元凶
「う、ぐ…………」
喉が、渇いたな。水……飲まないと………
「ふぅ……………」
ベッドから起き上がる。先輩は横ですやすやと眠っている。気持ち良さそうな寝顔が可愛い。このままお守りをしてやりたいところだが、俺は喉が渇いている。水を飲みに行かないと。
「う…………」
頭痛がして、くらくらする。まぁ、あんなに動いたら、そりゃあ体力も消耗するか。
てか、裸で布団もかけずに寝たら風邪ひくに決まってる。とりあえず先輩に布団だけかけておく。
はぁ、さっきのコトを考えるとまた一段と恥ずかしくなってくる。まぁ、いい。
とりあえず、水を求めてリビングを歩く。
床にたたんでおいた服を着て、扉を開けて廊下に出る。
「───────」
水道水への道は、まだ遠い。
靴を履いて、玄関の扉を開けて外に出る。鍵は持っていないから閉められないが、まぁ、ちょっと水を飲むだけだ。
先輩のアパートの領域を出ていく。目指すは街。なるべく、水が多く手に入るところへ。
「────喉が…………」
もう喉がカラカラだ。一刻も早く、【■わないと】。
「早く、早く、早く……………」
早く、■を飲まないと。このままじゃあ、干からびてしまいそうだ。
ふらふらとおぼつかない足取り。いつまでたっても、水道の蛇口に、たどり着かない。俺は、いつになったら、■を■えるのか。
だん、と、肩に小さな衝撃。この酔っ払ったような足取りのためか、何かに肩をぶつけてしまったようだ。気にせず歩く。俺は、水を飲むことしか、頭にない。
「おい、」
近くで、音がした。肩に、なにかが触れる感覚。前に、進めない。わからないから、俺は後ろを向いてみる。
「テメェ、前見て歩けよ」
「なぁんだ。ただのニンゲンか。邪魔しないでくれ。俺は、水を飲みに行くんだ」
俺の肩に掛けられているその鬱陶しい手をはたき落とし、俺は道を急ぐ。
背後から、すたたた、という走る音。音は4つ。四人のニンゲンの足音が背後でする。
「待てよゴルァ!」
俺の肩に手を掛けた個体が、豪腕を振り上げる。身長180センチ近くの大柄な男の腕は、俺よりも強靭で太い。
「──────」
「ぎ───あああああああああ!!!」
背後で悲鳴がした。肘鉄砲で目頭を砕かれてもがく一人の大男の悲鳴が。
気にしない。水が、早く飲みたい。こんなやつの■を飲んだところで、ちっとも美味しくなさそうだ。
「テメェ!!!」
今度はもう少し細めの声。さっきのヤツの仲間か。振り向くまでもない。回し蹴りで空中から叩き落とす。
「げ、ハァヅ!!」
うつ伏せに倒れこむ男に、追い討ちをかけるべく走り出す。倒れる男の顔面をつかんで無理矢理持ち上げ、地面に叩きつける。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
そのまま、地面を割るぐらいに力強く押し付けながら、引きずり回す。
ゴリゴリ、ジャリジャリと、皮膚がアスファルトに擦れて肉と骨が削れる音がする。
「■■■■!!■■■■!!」
何て言っているか分からない。そりゃあ地面に押し付けられているから当然なのだが。
真っ黒な夜の真っ黒なアスファルトは、真っ赤な■に汚れていく。最後に、近くにあった街灯に背骨を巻き付けて、勢い良く開けた腹に飛び蹴りを打ち込んだ。
ぐちゃっ、と鈍い音がして、男は不自然な動きで倒れた。
「よし、問題ない」
よかった、といえば語弊があるが、とりあえず殺さずに済んだようだ。俺は人殺しはしないと決めている。だから、
【死ぬギリギリまで痛め付ける】。
まだ生きているなら問題ない。まだ峰打ちの段階なら、何度殴ろうが問題ない。
流石にこれ以上地面や電柱で殴ると殺してしまうから、もっと柔らかいもので殴ろう。そうだ、そこに自転車が停まっている。アレをお借りしよう。
「拝借させてもらいます」と言って、自転車を持ち上げ、そのサドルの部分で倒れているコレを殴り付ける。
ドカッ、という音がしたら、頭から赤い■が流れ出てきた。だめだ、この■も見たところ美味しくなさそうだ。もっと純度の高い天然水が飲みたい。
