月姫 零刻   作:マジカル赤褐色

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ヨエル先生からお知らせ

皆さんにビッグニュースです!この度、月姫 零刻が、読者の皆さんに読みやすいよう、文章の行間などの細かい部分や、分かりにくい描写がリニューアルされて、区切りやセリフが読みやすく、そして見やすくなりました!月姫 零刻は皆さんと共に進化し続ける……!今までの回も順次改良していきますので、よろしくお願いいたします!


永遠を追う者

 

「はぁぁ!!」

 

「そいやっ!!」

 

乙黒教会では、ルージュ・アスナロとヨエルが突如現れた吸血鬼と闘っていた。

吸血鬼の周りから無数の死者たちが二人を襲う。

 

「くっそぉ、キリがないっての。やらしいねぇ、集団で襲ってくるなんてっと危ないアスナロ、っとよいしょぉぉ!!」

 

「助かったわ、やるじゃない」

 

「へっへーん、空手もできるぜ、そぉれっ!」

 

死者たちは無尽蔵に湧いて出てくるが、二人の前ではまるで敵ではない。最強の仁王が集る小兵を片っ端から返り討ちにする。

金のアスナロと緑のヨエル、まさに月と草である。

宙を舞う姫とそれを見上げながら地を払う王子。

 

「さて今日は腰の調子がいいんでねーアスナロ!」

 

「わかったわ!!」

 

アスナロがヨエルの肩に脚を掛ける。そして、そのままヨエルは肩車で教会の門まで走って塀を駆け上がり、そのまま横に回転しながらアスナロの脚を掴んで上に持ち上げる。

 

「ヨエルサマーっ!なんちゃって!!」

 

ヨエルは空中でアスナロの靴裏を蹴り上げる。

 

「行くわよ………!!!」

 

アスナロは突き出されたヨエルの靴裏を足場にして月に向かって跳躍。そのまま月面宙返り。その穏やかな笑顔が月光に照らされる、その様は文字通りの月下美人。

 

「────ほう、見映えは悪くないな」

 

藍毛の吸血鬼はその様子を見て感心しながらその余韻に浸っている。

 

「どっこら!雨のように!」

 

ヨエルはそのまま体勢を立て直して黄金に輝く針のような黒鍵を一斉に投擲する。一回の動作とは思えないくらいの数の黒鍵が地面に突き刺さる。

と、同時に地面に突き刺さった黒鍵が一斉に火を噴き、辺り一面の死者たちが焼き尽くされる。しかし、今の強烈な一撃により、ヨエルには大きな後隙が生まれた。

 

「ふん……行け───」

 

余った死者たちは、吸血鬼の指示に従い、ヨエルに一斉に襲いかかる。そこへ、

 

「そぉぉぉれっ!!!」

 

空中から降ってきたアスナロが地面を勢いのままに殴り付ける。

辺り一面が粉砕され、余った死者も全員が吹き飛ばされ、消え去った。

 

「うぃーん、楽勝だぜおい!」

 

しかし、吸血鬼は今の攻撃を遠目に見ても、怖じ気づくことはなかった。

 

「なるほど、相変わらず腐らないものだな、喜ばしいことだ」

 

吸血鬼は今のを見せられてもこの状況を楽しんでいる。

 

「さて、どうする?次は君本体との闘いだよ?」

 

「問題ない。私にとって今回の死も通過儀礼だ。私が求めるのはこのさらに先。永遠を求めるまで、この私が止まるとでも?」

 

吸血鬼はその手を高々と上げ、力強く強調する。

 

「ほんっと、どこまでもしつこいわね。【ミハイル・ロア・バルダムヨォン】。どこまで暴れる気?前は、100年以上前だと聞いているけど」

 

アスナロが冷たく吐き捨てる。

吸血鬼、ロアはそれを見て一笑。

 

「そうだとも。前回の器は100年以上前、確か北欧の方だったか。まぁ、よい。以前の器など、そんな些末なことに興味などない。しかし、今回の器は、過去一番、使い道が思い付かないものだな。魔術回路の数は多いために、闇雲に選んでしまったが、考えてみればこの肉体、私に使えそうな力がない。わざわざ魔力を街の霊脈から吸い上げる祭壇と術式を設置するのに実に手間がかかった。遅い登場となってしまったが、計画は予定(プラン)通りだ。狂いはない。しかし、はじめから私(ロア)の意識を全面に出す器など、それはそれで珍しい。依代となった人間の深層意識が私に抗えなかったのか、それとも、他の何かか。まぁ、結局私のものだ。関係はないか」

