魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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かなり雑ですがお許し下さい。


19話:転校生

私は目の前の女の自己紹介を聞いていた。私にしてみれば初詣で一度目にした素晴らしいセンスの持ち主でしかないのだが、時間神殿からの情報によればスターズ総隊長で戦略級魔法師であるらしい。

 

…余剰次元理論に基づくマイクロブラックホール生成・蒸発実験にパラノーマル・パラサイト。正直処理に困る、何なら放置したいが流石に非効率的だろう。

 

取り敢えず自己紹介だ。人間社会で暮らすのに自己紹介は欠かせない常識だ。ボクは貴様のやらかしを忘れてないからな、常識を語るな。オレはこれからもっと常識を身に付けて貰いたいと思うが、そもそもこの段階まで行けばあまり常識とか関係ないような気もするな。

 

「私の名前はスコープ・ライノール、これから三ヶ月よろしく頼むよリーナさん。」

 

取り敢えずオレの能力で親近感でも抱かせるか?お互い純日本人じゃないっていう共通点もあるし不審には思われないだろうし。

バレた時が怖い。精神干渉系の魔法が使えると誤解される危険性を考えてボクは反対だ。

私としては最後まで取っておきたい。初見殺しとして機能させる為には先ず初見でなくてはならないならな。

 

「ライノールって、あのライノール?」

 

どのライノール?ウヴァル、グシオン他にライノール家が存在するのか?

魔術師の家系でライノール家は我々だけの筈だ。

 

「ドイツの名門で何年か前に全滅したっていう。」

 

…ドイツの本家の話か。何処でUSNAがそんな事を知ったのかは興味ないが何か反応を返しておくか。

 

「全滅した?ライノール家が?」

 

「えぇ。貴方は知らなかったの?」

 

「聞いた事もない。帰ったら母に尋ねてみるよ。教えてくれてありがとう、リーナさん。」

 

この女の魔法力を鑑みれば正面戦闘は魔人体であっても避けたいな。いや、それは元からだが。

 

今後はアンジェリーナ=クドウ=シールズの性格の把握を優先的に行うとするか。

 

 

■

 

 

食堂で俺はUSNAからの留学生、或いは留学生として潜入してきたアンジェリーナ=クドウ=シールズを警戒しながらスコープの話を聞いていた。

 

「何でもライノールの本家が全滅していたらしくてね。私としては本家の遺産を全て相続したいんだけどどうすれば良いと思う?」

 

突拍子がない。情報量が多すぎる。本家が全滅?遺産を相続したい?俺は一年近い学校生活の中で目の前の優等生が天然ボケだと思い始めていた。

 

実技も理論も五位以内に入り続けておきながら日常生活ではどうしてこうも変わり果ててしまうのだろうか。

 

実習で深雪相手に勝率三割をキープしつつ理論も平均90代、そんな好成績でありながら人当たりも悪くない。勿体ないという言葉が脳裏に浮かぶ。

 

俺は考えるのも疲れて言葉を吐き出した。

 

「そもそも何処で本家が全滅したなんて知ったんだ?」

 

「リーナさんに教えて貰ってね。間桐さんも多分知っていただろうに何で言ってくれなかっただろうか。」

 

間桐、確か外務省の高官にそんな人間が居たな。何でもスコープの保護者らしいが、まあ伝えたくない気持ちもわかる。長年付き合ってきたからこその判断だろう。

 

「しかし本家はドイツにあるのですよね?遺産を取りに行くのも難しいのではないですか?」

 

俺の考えを深雪が代弁してくれる。魔法師は海外渡航が厳重に管理されているのが常識だ。今回の交換留学だって灼熱のハロウィンの影響で許可された特例だ。

 

「確かにそうだな。国に任せるよりは私に任せた方が有効活用できるだろうに…」

 

強ち間違いではないのかもしれないのが面倒臭い所だな。スコープの性格はともかく優秀である事は疑いようもないのがタチが悪い。

 

しかしドイツ、欧州と言えば最近はアフリカでの時計塔の活動にご執心のようだ。自国の近辺で暴れられているのだから無理もないだろう。

 

時計塔の院長についてはスコープとDr.ロマンからの情報しか得られていないが間違いなく熟練の魔法師だろう。

 

後でDr.ロマンを詰問する事を決めて俺は再び会話に戻る。

 

「スコープは本家が全滅したって聞いてどういう気持ちなんだ?」

 

スコープ自身はライノール家で育っていない。母親がライノール家から逃れる為に亡命した事くらいしか知らないだろう。そんな彼がどういう気持ちを抱いているのか知りたくなった。

 

「別に、何も?」

 

心底不思議そうな顔でスコープはそう言った。そんな質問をするなんて意味がわからないと言いたげな顔だ。悲嘆も愉悦も存在しない空っぽな声音。

 

「ちょっと冷たすぎるんじゃない?」

 

エリカが静寂に耐えきれなくなったのか口を開く。スコープが纏う空虚な雰囲気を吹き飛ばそうとする。

 

