魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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戦闘描写が楽しすぎる。ついつい筆が乗ってしまう。

土屋 四方様、誤字報告ありがとうございます


17話:灼熱のハロウィン

10月31日。横浜事変の翌日に俺は対馬要塞に来ていた。未だに腕と脚の痛みが残り続けており、精神もまた疲弊していた。何度も何度も己を殺し得る怪物に襲撃されればこうもなろう。

 

寧ろこれだけで済んだのは幸運であった。突如として敵兵の死体が変異して襲い掛かってきたり三連続で強襲された事もあった。

途中で死体が残っている事がトリガーだと気付いてからは塵すら残さないように分解したから大分落ち着いたが、それに気付くまでに傷を負い過ぎてしまった。

 

あの怪物が深雪達に襲い掛からなかったのは不幸中の幸いだろう。というか執拗に俺だけを狙い続けてきた所には不気味さすら感じられた。

何回も他の魔法師を殺すチャンスがありながらもその全てを無視して襲ってくるモノだから何者かの意図を感じずにはいられなかった。

 

斬られた腕と脚は何とか治療できたが今でも少し動かし辛い。リハビリが必要だと言ってくれたDr.ロマンの言葉が蘇る。

 

あの人も確か病室に侵入してきた司一と交戦して腕を切断された筈なのにたったの数時間で腕を治療していたしやっぱり何処かのエージェントなのではないか?

 

そんな疑惑を振り払って俺は目の前の事に集中する。サード・アイを用いて敵陣の戦闘旗にマテリアル・バーストを使用する。

 

敵艦隊の消滅を確認して、サード・アイを降ろし帰還しようとする。戦略級魔法の凄まじさを目の当たりにして動揺する者達もいたがそんな事は関係な──

 

「報告いたします!時計塔から文書が届きました!」

 

若い士官が部屋に入るなりそう叫ぶ。今さっき大亜細亜連合の艦隊が消滅したのにも関わらず全く知らない組織からの文書に慌てる若い士官に対して誰かが言葉を発する。

 

「そんなに慌てるな。文書には何と書いてあったんだ?」

 

当然の疑問であろう。内容が分からなければ反応のしようがない。ここにいる人間の大半が時計塔という組織も知らぬであろう。

 

だが達也は例外である。友人であるスコープ・ライノールより予め時計塔についての知識を有していたが故に思考を回し始める。

 

(時計塔。英国の非合法古式魔法師団体だったか?このタイミングで何をしようとしている。)

 

だがそんな思考も次の瞬間に吹き飛ばされる。若い士官が発した文書の内容は衝撃的と言わざるを得ないレベルの物であった。

 

「はっ!何でも戦略級魔法師である四葉達也どのに共同戦線の申し出をしたいのだとか。」

 

情報が漏洩している。何故自分の情報が漏洩しているのかが理解できない。時計塔からのスパイでも居たのか?

 

だがスコープは生まれも育ちも日本だ。時計塔との関わりも薄い。だとすれば時計塔に在籍していたロマニ・アーキマンかだろうか?だがそれにしてもどうやって情報を見つけた。いや、そもそも共同戦線とはどういう

 

高速で頭を回転させる。情報が足りない。時計塔は何と敵対している、時計塔は何が目的なのだ。

 

戦略級魔法師の素性が漏洩している事実に震える他者を置き去りに若い士官に文書について尋ねる。

 

内容としては概ね英霊召喚という古式魔法を悪用する者が日本に潜んでいる。それを滅ぼす為に部隊を派遣するので協力して対処して欲しいとの事であった。

 

マッチポンプかと疑うがマッチポンプだとしても意味が分からない。送られる人員についても詳細に記されており、既に出港した事も記されていた。

 

不安を抱えながらも、後世に灼熱のハロウィンと呼ばれる日を俺は終えた。

 

 

■

 

 

我は小型の船舶に乗って日本に向かおうとしていた。時計塔院長としての業務は補佐のバルトメロイに丸投げしている。アトラスの契約書と引き換えにすればブラックバレルは入手できるだろう。

 

船と言ってもその形は異端も異端。クジラを模した形の船であり、今にでも動き出しそうな質感を持っている。勿論理由がある。この船は元々水棲の幻想種であった。霊墓アルビオンで狩猟された生命であり、ブリシサンが直々に船に改造したのである。

 

兵士達が乗り込む。彼は英国軍の兵士であったがウッドワスとの交流によって絆を築き上げていた。その心の隙間に我は暗示を掛ける。我はランサーを伴って船に乗り込んだ。

 

目的地は日本、途中エジプトに寄ってブラックバレルを入手する。

目標は決まった。ならば後は進むのみ───

 

 

■

 

 

2095年10月31日未明。北大西洋にて

とある船の残骸が転がっている。周囲には戦いの跡が刻まれている。

発端は魔神柱の出現。ブラックバレルを危険視した魔神柱は英霊召喚によるカウンターも厭わずに魔神ザガンを顕現させた。

 