さて、もうほぼ死にかけだからコレは要らない、飽きた、はい次。
直後、背後から悲鳴が聴こえた。あとに残った二人?いや、違う。女性だ。この状況を、偶然見かけてしまったようだ。
午前一時に街を出歩く女の人なんて珍しいな。俺は女性恐怖症だ。低姿勢で身構えて、警戒を示すが、女は動かない。いや、動けないのか。俺を見て恐れをなしている。
「────ハハ」
こりゃあ、美味そう。警戒が解けた。女はろくなヤツがいないからな。女はみんな、揃いも揃って俺を裏切る。林檎や姉さん、先輩は特別、その中で俺を好いてくれた人たち。
だけど、俺は、女に裏切られたせいで死んだ。あの女のせいで、俺は混血になったんだ。だから、今もこうして、喉が渇くんだ。■を飲まないといけない体になった。今みたいに。
朝や昼、太陽が出ている時間になったら具合が悪くなる体になったんだ。保健室を目指して先輩に初めて出会ったときや、この前、葡萄に迷惑をかけたように。
「き─────」
直後。俺は、目の前の女が、血を撒き散らして死ぬ瞬間を見た。彼女は、吸血鬼に血を吸われて、死ぬ。
そう、首元に口を付けられ、牙を立てられ、その首に風穴を開けられて、首からその赤い液体を嚥下されて。
彼女の背後に居る、青い髪の吸血鬼に。
「やめろ、テメェ────!!!」
靴裏に仕掛けられた時限爆弾が爆発したかのような勢いで走り出す。
高速で血刀を作り出して、女性の背後に居る青い髪の男に襲いかかる。
この一振に女性が巻き込まれるかもしれないとか考えない。とりあえず、本能的に、なぜか体が弾けた。
先輩が寝取られる瞬間なのかと思ったぐらいの勢いで弾けた。俺はこれほどの無意識で敵に襲いかかったことが一回もない。
熱いヤカンに触れたら即座に手を離すかのうような、こんな反射的な行動は全くもってはじめてだ。
俺に吹っ飛ばされた男は、地面に転がった直後、立ち上がる。
その顔は、
「ロア…………!」
「いや、しかし、君もこの夜を歩いているとは予想の外だったよ、白邪くん」
ロアは予想外の接触に、半笑い気味に語りかけてくる。ロアの手にはバイオリンの弓のような武器、細めの手術用ノコギリに見えなくもない剣が握られていた。楽器を模した武器、か。やっぱり、コイツは先輩の───
「とんだ不良学生ですね、君は。午前一時に街をうろつくバカ学生がどこにいると言うのでしょうか?しかも、私の狙った相手を先回りするかのような動作。もしや、毎日こうして私を探していたとでもいうのかな?」
「ひぃっ……!!」
俺が助けた女性は悲鳴を上げることもなく、すたこらと逃げていった。まぁ、それはそれで助かる。このまま戦闘に移行する可能性の方が大きいからな。
「偶然だよ、偶然。それに、そっちもバカなこと言うな。俺は吸血鬼なんかじゃないんだ。あの女性の血を吸おうだなんて、考えていない」
「クッ、愚かな。未だに自分の状況すら理解していなかったとは。見損ないましたよ、殺人鬼。貴方、自分がどれ程まで壊れてしまっているのか、理解出来てないのですか?」
「うるせぇ。俺は現に誰の血も吸ったことないんだ。確かに、俺も人間ではないが、血を吸わないと生きていけないなんて、そんな不便な生活はしていない」
「フ、フフフフ」
ロアは頭を押さえて笑っている。まったく、何がおかしいのか。この笑みじゃあ、まさに
「フフフフ、ハハハハハハハハ!!!そういうコトか!それじゃ、【オマエ】はまだ何も教えられてねぇのか、あのバカな女に!!」
大笑いとともにロアの口調が急変する。
「何のことだ!説明しろバカ!」
「フフフフ…………失礼、思わずオマエの可笑しさに笑っちまった。そうだよなぁ。ここは呆れるところだったなぁ。【ワタシ】としたことが、余りの情けなさに同情を忘れちまったよ」
「───────」
「オマエ、どこまで覚えている?あの伊賀見病院のこと。オマエが父ぶっ殺した直後、入院してたろ?ワタシはな、あそこの病院の手術医だったんだ。オマエが居たことぐらい知ってるとも!」
