ランダ・ギウ様、土屋 四方様、たかの様、げんまいちゃーはん様、青年T様、誤字報告ありがとうございます
俺達が会場に入ると奇妙な光景が広がっていた。
前半分に一科生が座り、後半分に二科生が座っている。一科生が自らを優等生と、そして二科生が自らを劣等生として認識している故の、構築された無言の同調圧力であった。
そんな光景を目の当たりにした俺達だったが、直ぐにスコープが俺に問い掛けてくる。
「これは私は前に座った方が良さそうかな?」
正直有難い申し出であった。入学早々に注目される事は避けたかったし別に話す訳でもないのだから無理に一緒になる必要もない。
俺はスコープの提案に対して了承の意を伝えた。
「了解した。また後で会おう、達也。」
……正直なところ、こんなに早く友人ができるとは思っていなかった。自分でもあまり社交的な性格ではないと自負している。だからこそスコープの事も何か裏があるのではないかと疑ってしまっている自分もいる。
そしてそんな自分に少しばかりの嫌悪を感じてしまう。
(今度師匠に調査を依頼しよう。それで白だったならば普通の付き合い方でいいだろう。)
そうして俺は可愛い妹の答辞に耳を傾けた。
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(達也は司波深雪のガーディアン。ならば司波深雪とも友好的な関係を築くべきだな。達也の事を褒めれば少なくとも敵対的な関係にはならないだろう。今の内に会話のレシピを考えておくか。)
そんな事を考えていると隣の席から声が掛かってきた。
「ねぇ、貴方って外国人?」
「雫っ!初対面の人にいきなりそれは」
「問題ないさ。言われ慣れてるからね。母がドイツ人で日本に亡命して来たのさ。」
隣に座っている少女達に自己紹介をする。と、同時に神殿から二人の情報を分析する。
(エレメンツの末裔に、北山家の長女か。戦闘力なら
目の前の少女達の利用方法について考えながら自己紹介を交わす。正直もう彼女らについての情報は内心以外全てインプットされているが、自己紹介をしないのも不自然だ。私は内心で面倒臭がりながらも自己紹介をする。
「っと、自己紹介がまだだったね。私の名前はスコープ・ライノール。良ければ君達の名前も教えてくれないかな?」
「えっと…私の名前は光井ほのかって言います。で、この子は」
「北山雫」
「光井さんに北山さんか。これから三年、共に勉学に励む仲間としてよろしく頼むよ。」
彼女達と話をしながら司波深雪の答辞に耳を傾ける。やたらと平等に関するフレーズが多い。彼女に接近するならそこから攻めた方が良さそうだと思いながら明日すべき事をリストアップする。
司波深雪はA組、司波達也はE組、私はA組。ついでに目の前の二人もA組に配属されるのは既に確定している。
司波深雪に近付きすぎれば警戒される恐れもある。
達也との関わりを使って司波深雪との第一印象を良くしておく程度でいいだろう。
どのような会話をするべきか脳内でシミュレーションしながら光井ほのかと北山雫と話している間に答辞は終了した。
二人にクラス分けを一緒に見ないかと誘われたが、そんな事に時間を使う気など毛頭ない。勿論そのまま口に出すような事はせず、先約があるからと理由を付けて断った。
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入学式が終わるとIDカードが交付される。
俺は偶然近くに座っていた柴田美月と千葉エリカと一緒に窓口へと向かい、美月とエリカが三人共にE組である事を喜んでいるのを尻目に近付いてくるスコープに会釈した。
「やぁ達也、さっき振りじゃないか。クラスは何処だったんだい?」
「E組だな。スコープは何処だ?」
「私はA組だったよ。一緒のクラスになれなかったのは残念だ」
「あぁ。俺も少し残念だよ。」
「だが共に勉学に励もうではないか。ところで其処の二人は誰なんだい?」
少し目配せをする。名前を教えてもいいか問いかける。二人とも無言の頷きを返してくれた為、スコープに二人を紹介する事にした。
「メガネを掛けている方が柴田美月さん、もう一人の方が千葉エリカさんだ。」