 

魔神ザガン。

伝承においては

「序列61位。

33の軍団を率いる地獄の王にして総裁。

ワインを水に、水をワインに、そしてあらゆる金属をその土地にある硬貨に変換させることが出来る。 」

とされている悪魔である。

そしてソロモン王によって与えられた能力は金属の変換。

 

それを用いて魔神ザガンは出現と同時に兵士達の鉄分を交換して殺害した。勿論、ブリシサンも対象であったが咄嗟の結界によって防げた。ランサーとウッドワスも血の通わない存在である故に能力を無効化したが、兵士は軒並み全滅した。

 

絆が生まれていた部下を皆殺しにされたウッドワスは怒り狂い咆哮を上げる。衝撃波とも形容できる咆哮によって海は荒ぶり、咆哮を叩きつけられたザガンは弾き飛ばされた。

 

同時に英霊召喚がその真価を発揮する。確実に魔神ザガンを滅ぼせる英霊として騎士王を召喚する。

 

聖槍を手に持つ嵐の王の顕現。それに呼応するかのようにランサーがその宝具を開帳する。因果逆転の槍ではない。

 

そも目の前の相手には命中よりも威力を重視した方が良いという理由で対軍宝具が一柱の魔神を殺害する為だけに放たれる。

 

「突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

対軍宝具の名に相応しい威力が余す事なくザガンに叩き込まれる。その醜悪な肉体が穿たれ削られる。

 

だが怪物は未だに健在。夥しい量の魔力を照射する準備を即座に終えて放つ。

 

『身の程を知れ!焼却式ザガン』

 

放たれた破滅の一撃が船を吹き飛ばす。それでも消滅しない辺り、流石は幻想種製の船であろう。

 

ブリシサンは結界によって己を守護し、ウッドワスは単純な防御力で身を護り、両者とも傷一つ付くことはなかった。

 

沈みゆく甲板の上からウッドワスが跳躍する。音速を超える跳躍によってソニックブームが発生するが、気にも留めない。己の部下を殺害した敵に誅罰を下そうと思い切り腕を振るう。

 

亜鈴であるウッドワスの全力の攻撃によって魔神柱が壊される。それでも怒り狂った狼は止まらない。蹴る殴る蹴る蹴る殴る蹴る殴る殴る殴る殴る蹴る殴る殴る蹴る蹴る蹴る蹴る。壊される、解体される。聳え立つ魔神柱が怒涛の攻撃によって破壊されてゆく。

 

だがそれでも魔神ザガンは再生を続ける。彼の役割は遅延である。故に全力で抵抗を続ける。ブリシサンの魔力によって可能となる連続真名解放が襲いくる。単純な暴力の化身であるウッドワスの攻撃を撃ち込まれ続ける。

 

構わない。ザガンの目的は船を破壊した時点で殆ど達成されている。

時間神殿から送られる魔力を用いて再生し続けるザガンであったがエルサレムの神杯は絶対に討滅可能な戦力しか送り込まない。

 

聖槍ロンゴミニアドを保有する嵐の王がその真価を発揮しようとする。ザガンは半ば惰性で時間神殿から送られる魔力を迎撃に転用する。真名解放の僅かな隙に再生すらも放棄した全力の焼却式を放とうとする。

 

「最果てより光を放て。其は空を裂き地を繋ぐ、」

 

『遅い!焼却式ザガ──』

 

しかし当たらない。神代より生存し続ける魔術師が防ぐ。高速詠唱によって急速に五大元素が収束し加速する。真エーテルが顕現する。

そして目の前を破壊する為の極めて原始的な魔術(ビームブッパ)が放たれる。

 

「神代の残り香を堪能しろ。真エーテル、解放」

 

焼却式と真エーテルがぶつかり合い相殺される。その衝撃で津波が発生する。勿論ブリシサンは欠片も気にしない。そして焼却式が防がれた以上ザガンは最早打つ手なしであり、

 

「嵐の錨!最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

 

ザガンは光の奔流に飲み込まれて消え去った。

 

 

■

 

 

そんなこんなで我は遭難した。いや、遭難というか魔神柱の襲撃で船を破壊された。

 

……此処から徒歩でアトラス院行って日本行くとなると大分アレだな。

しかも派手にやったせいで魔法師が向かってきてるし。あの英霊クレーター作る事ないだろう。後処理が今からでも面倒臭い。

 

だがアトラスの契約書は無事、ウッドワスも落ち着いた。ランサーも健在。さて、アトラシアの後継者の顔を拝みに行きますか!