「────────」
そうだ、思い、出した。アイツは、
あの日、あの病院に出てきた、
そうだ。俺は、あそこで、ゾンビのようなバケモノたちに追い回されていたところを、青い髪の女の子に助けられて、俺は一緒に連れていた見ず知らずの黒髪の子を逃がすと引き換えに、アイツに、殺されたんだ………!!左肩についていたあの傷は、あの時、雷を食らった時についたやつだった。
「思い出してきたかい………?本来ならよ、オマエはあそこで死んでいたんだ。ワタシに殺されてな!───じゃあ、オマエは今、何で生きていると思う………?何で死んだ筈のオマエが、死んだまま生きていると思うんだ?」
ロアの表情は、俺の人生で見たことがないほどに邪悪なものだった。
「まさか、違う、やめろ、俺は───」
「オマエも【吸血鬼になった】からだよ!!雷を食らった直後にワタシに血を吸われて死んだ後、運良く死徒になって生き返っただけなんだよ!!確かに、オマエは、鬼人と人間の混血でもあった。だけど、結局、今のオマエは、ただの吸血鬼なんだよ!!」
「─────はぁ………あ、あ、ッ!!!」
違う、違う、ゼッタイ違う……!!俺は、鬼人と人間の混血でしかない。俺は、誰かの血を吸いたいなんて、思ったことはない。
だから、吸血鬼なんかじゃない。
吸血鬼なんかじゃない。吸血鬼なんかじゃ…………
「──────あ」
そういえば。俺は、どうして、自慰行為で反転を止めていたんだっけ。俺は、自我が強いから、鬼人の血の力だけで、反転を防げている筈だ。
じゃあ、俺は今まで、何に、鬼人の血を使っていたんだろう。
俺がちょうど今夜、工場を破壊したときのあの暴走。あの、鬼人の力を解放した瞬間の、アレは…………
「そんな、まさか、」
ロアの方を向く。アイツはまだ笑っている。
「いいか?良く聞けよ?オマエが今まで鬼人の能力だと思っていた全て、それは吸血鬼の血の力なんだよ。オマエの鬼人の血はな、全てオマエの吸血衝動を抑えるために使われているんだ。オマエがもし、鬼人の力を解放しようもんなら、オマエは今頃、バンバン人間の血ぃ飲んでいたんだろうなぁ、ハハハ。姫君や代行者は、オマエのこと、【生粋の魔人】とか呼んでいやがった。良く言ったもんだよなぁ?あれほどにマトモな呼び方、そうそうねぇよ!ホラ、喜べよ兄弟!オマエは、鬼人よりもずっとすげぇ存在になったんだぜ!?もったいねぇよなぁ!凱逢玄武、ワタシの器、その娘はよぉ!こんなすげぇヤツを、ほったらかしにしちまうなんてよ!あの女がオマエを守っていてやれば、オマエは死なずに済んだのに!あの病院の入り口で、オマエを騙してか弱いフリをしていたあの黒髪の女に裏切られることもなかったのによぉ!!あぁぁぁぁぁ!!!!ケッサクじゃねぇかこりゃぁ!!【鬼人の少年、ボンクラの少女に見棄てられ、黒髪の少女に裏切られる】。いいじゃねぇか!?今度作家にでもなってみようかな?」
ロアの周囲はロア一人の笑い声で満たされている。一段と高い笑い声が大気を揺らすように凍えるような周波数となる。
その刹那。
「ハハハハハハハハ…………っ、あ………?」
ゴトリ、と、誰かのカラダの一部が落ちる音が響いた。
「誰が」
「ひ、ひひひひ、ひぃ………?」
「誰がボンクラだ、つった?吸血鬼」
この瞬間、俺は、表情も声も仕草も。人生で、一番といえる圧をかけたと思う。
「く、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ロアが悲鳴を上げて逃げ出す。
だけど、もう逃がすか。俺は、
「待ってろ、今すぐにぶっ殺してやる、吸血鬼───!!!」
ロアの背中を追って走り出す。その速度は規格外。俺にはロアしか見えていないが、他には何も見えない。俺が走るのが速すぎて、街にあるもの全てが走る電車のようにしか見えない。
対するロアの速度もなかなかだ。背中は見えるが、距離がなかなか縮まらない。
それでも、俺の方がわずかに速い。このまま行けば───!!