 

───ミハイル・ロア・バルダムヨォン。

永遠を追い求めて転生を繰り返している死徒。彼は約800年前、偶然にも真祖の姫に出くわした。

吸血鬼には、天然の吸血種である真祖と後天性の吸血種である死徒の二種類が存在している。その中でも強力な真祖、ブリュンスタッド。真祖たちによって造り出された最強の真祖、それに、まだ人間だったロアは出会ってしまった。

彼はブリュンスタッドを拐かして血を吸わせ、強力な死徒となったそうだ。そうして繰り返し転生を行った結果、今もこうして永遠を追い求めている。

 

「長々と説明ご苦労さま。今回でその転生何回目?今のアナタが16代目だから15回目?とんだ迷惑ね。いつになったらやめてくれるかしら?教会は何をやってるのよ」

 

「教会も私の捜索には手を焼いているようだね。しかしそんなこと、私の知ったことではない。私は永遠を求めるまでの転生を止めるつもりはない。なにせ私の悲願なのだからな。この手で真祖の姫を私のものにするまで、ロアは何度でもこの世に戻ってくるさ、それが千年だろうと八千年だろうと」

 

「そうかい、じゃあ、16代目で終わりにしておけばどうだい?」

 

瞬間、どすん、という音がした。ロアが視線を落とす。そこには、金色の針が3本、深々と突き刺さっている。

ロアは憤慨するでも、痛みに顔を歪ませるでもなく、無表情でそれを引き抜く。

 

「これは………黒鍵か?私が知らぬ間に、教会は随分と様変わりしたようだ」

 

「まぁね。僕専用の武器なんだ。いいだろ?」

 

「なるほど。実力者揃いか。だが、ここで私と闘うのは、止したほうがいいのではないかな?言い忘れていたが今回の器は、個体そのものの戦闘能力では、かつての私を優に上回っている」

 

ロアの左手に楽器が出現した。見た目、なんの変哲もない、ただの弦楽器。

ロアが持つのはどこからどう見てもただのバイオリンだ。

 

「なんなのよ、ソレ。そんな道具で私に勝つつもりでいるのかしら?」

 

「無論。正面から君を撃破するのは不可能だが、初見殺しならばできそうだな」

 

ロアはバイオリンを逆手に持ち、その弦に弓をつがえる。

その動作はまるで、武器としての弓を構える動作のよう。

バイオリンの弓が光り出す。紫色の雷のような電荷を充填させ、辺りが魔力の壁に包まれる。

 

「そんなまさか…………!!」

 

「ちょぉぉっと待てぇぇぇぇ!!!」

 

ヨエルがアスナロを庇うように正面に立ち防御体勢を取る。

────でも、もう遅い。

 

「────紫電(ジョージ)」

 

バイオリンから流星のように勢いよく放たれた、紫色の雷を纏った弓はヨエルの防御体勢を粉砕し、ヨエルは勢いを圧しきれずに教会の壁に吹き飛ばされた。

 

「────たわばぁぁぁぁぁっっ」

 

「─────!?」

 

アスナロが警戒態勢を強くする。攻撃力が圧倒的だ。アスナロの全力の一撃で教会前のタイルを吹き飛ばしたが、ロアの攻撃は、それに匹敵、もしくはそれを上回る一撃だ。ロアをある程度知るアスナロにとって、今までのロアとは思えない破壊力だった。

 

「やる気になったかい?さぁ、まだまだここからだ!!」

 

ロアの周囲に無数の魔法陣が現れる。ロアの背後、ロアの周り、果てはアスナロの周囲に術式が設置される。

 

「一度にこの規模で魔術行使をするなんて、なんて魔力貯蔵量……!!」

 

「ホラホラホラホラ!!!まだだまだだ、死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!」

 

術式から一直線に放たれる巨大な雷霆。控えめに言って破壊光線だ。地面や教会の壁や柵はその轟雷によって次々と破壊されていく。

空間を走る紫の稲妻。稲光は折り重なる光の刃となってアスナロを襲う。

 

「クハハハハハハハハハハハハハハハハ!!どうした、おまえの力はその程度か!!私をあまり失望させないでくれ、これでは【真祖】の名折れであろう!!私が費やした800年の追跡、1000年の熱意を、ここで無碍にするつもりか!?」

 

