美城学園内Cランク迷宮……俗に廃坑型と呼ばれる文字通り廃坑みたいな造形の迷宮である
この廃坑はCランクにもなると普通の廃坑と違い、だいたい高さ十五米、幅二十米のガ◯ダムやマジ◯ガーが入れる程度には非常に広大なサイズになっている……Cランクモンスターからは巨大なモンスターも多々存在するからこのCランクの迷宮ではよくあるサイズだ
FやEランクの迷宮では巨体系統は使用に強い制約がかかる……純粋なサイズ問題だ。考えてみて欲しい、通常の洞窟や屋内で全長十八米のマジ◯ガーZを操縦出来るか?と
巨体なカードはそれが制約である……時にはF、Eランク迷宮でも巨体対応型迷宮とか存在もするが、それは巨大化したボスモンスターが固有ボスになった迷宮か何かである
この美城学園内Cランク迷宮はだいたい三十三層のCランク迷宮としては非常に狭く浅い造りになっていて、特殊効果もメインの機械破壊以外には大した危険性の無い正に新米向け迷宮とでも言うべき代物である。複数回廊すら無い非常に浅い造りになっているので攻略はCランク迷宮の中でも世界有数に楽なものらしい。しかもボスはBランクでも対処し易い分類の猪笹王が出易い辺りも比較的イージーさに拍車をかける
ある意味ではこの迷宮はシークレットダンジョンだとも言えるだろう、攻略が非常に楽で廃坑故に結構な金属資源がある上に一部の安全地帯には温泉すら存在する
しかし……それ以外は普通のCランク迷宮故に自衛隊的には旨味が全く無いのでシークレットダンジョンとは認定されずに美城学園に引き渡される事となった。試験用迷宮としても簡単過ぎて使えない辺りも一因だろう
故に……その難易度の低さ故に準シークレットダンジョン扱いなこのCランク迷宮は美城学園の名物であり、この迷宮の収穫物で美城学園の生徒達は装備やカード、資金を整えて普通の学生冒険者とは隔絶した強さを発揮する
良く出るCランクモンスターもグレンデルやケンタウロスといった優秀かつ比較的安価な優良カードになるモンスターが多いし、偶に面白いモンスターが出る事だってある。勘太郎も一度サキュバスに遭遇した事があるらしいし、比較的出易いドワーフの女の子だって居る
サキュバス……という言葉と女の子カードという事で男性冒険者には欠かせないとある話題を一つ語ろう
女の子カードの中でも夢魔の類いは非常に高価な部類だというのは前にも何度か話したが、それにはちゃんと『容姿』以外にも理由がある
夢魔は性的な事全般が食事みたいなものだから、である
娼婦スキルや淫らな心持ちですら無い普通の女の子カードを夢魔と同じ扱い……要は複数の男の性欲処理なぞさせたらその女の子カードの性質次第ではあるがあっという間に精神を病ませて廃カードになってしまう。それこそその手の薄い本の様な事を現実にやった結末の様な惨状である……まぁ、偶に下手な夢魔よりも慣れるカードもまた存在するものだが
冒険者の中にはそれを意図して……要は『わざと』そういう虐待行為を行う者も居るらしい。その理由は様々ではあるが基本的にどれもこれも胸糞案件である事だけは確かである
偶に札商やギルドが取り扱う『女の子系統の復活用瑕疵カードやガチャの景品』というものには違法娼館や性質の悪いチームなどから流れたり稀に摘発された結果来た。そんな閉ざされた心を筆頭に男性恐怖症や精神崩壊などの様々なマイナススキルから見てこういう経緯からというのも割と多い……と、大輝は様々な知己から聞いた事があるし、美城学園でも幾つかのチームが嘗て運良く見つけたドワーフの女の子カードを『壊してしまった』ケースが幾つか存在する