「テメェ!!!」
ロアの首を掴んで地面に叩きつけようとしたところ、
「ふん!!」
一気にビルの屋上までロアが飛び立つ。もはや真上に飛行しているようにしか見えないその動作だが、
「逃がすかよ!!」
ヤツにできるなら、俺にもできる。ヤツの言っていることが正しいなら、俺はロア直属の死徒。ロアにできて、俺にできないハズがない。
ロアは屋上のフェンスに手を掛けるとそのまま無理矢理よじ登り、ビルの上を駆ける。
俺も遅れて到達。だが、フェンスをよじ登る必要もない。ロアよりも俺の方が性能は上だ。これぐらいひとつ飛びだ。
「待ちやがれ!!」
血刀を投げつける。高速で飛んでいく刃は円盤のように回転し、ロアの脚を切り裂く。
「チィ!!」
ロアは器用にビルとビルの間を飛んでいき、とにかく俺から逃げていく。
アレだけイキっておいて、最後は尻尾を巻いて逃げる気か。
もう許さない。俺だって、ぶちギレるときはぶちギレるってのを、コイツに教えてやらなければならない。
生まれてはじめて、俺は生きものに対して殺意を抱いた。生きものを私的な理由で殺すなんて、あの日から、二度とないと思っていたけど。
神様、もう一度、俺に、誰かのために戦えるチャンスをください。
これは、俺のためじゃない。
住民たちのため、姉さんのため、みんなのため、そして、先輩のため。
長きに渡る俺たちとの因縁を、ここで終わらせてやろうじゃねぇか!!
「ロア────!!!」
「うぅぅぅぅ…………ぐっ!!」
わたしは、唐突に、何か、不思議な気分に襲われて、目を覚ました。
「白邪、くん………?」
ベッドで眠るわたしの横に彼はいなかった。彼が丁寧にたたんで床に置いていた服も、消えている。外出している………?
