魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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グロ注意


22話:襲来

溜め息を吐く。ランサーに命じてスコープ・ライノールを攻撃させたのがつい昨日の事。

 

ランサーが日本に辿り着いてからは殆どスコープ・ライノールの監視に当たらせている。

 

僕を警備させ続けるよりはそちらの方が良いと判断したが故に、バレないようにと命じて監視させているのだ。

 

…それで本当にバレないように監視できるのは戦で名を馳せた英雄だろう。

 

正直私(・)でも出来る気がしない。体力と集中力が保たないしどれ程の塩梅かも分からないのだ。

 

得意分野の違いでしかないが、見るとその能力が羨ましく思えてきてしまう。

 

前に一度だけ八極拳を習おうとしたのだが修練が厳しすぎて一日で挫折した事があるのだ。

 

あの時はウッドワスに笑われたし、腹が立ってウッドワスにもやらせたら軽々と成し遂げてて唖然としたものだ。

 

生前、というかソロモン王時代は特に楽しさとか考えずに魔術を開発してた実感が湧かなかったけどあのボディはやはりチートだった。

 

今では新しい魔術を考えようとしても全く思い付かない。魔神柱とか新しく作れないかなと思ったけど普通に無理だった。

 

あの身体で鍛錬してみれば格闘戦も強くなれたのかな、とか私が現世で新しく魔神柱作ったらどうなるんだろうとかという現実逃避を振り払い、僕は意識を今に戻した。

 

「それで、あの悪魔が暗躍していたと?」

 

司波達也が僕に問い掛けてくる。傍には司波深雪も控えているが、スコープ・ライノールはいない。

 

質問の内容に彼が昨日目撃した魔人だろう。既にランサーからは共闘したとの報告が入っている。

 

腹に穴が空いたのに淡々と報告してきた様にはかなり恐怖を感じたが、神話での彼の最期を思えば何ともないのか…?

 

「そうだとも。そしてその正体はスコープ・ライノールだ。」

 

あ、ランサーから念話来た。案の定フラウロスの奴滅茶苦茶表情歪めてやんの。

 

スコープ・ライノールが青筋を浮かべて人を殺しそうな眼をしていると報告を受けて僕は満足気に頷いた。

 

いい気味だ。何日魔神柱のせいで徹夜させられたと思っている。夜更かしは乙女の敵だと言うのに。

 

前世も含めればお婆ちゃんだしDr.ロマンとしての年齢もアラサーだが、それでも乙女と言えば乙女なのだ。

 

最近はランサーに任せて安眠出来るようになったが、それでも恨みを忘れた訳ではない。嫌がらせはしておきたい。

 

「──馬鹿な。あり得ない。」

 

唖然とした顔で司波達也が呆然と呟く。隣に控えていた司波深雪も手で口を押さえており、驚愕が窺える。

 

友人が怪物で襲撃を仕向けた犯人だと聞かされれば驚愕するのも無理はない。それにしては切り替えが早い気がするがな。

 

唖然とした顔を即座にいつもの無表情に戻した司波達也を見て僕はそう思った。

 

「何か根拠が?」

 

司波達也が真剣な声音で聞いてくる。返答が難しい。ライノール家は三千年前から魔神の手先だったとか話しても納得して貰えないだろう。

 

それにスコープを意識させられただけ御の字だ。スコープを信じようが信じなかろうが、意識する事に変わりはない。

 

最悪の事態はスコープに対して無警戒のまま唯の友人としか見ない事だった故にこの時点で目標は達成された。

 

「根拠はない!」

 

返答をした後に追加で何か聞きたそうにしている司波兄妹を放置してその場から立ち去る。

 

後でランサーからスコープの動きを教えて貰おう。絶対面白いに決まってる。

 

 

■

 

 

俺はパラサイトが寄生していた人物、ミカエラ・ホンゴウに対するスコープの蹂躙劇を観ながらDr.ロマンに言われた事を思い返していた。

 

スコープが魔人の正体である。そんな冗談みたいな話を聞かされたのはつい先日の事だ。

 

だがそう言われたとしてもスコープとは入学してからの付き合いでしかないがそんな事をするとは到底思えない。

 

一度だって他人を見下す事なく、聞かれた事に対して真摯に自分の知る全てを答え、自分の能力に驕らずに研鑽と研究を続ける。

 

形容するのならば求道者だろうか?正に魔法を、魔術の秘奥を探ろうとする魔道の徒である。

 

彼の母親の生家が魔術師の家系だという事も関係しているのだろうか。一度スコープから聞いた根源を目指し続ける狂人こそが魔術師だという言葉が脳裏に浮かぶ。

 

思考が纏まらない。スコープは大切な友人だ。だが、もしも、深雪に手を出すというのなら……

 

──殺すしかないだろう。

 

其処まで考えて一時的に思考を断ち切る。そうだ、それさえ頭に刻んでおけば良い。深雪を害そうとしたら殺せば良いのだ。

 

意識を眼前の景色に戻す。虚空から幾つも剣を出現させたスコープがミカエラ・ホンゴウを串刺しにして壁に磔にしている。

 

スコープはいつも理知的で穏和な姿からは打って変わって苛烈過ぎる姿を披露していた。

 

ミカエラ・ホンゴウに磔にしたまま腕や脚、内臓を剣で解体しては治癒魔法で修復されるが、構わずに解体し続ける。

 