……ギルドで販売されているカードパックの『当たり』というものも実際にはこういう背景から来たカードも多々存在する。零落した存在や幼体といった現状解除不可能ないわゆるうんこっこカードと瑕疵無しの数余りカードが三分の一づつという具合らしいが
故に美城学園の内々の……男同士の不文律の一つに『部が共有する女の子カードは夢魔か娼婦スキル系統持ちに限定し、普通の女の子カードは必ず誰かが買うか直ぐに売るか』と決められているし、一部の部やチームの男子部員達には代々受け継がれて来たサキュバスやモルモーといった強い夢魔カードで『兄弟』として結束を固める風習すらある……らしい
要は……確かにカードに法的な人権は無いが、それでもカードにも人格はある。そのカードの性質に合わせた『使い方』を考えるのはマスターの仕事であり義務だという事だ
この学園迷宮の抱える問題は……この迷宮が余りにも簡単過ぎる為に美城学園の生徒達の実力は割と横這いになり易いという点だろう。事実、この学園の卒業生達の中でプロ資格を得た者達は必ず他所の難易度が高い迷宮に定期的に挑み続けた猛者達ばかりである
三つ星冒険者はかなり多くとも高等部在学中からの四つ星冒険者が未だ居ない美城学園……学園としても何時かは高等部からのプロ資格獲得者は悲願でもあるが、流石に無理はさせられない。無茶をして生徒が死んだり再起不能になったりすればどうなるか?ぐらいはまともな人間なら考えるだろう
いや、むしろプロ資格者誕生は『迷宮士資格の獲得』が一番のネックだろう。あの難関資格を中高生の地点で保有するのは時間が全く足りない
大輝以外の四人も間違いなく他所の更に過酷なCランク迷宮に挑む猛者の一員である……が、やはり間違いなく迷宮士資格試験にはかなりの時間と労力が必要なので高等部在学中にはプロ化は難しいと皆自覚している
だからこそ中等部で迷宮士資格を獲得した上に冒険者歴半年未満で三つ星冒険者に至った新種の猛者である佐藤大輝は美城学園やギルドや自衛隊、政府に企業など周辺各位でも密かに強く期待されている逸材であり、彼の動向は常に要チェックという状態になっている
兎にも角にも、ついさっきの『小魔闘技』で初陣白星を飾る事に成功したので運が良ければ猪笹王の入手も叶うかも知れないのはデカいだろう
大当たりなら猪笹王のカード、普通にあれは無銘の武具をドロップしてくれるし、レアドロップなら無銘の甲冑辺りがくるので戦士系統にはありがたい代物だ
……運が悪ければイレギュラーが発生するけど
此処はどれだけ貧弱でも曲がりなりにもCランク迷宮だ、この迷宮に出没するイレギュラーはBランク相応に強くなっているので生半可な事では全滅だってあり得る
実際この迷宮にも数えて二回イレギュラーが発生し、何人かの学生冒険者が命を落とした痛ましい記録がある……この迷宮に潜る際はその全てが完全に自己責任である事は念頭に入れて保護者各位も書類にその旨を記載しなくては入場は禁止されているが
だからこそ美城学園の学生冒険者達……特に学園内Cランク迷宮に潜る者達は自身のカードの育成や新戦力補強に貪欲なのである
そして……この超低難易度Cランク迷宮があるからこそ美城学園の奨学制度は豊かであり、出身が貧困家庭でも下手な金持ちより稼ぐ土台が成立しているのだ
この迷宮でもやはり過酷ではあるが、それでも間違いなく他所の同ランク迷宮よりは低難易度故に自由時間に制限のある学生冒険者達でもどうにか時間をやりくりすれば攻略は出来る……稼ぎたいならアリアドネーの糸が必須ではあるが
さてこの迷宮に入って試合終了からボス討伐権を獲得出来た大輝達一向は……五人総出でF、Eランク階層を即時踏破していた