一際大きな術式に最大の太さを誇る落雷が堕ちる。度重なる雷鳴と音響と破壊によって、教会前の道は跡形もなく破壊された。

あとに残ったのは焼け残りと、かろうじて教会と一目で分かる程度の形を保っている教会だけだった。

 

「オマエは────必ず殺す………!!」

 

ロアの身体を巨大な爪が凪いだ。ロアの雷霆を超える破壊力で、原型をとどめていない地面がさらに粉砕され、同時にロアも瓦礫と共に吹き飛ばされる。

 

「チッ─────!!」

 

大砲から打ち出された砲弾が着弾したかのような崩壊に巻き込まれ、ロアは大きなダメージを負った。

そこに立つのは黒いカソックに身を纏うアスナロ。金髪の代行者であり、その瞳は紅────ではなく、今はその瞳は金色になっている。

 

「ハハハハ……………」

 

ロアは致命傷を負って、今にもアスナロに殺されそうだ。アスナロは間違いなくかつてないほどに憤慨しており、次の一撃は大地を破滅に持っていくものだろう。それを受けてしまえば、ロアは間違いなく死亡する。

 

「アァァァァァァァァァ!!!」

 

女のものとは思えないような雄叫びを上げて、アスナロはその爪を叩きつけた。

辺り一面の瓦礫が粉と化す。形を保っていた教会の門も一撃で瓦礫の山に早変わり。ロアはその直撃を受けて瞬殺された。

 

 

────ようにも見えた。

 

「なるほど、これ以上の戦闘は危険といったところか。ならば今夜はここまでだ。だが、最後に一つだけ────」

 

ロアは教会の屋根に飛び乗る。そして手を挙げる。

 

「この器が持っていた、【コレ】が如何なる破壊力を持っているのかが知りたくてな、これをおまえにぶつけてどれ程の効果があるのか参考にさせてもらう」

 

ロアの背後にソレは現れた。アスナロにとって初めて見る武器だ。ロアの器となった人間の持っていた武器か。それは、やはり笛楽器のような形をしており、その先に青い、炎のような魔力が充填される。

 

「これは────管楽砲【ギャラルホルン】と呼ばれるモノらしい。真祖であるおまえにどれ程効くのか、気になるだろう?危うくばオーバーキルになるかもしれないが、おまえが相変わらずならば、死にはしないだろう…………?」

 

その武器から、青い炎が噴き出された。それが、教会の地面に打ち付けられる。光学兵器のような極太ビームを受けて、教会の地面が溶けるようになくなっていく。絶対破壊の、神話の領域の破壊の極光。青い焔は、金の真祖を包み込んで、そのまま光が闇に変わるように、綴じていった。

 

同時に、教会では、核が落ちたような巨大な爆発が起きたが、それを知る住民と代行者など、そこにはおらず、その瞬間を見届けたのは、ロアだけだった。

ロアは家屋を飛び越えて、どこかへ去っていく。

 

「永遠─────」

 

ロアは月を見上げる。丸くはないが、相変わらずの青く澄んだ硝子のような、脆そうな、壊れそうな、割れそうな綺麗な月。

ロアは月光を背に、月明かりと文明の灯りに光る夜の街を飛び越えて、遥か遠く街の外れ、どこかの山奥へと消えていった。

ロアの行方を知る者はいない。

 

 

 

夜空を舞う吸血鬼の姿を見た者は居なかった。




らくらく相関図(白邪目線)

凱逢黒依 かわいい、綺麗、優しい、これで一目惚れしねぇとか無理だろ。
林檎 いつも世話になってる俺専属のメイド。どこでどやって恩返ししようか……
葡萄 多分俺嫌われてるわ。
蜜柑 お茶目で可愛らしいから結構気に入っているけど、悪戯がすぎるよな。
檸檬 クソうるさい、謝っているのが謝っているように見えない。
甜瓜 好きっちゃあ好きだけど向こうの感情は知らねぇ。
中村絢世 大切な姉だけど、ちょっと俺に厳しすぎる。
遠野槇久 ガキ扱いすんな20代ジジィが!!
菊山紀庵 兄弟分。困ったときはあいつに相談すれば解決。
ルージュ・アスナロ 俺に仕事押し付けてくるただのバカ。
ヨエル 誰だよお前!?
カーラ・アウシェヴィッチ 許せないけど、なんとなく憎めない。同じ混血だからか、できれば仲良くしたい。
ネコアスナ 何だこいつ?
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