本当に一般的なモブだって輝きたい   作:血涙鬼・彼岸

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第四話 傭兵冒険者 (改)

 

さて、何話にも分けて散々煽ったりはした大輝の所属勧誘問題だが……大輝自身の意思が最優先されて『大輝は独立派閥』だと周知が済んだ

 

他の独立派や大輝に多少なりとも恩を売りたい者、最低限大輝の独占を阻止したい者達の様々な思惑はあれど大輝が独立派ならば彼らにとって一方的な損にはならない……そもそも無理矢理な勧誘で大輝を所属させてもそれは単なる『内に敵を造るだけ』である。しかもひたすら優秀かつ敵意に満ち満ちた奴を、だ

 

此処で少し冒険者というもの性質や成り立ちについて少し焦点を当ててみよう

 

この時代の冒険者というものは……有り体に言えば1920年代の世界大恐慌が始まる前の繁栄と狂奔の押し寄せる右肩上がりの好景気、所謂バブル期みたいなものであり、また人類にとって新しい未知のフロンティアとも言える迷宮が存在する

 

まるでその時代の様に冒険というものが多いに流行し、非常に大多数の『エンジョイ勢』とも呼ばれるにわか冒険家や『ガチ勢』と呼ばれる一握りの真の冒険家が誕生した正に大冒険者時代である

 

そんな訳で、学生冒険者……まぁほぼ全てがエンジョイ勢ばかりではあるが、それでも学生冒険者人口は増すばかりのご時世である

 

まぁ……中にはエンジョイ勢にさえなれずに最初の冒険で心折れる者や失敗して破産したり命を落とす者も居たりする。ごく偶にだが一度破産しても必死に再起して後に優れた冒険者に昇華したケースも有りはするが

 

そして……分母が拡大すれば分子に当たるガチ勢の数もまた増える。だいたいのガチ勢でも冒険者はソロは出来てもDランク迷宮迄であり、普通ならDランク迷宮に至る頃にはある程度チームを編成するか、最低でもその編成を考慮するのが普通である

 

さて……学生のガチ勢冒険者という存在は基本的にかなり希少な存在である事は今までで散々説明した筈だ。その中でも権利を持ち寄ってCランク迷宮に入場出来るレベルの学生冒険者という存在は正に上澄み中の上澄みである

 

しかし……忘れてはいけないのが、彼らは『学生冒険者である』という事である

 

学生冒険者という存在は基本的に冒険者稼業に精を出していれば良い……という訳にはいかない。学生としての制約である勉強や行事に保護者との折り合い、大人の冒険者でも抱える人間関係など様々な厄介事を抱えて活動している

 

その為、学生冒険者らはどんなに優れたチームを形成出来ていたとしても私用……家庭や学業に纏わる事情で迷宮攻略に足並みを揃える事に失敗しやすい

 

それでなくともCランク迷宮入場資格を揃えるのは学生……いや、社会人冒険者でも非常に難しい難事である。そもそも三つ星冒険者は冒険者としては間違いなく上澄みそのものであり、一応は『努力次第で誰にでもなれる階級』ではあるが間違いなく高い評価を得られる勲章とも言える資格だ

 

前にも言ったが、三つ星冒険者資格があれば大概の会社に高評価の鳴り物入りで入社出来るだろう……ダンジョンアンチ系統の会社でさえなければ、だが

 

そして……三つ星資格に加えて何か一つでもいいからプロ資格要項を埋められる『何か』があるなら更にその会社では重宝されるだろう。会社次第では準プロ冒険者として大きな権限を与えられたりプロ資格獲得の為の手厚い協力やバックアップを得られたりといった恩恵を得られたりもする

 

勿論、その対価としてその社に尽くし難しい依頼を遂行したりする必要があるしアンゴルモア時には所属する会社を生命を賭けて……時には捨てる覚悟で護る必要がある。流石にプロ冒険者ほどの責任はないがそれでも準プロ冒険者としての責任は付き纏うだろう

 

ある意味その権利と責任を背負う者の極みが自衛官だが、この世界の自衛官は間違いなく『聖職者』としか言いようが無いだろう

 

ガチ勢の冒険者にとっては目標ではなく中間指標ではあるが、最低限三つ星に至れば名乗れる俗称がある

 

 

傭兵

 

 

法に記載されている訳では無いガチ勢の伝統……いや不文理みたいなものではあるが、冒険者チームの面子が足りない、難易度の高い迷宮攻略の人手が足りない、◯◯の資格持ちが足りない、冒険者としての家庭教師として雇用したい等々の隙間需要を満たす企業や国家の紐付きにはなりたくないスタンスのソロ系冒険者がソロをなるべく維持する為にやる稼業である

 

