IS学園配信チャンネル交流板   作:ジト民逆脚屋

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ラストだよ!


約束

世界は続いた。

人は終焉に勝った。

 

「いやー、負けちゃいました」

 

¦仕方ないネ

¦まさかICKニキがあんなに強いとはな

¦ある意味順当?

¦まあ、日本担当官は安心したろ

 

「は? 私なら更なる安心をくれてやったんですが?」

 

¦寝言は寝て言え

¦HAHAHA ナイスジョーク

¦山○田くん、座布団一枚

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ごい゛づら゛!」

 

試合の数日後、万里は何時もと変わらぬ様子で配信をしていた。

負けた悔しさは無い。寧ろ、人がもう一度己に勝てた事が誇らしい。

終焉の化身として、世界を終わらせられなかった事よりも、人が終焉を乗り越えた事が嬉しい。

そして、時計の針が頂点を示す頃合いに、万里は話を切り出した。

 

「ああ、そうだ。皆さんに報告が。私、現役から退きます」

 

¦え?

¦は?

¦ちょっといきなり過ぎん?

¦ニキに負けたから?

 

「まあ、一夏に負けて踏ん切りがついたというのが大きいですね。それに、後進に任せようとも」

 

万里の言葉に嘘は無い。

事実、一夏や他の面々には事前に伝えてあった。

機体も既に返納している。最も、あの機体は既に脱け殻で幾ら研究しようが、何も出てこないが。

 

「ちょっと忙しくなりますので、配信は暫くの間不定期になります」

 

¦まあ、仕方ないネ

¦ゆっくり復帰していってね

¦うわあ、引退か……

¦これで黄金世代は半数が引退か……

¦寂しくなるな

 

「始まれば何時かは終わる。それが世の習いですから、それを楽しみ笑うにのが人なのでしょう」

 

まるで、誰かに問い掛ける様な口調で、万里はそう呟く。

何時かは終わる。それが来ただけだ。

 

「それでは、少し早いですが明日も忙しいので、おつばん~」

 

¦おつばん~。お疲れ様

¦おつばん!

¦おつばん、やっぱり引退やだなあ

¦おつばん~、ゆっくり休め

 

配信画面を閉じると、部屋の前に人の気配がした。

随分とわざとらしい気配だ。

 

「千冬、鍵は開いてますよ」

「……まったく、本当に引退する気とはな」

「事前に言ったじゃないですか」

 

扉を開けたのは、千冬だった。

千冬は少しだけ疲れた顔で、椅子に座ると深く息を吐いた。

 

「万里、教職はどうする?」

「今の一年が卒業するまでは居ますよ」

「それからは?」

「それからは、そうですね……。配信をしながら、世界を回ろうかと」

「終わらなかった世界をか」

「ええ、一夏が続けた世界を」

 

世界は終わりを否定した。

否定された終わりは何処に行くのか。

そんなもの自由に決まっている。

また、世界が終わりへ向かうまで自由に過ごす。

 

「はぁ、本当にお前は手の掛かる教え子だよ」

「まさか人の教え子になるとは、永い月日でも予想もしませんでしたよ」

「万里」

「はい」

「……明日も早い。さっさと寝ろよ」

「ええ、そうします」

 

ではな。

千冬はそれだけを言い、部屋を去った。

世界は終わりを否定した。しかし、何時かは終わる。

大和冠者は、その為の世界の延命装置だ。

 

世界の終焉装置の蝦夷冠者

世界の延命装置の大和冠者

今回も世界は延命された。

だが次は?

決まっている。また何時かに決める事だ。

 

「それまで、暫しの暇ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やうやう、織斑一夏」

「よう、化野万里」

 

朗らかな日射しが差し込む畳の部屋、そこに万里は現れた。

 

「また、随分と久し振りだな」

「ええ、久し振りですね」

「世界は、どうだった?」

「貴方が続けた世界、まあ悪くはなかったですね」

「最近は何処に行ったよ」

「一番最近だと、北欧の方に。それでまあ、あちらの神格がマジ焦りしまして」

「ラグナロクが来たってか?」

「ええ、それはもう、主神に戦神に軍神まで出てくるし、悪神は付き纏ってくるわで大変でしたよ」

「はっ、いい気味だ。しかし、まだ信仰されてたのか」

「あちらの神格はファンタジー的に語られてますから」

 

畳に正座で座ると、土産なのかよく分からない形の木彫りや石を一夏の枕元に置いていく。

 

「おい、やめろ。なんか祟られそうだ」

「おや、私を討った大和冠者が毛唐の神格に畏れを?」

「バカ言え、ちょっと面倒なだけだ」

 

置かれた土産を手に取り、少し眺めた後に鼻で笑う。

 

「それで皆には?」

「皆には既に。……貴方が最後です」

「そうか。葬式に顔出さねえからやっぱりか」

 

皺だらけの手をつき、体を起こす。

上体を起こすだけでやっとの様子の一夏だが、万里は手を貸さない。

終焉を乗り越えた者の最期の姿を見届ける為だ。

 

「しかしお前、死神も始めたのか?」

「まさか、あんな面倒な仕事しませんよ。ただ、終わりが判るだけです」

「そうかよ。で、お前はこれからどうする?」

「少しばかり眠ろうかと」

「そうか。また次の終わりまでか」

「ええ、次の終わりまで」

 

