───月の宴。忘れられた記憶の旅、
───月の都。思い出を思い出す度、
───月の帳。繰り返し分かたれる。
月は、ふしぎだ。光を反射して、光っているんだって。鏡でも、水でもない、ただの石と岩なのに。
なんでだろう。どうして、月はいつも、表のカオしか見せないのだろう。なんでいつも、光っている部分しか見せてくれないのだろう。
体をかたむけても、ちっとも裏が見えやしない。
じゃあ、裏には、何が見えるんだろう。どんな模様が見えるのだろう。
───月の裏も、光っているのかな。
──────そう。
──────これは、月の帳が始まる前日譚。多くの記憶のなか、ただひとつ、たどり着いた、ひとつの結末、ひとつの物語。
そこには、まだ語られていない、月の記憶、星の追憶。
過去にも今にも未来にも。何処かに、分かれ道が、あったんだね。
まだ誰も知らないその物語を。
───朱い影の後輩は、ただわたしの前で名を呼び続ける。
「先輩、クロエ先輩!!」
わたしは、ただ。彼の手を握り続ける。
これは、全ての表側のおはなし。
───朱い刀と、葵い双剣がぶつかり合った。
「範安────!!!」
「白邪────!!!」
私は、その闘いを見守ることしかできなかった。
それは、もうひとりの家族を巡る裏話。
───朱い髪のカレと、青い羽織の男が同時に斬り合った。
「行くぞ中叢!!」
「来い両儀!!」
私は、ただ、彼の無事を祈り続けていた。
それは、大切な人の痛みを弔う物語。
───朱い瞳の青年が、朱い着物の大男に殴り掛かる。
「死なねぇ程度にぶっ殺す!!」
「死ね、中村──────!!」
私は、胡乱な頭で、彼の雄姿を眼に焼き付けていた。
それは、全てが明らかになる前の記憶。
───朱い上着の彼が、無数の兵士に襲いかかるのを画面越しに見た。
「────フ」
「槇久────!!!」
私は、画面の向こうの抗争の激しさに、ただ息を呑んでいた。
それは、全てを決める、最後の闘い。
───朱い血に染まる貴方は、ただ、そのナイフを握りしめていた。
「姉さん、どうしたら───!!」
「──────」
貴方は、俯いて泣きながら、ただナイフを握っていた。
それは、あの日をもういちどやり直す日。
全ての答えは、月のみぞ知る。
月の零時の、物語。ひとつの時空線から別れた、あと五つの物語、記憶の断片。
私達は、空から、誰も気がつくことなく、その始まりを、その分かたれを、
最後に待ち受ける、まったく異なる結末を、ただ、見守ることでしょう。
月姫 零刻
林檎編、葡萄編、檸檬編、蜜柑編、甜瓜編
執筆進行中
(めっちゃ遅いけどね!!BY今の投稿すら終わっていないマジ赤)