大輝と二体のファーストコンタクトはそれなり以上に上手く行った……筈だ
基本的にコミュ力のある方ではない大輝ではあるが、一応はちゃんと冒険者私塾で修行を積んでそれなり以上の知識はある
そしてこの二体……オークは一応会話能力はあるが基本的に鳴き声の方が上げやすい喉になっているので会話能力にはあまり期待出来ない。ブラウニーの方はそもそも会話能力が無いので彼らとコミュニケーションを取る為にはジェスチャー頼るかハンドサインを決めておく方が良いだろう
ブラウニーは普通に筆談は出来る……但しどの国で出た個体でも英語と発生国の言語に限る、という注意書きが付くが兎に角出来る。オークだと普通の個体では出来ない……が、大輝のオークは『知性強化持ち』なのである程度の読み書きは最初から出来るらしい
『……おデ、ニポン、ゴデよみ゛ガギで、キまずゾマ゛ス……た゛ァ』
本来ならもっと短い音節……数事の単語を絞り出すのがせいぜいのオークの喉でこれだけ会話出来る彼はやはり『オークという種族としては』非常に賢い存在らしい
しかし、それでもオークという種族に人間の言葉を話させるのはかなりキツいものがある様だ、喉にクるものがあるらしい。オークの上位互換であるボアオークならば今のオークよりも流暢に会話が出来るらしいがそこまで強化するのは結構な時間が掛かる筈だ……ボアオーク一枚で普通のオーク八枚分の値段がするし
ちなみに……どの国のどんな国籍のカードだろうと基本的にありとあらゆる言語を理解出来るし(会話能力があるなら)会話は出来る。それなり以上の格を持つカード、だいたいCランクにもなれば世界中あらゆる言語の読みは出来るらしい
『書く』のは『権能』の範囲らしいとも言われているが、それはあまり冒険者には関係の無い話だろう……少なくとも今の処は
大輝はなるべくオークに無理に会話はさせない様に配慮しながらお互いに出来る事や出来ない事を擦り合わせてゆく
基本的にオークはあまり器用ではない為スリングショットは使えないものと判断するべきだしスタンロッドも振り回す程度なら兎も角電撃を発生させるボタンを押すと『怪力』が仇になってボタンを壊しかねないし振るううちに早く壊れそうだからやはりあまり向いた武器ではないらしい
確か……有名なダンジョンチューバーの、様々なカードの性質解説で著名なチョーカキンが言っていたオークに纏わる話にもそんな内容が有った筈だ。オークみたいな不器用な力自慢には最低限でも迷宮製の武具型魔道具である『凡庸シリーズ』を与えておく事を強く勧めていた
今はオークが最初から持っている大鉈……所謂『初期装備』でやりくりしてゆく必要がある。それほど強い武器では無いが武具型魔道具と違って壊れても時間経過で元に戻っているのが強みだろう
魔道具で強化勢はだいたいガチ勢であり、そのガチ勢の中でも武具型魔道具はコストが嵩むから使いたくないという派閥も有りはするがその辺りは人それぞれである
傾向的に言えば……所謂『装備化使い』と呼ばれる者達が魔道具強化派になりやすいらしい、自分の身体すら使った戦い方が出来る者達だと魔道具による強化の恩恵を身体で理解出来る様だ
大輝だって有るなら魔道具は欲しい、基本的に凡庸シリーズやその完全上位互換の無銘シリーズは剣か槍、刀ばかりで他の武具は割と珍しいから今回残念ながら斧は見つからなかった……斧は割とマイナー武器なので割と安く買える、凡庸シリーズなら偶にワゴンセールに来る事だってあるぐらいだが今回は残念ながら運が向かなかった様だ
俗に『プロフェッサー・スタイル』と呼ばれる傾向のプロは今の大輝では先ず手が出せない高価な無銘シリーズをガンガン使い潰して高難易度迷宮を踏破攻略してゆくらしい。無銘シリーズは一番標準的な長剣や刀型でもオーク二枚ぐらいの値段で取り引きされる代物だ……今の大輝ならそんな無理をせずに新しい奨学カードの一枚でも手に入れる事を目標に動いた方が余程建設的である