エリカから非難の感情が籠った視線を受ける。正直俺も言ってて少し雑過ぎるかもしれないと思っていたが、女性を紹介するという経験自体が不足している為に多少は大目に見て欲しいと思った。
そしてそんな俺の少し雑な二人の紹介を聞いてスコープもまた二人に自己紹介をする。
「初めましてお二方。私の名前はスコープ・ライノール。母親がドイツから亡命してきたドイツ人で、父が日本人なんだ。」
そこまで言い終わるとスコープは俺に話し掛けて来た。
「司波って事は新入生総代が達也の妹なのか?」
「あぁ、自慢の妹だ。」
「妹さんも達也の事はさぞかし自慢だろうさ。」
他愛もない会話を繰り広げていれば、丁度話していた話題である深雪がやって来た。
「お兄様、お待たせいたしました。」
深雪が俺に話し掛けてくる。それを見たスコープもまた軽く会釈をしてすぐに深雪に話し掛けた。
「君が深雪さんか。達也から聞いているよ、何でも世界一自慢の妹だとか。」
「自慢の妹とは言ったが世界一とまでは言ってないぞ。」
「でも心の中ではそう思ってるんだろう?」
「それはそうだが、発言を偽造するな。」
深雪は俺とスコープの会話に呆気に取られたようであった。無理もない。俺も正直数時間にも満たない時間で何故ここまで仲良くなったのか疑問に思ってしまう程だ。そんな事を思っていると、スコープが腕時計を見てその端正な顔立ちを残念そうに歪めた。
「すまないね、達也。本当はもう少し話してたいのだが、この後に少し用事があってね。今度埋め合わせに飯でも奢るから許してくれ。」
そう言いながら名残惜しそうに、かつとても焦った表情を顔に出しながらスコープが校門の方向へと向かっている。
……スコープがいなくなってしまったせいで男女比が傾いてしまった。俺はこの状況をどうにかやり過ごそうと頭を働かせるのであった。
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一柱の魔神柱の眼が一点を凝視する。その視線の先には髑髏の面と黒衣を身に付けた一人のサーヴァントがいた。名はハサン・サッバーハ。暗殺教団の教主として在位していた暗殺者。
魔神バラムは普通の英霊では召喚しても魔神柱に敵対すると考えた。だからこそ、このアサシンが召喚されたのだ。
聖杯を求める程の願いがあり、かつ暗殺者である為に汚れ仕事を厭わない。
そしてバラムが求める条件にも合致している。
そんな経緯で召喚されたアサシンが魔神バラムと会話している。
『我々に協力するという事でいいか?アサシン』
「我が願いが叶うならば」
『聖杯は貴様の暗殺が成った時にこそ渡してやる。決行日は4月23日だ』
「心得た」
『司波達也の情報については先程の資料の通りだ。なんとしても殺せ。油断も慢心も不必要。持ち得る限りの全てを用いて殺すのだ』
「承知」
『決行日までは自由に過ごせ。現代を満喫するもよし、暗殺に備えて第一高校を偵察するのも問題ない』
「はっ」
此処で少し魔神バラムについて解説しよう。
伝承においてバラムは
「序列51位。
40の軍団を指揮する王。
しわがれた声で過去と現在と未来について正確な答えを述べる他、人を透明化させ賢くさせる能力がある。」
とされている。
故に魔神柱にはソロモンによって透明化の能力が付与されている。
ただの透明化ではない。視覚からも聴覚からも嗅覚からも外れ、機械の感知からも果てには世界からすらも外れる透明化である。
そして他者に対しても透明化を付与可能である。
尤も、他者に透明化を付与する場合においては『魔神』ではなく『悪魔』として付与する為に性能が低下するが、それでも絶大な効力を発揮する。
その透明化が生粋の暗殺者に付与される。元よりアサシンならば気配遮断スキルを持つが、この透明化は攻撃の際にも解除されない。
現在の司波達也であっても苦戦は必至。だが魔神バラムは意にも介さない。試練は難しければ難しい程に乗り越えた際の成長が大きくなる。
だからこそ魔神は暗殺者を焚き付ける。
誰も気が付かない中、暗殺者の刃は静かに研ぎ澄まされていた。
サーヴァント:霊核を中心に魔力で編まれた高位の霊的存在。基本特性として物理的干渉を遮断する能力を持つ。
魔神の加護:それぞれの魔神に応じた特殊能力を付与可能。劣化はするが、それでも強力なモノばかり。