本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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ifマロパワーでエネルギー充填

割とifマロはうちの大輝と似た者同士かもしれん……大輝のデッキは女っ気皆無の魁! 男塾状態だけどな


一章幕間その14 ぎゃんぶらぁ嫁中心派

 

さて……定が『贋作妖刀』に生まれ変わってから即座に大輝は研究者連中に胴上げ担ぎで、まるで蟻が収穫物を巣にでも運ぶかの様に攫われての研究対象ライフが再開した

 

簡易的な健康診断から定を振るう所座を確認されたり装備化しての素振りや居合いの所座確認、出せる様になった『幻影体』の仕様確認までまるで真っ裸にひん剥いて穴という穴を調べ尽くすカンカン踊りか何かの様な気分になる様な、いっそ拷問か何かみたいな激しい検査地獄だった

 

そして……そのねちっこい迄の調査で分かった事だが

 

 

1:『リンクチューニング能力』は喪失しているが、代わりに『宝探し能力』がこの迷宮の一階層程度には増強していた。これで標準的な『宝探し能力』の平均値だろう

2:手の目だった頃の様に眼球が消失したりはしないがやはり装備化すれば盲目になるのは変わらない

3:視覚以外の感覚は前より更に鋭敏かつ繊細なものになり、様々な耐性も補強されている感覚がする

4:『本体』である仕込み杖は非常に大輝の手に馴染む造り……いや、むしろ『佐藤大輝専用』だと言って良い代物になっていた

大輝か大輝のカード以外の誰かが柄を握っても重心が非常に悪く感じる様だ

5:定の感覚からの情報だが『手の目としての能力』は『リンクチューニング』以外はどうやら全て残っているらしい。あの非常に扱い辛く大輝自身も殆ど忘れていた『手の目啜り』も

6:『幻影体』の定は今までの定と殆ど変化は無いが……眼球が眼窩にちゃんと存在している。『例の大俳優』にそっくりな瞳だった

7:『幻影体』は本体からだいたい十米は離れられない様でそれ以上離れれば幻影体の方が消失する様だ

8:幻影体は装備化能力を使用中には出せないが、本体を振るって戦えるし実体化だって出来る

実体化して『色々な遊び』だって出来るので定的には非常に喜ばしいらしい

 

 

今すぐ分かった情報はこんなものだろう。そして今度は『装備化能力』を試してみる事になる

 

安全地帯から少し出ればFランクモンスターが犇くモンスターハウス状態ではあるが、今回もやはり昨日と同じ場所で昨日と同じ……いや、支給されたカード達は成長しているから『全て同じ』という訳でも無いが、まぁだいたいは同じ条件だと言って良いだろう

 

今回は『素の状態の定』との装備化による検証から『無銘の名刀』を取り込んだ状態の検証、そして後はEからD、そしてボス部屋と昨日と同じ工程を繰り返す

 

昨日は昼下がり辺りでボスを攻略したのでその時間辺りからボス討伐となる。それまではモンスターの間引きに専念だ

 

 

大輝は……今定を逆手に持って昨日と同じ様にストーンゴーレムを一刀で切り捨てながら考える

 

 

『切れ味だけじゃない、湧き出す力も疾さも身体のキレも反応も何もかもが段違いだ。まるで今までは重りでも付けて動いていた様な気分になるぐらいに』

 

 

そう、本来の地力がクラスチェンジで劇的に向上し、定自身も純粋な戦闘には余計なリソース(リンクチューニング)を削除して戦闘にそのリソースを注ぎ直した結果だろうか?今までとは比べ物にならないほど身体が動き力が漲る

 

やはり眼は見えないが、それでも感じて『視える』世界は非常に鮮明かつ鮮やかに感じられる

 

前回を今と比較して例えるならばまるでガタの来たブラウン菅テレビを見ている様な気分だったが、今はそれから新しく新調した最新型テレビに変えた気分である……流石に色とかはわからないモノクロではあるが

 

通常の視界が欲しければ他のカード達の視界を借りれば解決はする……ガチ戦闘中にはやる暇は無い。今みたいな雑魚散らしならそのまま切り捨て御免で解決だ

 

 

『ふむ……、昨日みたいに無銘の名刀が負けてない。この新しい身体は絶好調みたいで何よりだ』

 

 

定から見てもこの身体は今までより圧倒的に良いものの様だ。例えるならば今までだと身体中に鉛か何かが詰め込まれたか何かで、現状はその鉛を抜いてちゃんと身体を治した様なものだろうか?