迷宮攻略系依頼ならちゃんと報酬頭割り、家庭教師など……この辺りは要一定以上のリンク能力だが、月賦払い制など様々な条件で他者から雇われて活躍する事もあるタイプの冒険者だ

 

『ちゃんとした傭兵』と名乗りたいなら最低限三つ星資格の獲得と何らかのプロ資格要項獲得、最低限四枚はちゃんと戦力になるCランクカード持ちである事とある程度のリンク能力持ちである事が『ちゃんとした傭兵冒険者』としての最低限だろう

 

大輝の場合は……リンク能力が少々怪しい範囲だが、ちゃんとした傭兵冒険者を名乗る資格がある範囲だと言える。新人傭兵としてなら間違いなく鳴り物入りデビュー出来るだろう

 

そして美城学園における『学内傭兵』とは……一つ星の新人でも自称できるものではある。名乗るだけなら只であり、なんらかの一芸持ちやC、Bランクカードや異空間カードなどの優秀なカード持ちなどが一つ星でもそう名乗って各パーティーを渡り歩いているものだ

 

学内限定掲示板にアクセスしたり其処の常駐ならばまぁ『名無しの傭兵』だと名乗れるだろう……冒険者ライセンスが無くとも

 

そして学内傭兵の中にはエンプーサやそれを眷属召喚出来るモルモーなどを持って『そういうサービス』を提供する所謂『女衒傭兵』とかも居たりはするが、そういうのは学内の……女の子カードを買ったりなぞ出来ない低ランクエンジョイ勢かライセンスだけは持っている丘冒険者ぐらいしか相手にしないアングラ案件だからあまり話には登らないだろう。ある意味やる気に無い者達のガス抜きになってはいる為学園も彼らが何かやらかしたり阿漕をしなければ黙認の姿勢を崩さない筈だ

 

この日本一冒険者活動が活発な学園内で『ちゃんとした傭兵稼業』がしたいなら最低限二つ星、出来ればちゃんと戦力になるCランクカード一枚は欲しいだろう

 

三つ星資格持ちは美城学園でも間違いなく希少なので基本的に引く手数多であり、もしも一つでもプロ資格要項獲得が出来ているならそれこそ勧誘の雨あられ沙汰だろう

 

大輝達の年代は美城学園でも『過去最高峰の当たり年』であり、勘太郎を筆頭にこの年代ならもしかすれば……もしかすると『美城学園でも初の学生プロ冒険者の誕生』があるかもしれないだろう

 

しかし……その勘太郎でも迷宮士資格は非常に難しいだろう。あれはかなり長い時間非常に難しい勉強が必要かつ試験を受ける為に複雑かつ煩雑な書類申請が必要な超難関国家試験故に

 

それこそ学生冒険者では地頭が非常に良い者でも学校成績を犠牲にしたり冒険者活動をすっぱり絶って専念しなくてはまともに受験出来ない代物である

 

勘太郎達が高校卒業迄に迷宮士資格獲得が出来る可能性は割と低い……ハジメ辺りならば芽はあるかも知れないが彼は多忙過ぎてまず不可能だろう

 

あの資格持ちは中等部では間違いなく大輝一人だけ、高等部でも両手の指で数えられる程度にしか居ない。大学ならば薄い名簿が出来る範囲で……といった範囲ぐらいしか居ない

 

大輝がもし、仮にオーク一枚から始めた最初の状態でも学内傭兵デビューしていたら間違いなく超絶売れっ子だっただろう。外でもランクの低いプロチームから偶にオファーが来る事だってあり得る程だ……オーク一枚しか戦力の無い子供をCランク迷宮に引き込むのはプロ冒険者としては恥以外の何物でも無いだろう、やるならスカウト前提になるだろうが

 

そして……何が言いたいかと言うと、大輝が『傭兵』として雇用出来るならそれはそれで非常にありがたい話だという事だ

 

大輝は確かに専属契約出来れば自分達のチームに莫大な貢献をしてくれるだろう。現状での資格や実力、そして冒険者歴半年未満でこれだという伸び代を考えれば此処から何処まで伸びるかわからない程だ

 

しかし……『大輝の独占』は周囲から激しい嫉妬と下手すれば非難を呼ぶだろう。大輝が自ら所属してくれるならばまだしも勧誘で無理矢理加入は周囲が自重をかなぐり捨てて大乱闘スマッシュアドベンチャラーズ沙汰である

 

大輝の存在はある意味強烈な劇薬だとも言える……下手をすれば沢山の敵を作ってしまうと言う点に於いては、である

 

さて……その莫大な旨みとその旨みから来る危険性は天秤に掛けても誰もが大輝の存在を求めるだろう。特に『迷宮士資格持ち』に伝手の無い準プロ級チームならば

 