大輝達は全員最低でも六枚はCランクカードがある。ちゃんとした地図だってあるし地図の読み方は五人全員ちゃんと熟知している……ちゃんとした冒険者私塾なら絶対にしっかり教えてくれる知識技術の一つだ。ちゃんとした冒険者私塾はある種のボーイスカウトみたいな側面もあり、冒険者技術、心得以外にもアンゴルモア被害でもちゃんと生活する為のアウトドア、サバイバル技術も教えてくれる
この世界のボーイスカウトも対災害技術を重点的に教えてくれるので昨今の評価も高まってはいる……冒険者技術、知識は専門外だが
冒険者になれる年齢に達していない冒険者志願な児童は最初はボーイスカウトに加入して……というルートも割と多い、それから横の伝手を辿って良い冒険者私塾に加入したりするのがアンゴルモアに脳や魂を焼かれたガチ勢希望児童の黄金パターンだ
最近では美城学園冒険者育成科に入学というパターンもあるが、近頃は倍率が鰻登りなので初等部から入らないと厳しくなっているという問題が発生している
大輝だけでなくハジメや勘太郎達も美城学園入学と私塾入塾の兼ね合わせというある意味学生冒険者エリート勢とでも言うべきスタイルで基礎を積み上げて現状に至っている……それでも大輝みたいなケースは史上初だしこれからデビュー予定の姫子は更なるレアケースそのものであるが
大輝達が各々召喚したカード達の中に幾つか特筆すべき存在が在るが……今はそのうちの一つについて語ろう
そのカードは『大輝デッキのワンポイント要員』でありEランクの一見非常に弱く頼りないカードである。宙に浮く一つ目の付いた破れ提灯であり、その破れ目から灯火が見える
その破れ提灯は『送り提灯』。本所七不思議の一つに数えられる怪異の一つであり、同じ本所七不思議の一つである送り拍子木という魔除けの魔道具の性能を向上させる能力を持った非常に稀少なカードの一枚である
どちらも先ず東京一円以外……少なくとも日本以外では決してドロップされない稀少カードかつ魔道具であり、海外からも常に購入要求が殺到し続ける人気カードである
……どちらも耐久性に難があるので使い過ぎには注意が必要であるが
偵察、罠探知部隊の中に大輝の剣を送り、そして送り拍子木を持たせ、その傍らに送り提灯を伴わせれば大輝達一行は安全にCランク階層に向かえるだろう
この迷宮は廃坑型だけあって非常に暗い……鉱山型なら松明やカンテラ辺りで灯りも有ろうが廃坑にそんなものはない。火の消えた松明なら少し探せば見つかる。一応それらには鬼火達に火を灯して貰う、一応は帰路を示す道標にはなるかも知れないから
さて……ならばどうこの薄ら寒く埃っぽい闇の中を対処するか?それは様々な手段があるが先ず一番簡単なものが闇視……暗視の上位互換魔法を使うことだがこれは中等支援魔法の一種なのでこのレベルの魔法が使えるカードは結構高くつくだろう
他にも闇視のポーションという代物もあるし一番安く手に入るが……せいぜい十二時間しか効かない上にカードの人数分必要だわ、一度カードに戻すと効き目が切れるわ、そもそも値段が一回分五万円と割とお高いわであまり実用性のある案ではない
魔道具に闇視能力を与えてくれるゴーグルもありはするが、一つ百万円というお値段であり、耐久性もそれほど高くはないという欠点もあるのであまり良いものではないのが難点だろう。こういう機械破壊系ダンジョンではマスター的に割と重宝する魔道具ではあるが
次にこれはマスター限定のプランではあるが、元から闇視能力のあるカードの視界をリンクで共有すること……マスターにリンク能力が必須ではあるがCランク迷宮に入るなら真面目に必須能力ではある。視界以前の問題で