どうして、彼は消えたのだろう。白邪くんは、唐突に夜の散歩をするような性格なのだろうか。
ただ、何となく、わかる。気がする。
誰かの叫び声が、何となく、聴こえる、気がする。
最後に見せた彼の目は、すごく、変わっていた。いつもつり目がちな鋭い目付きは、細く、柔和で。木の板を貫くような尖った口も、あのときはとても柔らそうで。
わたしは、初めて、あの瞬間、白邪くんという人間をみたと思う。いつもの彼の面影はなかった。隣で寝そべる彼は、子供のように無邪気な瞳で。彼が混血だったということを忘れてしまうようだった。
人間と混血。交わってはいけないもの同士の愛。
けれど、あれは、あの顔は間違いなく人間だった。彼は、あの顔を隠していたんじゃない。きっと、あぁやって、愛し合った時に、あんな顔になるんだ。
鬼人の血によって不安定になっている自我が彼。射精などによって余分な部分を吐き出した姿。あれが、本物の中村白邪なんだって。
知らなかった。混血も、あんな風に、わたしたちと全く同じように、生きていけるなんて。
すごい。彼は本当にすごい。彼は、どんなに、強く生き続けてきたんだろう。自分が人間とは相容れないってわかっていながら、それでも、彼は人間と一緒に生きていくと決めた。その心の強さは、わたしたちとは比べ物にならない。仮に、100年間死ぬこともできずに拷問を受け続けても、彼ならば笑い続けることができるはずだ。
それぐらい、彼の心は、鋼のように
両儀総長から渡された資料によると、中村白邪は、人当たりが悪く、お人好しではあるが横暴である。と書いてあった。正直、実際そうだった。本当に優しいけど、彼は本当に横暴だった。正直、総長を見直してしまうほど、図星だった。思わず、総長は妹さん越えの人材じゃないのかと思ったくらいだ。
けれど、違った。今夜のあの顔、声。全てが資料と違った。いや、資料が違うんじゃない。わたしたちの考え方そもそもが間違っていたんだ。
混血は人間とは相容れないだなんて、そんな考え方自体、間違っていた。現に彼はその反例として残っている。
機会があれば、すぐに資料を改訂しよう。中村白邪は、ただの人間だったと。
「────────」
しかし、彼はあれほどの自我を持っていながら、なぜか鬼人の力を抑えきれていなかった。あの強靭な心があるなら、そもそも彼は資料通りの横暴な性格ではない筈だ。
彼が見せたあの姿は、鬼人の血すらも克服した姿。ならば、あれが、本来の姿でないといけない。けれど、彼はどれ程頑張っても、あの強い心があっても、鬼人の血だけは克服できなかった。
なぜか。それは、その強い心を、どこか、別のところに使っているとしか考えられない。
では、その別のところ、とは?
「まさか────白邪くん!!」
全てが繋がった。わたしは、すぐにベッドから飛び上がり、急いで両儀一派の制服に着替えて剣を取り、大急ぎでベランダから飛び降り、夜の街に駆け出していった。
「急がなければ────」
一刻も早く、白邪くんを見つけないと。白邪くんは、取り返しのつかないことになってしまう………!!
「────月」
空に浮かぶ下弦の半月。そして、それを背に飛び交う二つの雷光。
「────ヨエルとアスナロさん………?」
わたしは、そんなどうでもいい疑問を抱えて立ち止まったところ、すぐにまた走り出そうとした次の瞬間。
「────あ、あれは!」
月を背に、二人の人影が飛んでいった。どちらも、わたしには見慣れた影だ。一人はロア、わたしのお父さん、玄武の身体を器にした、あの吸血鬼。
そして、それを追うように飛ぶもう一人。
あれは間違いない。
「白邪くん!」
二人は街の外れに向かって走り出す。あの方向は、
「伊賀見総合病棟の方向です…………!!」
そう、ロアにとって、縁深い場所だ。わたしと白邪くんの、出会いの場所でもある。幼いころ、ロアが出現した瞬間の出来事。
「くっ………………!!」
なぜか。不意に、涙のようなものがあふれでてくる。そうだった。彼が、あんなことになったのは、わたしのせいだ。わたしが、彼をか弱い女の子と二人きりで逃がしてしまったことが、すべての元凶だった。
「──────ごめんなさい、白邪くん………」
────いや、それよりも。
あそこがロアのねぐらの可能性が高い。だとすると、ロアは結界を張ったであろう、あの病院の中において無敵と言えるだろう。
さすがの白邪くんも、万全のロアと拮抗するのは厳しい。一刻も早く、援護に向かわなければ。
「待っていてください、白邪くん………!!」
───さて、全ての真実が明らかになった今。
いよいよ、最終章が幕を開ける。
真祖と人形の激闘、吸血鬼と吸血鬼の闘い、そして、白邪と黒依の運命は………?
吸血鬼と鬼人と人間の三つの血を引く混血の青年、中村白邪の最後の闘いが幕を開ける……!