そして其処でその準プロ級チームでも僅かながらCランク迷宮に入れるチャンスが増える『独立傭兵:佐藤大輝』の存在だ

 

社会人のガチ勢や傭兵ならば割と『迷宮士資格持ち』は多い。年齢的にリンク能力の伸び代が無かったり才能に恵まれ無かったりした三つ星達が諦められずに努力して習得した結果として……少なくとも迷宮士資格は理論上ならば努力すれば誰にでも出来るプロ資格要項の一つだから所持しているセミプロは割と居る

 

逆に学生冒険者の場合は……普通の少年少女が大人でも過酷な座学を最低限でも五百時間、自習だと倍以上に耐えられるだろうか?そんな事をするぐらいならバイトをするなり親にねだるなりして最低限必須の準備を整えてから冒険者デビューする方が早いし楽しいと感じるだろう

 

未成年ならば、才能さえ有ればリンク能力は高い伸び代があるだろう。その才能さえ活かし切れればカード入手や昇格試験なら割と容易くいけるだろう……大輝のクラスメイトの四人や他クラスの腕利き達みたいに

 

しかし、学生冒険者として優秀な者達はあまり座学……迷宮士資格試験で一度はコケる、非常に複雑かつ面倒なこの試験の厭らしさに学生プロ冒険者という存在は滅多に現れない仕様になっている

 

むしろそういう才能ある者達は……迷宮士資格以前に確定申告でコケて地獄を見るものだ、そしてその勉強でヒィヒィ言ったり税理士を雇用したりと学習してゆく

 

この確定申告の勉強までが普通の学生冒険者がやる勉強……絶対必要なものであり、それ以上に複雑怪奇で底意地の悪い迷宮士資格試験なぞ聞いただけで震えが走ると忌避する学生冒険者は数多い

 

美城学園には冒険者用の確定申告対策講座というものもほぼ無償であるし、勿論街には迷宮士資格講座だって存在する……ちゃんとした迷宮士資格持ちにしか出来ない講座なので少々割高ではあるが

 

そんなこんなで大輝の存在は兎に角貴重という訳である

 

次の連休では勘太郎やハジメ達とCランク迷宮行きが決まっているのを説明し、中等部高等部の他の『迷宮士資格持ち待ち』達が大輝の次の予約の為に抽選会を始めたりしている光景が見える

 

十数組の学生冒険者チームが神妙な表情で阿弥陀籤に棒を数本ずつ継ぎ足してゆく……最後に大輝が『当たり』と追加の棒を書いて棒の先だけを見せて残りを隠す

 

悲喜こもごも祈る様に願う様に彼らは自身の名前を棒の先に記載する……その結末は勿論、崩れ落ちる大多数と一組のはしゃぐ勝者という構図である

 

彼らの詳細はさておき……ひとまず大輝が抱えていた問題に決着は付いた。後は大輝自身の武者修行を考えるだけだ。大輝自身も今のままで決して満足なぞする気はないしあわよくばプロ資格だって獲得したいという野心だってある

 

そもそもそういう向上心が無ければ『中学生迷宮士』になぞ先ず成れるものではない。あれの難易度は何度も繰り返し言った筈だ

 

大輝のこの『日本史上最年少の迷宮士資格獲得者』という実績はギルド発行月刊誌である『冒険月報』の特集に載る事が確定している……既に周囲にばれているから記載許可が降りたのだ

 

前に大輝が発見した『足洗屋敷の有効活用方法』と一緒に特集が組まれ記載される十月号の表紙は大輝になる事が確定している

 

『冒険月報』とは……ギルドが発行する月間雑誌であり、冒険者に必要な最新情報やコラム、イベント告知や懸賞制度など様々な企画を広報する雑誌である

 

ちなみに、嘗て大輝が得た『高額Dランクカード半額券』や間話の『奨学懸賞キャンペーン』みたいな懸賞は此処から来ている

 

大輝もこれから数日以内にその表紙の為の撮影依頼が有ったりする……一応『こういう仕事』にも慣れた姫子が同伴してくれるからあまり不安は無いが、まぁ畑違いの慣れない仕事故に気分はノらない

 

しかし、それでも大輝はちゃんとこの仕事に挑む気概はある。大輝の師匠であるメアリーさんや高弟である高和、金長さんに『首刈り兎』だってこの仕事を達成しているのだから

 

それに……大輝の目標を考えるならこの仕事は大いにプラスに働きもする。この功績は大輝が作るチームの勧誘の一助にもなるだろうし

 

そして今、もう夜の八時頃……大輝は家路ではなくそろそろ習い事の終わる頃合いの姫子の元へ急ぐ。普段なら昼食を一緒に食べたり放課後は一緒に帰ったり習い事に送り出したりしていたが今日はご覧の有り様だ

 