そして……これは殆ど佐藤大輝だけが出来る反則技であるが、大輝の場合は自身の
他にも、大輝の主力の
しかし、『照明』に使うなら非常に優秀な一枚である。おかげで辺り一帯は割と明るくなった
眷属召喚などの所謂『トークンユニット』とかにまで闇視や暗視を使うのは流石に効率的とは言えない……この暗闇の世界はある意味では『眷属封じ』とも言える自然の特殊効果だろう。この迷宮にも稀に、いわゆる固定レアとして出る『目目連』を使うのが一般的ではあるが。まぁ目目連は不知火よりも更にピーキーな珍カードではあるがこの学園なら人気のある地域限定メジャーではあるが
ちなみに、大輝も目目連はワンポイント要員として欲しい。この迷宮での利便性だけでなく祝や燈とのシナジー的にも考えて
祝の眷属を強化すれば純粋な戦闘力の強化だけでなく偵察ドローンとしても良い強化が出来るし、燈の眷属強化は……爆発力の飛躍的向上が見込める。ついでにもう少し鍛えておけばボアオークにマイナーチェンジする予定のオーク三号&四号コンビも来るだろう
人型である眷属オークならば大輝の主力手札の一つである
マイナーチェンジと言えば……今の零落オーガをもう少しマシなカードにしてやらないと可哀想だと思っている、だから先ずはこの迷宮に良く出るちゃんとしたグレンデルの一枚でも欲しいとは思う
さて……Cランク迷宮というものは非常に広大かつ複雑なものだ。例えこの迷宮がCランク迷宮としては非常に浅く容易い造りだとしても
フロアイミテーターによる道塞ぎや地形ごと来る強烈な罠、迷宮の魔物そのものが仕掛けるランダムな罠……更には次階層を封じる面倒なギミックなど様々な妨害がある
しかし……それでも罠探知部隊の実力は確かなものでかなり早い行軍の中でもその精度は全く落ちもしない
大輝の今回出した手札は……剣&送り提灯の送り拍子木を使う魔除け役、蔵、祝の偵察、索敵役に燈という照明役、それと色々あってひと磨きしたい付喪神、零落オーガについ最近クラスチェンジに成功した清を出している
今までの清は衛生兵みたいなものであったが……クラスチェンジ後の清はむしろ万能選手だと言っても良いだろう
殴ってよし、魔法を使ってよし、頑丈で移動や逃走に長けたスキルだってある非常に優秀な助言者になったのだ
……強力なカード過ぎて唯一見つけたそのカードは零落持ちだけだったのが玉に瑕ではあるが
さて、そのカードの詳細は……
【種族】バーバヤガー
【戦闘力】515(零落した存在とクラスチェンジによる追加が相殺し合ったこうなった)
【先天技能】
・魔女ばあさん:魔女にして鬼婆である事を示す。怪力、頑丈、自己再生、中等魔法使い、氷結系高等攻撃魔法、氷結無効を内包する
・鳥脚の小屋:バーバヤガーの棲家である鳥脚の小屋が存在する異空間。非常に悪趣味なデザインだが住み心地は良い。魔女の工房としての能力もありポーションなどの作成能力もある
※:零落した存在により消失
・魔女の長臼:バーバヤガーの乗る長臼を表す。非常に速く音や気配を消して移動出来る。人攫いの逸話で一人だけなら一緒に連れて行ける
またその逸話上逃走、拉致行為に対して高い補正がかかる
気配遮断、無音行動を内包する
・善性への善き助言者:バーバヤガーは悪辣な魔女であるが、善き者には善き助言者としての一面を持つ。危機への警告や幸運が訪れるチャンスを教えてくれる……但し、そのアドバイスの精度はそのマスターとバーバヤガーの友好度次第である
【後天技能】
・零落した存在
・魔女のお節介(CHANGE!):基本的には妖精のお節介と変わりは無いらしいが詳細は不明。マスターへのサポート具合が良くなる……らしい?
