月姫 零刻   作:マジカル赤褐色

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カラフルランチタイム

 

4時限目が終了した。

さぁ、ここでお昼ごはんの時間である。お約束通り、先輩とお昼ごはんである。

 

「さて……先輩はどこにいるんだ………」

 

食堂をうろちょろして、ひとまず適当に空いている席をとっておこうと思っていたら、

 

「あ」

 

窓際の席に青毛の生徒が座っていた。間違いない、クロエ先輩だ。あっ!見て見て!机の上にハンバーグ二枚のってる!!大食いなんだね!

いや、バケモンじゃねぇかコイツー!!!

身を潜めて窓際の席に接近する。

うわ……ホントにハンバーグ二枚食べてる。しかもお行儀よく食べてるから余計にシュール。

 

「あ………どうも………」

 

もはや誰かわからないくらいに追い込まれていたため、恐る恐る声をかける。

 

「む」

 

口にハンバーグ頬張りながら俺に反応する先輩。いや、先輩だよね?(確認)

 

「あ……どうも」

 

「あぁ!!中村くんでしたか!すみません……待ちきれなくて先にご飯食べちゃってました……」

 

「ハンバーグ二枚食べるってことは相当待ちかねていたんですね………いや、楽しみにしていただけて光栄ですがね。さて、俺もご飯取りに行こうかな…………」

 

カウンターに体を向けてご飯を取りに行こうとしたところ、先輩に制服をぐいぐいされた。

 

「あ………何か?」

 

「待ってください、中村くんの為にご飯調度しておきましたので………」

 

「え?いや、そんな、悪いですよ、すいません、ご迷惑おかけして」

 

先輩が俺の机の上にハンバーグ三枚という地獄の地層を設置する。

 

「嘘でしょ、ハンバーグ三枚?」

 

「はい、育ち盛りの男の子はたくさんお肉食べてたくさん成長しないといけませんからね!さぁ、どうぞどうぞ、遠慮なく食べてください!昨日のこともありますから、今日は私の奢りです!」

 

すっげぇ!マジかよ!これ嫌がらせじゃないんだ!!こういうの、天然って言うらしいよ。

 

「は、はい、ではお言葉に甘えていただきます………」

 

俺肉あんまり食わないんだけどなぁ…………

まぁ、先輩のご好意だし、温かく受け取るとしよう。

 

「ふふ…………」

 

先輩がくすりと笑う。

 

「な………なに…………」

 

「いえ、その……学ランが絶望的に似合わないなぁって」

 

「が…………ほっといてください………赤毛は生まれつきなんですから」

 

多分先輩は俺の赤毛に緑の学ランが似合わないってことを指摘していたのだろう。そりゃそうだ。こんなの誰が見たって洒落てない。お洒落に見えるのは髪と同じぐらい赤色の上着着たときぐらいだ。先輩は青毛なのに、紺のセーラーがくっそ似合う。ずるくねぇかそれは。

 

「正直言うと?」

 

「風車みたいですね」

 

「その感想は初めて聞きました」

 

いや、確かに俺の髪型なんか風車っつーか、大型のファンみたいな形してるけど。

 

「あぁ!ちょっと、失礼なこと言っちゃいましたか………?」

 

「いえ、問題ないです」

 

いちおうちょっとヘコんだよ。

しかし、見るほどにこの人は美人だ。こうやって見つめ合うと少し恥ずかしくなってくる。

回りの生徒は俺たちをじーっと見ている。

ご飯に夢中で気が付かなかった。

 

「目立っていますね」

 

「はい」

 

確かに、蒼毛と朱毛が揃ってご飯食べてたら目立つだろう。

 

「それで、中村くん、借金取りをしているって、ほんとうですか?」

 

クロエ先輩は興味深々と訊いてくる。

 

「ま、まぁ、それに近いことは………」

 

「それって、時間帯って決まってます?」

 

「時間………?それは、その、取り立てに行く時間ってことですか?」

 

はい、とクロエ先輩はうなずく。

────時間?それがなんだって言うんだ。

 

「中村くんが取り立てに行く時間を言う必要はありませんが、夜に取り立てに行く場合は気をつけてください。知ってますでしょう?この乙黒町に、吸血鬼が出ているという事件」

 

「──────」

 

それは。確か、昨日……………

アスナの言葉を思い出す。

 

 

(吸血鬼事件………っていうやつです)

 

 

「─────まさか」

 

食堂の天井の隅についているテレビを見る。ニュースが大々的に報道されていた。

 

『昨日、乙黒町近郊で、30代男性のものと見られる遺体が発見されました。遺体は血液が著しく不足しており、警察は、近日多発している通り魔殺人事件の一件として、調査を進めています。乙黒町で起きている、遺体から血液を抜き取るという、異例の通り魔殺人事件は、これで六件目です』

 

「……………マジか」

 

これが、吸血鬼事件?

 

「先輩、吸血鬼事件って………これ?」

 

「あれ?中村くんは知らなかったんですか?だめじゃないですか、こういうニュースはちゃんと見ておかないと、危ないですよ」

 

クロエ先輩の台詞はもっともだ。

それにしても、こんな、こと、本当にあり得るのか?

 

「野郎……………!!」

 

許せない。既に六人も犠牲になっているんだ。六人もの罪のない人が、命を落としている。悪い事をしていない人が損をするのは頭に来る。報いにもならないし、それ相応の得もない。誰も得しない。そんな、

 

「────吸血鬼………この街は、いつからどうなっちまったんだ…………!?」

 

俺は誰に訊くでもなく、答えも返ってこないだろう、何もない、食堂を覆う只の虚空に問い掛けた。

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