途端、空虚さは霧散した。スコープの無機質なすら感じさせる顔が困ったように様相を変える。人間味を取り戻したスコープが弁解をするように言葉を発する。

 

「正直実感がないからね。母なら別の感情を抱くかもしれないが私としては他人事のように感じられてしまうのさ。」

 

スコープ・ライノールは変人だ。時々、人間ではないナニカと話しているような気分になる。

 

 

■

 

 

『バティンより報告。アトラス院の攻性理論を第十三層まで突破。されども破壊に至らず英霊によって討滅された』

『サレオスより追記。尚かつ我々の活動を危険視した新ソビエト連邦がイーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフを投入した。トゥーマン・ボンバが使用され三割の質量が破壊された』

『アイムより報告。クー・フーリンがブリシサンとウッドワスのアトラス院突入時に離脱。霊体化したまま日本へ直行している』

『イポスより予測。我々の遅延戦術によってブリシサン一行は二ヶ月掛けても大陸を走破できていない。クー・フーリンが抜けたならば更に遅れるだろう』

『モラクスより追記。だが霊体化したクー・フーリンは止められない。最高速度で直進し続けている。近い内に日本に到達するだろう』

『ナベリウスより提案。USNAの実験で来訪したパラノーマル・パラサイトとの協力体制を築くのはどうだろうか?英霊召喚に引っ掛からない駒として奴ら利用できるだろう』

『グシオンより了解。念の為オレが主体となった魔人体として活動しサイオンの特性を誤魔化そう』

『ボティスより確認。我々が司波達也を利用する為に爆弾を仕掛けるタイミングは何時にする?』

『フラウロスより返答。場所が未確定だ。更に現在Dr.ロマンは私が魔神柱だと喧伝していないが理解しているだろう。時計塔側の存在であるクー・フーリンがDr.ロマンの元へ辿り着く前に殺害しておきたい』

『プルソンより再確認。Dr.ロマンは基本的に魔人体で殺害できる故に問題はない。セーレが殺されたのは奴が間抜けだったからだ。今考えたいのは司波深雪に確実に損傷を与えられるタイミングだ』

『セーレより抗議。誰が間抜けだと言うのだ。Dr.ロマンのバイタルをよく確認しておらず凶器の所持を見逃していた観測所の失態ではないのかね』

『フォルネウスより反論。バイタル自体はノンレム睡眠を示していた。銃については所持者が睡眠中であるが故に無意味だと判断していたのだ』

『ゼパルより転換。司波深雪に損傷を与えられるタイミングは司波達也が警戒を解いたタイミングが好ましい。必要とあればサーヴァントを召喚し、サーヴァントが打倒されたタイミングで攻撃するのも良いだろう』

『アイムより報告。ブリシサンとウッドワスがアトラス院から帰還。ブリシサンがブラックバレルを保有しているのを確認した』

『バアルより推論。ブラックバレルが持ち出された以上『蛇』と『鴉』と『獅子』は問題ないだろう。神秘が深すぎる故にブリシサンに近付けない』

『ゲーティアより決定。優先順位は上から順にパラノーマル・パラサイトと接触、盤面の整理と爆弾の設置、Dr.ロマンの殺害だ』

 

 

■

 

 

エジプトの一角が異形の怪物共によって襲撃を受けていた。

 

アトラス院。三大魔術協会の一つであり、人類の未来の為に研究を続ける魔術師の巣窟。だが現在、アトラス院は二重の攻撃に晒されていた。

 

一つ、魔神柱による攻撃。時間神殿から無尽蔵に支給される魔力に任せて非効率極まりない魔力照射と体当たりで防壁を少しずつ削っていた。

 

二つ、外国からの攻撃。新ソビエト連邦、西EU、東EUが力を合わせてアトラス院と魔神柱を攻撃していた。

 

大量の中距離弾道ミサイルにクラスター爆弾、焼夷弾に地中貫通爆弾にロケット弾。

 

地中海を対象にした戦略級魔法『トゥーマン・ボンバ』まで用いた国家群の攻勢はアトラス院の防壁こそ壊さなかったが魔神柱を三柱討滅する事には成功していた。

 

山のような威容を誇り、数多の魔法を操り、鋼鉄を遥かに凌ぐ肉体を保有する魔神柱を人類の叡智が消滅させたのだ。

 

裏切りの魔女の宝具によって魔神柱達が対熱障壁、物理障壁等の魔法が使えなかった事も一因かもしれないが紛れもない快挙であった。

 

……尤も魔神柱はすぐに再誕したのだが。埒外の妖魔。人間に寄生せずに独立して活動する超常的存在。

 

通常兵器でも破壊や殺害は可能であるが再生する。素の耐久力が極めて高い。出現と同時に高位の霊的存在が討滅にかかる。

 

総評としては時間制限が存在する怪獣といった所であろうか。殺しても再生するのならば攻撃は徒労。放置しても対処されるのならば自国の防衛に専念するだけで良いだろう。

 

世界は二ヶ月の間に魔神柱の脅威をそのように把握した。

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