・機織職人
・杖術
・魔力消費軽減
・魔力回復
・高等回復魔法
・高等家事魔法
・武術
零落した存在の無い完全版なら軽く一億はいく隠れた超人気カードの一枚……戦闘、魔法、移動、拠点、更には魔法薬作成に一番の目玉でもある万が一の逃走、と言うかむしろ拉致能力と様々な使い方のある優秀な準Bランクカードの一枚である
プロ冒険者からはその非常に高い逃走能力のおかげで最悪の事態を(自分だけとはいえ)生き残れるその高い生存能力を買われて大人気らしい……その見目の悪さと基本的な扱いにくさ以外ならまず間違いなく人気カードではあると言える
大輝の場合は丁度予算がある内に高和から入荷の報せを受けて……勿論、清の意見を吟味した上で買い取りを決意したのだが、欠落したのは戦闘力と拠点、魔法薬作成能力で済んだ零落にしては比較的アタリの部類だった
後の急務は巌のクラスチェンジ先だが……やはり道祖神辺りが欲しいがあれはあれで稀少な一枚だから下手をすればまた零落になるかも知れないのが悩みの種だ
後は……嘗て一度お目にかかれた『比翼鳥』というカードの存在も気になる。今までのカードの中でも一番……いや、異質な迄に相性抜群なあのカードについては大輝としても非常に気にはなるが残念ながら日本ではあまり見かけられない珍カードの一種らしくて自衛隊ですら殆ど詳細を知らない二体一身カードらしい
一度だけ姫子も比翼鳥を取り扱う機会があったらしいが……やはり彼女からしても『異様な迄に相性抜群だった』らしい
今、大輝の存在を知った自衛隊はギルドと協力態勢でもう一度比翼鳥を雌雄探していると聞く、それだけ大輝と姫子の抱える特異体質の調査にご執心という事だろう。故に次の治験協力は二体一身カード関係の実験になるとか言っていた筈だ
……まぁ、それは暫く後の話だろう。今はCランク階層まで容易く到達しての野営についてである。今回はCランク階層内の安全地帯で一番居住性の高い勘太郎の壺中乃天に全員入って野営する事になった
その前にDランク階層でなるべく多数の狩りを行いそれなり以上に満足出来る『成果』は得られた。大輝にとってもバーバヤガーとなった清の慣らしには最適だったし
……あと半年後にはこの学園に於いてそれなり以上に需要があるオークやホブゴブリンなどの奨学カードやまぁ普段使いに役立つ消耗品系魔道具など、それと今の状況ならちょっとした交渉用に使えるだろう人気のあるDランクカードとか
そして今日の夕飯になる『食材』である
Cランク迷宮からは『アイテムドロップ』という新要素が現れるのは前にも説明した筈だ。そしてこの『食材』というものもまた基本的にはCランクから発生する新要素の一つである
雑多なカードやポーション、魔石に混じって幾つかドロップした食材だが……今回は良い肉や米、他色々な食材をドロップしたので今日はご馳走である
さて、何を作ろうか?