 

 

■

 

 

僕は戦略級魔法にドン引きしていた。当たり前である、あんな破壊力のある魔術とかソロモン時代でもあまり使わなかったぞ。

 

別に初めて知った訳ではないが何度見ても恐ろしいものだ。同時にこんな恐ろしい魔法も支配できる十の指環は更に恐ろしい。

 

指環がゲーティアの手の中にある以上は正直ゲーティアが現実世界に出てくるだけで地球がヤバい。英霊召喚も僕の推測が正しければネガ・サモンで潰されるのだからどうしようもない。

 

ゲーティアの目的がエルサレムの神杯の破壊だからまだ直接出てこないであろう事が救いだ。訣別の時来たれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)とか絶対使いたくないから頼むからブラックバレル持ってきてくれーブリシサン。

 

司波達也も司波達也で大分おかしいがな。突然変異にしてももっと自重して欲しい。攻撃力高過ぎじゃないか?絶対過剰だろ。

 

まあそんな事は良い。問題はセーレを撃ち殺したせいでちょっと動き辛くなった事だ。あれを機に僕は恐らく魔神柱に警戒された。観測所なら人間一人を常に観測し続けるくらいどうって事ないだろう。僕が保証する。

 

ブリシサンと連絡取りたいけどこの状況で取ったらそれこそ殺されそうだしな。流石に魔神柱は出さないにしても普通に刺客を送ってきそうだし。今の僕サーヴァントと戦える力とかないんだよなぁ。

 

そんな事を思いながらニュースを見てると速報が入ってきた。

マテリアル・バースト関連は既に速報として放送してるから少なくとも違うだろう。興味を抱いた僕はそれを見て、絶句した。

 

「北大西洋で大地震!?現地の人々は怪物を目撃したと証言」

 

一瞬読むかどうか躊躇する。魔神柱に監視されている現状で見ていいのか、更に目をつけられないのか。そういった疑念が僅かばかり湧き上がるが無視してニュースを閲覧する。

 

光の柱だの肉の柱だのと言った情報で察した。魔神柱が現実世界に来るとは。英霊召喚の隠蔽も出来てないっぽいし僕はとても憂鬱になった。

 

 

そんな事を考えていれば端末に連絡が入る。送り主は司波達也、こんな真夜中に何の用かと思う。

もしかして僕って夜更かしするタイプに見えるのでだろうか?事実そうなのだがもう少し遠慮して欲しかった。

 

内容としては時計塔関連だろう。魔神柱に監視されている状況で何処まで話していいのか悩むが取り敢えず聞かない事には始まらない。

 

「夜更かしはダメだよ〜」

 

この後メチャクチャ説明した。

 

 

■

 

 

『ザガンより報告。遅延作戦は成功した。船員はブリシサンとウッドワス、クー・フーリンを除いて全滅。船も轟沈した、また戦闘に反応した現地軍と接触している』

『イポスより称賛。ウッドワス、ブリシサン、ランサーの三名を突破して移動手段を削ってくれたのは実に喜ばしい。日本に辿り着かれては大変困る』

『ウァプラより警告。ブリシサン一行が現地軍を殲滅してアトラス院へと向かっている。目的は推論の通りブラックバレルであろう。アトラスの契約書が確認されている』

『グラシャ=ラボラスより追記。アトラス院は現在封鎖されているが扉を開ける為の手段をブリシサンが有している事は明らかである。仮に持っていたとしてもコストとリターンが釣り合わない故に奪還しようとはしていなかったが今後はどうする?』

『ベリトより帰還。なのだが、何故魔神柱としての姿を晒した?この間抜け共が!統括局は何をしていたのだ!』

『オリアスより嘲笑。こういう事態が発生するから接続を切る方が馬鹿なのだ。簡単に言えば我々の存在が第一次人理定礎破壊の記録によってエルサレムの神杯より露呈したと推測されている』

『ベリトより困惑。前言撤回だ。そんな大事な事を何故今の今まで察知できなかった!職務怠慢どころではないだろうが!』

『フォルネウスより弁解。我々にとってエルサレムの神杯の破壊は時計塔事件の際には既に決定事項であった。破壊するという点に目を奪われていて神杯そのものには目を向けていなかった』

『バルバトスより疑問。ブリシサン一行にはどう対処する?神杯が健在な状況下では英霊召喚も相まって奴らの討伐が不可能だ』

『フェニクスより回答。兎に角妨害し続ける。ウッドワスとクー・フーリンはブラックバレルに触れないだろう。必然ブラックバレルを持つのはブリシサンという事になる』

『ハルファスより代弁。だから徹底してブリシサンの行動を妨害し続ければ一行の動きを停滞させられる。本来ならば司波達也には時計塔と敵対して欲しかったがこの際保険を使っても構わない』

『ザガンより苦情。聖杯と同規模の魔力炉を与えられて尚ボコボコにされたのだが』

『バアルより了解。妨害はサーヴァントと我らが共に行うのだな。司波達也を利用するタイミングはどうする?』

『ゼパルより提案。本来なら即座に行うべきだが、ブリシサンと結託していると見られるロマニ・アーキマンの目がない状況が望ましい』

 

『ゲーティアより決定。妨害役は古くからの伝統である"コイン"を用いて決める。異論は許さん』

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