 

今は大輝と直でリンクからのシンクロ状態ではある……しかし、歩行器(リンクチューニング)という甘えを捨てる覚悟が影響したのか、今までは自力では単独シンクロしか出来なかったのに今なら追加で一体は出来そうな気さえする。ついでに言えばシンクロも割合が幾らか増している様にも感じる

 

仕込み杖()と無銘の名刀の二刀流でこうだから定に研究チームから支給された一振りの無銘の名刀を取り込ませればまた話は変わってくる

 

『贋作妖刀』というカードは『憑依型』であると同時に『物品憑依型』としての性質も存在する……様に見えて『心眼和尚』の効果で完全に『呪い型』だが。憑依型同士で同じ対象に装備化は出来ないが呪い型と憑依型ならば同時に装備化が可能となる……他の『物品憑依型』や『祝福型』という更に稀少な装備化能力持ちを合わせれば倍率ドンといけるがそれはまだ考えなくても良いだろう。そもそも『祝福型』なぞそうそう入手できる様な代物ではない

 

大輝の場合は定を持って腹に一反木綿を巻いた任侠スタイルになれば高速移動したり飛行したりしながら戦えるだろう……昨日入手したリビングアーマーを試してみるのも有りかも知れないが一反木綿みたいな戦闘以外の一芸特化型の方が良いとは思う

 

マスターの方……と言うよりは贋作妖刀の方に憑依するシステムだからそのままやれば多少の戦闘力付与程度にしかならないだろうが、そこはテレパスさえ出来れば最低限でも機動力の足しにはなるだろう

 

後で実験する必要があるが、今は兎に角怪物狩りからだ

 

 

昨日よりも圧倒的に早く『掃除』を済ませる事に成功した……刀は両方とも罅も刃毀れも疵痕も一切無い綺麗なものだしカードらも大輝自身も大した疲労はない

 

そして最後はボス部屋……今の編成をちゃんと確認するなら

 

定:カーバンクルを大量に仕留めたおかげかあっさり戦闘力はMAX化している。ついでに実験は終わったので今は『虎徹』を取り込ませている状態だ。無銘の名刀は一振り大輝が腰に履いている

剣:三つ星試験やDランク階層のカーバンクル乱取りでやはり戦闘力MAX化済み。無銘の名剣装備済み

蔵:それなり以上に前線に出ているからやはり戦闘力MAX状態、俊敏の銅剣装備中

ライラプス二号:今なら大輝のシンクロにも耐えられる逸材。何気に従順で気配察知にも目覚めた優秀な個体。戦闘力+40

オーク三号:嘗ての剣と同じ様な粗末な服を着て片手持ちの戦鎚(メイス)と粗末な造りだが頑丈そうではある木盾持ち。ちゃんと武装している辺りから見て中々優秀そうな個体、知性も高く大輝に好印象を抱いている様にも見える、もう少しすれば『シンクロ』もいけそう。戦闘力+30

オーク四号:褌一丁に釘打ち棍棒姿の非常に普通なオーク。従順持ちな辺りはポイント高い。戦闘力+25

 

 

とりあえず現状はこんなパーティー編成になる。テレパスなら今のDランク迷宮の制限である六体程度なら最早容易くこなせる、少なくともイレギュラーが出没でもしない限りは大丈夫だろう

 

……もし出たら即ガチパ編成に切り替えるし、自衛官達も全力で共闘してくれるだろう

 

ボス階層へ偵察に行っていた自衛官らが帰って来た。とりあえずイレギュラーは居ないらしい……が、出たモンスターは珍しい代物だったらしい

 

 

「わぁお、こいつは確かに珍しいわ」

 

 

それは……大輝も引き連れているモンスターだ

 

それは……見た限りならば歳の頃なら二十代前半ばかりの女性だろうか?

 

それは……とても美しい容姿をしている。言うなれば『神がかった』とでも言うべきか?