【Tips】冒険者私塾
『冒険者』という存在が職業になった黎明期から目端の効く者……一部のサマナー達が形成した冒険者育成組織。全ての始まりである『メアリー塾』や元より超実戦的武術道場である『八重樫道場』、学園の一部門そのものが冒険者私塾だと言える『美城学園』などが有名だろう
最初期はボーイスカウトやプレッパーなどの心得や技術、護身術講座の混ぜ合わせにサマナー達の実体験から必要な事を探り当てる程度であったが、冒険者に必要不可欠な確定申告や冒険者関連の資格講習や引退した自衛官らの情報などで冒険者に必要な技術を洗練させた上で近年では秘匿技術である『リンク』を民間でも比較的コネや資金無しでも習得できる近道となってきた
(それが出来るなら)リンク技術の習得は『高弟』とでも呼ぶ様な能力……よりも人格を優先した選考基準で教えるかどうかを決める事になっているが、稀に才能豊かな者が出たらその能力についてちゃんと倫理を含めて教導する事もある。拙作中なら『薬丸姫子』がそのケースに該当する
『私塾』に所属する冒険者達は……だいたいはまぁ普通の塾などの月謝と後輩などへの教導や所属私塾への協力などの義務はあるが、前述した技術の教導や私塾関連の札商などへのコネ、同門パーティーの斡旋、同門のプロ冒険者チームなどへの紹介、同門同士のカードや魔道具などの物々交換の斡旋など様々な恩恵を得られる
但し、人間関係などに気を配る必要がある上に所属する私塾に対してちゃんとした帰属意識が無いと単なる塾通いの手習い程度に終わってしまうのでその辺りは要注意である
ちなみに……実は冒険者私塾には『非電源系ゲームサークル』としての一面もあり、ボードゲームやTRPG、TCG、人狼などの遊戯を行いたい者達のサークルとしての一面もある。ランクの高い迷宮では電化製品は使えない事もあるし、アンゴルモア時にはグレムリンの跳梁跋扈という厄介事もあるからこういうゲームが重宝されている辺りからだろう
そういう一面はサマナーの主な雛形であるオタク達の趣味嗜好などから来たとされている。他にも様々な理由もあるが、この世界で『オタク』は褒め言葉だと認識されている一面もあったりする。大半の私塾の塾長や師範高弟は大概オタク揃い故に
故に……この世界に一部クロスオーバー(むしろスターシステム?)している『ありふれ』の初期みたいなあのクラスの不条理なオタク蔑視はこの世界では先ず無い、あの世界のチンピラ共や勇者(笑)みたいな輩こそこの世界では軽蔑の対象として扱われるだろう
ちなみに階級みたいなものもあり、見習い、弟子、高弟、師範代(幹部)、師範(上級幹部)、塾長という階級が存在する
少なくとも見習いのうちは『お客様』であり教えられる内容も触りの手習い程度だけになる
弟子に認められれば少なくともちゃんとしたパーティー斡旋や物々交換斡旋に参入可能になる、ちなみに余程の事が無い限り誰でも一年以内に弟子昇格は出来るだろう
高弟となればリンク技術の教導を受ける資格を入手出来るしプロ冒険者や札商とのコネを得られるが本格的に義務を負う事にもなる。少なくとも人間性を認められるか迷宮士資格を獲得するかさもなくば天性のリンク能力持ちである事を示すかでもしなければ高弟資格は得られないだろう
師範代はリンク能力持ちかつ三つ星資格獲得か迷宮士資格所持者になればだいたい認められるだろう。私塾の運営にも多少は関わる事にもなる……が、小規模な私塾ではリンク能力をオミットしているパターンも多い、むしろそもそもリンク能力持ち自体が貴重である
師範は……プロ冒険者になれば認められるが、大半の私塾でそのレベルの師範は先ず滅多に存在しないので大概師範代クラスに格落ちしているのが大半である。少なくとも師範を名乗るならリンク能力は必須であるが
塾長は……この私塾の創設者であり、大概は第一次アンゴルモアで活躍したサマナー上がりである。故にリンク能力持ちは非常に少ないが実戦経験は豊富かつこの市場を切り拓いたパイオニア達なので実力以上に尊敬される立場にある
あと二十年もすれば師範が後継ぎになって実力も塾長に必須なものになるかも知れないが、そこまで人類文明が保つかは不明である
この物語の主人公である『佐藤大輝』はコネで最初から高弟資格を与えられそろそろ実力で師範代昇格が内定している、ヒロインである『薬丸姫子』は入塾からその天性のリンク能力で高弟資格を獲得している
基本的に私塾はガチ勢なら大半が入塾したがるが……まともな私塾はコネや空きが無いと入塾が難しいので野良でやる者も実は数多い。エンジョイ勢だと私塾の規律などを嫌がり先ず入塾する者は居ない
『まともでない私塾』というものは基本的にいいかげんな詐欺やダンジョンカルトや違法カード風俗の隠れ蓑、何らかの反社の類いである……大概一年保つか保たないか程度で潰れてしまうが