グロい。流石に刺激が強すぎる為に深雪の眼を手で覆って見えないようにする。精神を守るのもガーディアンの務めだろう。

 

辺り一面に血が飛び散る。周囲の人間もその場の惨状にドン引きする。よく見れば即死させないように末端部分から解体しているのが分かって更に遠ざかる。

 

エリカも流石に顔を引き攣らせているし、リーナは間近で解体ショーを見せられた結果として顔を青くしていて今にも吐き出しそうだ。

 

「レオの味わった痛みを味わえ!」

 

友情の表現として不適切過ぎる。俺もレオを傷付けた事は許せないとは思うが、何も拷問紛いの行為をしなくてもと思ってしまう。

 

絶対レオの味わった痛みより強いだろう。友情を感じているのは分かるが其処までするか普通。

 

誰かに止めに入って欲しくて周囲に視線を送る。首を横に振られる。俺は深雪の精神を守る為に動けないのだから他の人に止めに入って欲しいのだが。

 

「可憐な女医が華麗に参上!」

 

見知った事がしたと思えばDr.ロマンがその手に構えた拳銃らしき黒い物体でミカエラ・ホンゴウの頭を吹き飛ばした。

 

……威力が高すぎないか?なんだあの拳銃の皮被った大砲。一体何処から持ち込んだ。

 

「Dr.ロマン、その銃火器は一体何処で?」

 

「自作だとも。これぞロマン!ロマン砲を扱うDr.ロマンという訳です!」

 

「態々取りに行ったのなら、白覆面の正体を既に認識していたという事ですか?」

 

自作とは驚きだ。あれ程の火力の兵器を個人で開発しておいてダジャレがつまらないのも驚きだ。

 

流石に家か何処かにあったのだろうが、パラサイトが来るのを予期して事前に持って来ていたのだろう。

 

ランサーと呼ばれる存在を使えばパラサイトの正体を知る事もできるに違いない。言ってくれなかったのは少し不満が残るが、

 

「僕の渾身のダジャレを容易く流すなんて…。取りに行ったんじゃなくていつも持ち歩いてるんだよ。」

 

「アンタ正気か?」

 

思わず声が出てしまう。馬鹿なのか?普段から携帯する必要はあるのか?明らかに医者にはいらない火力だろ絶対。

 

「じゃ、後はお願いするよ。」

 

そう言い残してDr.ロマンは走り去って行った。いきなり拳銃擬きで銃撃して直ぐに立ち去るのは相当な自由人だろう。

 

ミカエラ・ホンゴウの方に視線を向ければ頭部が消滅しているし近くでスコープは気力を使い果たしたのか床でぐったりしている。

 

それにしても後はお願いするとはどう云う意味なn──

 

この後滅茶苦茶パラサイト撃退した。

 

 

■

 

 

2095年2月19日早朝。

 

私ことスコープ・ライノールは友人である吉田幹比古と共に第一高校の野外演習場に細工を仕掛けていた。

 

先日、と言っても半月程前にDr.ロマンに私が裏切り者だとバラされた為に友情アピールすべくパラサイトを嬲り殺しにした結果パラサイト関連の事件から強制的に外されていた。

 

ボクもオレも私もDr.ロマンを早めに始末しておくべきだったと後悔していた。苛立ちが収まらない。

 

パラサイトを嬲り殺しにした一件以来常に監視が付けられるし、そもそもランサーにも監視されている。

 

確かにパラサイトの寄生体を圧倒できる程の実力を示したが監視をあれ程厳重にしなくても良いだろうに。

 

友の為に化け物に立ち向かった勇者だろう私は。流石に英雄譚とまでは

言わないが美談くらいにはなるだろうと思っていたというのに。

 

「スコープ、この宝石は此処に置いた方が良いかい?」

 

「あぁ、問題ない。手伝って貰って申し訳ないよ。」

 

幹比古の声がする。彼には魔力と術式を籠めた宝石を野戦演習場の隅々に配置するのを手伝って貰っている所だ。

 

勿論ボクだって司波達也を過小評価している訳ではない。宝石をついては当然気がつくだろうし、裏切り者と暴露されたボクの手によるものならば警戒するだろう。

 

だからオレは昨日の夜の時点で野戦演習場全体をカバーできるように爆弾を配置しておいた。

 

勿論ランサーには気付かれたが、其処は英霊召喚でどうにかした。私にとってもリスクは大きかったが放置する訳にもいかなかった。

 

学校が始まればランサーも霊体化を簡単に解く事はできないだろう。爆弾の解除も出来ない筈だ。

 

今夜の作戦は失敗できない。本当なら魔神柱を使いたいが、長く足止めするのならば、業腹だが英霊に頼らなければならないだろう。

 

ついでにDr.ロマンも襲わせておこう。ランサーも護衛対象を守りながらの戦闘なら容易ではない筈だ。

 

まあ、仕留める事は不可能だろうが手を尽くしておいて悪い事はないだろう。今の内に時間神殿で英霊召喚をして貰おう。

 

宝石を設置し終えて、私は幹比古と話しながら校舎へと向かう。後は今夜手筈通りに出来れば問題はない。

 

 

我らの理想の成就はすぐそこまで迫っている。




大分飛ばしましたが後二、三話で完結させます。
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