大輝が用意した様なスタンバトンやスタッフスリングを使いたいなら最初はホブゴブリンみたいな器用貧乏……いや汎用型のカードを使うべきである
オークはその頑丈さと怪力のおかげで基本戦闘力はDランク最弱クラスではあるが、その分戦闘特化な仕様のおかげで素で多少の戦闘力差を覆せるし、頑丈なのである程度の無茶が効く、それに何より『ドロップする絶対数のデカさ』のおかげで供給数も莫大かつ安価である。故に『新人冒険者の友(共)』と呼ばれるのだ。故に大輝もこのカードを最初に選んだ
そして……最初は先ずオークを前衛にブラウニーにはスタッフスリングや状態異常魔法で支援。大輝は足手纏いにならない様になるべく敵を回避して進む、である
今の大輝がスタンバトンなぞ持ってもあまり役には立たない、むしろ大輝へのダメージはカード達が肩代わりしなくてはならないから余程のことが無い限りは逃げてダメージを受けない事が貢献になるだろう
その為スタンバトンはブラウニーに渡して殆ど丸腰になっておいた。下手に得物があると無駄に戦う事になりかねない。中学生にしては非常に大柄な大輝よりもあの小柄なブラウニーの方が力が強いぐらいだし
大輝が前線に出る為には最低限装備化カードを入手してから……話は先ずそれからだろう
まぁ……そんな一時間そこらのブリーフィングの後に漸く迷宮攻略である
今朝一番に迷宮に入り、それから三時間……探索は順調に出来ていた
大輝は最初からこの迷宮のマップや出現モンスターのマップや出現モンスターのデータをギルドから買い取って持っているし何ならちゃんと紙媒体に簡単にではあるが写本して暗記すらしている
途中に存在する採取する価値のある薬草などを採取したり幾らか得た魔石をオークやブラウニーに振る舞ったりしながら初心者にしては非常に良い滑り出しを見せていた
『ギャン!』
これで何匹目かはもう忘れたが、ブラウニーのスリングショットでこの迷宮に良く出るワイルドウルフをまた討伐出来た
ワイルドウルフはFランク迷宮のモンスターの中でも非常に下位に存在する要は雑魚モンスターである。大輝でもスタンバトン辺りを装備すれば充分倒せる程度だ……ある程度は確実にするだろう怪我を度外視すれば、だが
今回のワイルドウルフは少し幸運な事にカードを落としてくれた様だ……これで四枚目である
【種族】ワイルドウルフ
【戦闘力】15
【先天技能】
・集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正
【後天技能】
・鋭敏嗅覚
Fランクでも弱い分類のワイルドウルフにしては珍しく『後天技能持ち』らしい。通常のFランクモンスターが後天技能を持っている確率はだいたい半々程度であり、後天技能持ちのFランクはギルドも少しだけ高価に引き取ってくれる
まぁ……せいぜい千円が千二百円ぐらいに値上げするだけなのだが
大輝もFランクカード……それも弱い分類なぞにはあまり期待などしてはいない。そのカードをタクティカルベストのポケット、近年に作られたタクティカルベストや野戦服には必ず一つは存在するカード用のそれに無造作に詰め込んで道行きを急ぐ
この時の大輝は知る由も無いが……このありふれた、どうでも良い筈のカードこそ大輝の生涯を共に戦う『祝』とのファーストコンタクトだった
この迷宮はFランク5階層で森林型、出るモンスターもワイルドウルフ、スケルトン、ゴブリン、バイパー、チョンチョンが主で稀な当たり枠にフェアリーが出るタイプの迷宮だ
フェアリーはFランクモンスターの中では間違いなく人気カードの一枚である。気休め程度ではあるが回復魔法が使えるカードであり、非常に小さいが見目麗しい女の子カードでもある……半々で男だけど
見つけて使うなり売って小遣い稼ぎするなり様々な利益のあるモンスターであるが……この迷宮は『不人気迷宮』である。さぁ何故だろう?