嘗ての若さは無く力すら失い、顔も体も痩せ衰え髪も白く皺ばかりが刻まれた人が頷いた。

しかし、万里にはそれが美しく見えた。

 

「万里、一つ約束してやる」

「なんでしょう」

「大和冠者はまた現れる。そして、俺達はお前を一人にはしない」

「ええ、ええ、それは素晴らしい約束ですね」

「……ああ、じゃあな万里。楽しかったな」

「ええ、おさらばです一夏。楽しかったですね」

 

そう言うと、万里は消えた。

文字通り、煙の様に霞の様に土産だけを遺して消え失せた。

もう何処にも気配は無い。

 

「父さん、今のお客さんは?」

「ああ、帰ったよ」

「そうなんだ。でも、驚いたわ。父さん、一体何処であんな若い人と知り合ったの?」

「なに、古い古い友人だ」

 

そう言うと、一夏はまた横になった。

枕元にある土産の意味は特には無いだろう。

あの変わり者の友人に光が差す事を願い、一夏はゆっくりと目を閉じた。

 

そして織斑一夏が息を引き取ったのは、翌日の朝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ましたのは、違和感からだった。

ほんの僅かな違和感、誰かから見られている様な感覚。

それが万里の目を覚ました。

 

「……何故」

 

まだ世界は終わりへと向かっていない。

なのに何故、己が目覚めたのか。

それは自身が感じる事が一つの答えとなった。

 

「神々を信仰を取り戻した? いや、これは再び信仰され始めた?」

 

目を覚ました万里が感じる空気は、確かに嘗ての時代の空気に近いもの。

人と神、怪異が隣り合わせに息づく世界。一体何が起きたのか。

文明が滅んだという訳ではなく、寧ろあの楽しかった日々より幾らかの発展が見えた。

 

「何が起きたというのか。というよりここは……」

 

見覚えがある。四方を海に囲われた島。

僅かに残る立地、ここはIS学園島だ。

そしてこの景色は学園の屋上から見える景色。

そうだ。初めて一夏達と出会った場所で、制服ではなく和服姿で、万里は立っていた。

 

「怪異達が居る……」

 

名を持ち、確かに怪異の気配を感じ、島中に嘗ては無かった社も目立つ。

万里は混乱しつつも、屋上のフェンスに近寄る。

 

「学園島は学園ではなくなった? 栄枯盛衰、盛者必衰とは言うが……」

 

人の気配はある。

それも学園であった時よりも、遥かに多い。

情報が要る。

万里がそう決め、屋上から去ろうとした時、屋上の扉が騒がしく開かれた。

 

「ほら見ろ、やっぱり居るじゃねえか!」

「うわ、本当に居たわ」

「そんな事を言っている場合か!」

「そうだよ! あ、あのお姉さん。早まっちゃダメだよ?!」

「ええい、それよりも確保だ」

「だからどうして貴女は乱暴なんですの?!」

「いいから早く止めないと……!」

 

万里は驚愕した。

髪色や年頃、細かい部分は違えどほぼ生き写しの様な七人が居た。

 

 

──大和冠者はまた現れる──

 

 

「嗚呼、本当にそうですね」

「あ、何? お姉さん、飛び降りとかじゃないの?」

「ええ、少し懐かしい場所でしたので、見学していたのですよ」

「見学って、ここは大分前に移転して閉鎖されてるわよ」

「でしょうね。あ、一つ聞いても?」

「あ、はい」

「何故、この島は社が?」

「えっと、篠ノ之束博士が宇宙から帰ってきた時に提唱した〝現代怪異論〟というのがあって、なんでも終焉の化身?ってのに世界を終わらせさせない為には、現代に怪異や神仏を呼び戻す必要があるとか」

 

何時かの似た子の答えに、万里は息を吐いた。

起きている間に、あの人間が帰ってきたという話は聞いた覚えが無いので、己が眠った後に帰ってきてこんな面倒な論を提唱したのだろう。

 

 

──まったく……、あの人間は──

 

 

他人の事など理解出来ないと宣いながら、こんな真似をする。宇宙に出て、脳の構造でも変わったのだろうか。

いや、今はそれよりも

 

「それで、なんで見学なんかを? ここが学園だったのってひいひいじいちゃんの時代だぜ?」

「……成る程、貴方の名字を当ててみましょうか」

「え?」

「織斑、当たりですか?」

 

万里は驚愕に固まる少年少女に笑みを返しながら、学園だった場所の屋上を後にした。

進む先は何故か暗がりが無く、万里の歩みは光が差している。

 

 

──俺達はお前を一人にはしない──

 

 

「さあ、あの楽しき日々をもう一度」

 

急ぎ後に続く騒がしい足音に懐かしさを思い出しながら、万里は笑っていた。




はい、ちょうど10話で完結です。最初はネタギレまで書いて雑に終わらせる予定でしたが、なんか勢い任せに書いたらこんなんなりました。
いや、こんなんなるとは……

そしてこれから先ですが、復活したオカルトや怪異に原作主人公ヒロイン達の玄孫達が、万里の手を借りながら対処していったりしなかったり、一夏の玄孫が大和冠者になるかならないか、万里がもう一度〝空亡〟として動くか動かないか。
まあ、そんな感じのオカルト×冒険活劇になるかもしれませんが、蛇足になるので皆様のご想像にお任せします。
最後になりますが、この作品をお読み戴きました皆様と、原作インフィット・ストラトスに感謝を。
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