 

 

白く透き通る様な肌、肌理細かく美しい金髪、そこだけは『人間ではない』と分かる尖った耳、その種族としては比較的豊かな分類ではある……だろうがそれでも『スレンダー』だと言い切れる体躯

 

 

『エルフ』

 

 

大輝のエースである剣の同種であるが、資産価値なら天と地の差がある程別物ではある……だからこそ今の大輝でもどうにか入手出来たのだが

 

何処か……大輝と姫子共通の友人知人であるとあるオッドアイのトップアイドルを彷彿とさせる容姿と雰囲気を感じる

 

そのエルフは一体だけだが……『ボスモンスター』だけに非常に強いだろう。その気配から前に倒して生皮を剥いだヴァンパイアにも勝る強者だろうと思う

 

しかし大輝/定は『あの時』とは雲泥の差がある。少なくともカタログスペックだけならば完全に別次元の存在だ

 

少なくとも『Cランク最下位クラス』相手とはいえCランクモンスターをEランク最弱クラス単騎で膾にした実績や、そのEランク最下位クラスでDランク相応イレギュラーを滅多刺しにして殺しきった実績の持ち主である大輝ならばまぁ問題ないだろう

 

大輝には他にも単なるオークの頃からカリッカリに鍛え磨いたエルフ()だって側にいる。カードホルダーには最大戦力(Cランクカード)がまだ二枚有るし主力、予備、追加、資産それぞれで沢山のDランクカードだって豊富にある

 

先ずは……『取らぬ狸の皮算用』かも知れないが、このモンスターを倒した後の事を考える

 

出来ればカードが欲しい……売るとかそれ以前に姫子の相棒だと言える『菫』のクラスチェンジに使えそうだし、剣との門出にこのカードを送ってクラスチェンジさせてあげたい

 

さて……そうなると今度は護衛兼監視役である自衛官達と交渉する必要がある。流石にこのレベルのカードがドロップしたら権利問題は大変な事になるだろうし

 

しかし、普通Cランクカードのドロップ率は0.1%しかない。だから大輝の取り分であるカーバンクルガーネット一粒を対価に自衛官達と賭け……をする事にした

 

佐藤大輝という男は『賭け』というものは大嫌いだが……今回ばかりは『賭けたい』と生き死ににも関わらないのに珍しく賭けに出た

 

……負けてもカーバンクルガーネット一粒という『宝くじ』だからまぁ大丈夫だろう。それにローリスクやノーリスクなお遊びギャンブルにまで目くじらを立てていたら息が詰まってしまう

 

敢えて例えるならば『エルフの皮を譲渡する権利をカーバンクルガーネット一粒で買った』とでも言えば良いかも知れない

 

自衛隊や研究者側からしてもこれはちょっとした余興にもなるし……何よりこれで『大輝の豪運』の検証実験にもなる

 

 

『不適合属性を抱える者はリンクの才能だけでなく運も非常に良い』

 

 

世界各国に存在する僅かな事例と報告でそんな仮説が立てられている。少なくとも日本にも彼ら以外に二人ほど同じ不適合属性体質者が存在するが、彼らも比較的優秀な冒険者であり比較的幸運な人物ばかりだった

 

『召喚不適合が世界一重い体質』として研究者界隈で有名な『薬丸姫子』を見れば何となくわかるだろう。彼女は様々な意味で満たされ愛されている性根の良い幸せな少女であり……この暖衣飽食の世で『冒険者(戦士)』として己を鍛え研く気概気骨の持ち主でもある

 

それに匹敵するレベルの召喚不適合体質者である佐藤大輝のデータは研究者的にも非常に重要である……彼らの強運とスペックならば良いカードや魔道具が沢山入手できる可能性も増すし、優秀な冒険者が増える事はその国を豊ませるのに必須事項。それに何より『Aランク迷宮攻略の糸口』かも知れない、という期待もある

 

大輝や姫子みたいに『優秀かつ協力的な冒険者』は自衛隊には本当に有り難い存在だ。一番は『自衛隊に入隊してくれる優秀な冒険者』だがそこまで贅沢は言えない……その天性の豪運の影響かメアリー塾やダンジョンマートやギルド、美城学園にエメラルドタブレット社やニシモリ製薬といったダンジョン関係と大小様々なコネを持つ二人なので過度の勧誘行為は御法度沙汰だ