一番の答えは……この迷宮には幾つか厄介なモンスターが出るから、である
先ず、Fランクモンスターでは少々珍しい飛行型モンスターであるチョンチョンの存在だ。このモンスターは土気色の肌をして耳が羽根みたいに肥大した人間の生首……そんな不気味なモンスターである
しかも戦闘力がFランクモンスターとしては高い分類にあるのでダイレクトアタックの危険性が非常に高いのである……が、オークに
そしてもう一つ……バイパーの存在だ。バイパーというのは読んで字の如く毒蛇であり、普通に人間が噛まれれば毒にやられるだろう
まぁ……最低限一枚でもカードを召喚していれば防げる被害ではあるし、仮に無い状態で噛まれても汎用ローポーションなり初等回復魔法さえあれば即全快する程度ではあるが『怖いものは怖い』という事だ
ついでに言うなら森林型迷宮という辺りが一番の不人気迷宮である所以だろう。割と暗めで足場が悪いしちゃんと装備を整えないと薮などの存在が不快なのがエンジョイ勢には嫌がられる。ちゃんとした戦闘服は暑いし着心地が良い訳でも無いのでエンジョイ勢らはまず慣れる前でもない限りはあまり着たがらないものであり、こういう足場の宜しくない迷宮ではちゃんとしたブーツが必須でそのブーツはやはり着心地がスニーカー辺りと比べればやはり宜しくない
ついでに言うなら……大半のエンジョイ勢らはカードの負傷などにあまり頓着しない。そういうカードへの無配慮が重なればカード達は不満を溜めてゆく。そしてそれは何時か必ず何らかのツケとなって彼らに帰ってくるだろう、稀にこの迷宮に遊びで入ったエンジョイ勢らのカードに何らかの反逆系マイナススキルが付く事が割と多い事も理由の一つだろう
状況を把握出来る者やガチ勢からすれば失笑ものの話ではあるが
後一つ、この迷宮が不人気迷宮たる所以もあるがその話はボス部屋に辿り着いてからにしよう
そんな理由で不人気迷宮と評価されるこの迷宮で大輝は自身の大事な資産にして手足であるオークとブラウニーを鍛えながら迷宮の最奥を目指す
その日の昼下がり……凡そ午後二時辺りの時刻に大輝達はボス部屋直前の安全地帯で対ボスミーティングを行なっていた
この迷宮のボスモンスターは割とよくあるランダムタイプであり、どんなモンスターが出るかはわからないのが少し怖い……運が良ければコボルトやブラウニーみたいな直接戦闘では弱いモンスターで済むだろう、少し運が悪いとロックゴーレムやヘルハウンドにワイルドベアみたいな強いモンスターやゾンビみたいな不快な奴、かなり悪ければ『Eランクのミサイル』こと鬼火シリーズの何れか、または『Eランク最悪の嫌われ者』ことグレムリンが出る可能性だってあり得る……『イレギュラー』という最低最悪もあるがそれだけは世界中全ての迷宮に言える事だ
これが、この迷宮が不人気迷宮である最後の理由だ
大輝のオーク&ブラウニーは戦闘力が10は上昇している……流石に技能は身に付かない、普通なら数ヶ月は掛かるらしいからそれが当然だろう
彼らのコンディションを維持する為にドロップした魔石は半分ぐらい彼らに与えているので士気は高い……筈だ
魔石を与え、フェアリー見習い回復魔法である程度の疲労は抜けている。フェアリー達にもちゃんと分け前の魔石は与えているので彼らも機嫌は良い
一応、通常のEランクモンスターに対処するには充分な『切り札』なら幾らか準備はしているし両親がくれた『最後の切り札』だってある
その『切り札』を幾つかと万が一の際に備えて今日の収穫である魔石を主力のオークに預けて安全策もバッチリ。さぁ、ボス攻略のお時間だ!
この作品のタイトル改名……やる?
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『リア充でも明日を求めて良いですか?』
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『モブでもリア充でも明日は欲しい』
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変更無し