したいならこれも札商に頼るべきだろう。札商は魔道具も普通に扱っている、以外と忘れている貴兄も多いだろうがむしろカードそのものが元より魔道具の一種である

 

やはりカードショップにも出物掘り出し物は無かったので今日は大人しく帰る……家では両親と薬丸一家だけでちょっとしたパーティーになった。なるべくその情報を明かさない大輝の方針を考慮しての事だった

 

酔っ払った薬丸夫妻は寝室に、両親は寝室のベッドに置いて……ちゃんと服は緩めてサイドテーブルに常備の水ボトルとついでに新聞紙を貼った洗面器を保険で置いておく、家の一室にある『姫子の部屋』に眠っている姫子を優しく抱き抱えてベッドに繊細にそっと姫子を横たわせる。姫子の部屋は大輝が偶に清掃したりするので何時も清潔だ、ついでにパーティー中こっそり姫子の部屋のシーツや枕カバーは替えておいた

 

流石に姫子の服……薄いフリルで飾られた純白のワンピースを脱がす事は出来なかった、大輝(青少年)の理性的な意味だけでなく絵面的にも不味いだろうし

 

ちなみに……佐藤夫妻と薬丸夫妻は子供達には教えていないが『とある賭け』を行なっている

 

『姫子が十六になる迄に大輝手を出したら、大輝は薬丸家への入り婿ルート、手を出さなかったら姫子が嫁入りルート』

 

まぁそんな賭けだ……何気に佐藤家が不利過ぎる気もするが

 

薬丸夫妻としては『むしろバッチこい!』かも知れない。さて、大輝の未来はそのまま『佐藤』か入り婿で『薬丸』か……多分『薬丸ルート』だろうな、と作者自身も予感しながら話は続く

 

 

 

【Tips】迷宮士

 

『原作』における『プロ冒険者資格に必須の筆記試験』の事、プロ冒険者以外にも迷宮関係の法律家やギルドの高位職員、大企業の迷宮関係者には必須の資格となっている

 

必要勉強時間500時間程で宅建士資格に匹敵するとされている難関資格ではあるが、比較的他のプロ資格試験よりは簡単……いや、一応は努力だけで何とかなる資格の為『プロに至る素質の無い専業冒険者』の中にも結構この資格持ちは多い。間違いなくこの資格を持つ者は『ガチ勢冒険者』だと断言出来る

 

しかし、学生冒険者の場合はこういう面倒極まりない試験は忌避されやすい傾向にある為かこの資格を持つ学生冒険者は日本中探しても薄い名簿が出来る程度にしか見つからない

 

 




原作より多少冒険者の数や質が向上しているのは『メアリー塾』や『美城学園』などの存在や『奨学冒険者キャンペーン』みたいな企画によるバタフライエフェクトです

※:大輝父は某『スケベマタギ』に、大輝母はその嫁である某『誑かす狐』に瓜二つです
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