そろそろ姫子成分が枯渇してくる……真剣な願いを以て大輝を求める彼らには悪いがそれを内心邪魔だとか鬱陶しいと思うのは大輝自身の切なる願いに触れてしまっている事から我慢して頂きたい。勿論、その内心は一切おくびにも出さないが

 

送り迎えの帰路……という名の短いデートはこの厄介事をひとまず完結させる事に成功した大輝へのささやかな報酬だろう。姫子の唇の感触と身体の温かさと柔らかさも含めて

 

 

さて……様々な紆余曲折を以て大輝の表紙撮影、結果姫子付きは終わり次は大輝と四人の仲間達による男五人の連休Cランク迷宮攻略戦が始まる

 

はてさて、大輝達はこの冒険で一体何を掴むか?それは未だわからないがまぁ悪い様にはならないだろう

 

 

 

【Tips】傭兵

 

冒険者は基本的に上に行けば行くほどチームを組んで迷宮攻略に挑む様になる。特にCランク迷宮からは今までとは全く別の難易度に変化すると覚悟が必要になる

 

その為、Cランク迷宮に挑む為の最低限の資格として『プロ資格』が存在する。大概のプロ冒険者チームはチーム全員でその資格を継ぎ接ぎして一人分のプロ資格を造り出しての攻略が一般的である

 

そして……『プロ資格を継ぎ接ぎで捻出する』という事は、それぞれのうち誰かが抜けたりすればプロ活動は出来なくなるという事は分かるだろう。もしも資格条件を全て埋められなければ……何れ必ずプロチームとしての資格は剥奪されてしまう

 

それにプロチームとしての義務で国から指定された高難易度Cランク迷宮を攻略しなくてはならないのにその迷宮との相性が悪い場合など……様々なトラブルがプロ級からは発生する

 

そんな時に役立つのが『傭兵冒険者』である。緊急時の戦力増強やリンク能力講習など様々な目的で彼らは雇用されるし中にはプロ資格持ちも存在する。要は隙間産業ではあるが制度上決してなくならず需要のある冒険者稼業の一形態が傭兵である

 

ちなみに学生冒険者のメッカである美城学園にもこの傭兵システムに似て非なる傭兵システムが発生している

 

日本……いや世界的に見ても一番学生冒険者の活動が盛んな場所故に起きた風習や不文律の一種だと言われているようだ

 

傭兵として活動するなら最低限冒険者ライセンスと一枚のDランクカードが必須だが、まぁこのライン迄は普通の野良パーティー集めの延長みたいなものだ

 

少なくとも『ちゃんとした学生傭兵』を名乗るなら何らかの特技を持ったカードを持っている事が本当の必要条件になるだろう。鑑定や収納スキル、極地戦特化カード、実戦的な回復役持ち、何らかのCランクカード持ち……中には夢魔系統や娼婦スキル持ちを扱う『学生女衒』などの存在もある。しかし女衒はかなりアングラな不良生徒用コンテンツと言うか実質犯罪行為なので表向きには『存在しない』ものとして扱われている

 

勿論、学園側ではその『学生女衒』や『顧客』の存在はマークされているのでもしも彼らが何か問題を起こせば必ず厳しい制裁を女衒行為分を含めて執行するだろう。この女衒行為は彼らのガス抜きとして一応は黙認……いや目こぼししているだけの話である

 

そして学生傭兵の上澄みは必ず三つ星資格を持ち何らかのプロ資格条件を満たしたCランクカード複数持ちかつリンク能力者という条件を満たした者ばかりとなっている

 

 

【Tips】冒険月報

 

ギルドが発行する月間広報雑誌。冒険者にとって有益な最新情報やイベント、コラムなどを掲載している

 

新人冒険者の為に様々な懸賞を用意しているのが最大の特徴であり、その懸賞のおかげで貧しくとも冒険者デビュー出来た学生は結構な数存在している

 

この雑誌の表紙は新しいプロ冒険者や何らかの大きな功績を立てて特集コラムに出るアマチュア冒険者、親冒険者業界のイメージガールなどが行っている

 

創刊号であるメアリーさん表紙はある意味カルト的な人気があり、非常に著名なREIKAと高垣楓の表紙回は非常に激しいプレミアが付いている。ちなみに大輝(&姫子)の回は姫子の容姿だけが激しく取り沙汰されていたが……ある意味血は争えないもので『兄貴』な人々やボディビルダーからは何気に高い評価を得てはいた

 

内容的には……足洗屋敷のコラムはまぁ面白い内容ではあったが再現は難しい上に手間が面倒過ぎる為再現者は殆ど現れなかった。むしろ大輝の『最年少迷宮士資格獲得』がプロ冒険者チームの間で語り草になった事の方が取り沙汰されていた

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