 

……多分、このままアンゴルモアとか起きずに平和なら二人ともダンジョンマートに就職してメアリー塾の師範をやって生きてゆくだろう

 

しかし、要請の内容次第ではあるだろうが自衛隊の依頼なども普通に協力してくれる優れたコネであるのは間違いないので大輝&姫子の強化はむしろ願ってもない話だ

 

何度でも言える話だが、国家としても自衛隊としても『冒険者は一人でも多く欲しい、特に優秀な冒険者は』という事情がある。そしてそれは『何処のどんな国でも同じ』だという事だ

 

そんな訳で大輝は昨日と同じ様にボスモンスター(女エルフ)の討伐に挑む

 

女エルフは堅革鎧を纏い、腰に細剣(レイピア)を履いて背に矢筒を背負いながら弓を持つ。という典型的なエルフスタイルの武装という出立ちだ

 

恐らくは『戦闘能力強化仕様』なのだろう。前の吸血鬼みたいに配下を従える能力の替わりに戦闘力を向上させる仕様のようだ。大輝の傍らに有りし剣にも似た迫力が感じられる

 

そしてそのエルフは既に侵入者の気配には勘付いている様で既に弓に矢を番えて大輝/定に一矢を撃ち放ってきた

 

 

ガギンッ!

 

 

しかし『虎徹』としての特性を付与された定の一振りで矢は弾き飛ばされて真ん中から折れ砕けて散る

 

生半可なDランクカード、いや下手なCランクカードでもあの一閃一射で即撃ち殺されてロストしていただろう。しかしこの贋作妖刀()はそんじょそこらの生半可なDランクカードでない事はご存知だろう

 

そしてこの妖精(エルフ)もすかさず『それ』に気付いた様だ。少なくともオーク二体と狗は大した敵ではない……が、即座に送還されて消えた。替わりに巨大な壁の化け物や人型の炎、そして卑猥な怪物が替わりに現れて陣形を組んでくる

 

唯一、今のエルフでも普通に倒せそうな小人も『壁の化け物』に護られている

 

自身の同族と思わしき『猪面の戦士』も練りに練り上げられた強さが見ただけで分かってしまう、壁の化け物はかなり時間を掛ければ倒せなくはないだろうがそれまで他の連中が黙ってはいないだろう

 

『卑猥な怪物』は挑む事すら論外だ

 

今のエルフにとって唯一あり得る勝ち筋は……やはり『マスターと思わしき戦士』を一騎打ちに持ち込んで討つことだけだろう

 

そう短い時間で判断したエルフは即座に邪魔な弓も矢筒も捨てて『敵たるマスター(大輝)』に細剣を抜き放ち挑みかかる

 

しかし……皆様は忘れてはいないだろうか?我らが主人公である佐藤大輝という男は戦士と言うよりはむしろ

 

 

『狩人』

 

 

だという現実を

 

大輝に向かう道筋には既に人型の炎()が見えにくい人魂を配置して簡易地雷源を既に設置していた

 

 

『……くうっ!』

 

 

間一髪でその罠から逃れて跳躍に成功したエルフだったが……彼女の命運は其処で尽きた

 

 

ドシュッ!!

 

 

『先の返礼』だと剣が射った矢がエルフの土手っ腹に命中する、そして崩れ落ちるエルフ

 

 

『……っ、あ嗚呼ッ!!』

 

 

大ダメージに苦咽を漏らしながらも取り落とした細剣にも構わず辛うじて立ち上がって大輝/定を睨みながら隠し持っていた短剣(ダガー)を抜き放ちまた挑む

 

しかし……

 

 

『申し訳ございませんが、主様はお忙しいのでお引き取りを』

 

 

あの卑猥な怪物()が既に彼女の背後に回り込んでいた。そしてその質量を以てエルフはあっさりと討ち滅ぼされて終わった

 

 

そして……彼女が居た辺りを見れば

 

 

一枚のカードが其処にあった

 

大輝が珍しくやった『賭け』は見事に成功した様だ。これで剣の嫁取りは大成功以上の結末になるだろう

 

 

次回に続く

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